担当MS:旭吉

、ェ、ミ、ア、ホフ、リ・隘ヲ・ウ・ス。ェ

開始料金タイプ分類舞台難易度オプション状況
16/09/24 24:0010000 Rexコミック日常地上自由お任せプション 8人

◆参加者一覧

ユニコ・フェザーン(ta4681)P地
クリス・マグダネル(ti3848)P水
イリス(tj3625)P陽
アンリルーラ(tj5260)E水
ヘルマン・ライネケ(tj8139)P水
ララハト・ルクイア(tj9989)W陽
アビゲイル・タンボイ(tk0485)W陽
ハヤト・ウルファング(tk2627)W風

オープニング

◆いたずらジャックの話
 ジャック坊やは悪戯坊主だ。
 街の大人が困るような悪さをしては、彼らが困るのを楽しんでるんだ!
 ジャック坊やは子供の英雄だ。
 大人に怒られてばかりの悪ガキどもには、大人をやっつけるジャックはかっこいいらしい!

 ジャック坊やはもういない。
 悪さをしすぎて、黒い悪魔に連れてかれちまった!
 しかしジャック坊やは帰ってくる。
 ハロウィンの夜、知らない声に返事をしちゃあいけないぞ!

◆おかしなおかしの夜
 そんな『いたずらジャック』の童謡が残る、とある街でのハロウィンの日。
 この『ジャック坊や』はその昔実在した少年らしく、『黒い悪魔』とは『黒化病で狂って死んでしまった』事を指すのでは、と伝わっているがはっきりしていない。
 その少年の霊が、毎年ハロウィンになると戻ってきて悪戯をしていくのだそうだ。
「この街では、ハロウィンは大人も子供も仮装をするんだ。子供は街の大人からお菓子をねだるんだけど、大人はお菓子を渡す以外にもその行列に付き添う事になってるんだって。『ジャック坊や』の霊が子供を連れてっちゃうかもしれないから」
 そのため、大人は子供にきつく言い付けるのだという。
 『ジャック坊や』はいつの間にか一緒にいて、とても気さくに誘ってくるが、決して振り返ってはいけないし返事をしてもいけない、と。
 単なる昔話などではなく、去年のハロウィンに行方不明になってしまった子供が実際にいるらしい。大人が付き添うようになったのはその事件を受けての事だとか。
「『ジャック坊や』は朝まで相手にされなければ、諦めて帰っていくらしいよ。『ジャック坊や』は寂しいと思うけどな」
 悲劇を救ったドラグナー達が、たまたま逗留する事になった街での不思議な童歌。
 彼らが過ごすハロウィンの夜、『ジャック坊や』は本当に現れるのかどうか。

 ――ところで、先程から君達の後ろにいるのは一体誰だい?

◆マスターより
旭吉です
今回のコミックはハロウィンです!

〇状況
10月末のウーディア ハロウィンの夜
仮装必須です
データとしての装備の有無は問いませんが、仮装衣装の説明を必ずお願いします
(説明が無い場合は旭吉センスで何か着せます。悪しからずご了承を)

基本的にハロウィンのお菓子をねだったりあげたりする感じですが、
聞こえてくる『ジャック坊や』とされる声にどう対応するかでその後の展開が変わってきます
(注意された通り無視するか、相手をするか、等)
・街の習慣ではお菓子をねだるのは子供ですが、ドラグナー同士であれば年齢は気にしなくていいです
 (TG世界ではドラグナーは全員成人です)
 例外としてシフールは街の大人からももらえます

※キャラの知らないネタバレ
今年やってくる『ジャック坊や』は去年行方不明になってしまった子供のゴーストです
ごく自然に会話に混ざったりする程度に悪戯好き

◆コミックリプレイとは
 このシナリオは「秋期特別企画」の一つである、「コミックリプレイ」です。
 参加するには、参加するキャラが美術室(STARS)にて作成された透過全身図をもっている必要があります。
 コミックリプレイは、ショートシナリオのリプレイに加え、「ウラシマツシマ」絵師によるコミックが作成されます(参加人数×1頁、4〜8頁)。
 プレイングには、キャラに行わせたい行動内容と共に、外さないで欲しい外見特徴やこだわり(刺青、ホクロ、仮装デザイン等)を記入してください。服装・装備は出発時に装備しているアイテムやMYページに表示されているイラストを元に制作します。

リプレイ



◆ハロウィンナイト!
 十月の終わり。ハロウィンの日は瞬く間に暮れ、日没と共に夜がやってくる。
 夕陽を背に受けた小さなおばけの影がひとつ、ふたつと集まれば、寄り添うように大きな影達も集まってくる。
 大きなおばけと小さなおばけ、皆の準備が整えば。
「トリックオアトリート!」
 ――さあ、おばけの夜のはじまりだ。

 *

「この煙玉と、この仮面があるだろ?」
 街の子供達と共に通りを練り歩くドラグナー達。大きなカボチャを被ったクリス・マグダネル(ti3848)は持参した悪戯玩具の煙玉を子供の1人に投げさせると、幽霊のような不気味な顔の仮面をぼんやりと光らせて煙の中から現れた。
「ヒャッハーッ! 毎年この時期はテンション上がるよな!」
 子供達はまず驚いたが、正体がクリスとわかるとすぐに寄ってきた。彼は子供達を見守るというよりは、どちらが子供かわからないくらい一緒になってはしゃいでいた。
「とりっくおあとりーとぉっ!!」
「お菓子くれなきゃくすぐりやがるのでぃすよ♪」
 家でお菓子をねだる時には、アンリルーラ(tj5260)は黒猫の仮装で、シュライクバニーの『バニ夫』に跨ったイリス(tj3625)も浴衣を着て子供達と共にお菓子を強請ってはその籠に飴やクッキー等を貰っていた。街の大人達は珍しいシフールが来てくれた、幸先がいい、と、かなり大盤振る舞いしてくれたようだ。
「うへへー、たんまりお菓子が貰えやがって幸せなのです。ホレ、バニ夫はしっかり籠を咥えていやがるのです」
「ふふ。お菓子をくれるいい大人ばかりとは限らないよ?」
 貰ったクッキーを齧りながらご満悦なイリスが『バニ夫』にもたれていると、カラフルコンフェイトの包みをちらつかせながら意地悪そうにヘルマン・ライネケ(tj8139)が笑った。
「ヘルマンヘルマンっ! おかしおかしっ! ちょーだいっ!」
「嫌だ、と言ったら?」
「おっかしっをくっれなっきゃいたずらしちゃうのだよーっ!!」
 即興で歌いながらヘルマンの周囲を飛んでいたアンリルーラが悪戯玩具の色水ジョウロを容赦なく傾けると、黒いローブと三角帽子で魔法使いの仮装をしていたヘルマンの衣装は水を被ってあっという間に色彩豊かな虹色の衣装に変わってしまった。しかし、彼も悪戯される役を引き受けるつもりでいたのでむしろ楽しんでいたようだ。
「ヘルマンの仮装かっこいーね!」
「お前もそう思うか! イカすよなー!」
 そんな様子を、クリスは真面目に目を輝かせて見ていた。彼の足元ではユニコ・フェザーン(ta4681)の相棒である柴犬の『ゴンスケ』が不思議そうに見上げていたが、ハヤト・ウルファング(tk2627)にボーンクッキーをプレゼントされるとまっしぐらに食いついていた。
「楽しい夜となるように、ね。トリック、オア、トリート」
 子供達の様子に目を配りながら菓子を配っていたユニコは、そこにも子供がいたことに気付いて虹色クッキーを差し出そうとして、
「‥‥?」
 ――さて、一体そこに誰がいたというのか。
「ハロウィンは先祖の霊が帰ってくるのよねっ! 私達の習慣にも似てて、このお祭り好きだワっ!」
 行列の横について子供達を見守っていたアビゲイル・タンボイ(tk0485)は、その背にも子供を乗せながら鎮魂祭に共感していた。何故かと子供に問われると、アルメリアンも先祖や祖霊を大事にするのだと教えてやった。
「‥‥アビゲイル」
 行列の最後尾から、子供達が連れていかれないかじっと見ていたララハト・ルクイア(tj9989)が、そんな彼女に静かに声をかける。
 彼の意図を察して、アビゲイルは視線だけで振り返り頷くと、他の仲間数人にも視線を送った。
 子供達にまだ被害は無い。しかし。

 ――『ジャック坊や』は、既にいる、と。

◆朝まで踊ろうハロウィンナイト
 住人達は言っていた。『ジャック坊や』はいつの間にか一緒にいて、とても気さくに誘ってくるが、決して振り返ってはいけないし返事をしてもいけない、と。
「ジャックの話は寂しいよね」
「仲間外れは寂しいもんなー」
 ヘルマンが話題にすると、クリスはジャックに同情した。
「坊やじゃなくてセクシー美女の幽霊だったら喜んで連れてかれ、あだっ!」
 冗談交じりにそう言った人狼姿のハヤトの尻尾が何かに引っ張られる。思わず声を上げたが、周囲にそれらしい行動をしていた人物はいない。子供達も自分達以外に何かがいる事を徐々に感じつつあり、付き添っているドラグナーの服を握ったり不安を訴えたりする者が出始めていた。
「‥‥ヘルマンもつれていかれちゃうの? つれていかれちゃいやなのだよ!」
 不安そうにヘルマンに寄り添うアンリルーラの手を取って、ヘルマンが子供達に示す。
「私も、君を連れて行かれては困るからね。皆、こうしておけば連れて行かれないかもしれない。周りの友達や、私達と手を繋ぐといい」
「手を繋ぐのはいいアイディアでやがりますです♪ ‥‥でも、アビー様とかはどうすれば良いでやがりますかね?」
 それぞれに手を繋ぎだす仲間達と同じようにアビゲイルと手を繋ごうとしたイリスだが、セントールの『手』とは一体どこを繋げばいいのか少し悩んでしまった。
「手を繋ぎたいのかしらっ? イイわよっ、しっかり繋ぎましょっ!」
 『バニ夫』には相変わらず溢れんばかりの菓子で満たされた籠を咥えさせたまま、イリスはアビゲイルと手を繋ぐ。
「誰か、僕とも手を繋いでくれないかな」
「よーし! みんなで手を繋いでクリストリカルパレードだ!」
 クリスが行列の先頭に立って声の方向に手を伸ばすが、誰かと繋ぐはずだった手は空を掴む。振り向いた先には既に手を繋いだ子供達しかいない。
 注意深くその行動を見ていたドラグナーには薄らとではあるが、子供達とは異なるもう一人の少年の影が見えていた。街の大人達の注意もあって直接声をかける事はまだしていないが、恐らくは――この少年が『ジャック坊や』だろう。
「一緒に行くのは無理だが、ジャックにお土産ぐらいは持たせたいものだ」
 直接ではないが、近くにいるであろうジャックに聞こえるようにヘルマンが呟く。
(返事をしなくても、満足させることができれば)
 ララハトは妖精の横笛で皆が行進しながら踊れそうな曲を奏でると、黙々とそれを続けた。ジャックが子供を連れていく目的が邪悪な物でなく『皆と一緒に祭りを楽しみたい』だけなのであれば、それで満足に繋がるかも知れないと思ったからだ。
「ン! せっかく手を繋いでるし、皆で踊りましょっ! イリスもっ!」
 手を繋いでいたアビゲイルとイリス、ヘルマンとアンリルーラがそれぞれ軽く踊り出すと、子供達も見様見真似で足でリズムを刻んで踊り始めると、彼らの足元にいたユニコの『ゴンスケ』も時折吠えながら踊るように跳ねていた。
「楽しいね! 踊ろ、踊ろ! 朝まで踊ろ!」
「朝まで、は‥‥ちょっとしんどい、かも、ね」
 誘われる声に少しズレた答えを返しつつ、ユニコは踊る手を差し出す代わりに金貨クッキーを差し出した。
(でも、楽しい時間が続くのは、いいね)
 踊る皆を見ながらそう思った時、ユニコの手からクッキーが消えていた。

◆迷子のジャック
 夜も深まり、街を回り終えた子供達は踊り疲れた事もあって朝を待たずに家へ帰っていった。その道中も道を逸れてはぐれてしまう子供が出る事の無いよう、ドラグナー達は家に入る所まで子供達を一人ずつ送っていった。
 今年のハロウィンは一人も行方不明者を出さずに済んだ――と、一安心した頃。
「で、アンタは誰でいやがりますでぃすか!」
 子供達を送っている最中もずっと感じていた気配にイリスが思い切って振り返る。そこに人影は無いのだが、常にルミナリィで明るい視界を確保していたララハトにはその移動先を追う事は容易かった。
 しかし、その場所へ移動する事は敢えてせずに独り言のように、それでも聞こえるように言う。
「楽しめただろうか。それともまだ、物足りなかっただろうか」
 返らない声。しかし確かにある存在感に再びアンリルーラが不安になる。
「やっぱり、つれていきたいのだよ‥‥?」
「それとも、忘れてしまわれたくないから来やがったんでぃすか? そういう事なら、覚えられるだけ覚えておきやがります」
 イリスの言葉にも声はやはり返らないが、祭りの前に大人達から行方不明になっていた子供の特徴を聞いていたアビゲイルには思い当たる節があった。
(多分、あの子よね。去年いなくなってしまった子‥‥)
 祭りを楽しんでいたはずが、楽しいまま声に誘われて、気が付けば家にも祭りにも戻れなくなってしまった子供。そのまま亡くなってしまったなら、それはどれほど寂しい事だろう。
「一緒には行けないケド、お土産ならたくさん用意してあるワっ! ネっ!」
「子供達の誰にもあげていない、とっておきのお菓子を街の入口に隠していてね。ジャックなら見つけられるかな?」
 アビゲイルとヘルマンが目配せすると、それまで近くにあった気配が消えた。それと同時に『ゴンスケ』が駆けだし、地面に落ちていた何かを見つけて吠えた。
「これ‥‥お菓子?」
「あっちの方にも落ちてる‥‥っていうか、どっかに続いてんのか?」
 ユニコとハヤトが見つけた以外にも、お菓子は点々と続いていた。それらは皆で歩いていた時にいつの間にか無くなっていたお菓子であり、ヘルマン達がお菓子を隠したという街の入口を過ぎてもまだ続いていた。
「忘れ物多すぎだろあいつ!」
「元々アイツのじゃなくて盗みやがった分です!」
 少し楽しくなりながら、クリスと『バニ夫』に乗ったイリス、そして『ゴンスケ』が先を競うようにお菓子の跡を辿る。街からそう離れていない小さな石橋まで来た時、その途中で菓子が大量に落ちていた。街の入口に隠していた菓子もだ。
「ここに‥‥何かあるのか」
「もしかして、本物の彼とか‥‥?」
 アビゲイルの予想にララハトが頷いて石橋の近くを探してみると、橋脚の近くで横たわっていた小さな骸があった。身体はすっかり骨となっていたが、僅かに残っていた衣装からしてあの少年であった可能性が高い。
「ずっと、こんな薄暗い場所じゃ寂しかったよな」
「もう大丈夫だぜ! 街の奴らにお前がここにいるって事教えてやるからよ!」
 姿を現さない少年に、クリスとハヤトが励ましの言葉を送る。
「きっと皆、大切に迎えてくれるワ。もう寂しくないワヨっ!」
 アビゲイルも優しく言葉をかけるが、やはり返ってくる言葉は無い。
「もしかして、今更恥ずかしいんでやがりますかぁ?」
「‥‥朝、まで」
 冗談交じりに聞いてみたイリスに、まさかの反応があった。祭りの間から子供達やドラグナー達以外にずっと混ざっていたあの声だ。
 橋脚の影から覗いていた声の主は、その身体が半分透けていた。
「朝まで一緒が、いいな。朝までハロウィン、続けようよ。一人になるのは、寂しいよ‥‥」
「そうだね‥‥では、朝まで一緒にいてあげようか」
 今まで振り返らなかった少年をその目に映し、ヘルマンは残っていたクッキーを差し出した。
「『そちら』側へは一緒に行けないが、街の皆が君を見つけてくれるまで、ね」

 朝陽が昇れば、街の住人が起きてくる。そうしたらきっと伝えに行こう。
 『ジャック坊や』になってしまった一人の子供は、それでやっと『夜』を終えられるはずだから。

 おばけとお菓子のおかしな夜。
 朝までハロウィンを続けよう!