英気は鍋から!

担当 叶野山 結
出発2019/01/25
タイプ ショート C(Lv無制限) 日常
結果 成功
MVP グレース・マガミ(ka01643)
準MVP 湧口 瑞希(ka01873)
後藤 閃也(ka00825)





オープニング

◆やってきた現代
 寛永の時代から現代にやってきたギルドメンバー達。
 現代の世界に居た者達にとっては懐かしく、寛永の時代からやってきた者達には色々と物珍しいものばかりだ。
 しかし、浮かれてばかりはいられない。
 現代の世では巨大な猿として、豊臣秀吉が暴れ回っている。
 来世人にとっての故郷を、寛永の者にとっての未来の地を、これ以上壊される訳にはいかない。

登場キャラ

リプレイ

◆鍋だ! 準備だ!
 サバンナ・キャメロンに誘われて集まったギルドメンバー達。
 彼女が待っていた集会所では、既に鍋から湯気が立ち込めている。
 その集会所の前に、配送車が一台止まった。
 車から現れたのは、どこぞの業者のようだ。後部のドアを開け、箱に詰めた物を持ってくる。
 中で待っていたグレース・マガミがカードで支払いをして、箱を義娘のミネルバ・マガミが受け取る。
「届きましたー!」
 元気な声で報告をすれば、待っていた者達から歓声が上がる。
 急な鍋パーティーにもかかわらず、迅速な手配で注文してくれたグレース。資産家である彼女だから出来たことだ。
 箱の中身は霜降り肉だとか、鮮度がとても良さそうな野菜だとか、デザートに使えそうな果物だとか、牡蠣鍋セットだとか‥‥ようは、高級品な品々ばかりが入っていた。
 注文する前にグレースが皆に欲しい物を聞いた結果の品々なのだが、高級な物ばかりという辺りにグレースの資産家ぶりを感じられる。
 目を輝かせるメンバー達が、口々にグレースに御礼を言う。
 サバンナもまた、彼女に御礼を述べた。
「ありがとうございマス」
「いいのよ。せっかく現代に戻ってきたんですもの、大和人の子達にも楽しんでもらわなくちゃよねえ」
「わーい、サバンナさん、大好き☆」
「ありがとう。寛永にいた頃は意味なかったけど、戻ってきたら、この程度の支払いはカードでOKだから便利よねぇ」
 ミネルバに抱きつかれてまんざらでもない表情をするグレース。
 カードを使用したことで、改めて、寛永と現代の違いを実感するのだった。
 彼女の言葉に同意するようにうなずく、ミネルバと後藤 閃也
「寛永の暮らしは楽しかったですけど、食べ物に関しては、ちと辛かったですから‥‥」
 育ち盛りの女の子に、現代のような食事と異なる寛永での食事は少し辛いものがあったろう。粗食といっても差し支えない食事ぶりだったのだから。
 不満は無いが、食事の内容が違いすぎて本人的には少し辛かったというところだろう。
 元々体の弱かった閃也にしてみれば、床に臥せっていた時の食事とあまり変わらないので、彼は特に心配しているわけではなかったが。
 だが、寛永の世ではあまり食べられない高級な肉達。この現代で食せる事に幸せを感じ、思わず拝む。
 そして感じる。自分の体から緊張が抜けていくのを。
(一気に抜けた‥‥。はっ、もしかして、これを狙って?)
 決戦でミスしないようにする為にこうして集められたのか。
 などと考える彼をよそに、サバンナがペットボトルに入った飲み物を持ち上げて示す。
「お茶とかジュースとかありますが、皆さん、何にいたしマスか?」
「僕にはお茶をお願いします!」
「私はお酒を‥‥と思ったけど、せっかくだからお茶をいただこうかしら」
「はいっ! 私はジュースを! 現代に戻ったし、飲みたいです!」
 来世人組が懐かしさから即座に返答したのに対し、大和人の二人はどう返答すれば良いのかわからず困惑していた。
 魔神 極奴が、おそるおそる手を挙げる。
「ええと、それはお茶‥‥なのか?」
 彼がそう思うのも無理はない。寛永の世では、お茶を透明な物に入れる、というのが無いのだから。
 湧口 瑞希も、同じ事を考えたようで、大きくうなずく。
 それに答えたのは、ミネルバだ。
「大丈夫です。色んなお茶がありますが、どれも美味しいですよ」
 年も近い娘にそう言われて、顔を見合わせる二人。
 それから、サバンナに「お願いします」と告げて、紙コップにお茶を注いでもらう。
 サバンナはオレンジジュースを自分のコップに入れる。
 全員にいきわたったところで、年長者のグレースが乾杯の音頭をとった。
「それじゃあ、乾杯」
「乾杯!」
 コップの中の飲み物が、それぞれのコップにぶつかって少し揺らめいた。

◆具材を入れてぐつぐつと
 鍋に入れる順番として、まず固い物から入れて柔らかくするのが鉄則だ。
 人参、じゃがいもといった固い物が鍋に入っていく。それから、ネギとか白菜とかが入っていく。
 ネギや白菜など、水分を出す野菜を入れる事を想定して、鍋に張っていた水は少なめだ。
 蓋をせずにそのまま煮えるのを待ち、肉の準備をしておく。
 鍋につける調味料もいくつか用意がされており、サバンナがそれらを見せた事でまた大和人の二人が目を丸くした。
 たれを見て、「これを皿に入れて、そこに鍋の物を?!」と驚く二人に、来世人達は笑うでもなく穏やかに「そう」とうなずく。
 寛永の世では見ない、来世ならではの品々に、改めて寛永との違いを思い知る二人だった。
 たれを使う人、他の調味料を使う人、調味料をそもそも使わない、などなど。各自思い思いに自分の皿へ準備する。
「そろそろ良さそうだろ」
 閃也の言葉に、極奴がつまようじでじゃがいもや人参の硬さを確かめる。
 すっと入るぐらいに柔らかくなっており、「もういいな」とゴーサインを出した。
 瑞希が、サバンナから渡されたおたまを受け取り、各自の皿に入れていく。ステンレスのおたまを使い、おそるおそる入れていく様が微笑ましく、来世人達は笑顔で見つめていた。
 各々の皿に野菜が入ったのを見て、サバンナが霜降り肉を一枚ずつ入れていった。薄く切られたそのお肉は、照明に当てられて輝く。脂身すらもきらめいていた。
 今までのお肉とは全く異なる、高級だとわかるその肉に、誰もがごくりと唾を飲む。
 何枚か入れていき、焼けるのを待つ。
 白米を希望する者へ茶碗によそい、差し出す。
「いただきます」
 誰が言ったか、その言葉。連鎖するように続けられていく言葉とお辞儀。
 食事の始まりの言葉は、寛永の世でも現代でも変わらぬのだと、誰もが思う。
 身の引き締まった白菜、玉ねぎ、じゃがいもに人参。
 野菜のうまみと甘味が、口内を蹂躙する。
 寛永にて食べた野菜よりも甘い事に、瑞希と極奴は現代に来て何度目かの驚きを見せる。
「来世の野菜は甘いのですね」
「そうだな。しかし、小さな鍋で簡単な料理をこさえた事はあるが、皆で鍋を囲む事は無かったな」
 しみじみと、今の縁を実感しつつ、次の野菜を口に運ぶ。だし汁が口内で弾け飛び、思わずはふはふと忙しなく開閉を繰り返す。
 ほどよく色を変えたお肉が、サバンナの手によって皆へ行き渡る。
 たれや調味料をつけて美味しそうに頬張るグレースやミネルバを見た極奴が、感心したように胸中で呟いた。
(しかしグレースもミネルバも、見た目に似合わずよく食うなぁ‥‥これが肉食系女子というものか?)
 以前、来世人に教えられた言葉である肉食系女子という言葉を反芻する。
 あながち間違いではないのだが、今はそういう事にしておこう。
 新たに野菜をよそう瑞希が、目を輝かせながら言う。
「腹が減っては戦はできぬというもの。鬼秀吉を平らげる前祝いに、寛永で見かけぬ食材を食べ尽くしましょうぞ!」
「そんなに美味しかったんだな」
「‥‥け、決して珍しさに目が眩んだのではなく。来世の力を身に入れ戦いに備える為なのですっ」
 閃也に言われて、瑞希は顔を赤らめつつそう返す。
 その様もまた微笑ましく、皆鍋に夢中になって食べるのだった。

◆決戦前に各々の
 野菜や肉に舌鼓を打ち、ある程度お腹に収めたところでコンロの火を消す。
 締めとなるラーメンをグレースは鍋の中に入れると、皆を見回した。
「締めはもう少し後になってからにしましょう。その間に、そうね‥‥お話ししましょうか」
「いいデスね。皆さんの意気込みや芸などをみせていただきたいデス」
 サバンナも賛同し、言い出しっぺの自分からと口を開いた。
「では、意気込みを。鬼秀吉を倒し、今年こそ全国寺社仏閣全ての御朱印を集めマス!」
 後半はいつもの事なのでは? と思いつつも、今年こそ達成できるといいねとどこか生温かい視線が送られる。
 その視線に気付かないサバンナであったが、そこはそれ。
 「次の方、どうぞ」と促され、挙手したのは極奴。
「俺は秀吉を倒す為に来た。必ず勝つ!」
 鱗に覆われた左腕を見せつつ、拳を握り締めながら語った極奴。
 彼の意気込みを見て、グレースは頬に当てた手を離すと「次は私ね」と宣言した。
「意気込みねぇ。この玉を預かった以上は、きっちりと役目を果たして見せるわ。8人揃ったしね」
 手の甲に浮かんだ「礼」の文字を見せながら、おっとりと語る。
 さて、残るのは‥‥と、ミネルバと瑞希を見ると、二人は新たによそい始め、鍋に残っていた野菜類を皿に移していた。
 しっかり耳を傾けつつも、食欲は止まらないのだろう。苦笑したグレースが、サバンナに火をつけるよう頼み、コンロに再び火が点る。
 既に少しばかり、ラーメンの麺はほぐれていた。温度が下がり始めたお湯を再び温めていき、しっかりほぐれるのを待つ。
 興味津々に見つめてくる極奴と瑞希にもう少し待ってくださいとサバンナが諭す。
 下手すると顔を近づけそうだったので、鍋から少しだけ離れてもらう。
 締めが出来る前に、と挙手したのは閃也。
 彼が何を言い出すのかと見守る中、その口から発されたのは、意外な言葉だった。
「ブレイクダンスをやります!」
「大丈夫ですか? お腹いっぱいなのでは?」
「大丈夫!」
 ミネルバの心配に対し、自信満々に大丈夫と答える閃也。
 もともと、とても病弱そうに見える彼だ。それに、疲れると喀血してしまうというぐらいに体が弱かったはず。
 大丈夫なのだろうかと心配する皆をよそに、閃也は持ってきたスマートフォンの音楽アプリを起動する。
 流れ出てきたのは、ダンス用の音楽。軽快なリズム音は体を動かしやすくしており、閃也の動きを滑らかに動かす手伝いをしてくれる。
 最初はリズムに合わせて軽快に体を動かしてほぐしていく。
 タイミングを見計らい、上下を反転。頭部を畳にこすりつけながらくるりと回ってみせる。
 思わず拍手する極奴と瑞希。ミネルバも「おお‥‥」と思わず呟いた。
 その反転した上下から元に戻り、タップダンスを始める。
 初心者用のダンスであった為か、曲は長くなく、数分程の音楽に合わせて大きく畳を踏み鳴らし、動きが止まった。
 拍手と賛辞が送られ、閃也は照れくさそうに笑う。
 しかし、今になって揺り戻しが来たらしい。くらりと後ろに倒れ、目を回してしまった。
 瑞希の応急手当てにより、喀血自体はまぬがれたものの、彼が回復するまで横たえらせる事になった。
 少しばかり慌ただしい一面もあったが、鍋パーティーはつつがなく終わることが出来た。
 朝を迎えた集会所から出てきたメンバーに、サバンナが言う。
「決戦が終わったら、また鍋パーティーをやりたいデスね」
 その言葉に、同意したのは果たして何人か。

 空は青く、もうすぐ決戦だとは思えないほどに澄みきっていた。



 6
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参加者

b.踊ります!よろしくお願いします。
後藤閃也(ka00825)
Lv184 ♂ 17歳 神陰 来世 異彩
c.私が代金を持つから、皆もお高いものを頼んでいいわよ☆(←資産家)
グレース・マガミ(ka01643)
Lv195 ♀ 28歳 神傀 来世 麗人
a.わーい、サバンナさん、大好き☆
ミネルバ・マガミ(ka01851)
Lv237 ♀ 17歳 武流 来世 傾奇
c.グレースもミネルバもよく食うなぁ…(ジト目)
魔神極奴(ka01868)
Lv230 ♂ 17歳 武水 大和 異彩
a.寛永では食した事のないものも多そうですし、たっぷり頂き英気を養おうかと
湧口瑞希(ka01873)
Lv409 ♀ 19歳 武空 大和 異彩
 緊張をほぐしましょう!
サバンナ・キャメロン(kz00003)
♀ 18歳 神忍 来世人