だが、その時には既に、鬼達は来世人らの裏をかいていた。
その日の深夜、往生寺に隠されていた観音菩薩像と、駒弓神社に隠されていた勢至菩薩像を、大量に押し寄せた鬼達によって強襲――強奪されてしまう。
「見張り交代だよ。お疲れ様、明日に備えてゆっくり休んでね」
同刻――善光寺本殿の秘仏、阿弥陀如来像を警護する来世人らに声をかけたのは、来世人ギルドの安桜 真琴だった。
「あれ、真琴一人か? 見張りは複数でって事じゃなかったっけ?」
「ん。そうなんだけど、本殿より、鬼が攻めて来る可能性のある境内やお寺の周囲の警戒を厚くした方がいいでしょ?」
今丁度夜食の差し入れがあって、それを食べてからすぐこちらに来る人員もいるから大丈夫だと真琴が笑う。
「私もおにぎり作ったから、良かったら食べてね!」
「それはちょっと……」
「えーー、何でぇー?」
他愛ない談笑を終えて、仲間の背を見送る真琴。
その直後だった。彼女が一人になったのを見計らったように、本殿に足を踏み入れる影が一つあった。
「……華蓮さん?」
穏やかに微笑む華蓮の姿に、刀に手をかけていた真琴の表情がほっとやわらぐ。
こんな時間にどうして、と続けようとした真琴の身体を、次の瞬間、引き裂くような痛みが襲った。
「……ッ!?」
完全に、油断していた。
続けざまに襲った蹴りが腹を強打し、強烈な吐き気と共に意識が遠退く。
容赦なく真琴を襲う華蓮の手には――人為らざる証、鬼の鋭い爪がぎらついていた。
「――うふふ、完全に騙されてくれたわね。お馬鹿な来世人さん?」
瀕死の真琴を見下ろし、華蓮がくすくすと笑う。
「いろいろと苦労したのよ、疑われないようにしながら、信頼を勝ち取るのは」
変装を解いた女鬼将――井伊直虎は、動かぬ彼女に向け、楽しげに語り始める。
わざと鬼に襲われたのも、親しくしようと努めたのも、――鬼の罠へ導いた事も、全ては策略だったのだと。
そして来世人の仲間であるという立場で照元から秘密を聞きだした直後、すぐさま御本尊を奪うよう動いたのだと。
「ここに、秀吉様の言う重要な秘伝があるのはわかっていたの。でも、絶対秘仏は目くらましじゃないかと思ってたのよね。……その予想は正解だったわ。その真相を聞き出すため、いろいろ演出したってわけ。さあ、秘仏が全部揃ったわ。あとはこれを『逆転』させるだけ」
「……ッ鬼がどうして、こんなところに!?」
直虎が秘仏の安置場所に入り、像を手に取った瞬間、異変に気付いた来世人達が本殿にかけつけた。
「ふふ、間抜けな来世人様。これは頂いていくわ。――陰封殺(いんぷうさつ)!」
「……っ!!」
直虎から放たれた真っ黒なオーラに、来世人らの視界が阻まれる。
そのまま消え去っていった女鬼の姿に、残された一行は立ち尽くすしかなかった。
直後、残りの二つの像も奪われてしまったという報が入り、暫しの間、誰も言葉を放つ事が出来なかった。
◆照元の策
あっという間に、すべての秘仏が奪われてしまった事に、絶望する来世人達。
面目がないと項垂れる彼らに、照元が声をかける。
「心配ない。あの阿弥陀如来は前立本尊の1つに過ぎぬ」
「ぜんりつ……、模造品、ってこと?」
来世人の一人がそう返せば、照元がゆっくり頷きを返した。
「再びだましたようですまぬがな、どうせ善光寺を守るなら、真実を告げなくとも良いと思ったのじゃよ」
本当の本尊は、まさにこの場所の地下にあるのだと彼は続ける。
「もし、鬼めらが何かせんと企んでおるなら、すぐに阿弥陀如来が模造品だと気づくじゃろう」
そうなれば、今度こそ鬼は総力をあげてこの場所を攻めてくるだろう。
「なら、こちらもすぐに態勢を整えよう」
このままやられっぱなしで終わる来世人ではない。
武器を握り締めた面々は、早速作戦会議にとりかかったのだった。
一方、直虎は富士ノ塔砦にて、秘仏を並べてとある儀式を行なおうとしていた。
「……これは、偽物か……」
びしり、と直虎の手に握られた阿弥陀如来にヒビが入る。
その表情は、怒りに染まり、酷く歪んでいた。
「――やられた。このままじゃ完全な『逆転』は行えない。……直政!」
「おう、出番かオフクロォ」
「ええ、遊びは終わりよ。残り一つの像を奪還――来世人は殺りつくして構わないわ」
巨漢の赤鬼、直政が歓喜に吠える。
今、善光寺を巡る最後の戦いが始まろうとしていた。
◆いざ、全面対決
「鬼無里の忍びさん達が全面協力してくれたおかげで、鬼の動きがわかったよ」
早朝、怪我をおして仲間らの前に姿を見せた真琴が、短時間で集めた情報を説明していく。
「華蓮――じゃなく、鬼将直虎ね、この鬼は富士ノ塔砦にこもってる」
まだ砦の機能を十分に残した場所。そこで直虎は何かを企んでいる様子であり、絶対に阻止しなければならないだろう。
「大峰城には漆黒女呪鬼の安見児(やすみこ)。こっちは不気味なぐらい動きがないんだって」
恐らく、鬼の残党を蓄えて、こちらの様子を伺っているのだろうと真琴が続ける。
機が熟せば、一気に脅威になりかねない。
「あと、直政の軍勢は、真っ直ぐここを攻めてくるだろうって」
おそらく大峰城は、直政の動きに合わせて動く可能性が高いだろうとの予想である。
「敵があっちから来てくれるなら、こっちは迎え撃つだけだよね!」
私達に出来ない事なんてないと力強く笑った真琴は、戦闘に向かう来世人らに向けて、高らかな声援を送った。
化身
二足の影・二足の影・二足の影
選択肢
a.善光寺戦闘 | b.善光寺防衛 |
c.直政対策 | d.大峰城対策 |
e.富士ノ塔砦攻略 | f.直虎と対峙 |
g.直虎・戦闘支援 | z.その他・未選択 |
マスターより
こんにちは、灯弥です。
さて、善光寺の決戦――いよいよ佳境の戦いです。
残念ながら、今までの経過は余り芳しくなく、今回の戦いは今までの戦いの中で最も失敗の確率が高い戦いになる事が予測されます。
気合いいれて行きましょう!!
◆行動選択
a、善光寺戦闘
直政率いる鬼の軍勢を迎え撃ち、戦闘を主に担います。
他選択肢の作戦や人手によっては、この選択肢が最も過酷な戦闘になるでしょう。
b、善光寺防衛
敵の狙いである阿弥陀如来像の防衛、警護、及び善光寺そのものと、非戦闘要員の保護や避難誘導にあたります。
味方の選択や状況によっては、戦闘となる可能性も十分に考えられます。
c、直政対策
鬼将、直政を狙います。
直政自体もかなりの腕前の手勢を引き連れているようです。
d、大峰城対策
現在は動きのない、大峰城に布陣する漆黒女呪鬼の安見児(やすみこ)の対策にあたります。
尚、この場には多くの鬼の残党が集結しているという情報が入っています。
e、富士ノ塔砦攻略
女鬼将、直虎が根城にしている砦へ向かい、潜入します。
ここで上手く戦力を削る事が出来たら、fの選択肢の仲間に有利になります。
f、直虎と戦闘
女鬼将、直虎の元へ向かいます。
何を企んでいるのか、今のところ詳細は不明であり、敵の能力も未知数です。
g、直虎・戦闘支援
女鬼将、直虎への戦闘支援を行います。
また、直虎が持っているであろう二つの像の捜索も行います。
なお、得られる化身知識は代表的な3種のみとなります
それでは、皆様のプレイングを楽しみにお待ちしております。