ギルドに捕虜として保護されている人を食べぬ鬼たち。その鬼たちの解放を要求してきたという。
「場所は江戸の近郊にある山奥なんだが、そこへ人に見られないように全鬼を連れてこい、って内容だ。だが、こちらとしても、そんな一方的な要求は飲めず、まずは交渉をしようと逆に要求したわけだ」
ギルド職員だけで簡単に決められる内容ではないし、当然のことだろう。
「そうしたら、そこからぷつりと音信不通だ」
職員は肩を竦める。
「一方的過ぎるだろ? いや、要求は飲まれないこと前提でしてきたのかもしれないくらいだ」
先の会談といい四郎の目的はよくわからない。いや、会談でわかったことが無いわけではない。元々天草四郎時貞だった人間の身体に鬼が宿ったということ。その後、四郎は自分自身が何者か認識できずにいた。その為に実験を行なった、ともいう。答えは見つかったのか、というと、そうでもないらしい。彼自身、行きつく先は不透明なのだ。
「おや、
十人ちゃ‥いや、導師殿。どうした?」
そこへやって来たのは「来世人を導く導師」を自称する十人ちゃんである。
「くっ‥わらわの‥‥わらわの神眼が疼くのじゃっ!」
ああ、いつものやつか。右目を押さえ声を絞り出す。
「い、いかん、サンタが‥いや三太が危ないのじゃ!!」
違う、中二病的なやつではない。その表情は深刻にして、その声色はシリアス。
「三太が襲われておる。急ぐのじゃァァァ!」
悲痛な少女の叫びだ。それを聞いて動かぬわけにはいかない。すぐに八咫烏で三太のいる安房国の山奥へ向かわねばならないだろう。
◆サン劇を防げ
十人の叫びを聞き、八咫烏で安房へと向かった急造三太救助隊。
辿り着きしは安房国の山中にある神社。以前、三太老人と出会った場所だ。
「おお、来世の!」
「ギギッ!? まーさか来世人! こんなに早くお出ましとは、やはりやはり、我が主命の通り、この爺を始末せねば」
三太は確かに襲われていた。そして、その犯人は、かつて戦った鬼将・
黒田官兵衛である。
「おお、すまんな。わしひとりのところを狙われてのう‥‥」
前回、三太と一緒にいた神様たちはどうやらいないらしい。その辺りは官兵衛が周到だったということだろうか。
「キキキッ、来世人が来ようがかまいませ~ん。さっさと始末してあげましょう」
ヤる気の官兵衛。だが、彼自身は動かない。その代り‥‥空を埋め尽くすような黒。
「妖怪烏!」
そう、来世人には馴染みの妖怪烏。だが、ちょっとおかしい。
数が多いのはともかくとして、動きが異様だ。
「あれじゃあ、まるで航空機の編隊じゃないか!」
誰かが叫んだ。
そう、その動きは正に編隊。無数の妖怪烏がいくつもの編隊を組んで恐ろしく統一された動きで飛行している。これは、官兵衛が何らかの手段を使った可能性が高い。
こんなものに波状攻撃を仕掛けられたら防ぎきれないかもしれない。
更に。
「何か、揺れなかったか?」
地下に何か‥‥いる?
今、何かが見えた。一瞬、地上に出てきた多足の何か。恐ろしくデカイ。大百足の類だろう。それも複数いるに違いない。
敵は、上と下。空と地下から攻撃を仕掛けてくるのだ。
そして、不気味に戦況を見守る官兵衛。鬼武者たちのように多角的に情報を得られる眼を持っているようであり、化身どもに指示を出している可能性もある。毒や睡眠を誘う魔法を使うらしくそれも厄介だ。
こんな状況の中で、三太を守り切ることが出来るだろうか!?
◆シ戦の先に
いざ、安房へ、と三太救助隊が向かった直後だ。
「た、大変だぁー! 今、庭から縁側に‥‥っ」
ギルド職員の声が聞こえる。それを聞き駆けつけるギルド内にいた者たち。
ギルドは江戸屋敷風に作られた建物で、割といい感じの庭に、落ち着いた縁側‥‥そこに立つのは‥‥。
「天草‥四郎‥‥!」
奴が、いる。
一体、何のために!?
「捕虜を奪い返しにきたのか!?」
「お茶を飲みに‥‥ってわけじゃなさそうだよなぁ」
目的はわからない、だが、四郎は今にも屋敷内に乗り込んできそうな勢いだ。歴戦の来世人などは見れば解る。彼がいつでもその刃を抜刀できるような気配を放っていることを。
これは‥‥『襲撃』その文字が来世人たちの脳裏に浮かぶ。
そして、更に。
『その前にお主らにはやるべき事があるはずじゃ‥‥そう、天草四郎との決着じゃよ』
今、ピンチに陥っている三太老人の言葉が浮かぶ。ここが、四郎との決着の場だというのだろうか!?
その頃、ギルドの地下では‥‥。
「今、ぎるどの人は何ていってたんだい?」
「あまくさ‥? しろう。四郎様がいらしている?」
ギルドの上の方が騒がしい。それに捕虜の鬼たちが気付く。このご時世、そんなに防音がしっかりしているわけではないのだ。
もし、彼らが、四郎がギルドを襲撃してきたことを知れば、一体、どう動くだろうか?
その対処にも追われることになるだろう。
「なんじゃなんじゃいったい!?」
神眼の疼きが収まったのか、十人はギルド内での騒ぎに反応する。
「ああ、十人ちゃん、そっちへ行っちゃダメだ!」
止めるギルド職員。当然そちらには四郎がいるのだ。
「じゃが、わらわは導師! 導かねばならなぬ!」
職員を振り切り勇ましく向かう十人。来世人を導くと言っていたが、実際のところどうなのだろうか? 四郎同様、彼女も謎が多過ぎる。
「ほう‥‥」
来世人と対峙していた四郎がふと自らの右手の甲を一瞥する。よく見れば、何か鈍く光っているのだろうか?
「‥‥」
四郎はそれ以上は語らない。
だが、ここで、何かが起きようとしている。
導かれしは‥‥人か、鬼か。
化身
翼ある影・多足の影・多足の影
選択肢
a.対四郎:前衛 | b.対四郎:後衛 |
c.捕虜鬼対応 | d.化身戦前衛 |
e.化身戦後衛 | f.対官兵衛 |
g.三太の護衛 | z.その他・未選択 |
マスターより
本シナリオは、世界の歴史を動かす可能性を秘めた企画『RealTimeEvent【SenkitaHistory15】』のグランドシナリオになります。
詳しくは、シナリオページの『シナリオって何?』の『グランド』の項をご参照ください。
なお得られる化身知識は3種のみですのでご了承ください。
皆さん、愛してま~す!
今回のグラシナはこのK次郎がドカンと執筆します。
◆選択肢補足
以下を参照。
a、対四郎:前衛
四郎の目的は捕虜の奪還なのか、それとも別にあるのかはっきりはしませんが、どうにも戦いは避けられそうにも無い気配です。こちらは前衛で四郎と直接渡り合うことになるでしょう。
強烈な抜刀術を使い、鬼としての純粋なタフネスの高さと戦闘力でかなりの強敵です。
b、対四郎:支援
四郎と真っ向から渡り合う仲間のサポートをします。
回復や補助魔法、四郎に対する搦め手での攻撃など様々な選択肢があるでしょう。
c、捕虜鬼対応
ギルドの地下で保護している人を喰わない鬼たちの対応です。
上で何か騒ぎが起きているのと、四郎がやってきた、ということに気付きつつあります。
様子を見るに、四郎が来ることは知らなかったようです。四郎は【伝心】でこの件を伝えてなかったのかもしれません。
いずれにせよ、来世人と四郎が戦っているのを知れば、何か行動を起こすかもしれません。彼らにも対処は必要でしょう。
d、化身戦前衛
三太を守るため、官兵衛の率いた空と地下の敵に対処します。
上と下に注意が分散するためかなり厄介な戦いになるでしょう。敵を倒すのも大事ですが、三太が巻き込まれて始末されてしまったら元も子もないので気を付けましょう。
e、化身戦支援
三太を守るため、官兵衛の率いた敵とぶつかる仲間をサポートします。
敵の攻撃が組織的、かつ変則的なため、支援の効果が重要になるでしょう。
f、対官兵衛
三太襲撃の主犯ではあるものの、直接動く気配はありません。ですが、蟲毒波、睡魔波を使うのを確認されている他、浄天眼や千里眼を使い戦況を有利に進めようとするかもしれません。恐らくは化身への指示も出しているでしょう。
かつての戦いで、頭巾の下の角が7本確認され、その際に1本を折っています。現在、頭巾の下がどうなっているかは不明です。
g、三太の護衛
とにかく三太を守ります。どれだけ戦況で押しても、三太が倒されてしまえば元も子もありません。
しかも三太は「見届けねばならぬ」とこの場を離れる気は無いようです。
以上。
因みに、ギルドも安房国も寒さ対策が必要なほどではありません。
それでは皆さんの参加を‥‥俺は待ってるぜ!