巨体を震わせ何事かを叫ぶ『それ』は、見覚えのある形をしていた。
「くりすますツリーが動いた!? しかも人を襲おうとしてるって!?」
人外の対処はお手の物――あらゆる化身の情報が集まる来世人ギルドの面々ですら、飛び込んだその話に目を瞬いた。
江戸の郊外に突如現れた季節外れの巨大くりすますツリーが出現し、暴れながら江戸へ向かっているのだという。
いったいどういうことなのか――とにかく、例にないほど巨大な相手だ。ギルドは、偵察や避難、情報収集の先発隊を組織し、残る来世人には万全の準備を依頼した。
――そして。
「モミモミモミィ! モミィ!!」
「うわぁ……ほんとにツリーが動いてる」
続く討伐隊となる、あなたがた来世人一行。辿り着いた現場では、先に対処に回っていた安桜 真琴らが大和人達の避難誘導にあたっていた。
「あっ! 良いところに来てくれたね! あのツリーなんだけど――」
彼女が指さした先には、情報通り巨大なモミの木が……
「モミモミィ……」
「何か変態チックな鳴き声だな……」
「そもそもモミの木って喋ったっけ?」
けれど俺達来世人、モミの木に顔が出て動き出すぐらいで驚いたりはしない。なんやかんやそういう事もあるだろう。長い人生だし。
「フォッフォッ……モミッ」
「何か悪役っぽい笑い方してるしぃ」
どうやら霜月祭で使用した巨大ツリーが付喪神化して意思を持ってしまったらしいのだと真琴が説明を加える。
「医王寺の和尚さんから聞いた情報によるとね、人々の想いを多く集めておきながら、正しい供養がされず野放しにされたせいで歪んだ法力が溜まって動きだしちゃったんじゃないかって。でも、くりすますツリーなんて、もともと来世ベースの文化だから、どんな供養をしたら鎮められるかは和尚さんにも見当がつかないんだって」
「供養……か、そういや霜月祭後のモミの木がどうなったかって知らねぇなぁ」
何が原因にせよ、その脅威は計り知れず、放っておけば江戸の町が壊滅してしまう。
「ちょっと可哀相だけど、倒すしかないね。行くよ皆!」
かくして、戦いは始まった――。
のだが。
「やばい。めっちゃ強い。めっちゃ強い」
「敵多過ぎ! 何あの丸いの!? あとツリーでかすぎ! 一撃重すぎ!」
一斉に攻撃を仕掛けたにも関わらず、その巨体には歯が立たず、来世人らは一旦物陰へと避難していた。
頭上では、くっ、力が抑えきれないモミ……とか何とか聞こえてくる。微妙に変な人格が宿ってしまったらしいモミさんにツッコミ入れる事すらままならない力量差だ。人生って不条理。
モミの木から繰り出される枝のパンチは地面に穴をあける程の破壊力だし、飛ばされるモミボックリはまるでマシンガンか何かのような威力で、当たった時の事など考えたくもない。
さらに、モミの木には配下がいた‥‥というか、赤と青のキジムナーがたくさん、木の枝に連なっていた。木に宿るとも言われるキジムナーだから、この組み合わせはアリなのかもしれないが‥‥見た目だけなら可愛いツリー飾りみたいなものだし。
しかし、こいつらも凶悪だった。炎を吐いたり氷を放ったりと厄介この上なく、人は襲うわ民家を燃やそうとするわタチも悪く、何より数が多い。
このままでは、この脅威を食い止められない。
「皆の想いが集まってるんだもんなぁ……」
「供養か……供養ってどんな事したらいいのかなぁ?」
このまま為す術もなく江戸が壊されるところを見ているだけしかないのか――来世人らの顔に焦りが見え始めたその時だった。
「悪い子はいねぇがぁーーー」
「立て込んでる時にめんどくせぇのが来たな……!」
ああでもないこうでもないと話し合いをする来世人らの前に現れたるは通りすがりのなまはげさん達。
ぞろぞろいる。どっから現れたというのだろう。
「泣く子はいねがぁあーーー」
「いやぁああああおっかぁあ」
後方では巨大モミの木がずしんずしんと辺りを揺らし、前方では怯える子供達をなまはげが追いかけている。こんな中だったらどんなにメンタル強い子でも泣くに決まってる。
そんな中、来世人らの姿を見付けたなまはげさんは、ツリーを見上げては呆れたように話しかけて来た。
「おめらがハンパな仕事しでっがらこんなこどになんだどー。反省しろー」
と、なまはげさん。
「それはそうなんだけどぉ、攻撃が全然通じないの! すっごい強いの!」
「ファンシーなモミの木にほんのり厨二臭する決め台詞吐かれながらぼこぼこにされた俺達の気持ちわかる!?」
来世人らの言葉に協議を始めるなまはげさん達。
曰く、子供達の夢や希望を集めるために作られた象徴だったのだから、立ち向かう来世人が、子供らから強い想いや応援を受ければ、ツリーの歪んだ法力は弱まり攻撃が通用するだろうと。
「強い想いや応援を受けるってど、んな事したらいいの?」
「あー、あれは? ヒーロー物とか……魔法少女とか、ああいうノリで戦いながら江戸の子供達に応援して貰う感じでー」
モミの木の台詞を見るに、ちょっと厨二臭いモミのようなので、そうしたバトルを演出して子供たちに見てもらえば、いいカンジに盛り上がるんじゃないかと数人が頷く。
「んー……そういう事ならこれ、何かの役に立つかなぁ?」
真琴が取り出したのは、蜘蛛次郎に貰った例の金平糖だ。
「金平糖の中にね、明らかに色がおかしいのがいくつかあったから避けてたんだけど」
その後、ギルド(の物好き)が実験的に使用してみた結果、このアヤしい金平糖の効果は『食べた者は全長が約10倍になったかのような幻影を纏う』事なのだと判明した。しかも、機巧の操縦中ならば、食べた者ではなく機巧のほうが10倍に巨大化したかのような幻影を纏うというのだ。なお、10分でこれら効果は切れるという。
あれはびっくりしたと語り出す真琴の話はさておき、これを上手く使えば巨大化ヒーロー物や巨大機巧も再現出来るかもしれない。
「本体そのものがでかくなる訳じゃないんだよな?」
そう、あくまで幻影は幻影。幻影を纏った本人は、内部(足元)からぼんやりと自身の幻影を把握できるらしいので‥‥
「だから本体さんは幻影が上手くツリーに当たるように位置調整して素振りしてもらってー、……ちょっと難しいかもしれないけどね」
「あー、まあ確かに子供は巨大怪獣同士の戦いって興奮するかもな……」
金平糖の数は多くはないが、今回の作戦遂行人数分にはぎりぎり足りるだろう。
ヒーロー達がいかに巨大怪獣合戦へと流れを持っていくかが勝利の鍵ではないかとか何とかかんとか。
「よーーーし、そういうごどなら、おら達もガキども喜ばせる為に協力すっどーー!!」
と主張するなまはげさん達が張り切って子供達を追いかけ始める。どう見ても逆効果です本当にry。
「うわあああん怖いよぉおおお」
「泣く子は悪い子だがぁーーーーー」
お前が追いかけるから泣くんだよ! というツッコミはひたむきななまはげさんには通用しない。
その主張はさながらモンペ。社会現象は戦国の世にも降り立った。
子供びびる泣く、なまはげ怒る、子供びびる泣く、なまはげ激おこ、これではキリが無い。
あのなまはげ達も何とかしなければいけないだろう。
「子供達が喜ぶかぁ……。んーと……子供達に力を貰って技を出す感じにしたらどう? ほら、あれみたいな、元気だm」
「それ以上はいけない!」
危うく社会的に消されるところである。寸でのところで真琴の口を塞いだ彼は勇者の称号をお与えします。
「イーーーッ!!!」
「イイーーー!!!!」
なまはげに気をとられているうちに、キジムナーらが接近してきては謎の雄叫びをあげる。
際どい感じの掛け声の所為で彼らが某番組の何かに見えてくるような……?
とは言え油断大敵である。配下(?)共々その破壊力は凄まじく、このままでは江戸の町が荒野と化してしまうだろう。
行け来世人! 愛する江戸を守る為、立ち上がるのだ!!
化身
蠢く影・蠢く影・二足の影
選択肢
a.ツリー弱体化 | b.アッー!ハズレ! |
c.ツリー戦闘 | d.なまはげ説得 |
e.キジムナー攻略 | f.火炎・避難対策 |
g.子供達を励ます会 | z.その他・未選択 |
マスターより
本シナリオは、世界の歴史を動かす可能性を秘めた企画『RealTimeEvent【SenkitaHistory09】業に流され東へ西へ』のグランドシナリオになります。
詳しくは、シナリオページの『シナリオって何?』の『グランド』の項をご参照ください。
なお得られる化身知識は3種のみですのでご了承ください。
◆緊急指令
江戸に現れた巨大ツリーを討伐せよ。
そんな訳で灯弥ですこんにちは、宜しくお願い致します。
大切なのはノリと勢い。後は任せておいて下さい。
◆補足説明
大体OPにある通りの事情です。
a、ツリー弱体化
・なりきり編
巨大ツリーを弱らせます。
クモカマ様の金平糖の力で自身の巨大な幻影を纏う事が出来ます。機巧を操作中であれば、それらが巨大化します(幻影だけど)。
これを有効活用し、子供が喜びそうな演出をし、子供たちの応援を集めてください。夢や希望にあふれた僕の私の考えたさいきょうのヒーローを募集中!
これが成功しないとツリーに勝つ事はほぼ不可能でしょう。
詳しくはOPを参照して下さい。
演出が派手でいっちゃってる程喜びます。私も。
b、アッー!ハズレ!
因みに金平糖には外れが混じっており、外れを引いた場合抗えぬ脱衣衝動にかられるそうです。
うっかり(笑)ハズレを引いたあなたは、10分間脱衣衝動にかられます。なお、それはそれとしてちゃんと巨大化した幻影も纏います。うわあ‥‥よい子に見せられない‥‥
なお、本体の体を他人の手で覆い隠しても、幻影のほうは露出したままです。ちゃんと「装備」したものだけが幻影に反映されます。
‥‥ここだけの話ですが、この金平糖効果は本体が意識を失うと終了します。ってことは‥‥
リスクの無い賭けなどないのだ……後はわかるな?
c、ツリー戦闘
弱らせるのは勇者に任せて、強敵モミの木マンと戦います。
めっちゃ強いです。すごい強いです。
d、なまはげ説得
江戸の町に舞い降りたモンペ……心優しい爺ちゃんのお相手です。
説得や気を惹く方法は話術でも物理でも構いません。
子供達が泣いている間はツリーに勝つ事は出来ないでしょう。
皆の選択が江戸の町を守るんだょ……。
e、キジムナー攻略
・キジムナー(赤)
ツリーの精改め悪の構成員(赤)との対決です。
火刑大好き。燃えそうなものが大好きな子です。すでにあちこち火事を引き起こしてもいます。
かなりの数がおりますので油断はなされぬよう。
・キジムナー(青)
ツリーの精改め悪の構成(略)
枝の上でまったりするのも好きですが、人を凍えさせるのも大好きです。
こちらもかなりの数がおります。
f、火炎・避難対策
ツリーやキジムナーの脅威から江戸の町を守ります。
避難誘導、火災消火をしないと大和人に大きな被害が出るでしょう。
g、子供達を励ます会
怯える子供達を元気付けたり避難誘導をしたり。
子供の安全確保はもちろんですが、来世人に子供たちの想いを集めるのも大事なので、そちらもお願いします。
なまはげ(モンペ)が邪魔に入ると中々骨がおれるかもしれません。
発想に捕らわれず様々な戦い方を推奨します。
行くのだ来世人! 皆の明日は君たちにかかっている!
そんな訳で、皆さまのプレイング楽しみにお待ちしております!