【白日】想話(参十八話)

担当 箱根空木
出発2016/03/16
タイプ ショート C(Lv無制限) 日常
結果 大成功
MVP 高杉蘭子(ka00512)
準MVP 花織 ひとひら(ka00978)
由良 悠頼(ka00943)





オープニング

◆ほわいとでい!
 ばれんたいんでいに続き、来世のお祭りとして普及が進められているほわいとでい。
 未だ定着はしていないが、来世人たちの協力もあって。
 今年も大なり小なりイベントが開かれているようだ。
 寛永の皆にも楽しんでもらいたいという、暖かな気持ちをその活動に込めて。


登場キャラ

リプレイ

◆どんな日だろう
「ホワイトデーか‥‥想いを伝えるきっかけの日だよな」

 賑やかさを見回しながら、由良 悠頼は腕を組んで考える。
 きっかけとなることは、先月に行われたバレンタインデーも然り。

「バレンタインには性別に関わりなくメッセージカードを、時には花も添えて贈りあう習慣があったね」
「もしや外国に住んでらしたんですか‥‥!」
「まあ」

 昔はね、と銀 煌人が過去へと思いを馳せ、目を細め。
 日本とは異なる過ごし方に気付いた真実 心志が、何故か感動した瞳を向けていた。

「ホワイトデーは‥‥そういえば、記憶に無いな」
「日本発祥のお祭りですからねぇ」
「お菓子メーカーが広めたんだっけ。色んな説があるみたいだけど」

 鬼頭 貴一郎がお茶を皆に配りながら、心志の呟きを補足する。
 西洋から伝わった催しはやがて形を変え、その派生を作るまでになっていて。
 ふんふんっ、と皆の話を聞きながらお菓子を頬張る光国少年の前に、五百田 衛がふらりとやってくる。
 その瞳はいささか暗い、ような。

「ホワイトデーでお返しをするというのは、バレンタインデーでチョコレートをもらえた特権階級の権利なんですよ」
「そうなのか? ばれんたいんでいで何かしてないと、何もない日になるのか?」
「いやぁ、そいつはどうかねぇ」

 足を組んで座り、篠倉 和馬が自身の記憶を巡って言葉を挟む。

「祭り騒ぎが好きな奴は、それに便乗して色々やってたぜ」
「うん。お菓子を作って渡せる機会でもあるしね、楽しみ方は多いと思う」
「俺もそうだな、そんな場面は見てきたぞ。
‥‥あ。せっかくですし、光右衛門様にはこれを」
「うむっ! くるしゅうないぞ!」

 悠頼がキャンディを渡すと、一粒ころり。
 美味いな! という嬉しそうな顔に、悠頼も表情を緩めた。



◆柔らかに甘い
「こちらはもうそろそろいいでしょうか」
「そうですね。これも混ぜてしまいましょうか」
「わ‥‥キラキラして綺麗‥‥!」

 若桜 涼が広げた布の中には、色とりどりの煌めく結晶。
 砂糖代わりにと金平糖を細かく砕いたそれに、花織 ひとひらは目を輝かせて。

「クレープも美味しそうですね‥‥! 餡子を挟むなら、少し小さめに作ってもいいでしょうか」
「はい、その方が食べやすそうでいいかと」

 そば粉で出来た薄焼きへも工夫を凝らし。
 ホワイトデーということで手作りの菓子を、ひと手間加えて現代風を形作っていく。
 何をどうすれば美味しそうか、楽しい相談も交えながら。

「紅茶の用意もしちゃいますね!」
「お願いします」

 楽しい時間は、後の時間へとつながっていく。



◆白の日って
「先程も話が出たように『バレンタインのお返しをする日』、という印象が強いかな」

 あくまで私が感じたものだが、と煌人が話し出す。
 職場でのことを思い返せば、バレンタインもホワイトデーも団結した姿勢があったように思って。
 誰かが取りまとめ、小分けできるものを買って配るのが恒例行事らしいのだと。

「らしい、ですか?」
「冬季は‥‥そうだね、仕事で山に籠っていて、その場にいられることはあまりないから」

 いわゆる義理チョコと義理返しかな、と煌人は締めくくる。

「最初はきっとそんな始まりだよね」

 貴一郎が続きを引き受け、こほんと咳払いをする。

「今年も、去年もだっけ。ホワイトデーでは来世人ギルドでもお手伝いがあったよね」
「盛況だったみたいだな」
「うん。俺は、その時に配るクッキーを作らせて貰ったんだよ」

 何も入っていないプレーンに、ちょっと変わったフォーチュンクッキーにと。

「ふぉーちゅん?」
「中におみくじが入っているクッキー、と考えてもらって良いかな」
「ふむふむ! それは楽しそうだなっ!」
「ふふ、持ってくればよかったかなあ」

 光国少年の様子に、貴一郎も微笑んで。
 それは美味しく食べてもらうだけでなく、楽しませるために工夫したものだったから。

「作ったクッキーはお嬢さん方に配ったんだ。主にイケメンな人たちが頑張ってたね」
「へぇ、そりゃイケメンってのも大変だな」
「どの時代でも大変ですよイケメンって‥‥」
「見栄えの良い人から貰うと嬉しいっていうのは、来世も同じだよね」

 深く頷く心志。
 そんなもんかねぇ、と頭を掻く和馬に何故か女性目線で心志が熱く語っていたのは、さておいて。

「僭越ながらお銀が」

 注釈を加えますわ、と高杉 蘭子が横に控える。

「おおっ頼むぞ!」
「お任せくださいませ。では、女性がプレゼントをどう受け止めるか」

 そのことについて、御菓子の仁義なき戦いを、と。

「不穏だな‥‥」
「血で血を洗う争いが起きますから」

 悠頼が目を細めていると、衛はしれっと頷いていた。
 それを望んでる節もないか? と聞きたかったがそれはまあ、後々。

「元は、チョコの返礼する日を愛を包む優しさの意味を込め、マシュマロデーにというのが始まりですの」
「ふむ‥‥」
「何かを頂いたらお礼を返すという、日本人らしさを出した愛の祭」

 律儀な性分に後押しされ、ホワイトデーという祭が定着し。
 けれど女性は贈り物に、深く意味を探してしまうから。

 クッキーは義理に。
 飴は本命に。
 マシュマロは溶けやすい愛で、貴女が嫌いだと広めましょ。

「元はマシュマロデーでしたのにね。クッキー、お主も悪よのぅ」
「むっ! くっきーとやらは悪い奴なのか!」
「いや、大丈夫ですよ」
「お菓子の一つだね」
「そうか、なら悪さは出来ないな。そうだな弥七、格さんっ!
‥‥そういえば、さっき弥七に飴を貰ったな‥‥?」
「あっ」
「えっ」
「ぶっ‥‥ごほっ、いや俺のは、日頃の感謝ですから」

 けほけほ咽る悠頼の背を心志が摩りつつ。
 そうかっ! なら受け取っておくぞ、と光国は機嫌よくお菓子を食べ進めて。
 私、マシュマロが好きと言ったらお返しがマシュマロばかりの時もあったの、と蘭子は悔しい思い出を話す。
 マシュマロの地位向上を目指しますわと言い放って。

「ともかく、そうやって、御菓子ごとの意味が囁かれるようになったのですわ」
「あ、僕も知っているよ。だから適当にお返しが出来ないんだよね」
「意図が含まれなくとも、そう受け取ってしまう方もいらっしゃるかもですしね‥‥」
「複雑だな。菓子をただおくるだけでは誤解を生むのかっ」
「そういう可能性もある、ということだね」

 貴一郎と心志が同意し、光国少年へは煌人が補足。
 ホワイトデー事情はなかなかに難しい。
 友達、好き、嫌いといった意味が独り歩きしてしまうこともあって。

「既婚者に飴は不倫、手作りクッキーは女子力の無さの指摘となり、戦いは新たな局面へ」

 蘭子が持ち物から、丸い何かを取り出す。

「控えおろう!」
「おお! カッコいいな、なんだそれは!」
「マカロンという、来世のお菓子ですわ。意味は」

 貴女は特別。
 ひとつ、光国へと食べさせると彼の顔は輝いて。

「うまいなっ! うまいお菓子がもらえるなら、十分じゃないか?」
「そうはいかないんですよね‥‥女性に失礼は働けませんし‥‥」
「気にしすぎだろ」
「気にしすぎなのかっ?」
「おっほほほ」
「お菓子の用意、出来ましたよ! ‥‥あれ、皆さんどうされたんですか?」
「いや、大丈夫だよ」
「それじゃお菓子パーティーを始めよっか!」

 手伝いをと煌人と貴一郎が立ち上がり、他にも持ってきたお菓子を広げて。
 良い香りが、甘い予感を運ぶ。



◆美味しい時間
「我々、バレンタインにお菓子を貰えなかった男は、
お返しをする男たちに対して怪我をさせないレベルで悪戯していたものです」

 そば粉のクレープを口に運び、懐かしむよう衛は目を細める。

「例えば、どんな?」
「彼が好きなエロ漫画の話題を敢えて、お返しする女性がそばにいる時にするとか、チョークの粉を上から落として『ホワイトデー』にするとか」
「そりゃぁ地味に効きそうだなぁ‥‥」
「悪戯もしていいのかっ?」
「ホワイトデーにかこつけた妬みゆえの行動ですね」

 リア充は全力で爆発すればいいと思ってますから、と微笑む衛。
 女性に被害が出ないようにすることが鉄則というのは好感が持てる‥‥かな? と何人かは首を傾げて。

「俺のホワイトデーは、双子の弟に贈る日だったな」
「そうなんですか‥‥! 交換ということですか?」
「ああ」

 何枚目かのクレープを消費しつつ、悠頼はひとひらに頷く。
 バレンタインデーは弟が暮れて、そのお返しに美味しそうなお菓子を選んで買って。

「まあ、何だかんだであいつからも貰うんだけどな。一緒に食べるし」
「せっかくの機会ですもんね‥‥!
私も、仲の良いお友達とお菓子を作って贈りあうんですよ」
「賑やかそうだね」
「はい! ラッピングも可愛く包んだり、カードに可愛い絵も描いたりして」

 日常とは少し異なる雰囲気を過ごせる機会として、それはとても楽しいもので。
 それはわかる気がするな、と貴一郎も頷く。

「男の子も女の子も関係なく、それをきっかけにより仲良くなれたら嬉しいなって」
「素敵なお考えですね‥‥」

 ひとひらの言葉に、心志は目を細めて微笑んで。

「俺はまぁ、貰った分は菓子でも買って返してたけどな」

 兄貴がなぁ‥‥と。
 焼酎入りのマシュマロにかじりつきながら、和馬は言葉を濁す。
 痛いくらいの視線を感じる気がするが、さておき。

「まぁ、さんざっぱら惚気やらなんやら聞かされてんだ。ここで話しちまってもいいだろ」
「惚気‥‥!」
「俺も兄貴も学生時分の話なんだけどな?」

 和馬の兄はどうやら、学生時分に運命の相手と出会ったらしく。
 バレンタインでチョコを貰った、その翌日から何を返すのか悩んでしまうのだとか。

「よっぽどその方が好きなんですね‥‥!」
「べたぼれだったからなぁ。んで、その悩みやらなんやらの相談受けんのは俺なわけよ」
「それは‥‥大変だな」
「勘弁してほしいぜ」

 結局のところ。
 義姉貴の友人も巻き込み、その時は好きなもん聞き出して用意して大団円になったけれど。

「あんときほど苦労したこたぁねぇなぁ‥‥」
「あああ、お疲れ様です‥‥!」
「今となっちゃ、人様の恋路や惚気で酒が飲めるようになったから、面白おかしく楽しませてもらってたんだがな」

 和馬はすっと目を細める。
 まあでも、それも一つの良い思い出だと、今なら言えるのかもしれない。

「なあ、他のものはどうだったんだ?」
「どう、とは」
「バレンタインにお菓子を貰えたのかっ?」

 ぴしり。
 純粋な光国少年の問い掛けに、何人かの男来世人はそのまま止まって。

「ど、どうだったかな‥‥ハハ」
「覚えてないのか?」
「あー‥‥、そう、今日の俺は弥七ですから」

 容赦ない追及に、悠頼は乾いた笑いから誤魔化しにかかる。

「忍は余り全てを明かすものじゃないしな、うん」
「そうか! それならばよいぞっ!」

 光国少年はいたく気に入ったようで、ほっと悠頼は胸を撫で下ろす。
 皆へと紅茶をつぎ足し終わり、涼が自分の席へと戻った。

「僕の場合は普段の感謝をこめて、友人にお菓子を渡していましたね」
「あ、同じですね‥‥!
大切なのは『ありがとう』とか『好きです』っていう気持ちを、相手に伝えられることなんだと思います」

 普段は口に出して言えないことだから、ものと一緒に気持ちも込めて。

「光右衛門様も、そんな方がいたら、お伝えしたら喜ばれると思いますよ‥‥」

 ちらり、と。
 光国少年の側に控える初老の男性を、ひとひらは見遣る。
 感謝か、と光国が呟いて考えだしてしばらく。
 思い切り後ろへと振り返って。

「じいや! 僕はお前に感謝しようと思うぞっ!」
「なんと‥‥!? いえ、わたくしめは」
「それはいいですね。僕もお手伝いしますよ」
「私も!」
「僕もお手伝いするね」

 じいやの声は再び賑やかになった場に溶け、涼にひとひら、貴一郎が協力して。
 出来上がっていたクレープにあんこを包んだものを、光国は笑顔で差し出す。

「感謝を込めてだ! 受け取ってくれっ!」
「光右衛門様‥‥!」

 ありがとうございます、と。
 じいやは受け取り、大切そうに、皺の寄る手の中へと包み込んだ。

「うん‥‥こういう形はいいよね」
「こんな行事もあってよかったって思うな」
「発祥は様々ありますが、そこに込める気持ちは人それぞれ、といったところなのでしょうね」

 嬉しそうな二人を見て、貴一郎や悠頼、衛が微笑ましげに見守る。

「皆にも感謝だ! 今日は特別に、僕があんこをいれてやろうっ!」
「ふふ。それなら、こちらからの感謝も受け取ってくださいね」
「む、わかったぞ!」

 涼の言葉に頷き、光国は張り切って。
 渡された人は、お返しにとお菓子を光国に手渡す。
 お互い感謝を言い合い、少し照れくさくも感じたりして。

「いいですねぇ‥‥と、そうだ」

 その合間に、ちょっと待っててくださいねと、ギルド内に取って返した心志がお菓子を差し出す。

「ささやかですが‥‥良ければ煌人さんにも!」

 以前のお返しに、蘭子、ひとひら、煌人へと柴犬型クッキーを。
 いつもありがとうございます、と、伝えきれない感謝を込めて。


 それからお菓子パーティーはしばらく続き。
 光国も、きっと傍に控えていたじいやも楽しげで。
 ほわいとでいのお話し会は、感謝の中で幕を閉じた。





 6
ツイートLINEで送る

参加者

a.ほわいとでいについてお教えいたします。ワタクシには黒歴史でしたわ
高杉蘭子(ka00512)
Lv533 ♀ 20歳 武神 来世 婆娑羅
a.もてない男達の祭りについてお答えいたしましょう
五百田衛(ka00535)
Lv299 ♂ 20歳 神陰 来世 異彩
a.ホワイトデーなぁ…俺よか兄貴の方が悩んでたわ。
篠倉和馬(ka00600)
Lv219 ♂ 28歳 陰僧 来世 異彩
c.よろしくお願いします。
若桜涼(ka00758)
Lv210 ♀ 18歳 神傀 来世 異彩
a.兄弟ホワイトデー事情も色々だな。俺の所の場合は―
由良悠頼(ka00943)
Lv228 ♂ 17歳 陰忍 来世 大衆
c.よろしくお願いします。
花織ひとひら(ka00978)
Lv249 ♀ 17歳 神僧 来世 異彩
a.よろしくお願いします。
銀煌人(ka01137)
Lv197 ♂ 32歳 武傀 来世 大衆
b.今年の出来事あれこれ。と、お菓子の意味あれこれ。
鬼頭貴一郎(ka01182)
Lv188 ♂ 17歳 忍僧 来世 大衆
 ほわいとでいですか‥‥色んな過ごし方がありますよねえ‥‥(まったり)
真実心志(kz00032)
♂ 22歳 忍傀 来世人