図書室リアイベSH19鬼神が平成来ちゃい…

ただいま、現代

無料参加イベント「ただいま、現代」について。
19/1/04

念願の帰還を果たして

 まごうことなき現代に、あなたは戻ってきた。
 確かに、東京は壊滅している。日本は控えめに言って大混乱だし、世界が恐怖に包まれている。
 しかし――人々の営みは、実際のところ、それほど変わってはいない。ほとんどの者は、今日も会社へ行き、学校へ行き、家族と過ごし、テレビを観て(それは災害ニュースであったり、アニメであったりする)、外食をし、釣りもデートもする。
 来世人のあなたは、久々の現代で、何をしただろうか?
 大和人のあなたは、話には聞いていたものの初めて見る未来の世界で、何をしただろうか?
 脅威はあれど、日常もある。これは、そんなギルド員たちの日々の姿である。
19/1/04

本イベントについて

 本企画は、投稿フォームによる選択肢とプレイング投稿(100文字迄)による無料参加イベントです(投稿期間終了済)。
 巨大秀吉と戦う姿とは別に、現代における日常風景を語っていただき、それがリプレイ形式でまとめられます。
 投稿締切は2019年1月3日24時です。締切まで、何度でも再投稿可能で、最後に投稿したものが反映されます。
 装備やスキルは投稿時のものとなります。
 全てのキャラが参加可能ですが、全員がリプレイに登場するわけではなく、描写は一部に限られますので、あらかじめご了承ください。
19/1/04

プレイングの注意事項

 選択肢は下記の通りです。
・グルメを楽しむ――飲食を中心としたものです。
・レジャーを楽しむ――旅行や趣味、娯楽等です。
・思い出の場所へ――故郷やゆかりの場所等へ向かいます。
・ボランティアに励む――被災し、避難生活を余儀なくされている市民を支える手伝いをします。
・その他――上記に当てはまらない場合です。

 東京の中心部はほぼ廃墟であり危険ですので、そこへ向かうプレイングはできません。
 外国人の来世人であっても、海外への渡航はできません。
 現代に残していた家族や友人等との接触は原則、この企画では扱えません。特別イベント「再会の刻」にてお願いします。
 他のキャラと同行も可能です。お互いにプレイングで同行相手を指定してください。
19/1/04

リプレイ

◆現代を満喫!
「いやー、助っ人のつもりで一旦戻ったけど、戻ったからには今の内にグルメを楽しまないとねー♪」
 カーモネギー・セリザワ(ka01912)は、早くも出来上がっていた。
 場所は臨時ギルドからそう遠くない大阪の裏路地。誰に聞いたか、マニアックなお好み焼き屋でビールと粉ものをハフハフガブガブやっていた。
「ねえねえオバちゃん、これのレシピ教えてくれない? 寛永に戻って広めたら、このお店、元祖を名乗れるかもよー?」

 いっぽう、寛永からやってきた大和人、藤枝 真沙花(ka01870)は。
「むぐぐ‥‥確かにこれは、来世でなくば味わえんな」
 激辛カレーに汗だらだら。勧めたのは、その祖先と言われる藤枝 杏花(ka00565)で。
「辛いものマニアのご先祖様が来世の激辛グルメを知ってしまったら、もう寛永には戻れないのです」
「いや、こんなもので大事な運命を決するつもりはないぞ? だが、しかし‥‥不思議な中毒性が‥‥このすぱいすというやつ、ご禁制では‥‥?」

「現代で八咫烏が使えるって? じゃあ長崎に行こう。一度行ってみたかったんだ」
 そうして後藤 閃也(ka00825)は、本場のちゃんぽんをすすっていた。あちち、うまい、意外に複雑な味だ、などとぶつぶつ言いながら、気道に入った麺を、ゲフッゴフッと吐き出して口元を拭うと。
「ふう、死ぬかと思った‥‥けど、ちゃんぽん食べて死ぬこともあれば、バカでかい鬼に踏まれて死ぬこともある。明日生きていられる保証はないんだ。今を楽しまなくっちゃな」

「今のうちに楽しんでおかなきゃ‥‥八咫烏あると足代かからないから、助かるな」
 相葉 楡(ka01176)は非日常を味わいに、清里高原へ来ていた。
 美術館をゆっくり回り、のんびりと足湯をし、そこから綺麗な星空を見上げる。優雅で静かで、心身がほぐれるようなバカンス。
 けれど、星々のまたたきは、何かを語っているようにも思えた。声なき声を、小さな小さな無数の声を。
「あーあー聞こえない聞こえなーい。今は黙っててよ、明日からじっくり聞くからさ」

 湧口 瑞希(ka01873)は、初めての来世で、来世的な全身コーディネートをしていた。
「これは‥‥色とりどりで美しい‥‥少し窮屈ですが」
「窮屈? じゃあゆったりしたスカートに変えてみる?」
 コーディネーターは溢田 純子(ka01629)。久々の現代ショッピングで、大和人の服を選ぶ。なんと刺激的で楽しい体験か。
 そうして、次々と着せ替えが繰り返される。めまぐるしく驚く瑞希だが、目は笑いっぱなしだ。そして、瑞希の目から見て不思議なお金(見事に彫り込まれたそれは、現代人でもウットリの一万円札というやつだ)で、多くの服や靴やアクセサリを買ってもらうと。
「ありがとうございます、こんなによくしていただいて。なんとお礼を言ったらよいか‥‥」
「いえ、お礼を言うのは私たちのほうよ」
 えっ、という瑞希に、純子は黙ってウィンクすると。
(だって、寛永へ帰れないかもしれないのに、来てくれた‥‥その重い決断に対してのお礼としては、安すぎるくらいだもの)

 そしてこちらは、別府温泉。
「いやー極楽極楽☆」
 ミア・カイザー(ka00679)の堂に入った大胆なくつろぎ具合に、その姪のアステ・カイザー(ka01612)は感心するが――
(大胆といえば‥‥)
 ミア叔母さんも、ミネルバ・マガミ(ka01851)さんも、ダイタンなバディ、脅威の胸囲を誇っており、それがアステにダメージを与える。
「あやー、そんなに落ち込まないでって。パパとママに会えないのは寂しいだろうけどさ」
「いえミア叔母さん、違うんです。それもありますけど、渡航許可はいつか出るかもしれませんし‥‥」
「いえ、いつか、ではなく、必ず出ますわ。あのエテ公さえ倒せば、海外に行っちゃいけない理由もなくなるはずですから」
 ミネルバはそう言って拳を握る。たしかに、とアステはうなずく。
「そのためにも、決戦前の魂の洗濯は大切ですよ。さあ、別のお湯も味わいましょう!」
「ミネルバちゃんの言う通り☆ で、それならあっちに違う源泉からのやつがね‥‥」
 ミアが「とうっ」と湯船から飛び出すと、アステはタオルで前を隠しながら、必死に追いかけていった。

 空木 椋(ka00358)と根子 楤(ka01983)は、水族館の大水槽を眺めていた。
 巨大なジンベイザメが、ゆったりと横切っていく。しばし無言で眺める二人だったが、ふいに椋が、楤に頭を下げると。
「今日はお誘いありがとうございました」
「驚いた?」
「えっ? ‥‥はい、少し」
「なんか最近、ギルドの仕事しすぎみたいだったからね。人間休息も必要だよ」
「そうですね‥‥」
 二人はまた、ジンベイザメを見た。でかい。人間よりもはるかに。しかし、巨大秀吉にとっては、これも小さな生き物なのだろうか。
「‥‥東京の施設に居る動物たちは、どうしているのでしょうね」
 ふいに椋が言った。楤は答えるかわりに、スマホで何やら調べ――そして。
「すでに殺されちゃったのを除けば、可能な範囲で他の動物園に避難させたみたいだね。水族館の魚も、逃がせるものは海に逃がしたみたい」
「‥‥‥‥そうですか」
 その、一握りの幸運な動物以外はどうなったかを、楤は語らなかったし、椋は聞かなかった。
「‥‥すぐそこの魚市場の2階で、おでん食べよう。美味いんだよ」
 楤がそう言うと、椋は喜んでついていった。楤は背を向けたまま、言った。
「世の中なんてのは、なんだかんだ回るんだよ」
「そうですね‥‥回っていくものです」
 廻り廻って、因果の犠牲になるのは、人か、鬼か。そもそも人と鬼と動物に違いなんてあるのか。椋にはとうとう、わからなかった。

◆帰るべき場所
 ――ここは、群馬の、とある山奥。素朴な家屋から、なんとも大きな声が響いてくる。
「てゆーか、ばあちゃん逃げなくていいの? え? 今さらこの家を離れる気はないって?」
 声の主は、不知火 焔羅(ka00012)のようだ。
「まーボケて逃げられなくなってるんじゃなくてよかったけどさー。あれだろ、群馬ってあぶなくね? 東京の隣だろ? あれ違ったっけ? そっか、でも秘境って言われてるから大丈夫なんかなー」
 焔羅の声は外にいても聞こえる。
「おっばあちゃんの団子! いっただっきまーす」

 こちらも、鬼神の被害をまぬがれている関東近郊の某神社。
「‥‥天兎姉さん凄い人だったんだな。親父、泡吹いて倒れそうになってたぜ」
 梧桐 茶倉(ka01729)に言われ、梧桐 天兎(ka01855)は頬に手を当てる。
「家系図でしか知らぬ自分の先祖が現れたのだ。無理もない‥‥」
 御子 柴識(ka01867)は天をあおぐ。
「それにしても、私の生きた時代とずいぶん様変わりしていることに驚きました。仮に戻ることが叶わなくとも、識様もいらっしゃるのでこの時代で過ごすことも悪くありませんわね」
 天兎はのほほんとそう言った。だが茶倉はそれほど気楽ではいられない。
「どっちにしろ、あのデカザルをぶっ倒してからの話だ。せっかく来てもらったんだ、しっかり手を貸してもらうぜ」
 茶倉の言に、天兎と柴識はなにも答えなかった。「言われるまでもない」というふうに。

 いっぽうこちらは、被害をまぬがれてはいなかった。
「‥‥‥‥」
 遠野 絃瑞(ka00651)は危険を承知で単身、南青山まで侵入していた。
 辺りは廃墟。しかし、道や、残されたガレキ、川等から、そこがどこであるか、絃瑞にはわかった――むろん、自分の勤めていたカフェバーの位置も。
「‥‥‥‥」
 何もなかった。あるわけがなかった。『〇〇に避難しています』などという貼り紙にでも、自分は期待していたのだろうか? ――わからない。
 少なくとも、死体はなかった。虐殺の痕も。逃げられたのだろうか、調べるべきだろうか――わからない。
 気づくと、八咫烏が迎えにきていた。自分が呼んだのか? もちろん、そのはずだが――よく覚えていない。
「‥‥行きましょうか」
 絃瑞は大空を飛んで大阪へ戻る。足下には、幸運にも逃げ延びた避難民が、数えきれないほどいるはずだった。

 大和人の魔神 極奴(ka01868)は、グレース・マガミ(ka01643)の亡き夫の墓に語りかけていた。
「逢う事の叶わなかった我が子孫よ、お前に代わって、お前の家族と来世は俺が守る。あの世にいるもう一人の俺と共に見守っていてくれ」
「ふむ、子孫の墓に参るとは、これも運命のいたずらよの」
 その声に振り向いてみれば、富栄弩院 頼伝(ka01639)がいつしか後ろに立っていた。
「どうしてここへ?」
「拙僧が修行した本山に赴き、寛永からの帰還と鬼神に挑む事を報告をし、我らの必勝祈願をした、その帰りよ。神仏のお導きといったところだろうて」
「神仏の‥‥」
 導きが、自分を未来へ、この場へ呼び寄せたのか――極奴は再び墓へ手を合わせ、背を向けると、もう振り返らなかった。

◆ボランティア
 その間にも、多くの来世人が、避難所でのボランティアに勤しんでいた。
 潤賀 清十郎(ka00609)はここのところ休みなく診療を続けていた。白衣で診察道具を抱えて。
「行きたい所はたくさんある‥‥でも日常が戻ればいつか行ける。だから今は‥‥ナラ君!」
 呼ばれた根子 ナラ(ka01549)ははいはい~っと、清十郎に託された怪我人を預かり、まとめて、地蔵菩薩慈悲真言で癒す。
「でも、たまには休まなきゃだめですよ。椋様も無理やり休ませたのですから、明日は清十郎様も」
「せやね。でも、あまりそういう気分にもなれへんのよ」
「なら、私とタコ焼きでも付き合ってもらいましょう」
 ナラは断固として告げる。
「そうです、いつの時代も飯は大事ですよ」
 陸奥 熱士(ka00071)は大きな米びつを2つも抱えてそう割り込むと。
「帰ってこれたと思っても、なんだかんだ仕事は尽きないな」
「うむ。プロレスラーとして、奉仕活動は基本中の基本だ」
 アイナ・ルーラ(ka00830)はプロレス風ちゃんこ鍋を、米びつの横にドカンと置くと。
「まずは腹を満たし、活力を取り戻す事が肝心だ。なに、皆を苦しめた鬼は、私達が退治するから安心だ。あ、ちなみに救援物資も届いている。陸奥少年、担ぐのを手伝うんだ」
「はいっ」
 救援物資の送り主は『ミズ・グレート』と書かれていた。グレースがマガミ家の資産から取り寄せ、各避難所に送ったものの一部だった。
「ではここから、追加の炊き出しを行ないましょう」
 カミラ・ナンゴウ(ka01313)が素早く何かをこね、そして包みだした。
「気持ちが沈んだ時は、ニラやニンニクたっぷりの焼き餃子が一番。食欲を増進し、お腹が膨れれば、明日への活力も沸いてきます。あ、激辛がご希望の方は、こちらをどうぞ。さらなる刺激が欲しい亡者様は、こちらも」
 真っ赤な餃子が、避難者の身も心もホットにし、度を越して真紅な餃子に挑んだ愚か者は、阿鼻叫喚の悶絶地獄に苦しんだ。
「あの人、火を噴いてるぞ、大丈夫か‥‥ナラさんのとこ行ったほうがいいんじゃ‥‥ていうか正月なんだし、餃子もいいけどやっぱ餅だろ!」
 鈴城 透哉(ka00401)は、杵(きね)と臼(うす)を軽々と担いで、それをドカンと置くと。
「被災しても正月は大事! ついて丸めて食って笑おうぜ!」
 米が潰れ、白い塊になり、それが丸められ、口へと消えていく――透哉は、皆の笑顔に、自分までも強い元気をもらう。
「家なくなって大変だろうけど、こういうので少しは日常が戻りゃいいな」
「ああ」
 答えた由良 悠頼(ka00943)は、避難者の修理や工芸にひたすら勤しんでいた。
 破れたズボンを柴犬ワッペンで繕ったり、話を聞くがまま、ぬいぐるみを作ったり――自分そっくりの式神も用い、凄まじい作業量を一人(?)でこなす。
「こんなことでも、来世人の力が役に立つ。まさか現代に戻ってまで、こんなに力を振るうことになるとはな」
「力‥‥か」
 透哉は今さらながら、自分に身震いする。けど、迷いはない。自分の力の使い道は、間違えないつもりだった。

 公民館では、茂呂亜亭 萌瑠(ka01356)と希有亭 波新(ka01670)の噺家コンビが、お得意の一席をぶち終えたところだった。
「――おあとがよろしいようで」
 萌瑠が頭を下げると、万雷の拍手が起こった。中には泣いてる者もいた。舞台袖に下がると、萌瑠は波新にひそひそと。
「いやあ、ここまでウケるとは‥‥娯楽に飢えていたのでしょうか」
「いえ、それだけの力が、私たちに備わったってことよ」
 寛永での経験か、あるいは魔のなせる業か。いずれにせよ二人の芸は、たしかに、超一流の域に達していた。
「おや、外でも万雷の喝采が――」
 萌瑠が外を覗くと、凄まじい人だかりが。ファンと記者に取り囲まれた高杉 蘭子(ka00512)が、セクシーダンスで魅了しているようだ。
「蘭子さんもすごい芸だものね‥‥あら、一段とすごいどよめきが」
 波新が目を丸くする横で、萌瑠はピンと来た。水着がポロリしたんだな、と。
「おあとがよろしいようで」

 実はボースン・カイザー(ka01874)も、元船医の経験を活かして診療を手伝っていたが、今はアニマルセラピーを取り仕切っていた。
「病は気からというし、こういうのも大事なのねん」
 パンダにカンガルー、これが江戸時代から来たものだなど聞いたら、みんなどう思うだろう? とボースンは一瞬思ったが、その横で、水上 澄香(ka00399)が連れているペットを見て、どうでもいいことか、と思い直した。
「うわ、なんだこれー!?」
 子供らは、豆狸や蹴鞠童子、動く寸胴鍋に大はしゃぎ。
「みんないい子なのねん」
 ボースンは澄香に微笑む。
「ええ、本当に。この、ありえない出会いが、少しでも笑顔に繋がればいいですね」
「子供の笑顔だけは、現代も寛永も変わらないのねん」
 人々に、子供らに、困った者に歩み寄り、笑顔にする。それは、寛永でも現代でも、なんら変わらないのだ、と澄香は気づいた。
 そして、それらがいまだに儚くもろく、守ってやらねばならないのだと、ボースンは気づいた。

 陽が沈もうとしていた。新しい太陽が昇るころ、まだあの子らは、笑顔でいるだろうか? 秀吉は、朝日を浴びてまだ、静かにたたずんでいてくれているだろうか?
 未来の重さは、そのまま、この子らの笑顔の重さでもある。ギルドの皆は、リフレッシュし、己を見直し、人々を援けてなお、背負うべきものの大きさを噛み締めるのだった。
19/1/04