【SH07】高野山・秋ノ陣

担当 黒鳥
出発2016/10/16
タイプ グランド A(Lv250以下) 冒険
結果 成功
MVP 鈴城透哉(ka00401)
MVS 溢田純子(ka01629)





オープニング

◆高野山ノ儀式
 寛永16年、晩秋が近付く頃。
 熊野本宮大社のほか、いくつかの神社が破壊され。生石神社で相対した赤鬼もまた死ぬ間際、「封印解かれた」との意味深な言葉を残したが。
「「‥‥ッ!」」
 それを詳しく調べる前に。紀伊国の各所より合流した鬼どもが、高野山への侵攻を再開したとの報告もあり。
「来世人様、ここからが本番でございまする」

登場キャラ

リプレイ

◆幸村との対峙
 大儀式。奥之院萬燈会の完成を、目前に控えた高野山――。
 その秋夜に輝く、月明かりがもと。
「邪魔する奴ァ、斬り刻んでやるぜェ!」
 鬼軍団の半数とともに。鬼真田あるいは鬼幸村こと、真田 幸村は侵攻し続け。
(あの気性では、目的を遂げるまで退くことはないやろう。止めるには鬼幸村を倒すか、他の全てを倒してしまうかや)
 中の橋にて。本格的に対峙した幸村本人と、赤鬼構成の幸村隊を前にし。
 一歩下がった位置から、潤賀 清十郎は‥‥思考。
(目的の忖度より‥‥此処に留めることが大切。そのためにできるだけ長く、立ち塞がり続けんとね)
 ひとまずの方針、それを決めるなかで。
「突然、こんなところに連れて来て。僕に力を貸して‥‥って、一体どういうことなのかしら、もう!」
 彼をサポートする、溢田 純子も。
 プンスコするものの、やはりは戦うことに決めたらしく。
(真田鬼には、ウチの娘‥‥アンカが殺されかけているからね)
 藤枝 藤花もまた。幸村へ対する感情を、胸の内に秘めつつ。
「上手くいくかは――さておき。意表はつけるかもなのです」
 すぐ後ろにて。
 クマー(熊)に大蝦蟇、豹といった野獣三体を連れた愛娘。藤枝 杏花をチラ見。
「ここは‥‥桜花とも協力して。来世人は決して侮れない存在であることを教えてあげないとね」
 という、改めての決意をもって。目の前の敵に向き合うと。
「やる気は充分、いつでもいけます」
 藤花の、もう一人の娘。藤枝 桜花が頷き。
(斬撃を上中下と散らして、隙あらば角に本気の一撃を――)
 幸村に斬り掛かる隙、または何かしらの機会を窺う‥‥その傍らでは。
「‥‥桜花」
 上級の斬鉄ノ太刀、それの効果を。黒岩 綜哲が言葉短く。
 彼女の持つ、鬼切の大太刀に付与し終え。
「俺の身体と命で、どれだけ足止めできるかは分からないが。せいぜいハデに斬り合おうじゃねえか!」
 またも同じように。幸村の隙を狙い、得物を手に身構えた吉弘 龍重や。
「正義を司る者としての本気、見せてあげましょう!」
 奥之院に並ぶ各燈籠と、足元に置いたLEDランタンに照らされながら。
 来世人である以前に、自分らしく。雄々しくも気合を入れた大門 豊に続き。
「みんな、夢で見た未来単語は『神回避』よ。参考にしてね♪」
 タチアナ・クヴァルも戦闘に備えての。三尸占術による予知夢内容を伝えたのち。
「大門静、いきます!」
 機巧操法と風ノ秘伎法の魔法二種を併用、『デルタクロス』と名付けた鷹機巧を飛ばす大門 静ら。
 同じ役割の面々とともに。自らも配置についての、後方支援を開始した。

 引き続き、中の橋。
「後ろから回り込んでくるぞォ、迎え撃てェ!」
「「幸村サマノタメニ!」」
 幸村が浄天眼という――まるで真上から一望するかのように、広範囲を視覚できる特殊能力。それを使い、視認した来世人の位置情報を。
 幸村隊の各自に伝える、その侵攻方向にて。
(前の時、神がかっていたという‥‥その避け方。初めから使わんかったのは、使用が限られとうからかもしれん)
 先の敗戦を教訓に、清十郎が幸村能力の推測をし。
(それらを使わせてからが本当の勝負やね。加速術のお蔭で移動には差し支えないし、早めに鬼幸村の術‥‥使わせてみせるよ)
 いくつかの思惑はあるも。自身の役割、皆の援護を忘れず。
 ひとまずの上級、猿飛ノ術を成就すると。
「っしゃぁー来いよ幸村ァ! こないだは後れをとっちまったけど、てめぇの手は見切ってんだよ! その手は桑名の焼き蛤(はまぐり)だ!」
 近付く幸村へ。不知火 焔羅は賑やかしくも挑発行動を開始。
「おしーリ、ぺんぺん! ここまでおいでーだ! 来ねぇならこっちから行くまでよ!」
「‥‥あァ?」
 そうした態度や言葉に少し、幸村がイラッとした表情を浮かべたのを見てか。
「あーもう、しょうがないわね。あんたがやりたいことやれるように、あたしも頑張るわよ」
 尻拭いをする羽目になりそうと、あきれながら。
 神宮寺 咲夜も得物を手に身構え。
「奥には絶対進ませないし、前にも言ったけど‥‥これ以上人を襲うなら。あたしが倒してやるから!」
 一方で。東雲 渓も負けじと、橋前に陣取っての啖呵を切り。
(さて、後方の大鬼隊が到着するまでに。大将首取らないとまずいわね――)
 同時に冷静な思考をもって、敵の行く手に立ち塞がる‥‥そんな行動に合わせ。
「いつの間に渓の奴、幸村に啖呵切ってたんだ? とにかく、渓の援護に回らねえと!」
「ああ、それに。鬼将の所業に腹を立ててるのは俺らも同じだからな」
 渓を守るべく、東雲 燎東雲 凪の二人が。その隣側へ並び。
「‥‥ここが勝負の時、だね‥‥」
「うん。勝つか負けるか‥‥幸村さんとの、勝負の時!」
 あとから。
 栄相 サイワ栄相 セイワの姉妹が続き。
(藤枝が戦いやすいよう、中反閇道術の結界を‥‥)
 さらに続いて、ヤズゥン・ディガらが各自に。いくつかの魔法を成就したところで。
「いいね、これだから殺し合いはやめられねェ!」
 戦闘好きに加えての殺戮好き、その心に火が点いたのか。
 幸村は喜々として、来世人集団の中へ単独突入――。
「オラオラァ! 弘翁の首を頂く前にィ、少し遊んでやるぜェ!」
「――ッ!」
 龍重の投げた焼夷の焙烙玉、それの爆風を無傷で抜け。最初の標的とした桜花の身体へ‥‥爪のごとき得物を突き刺した。

◆幸村隊と大鬼隊
 と、幸村が単独突入する少し前――。
 御廟の橋、そこの一画では。
「それでは‥‥弓隊の方々、ご助力を願います」
「「――承知」」
 鬼軍団の接近に備え。遠野 絃瑞が、弓矢持ちの僧兵らに協力を要請。
 布陣を済ませるとともに、彼らの指揮に務めると。
「‥‥細縄、仕掛けてきます」
 玄武水帝占術を成就し‥‥橋下の川中各所に、簡単な罠を設置してくるという羽柴 司の姿を見送りつつ。
(千絵さんも、どうか‥‥ご無事で。この戦が終わったら、美しい燈籠の光を共に眺めとう存じます)
 絃瑞は、今この時も。高野山のどこかで戦っているであろう妻を思い。
「皆様、頼りにしております」
 そのためにもと、己や仲間を信じての現状待機をし。
(何もかもが強い鬼幸村‥‥わたしにできることは少ないけれど。絶対に、この先には行かせません)
 また――御廟の橋と中の橋、その中間付近にて。
 水上 澄香も改めて、激戦に向けての覚悟を決めたらしく。
(‥‥他人に無理やり、命をかけさせるなんて酷いことです。でも‥‥多くの人を死なせないために、今ためらうわけにはいきません)
 自ら予定する、これからの行動に彼女が。心を痛めながらも、その準備を整えるなか。
(地中は、居心地いい‥‥)
 そうした小冷 煌尚も事前に。上級の土遁ノ術と小反閇道術を成就。
 できるだけ広く、地上近辺の地中を移動し。澄香作戦の一翼を担っており。
「絶対通さないよ! 多数で通ろうとしても‥‥弓の代わりに、水龍で押し返すんだから!」
 同じく、橋と橋の中間地点。
 奥之院を背にした中の橋手前でも。雷上動の和弓を携えた霧ヶ峰 えあ子が、気合充分との配置につき。
「「――!」」
 ところ変わって、幸村どもの後ろ側。一の橋と中の橋、その中間では。
(俺も‥‥援護に集中し。敵を足止めしよう)
 上級の土遁ノ術、それの潜航能力などを用いて。大狼 忍が静かに地中を進み、幸村隊背面への不意打ち攻撃を狙っている模様で。
(自衛官の誇りにかけ、紀伊の民を鬼の脅威から救うぞ)
 これまた同じくの、地上からは。
 上級の猿飛ノ術を成就した荒戸 美乃も。現代の頃と変わらずな、使命感をそのままに。
「主力の邪魔はさせん! 雑魚鬼は大人しく退いとれ!」
 幸村隊の側面方向から、一気に近付くも。
 大地を駆けていく、彼女の動きは幸村に把握されており。幸村隊の赤鬼ども数体は奇襲に備え、剛力の化身魔法を成就したが。
「うおおお! 絡め取って、フルボッコじゃあ!」
 美乃に追い付いた、薬師寺 勢司は構わずに。投網を投擲しての、赤鬼一体を絡め。
「こちらからもゆくぞ!」
 一反木綿に乗った小鳥遊 彩霞が、雷上動の和弓を手にしたまま。
 つがえた矢に弓能力の、魔的・感電効果を与え。別の赤鬼一体へ撃ち込んだ直後。
「‥‥!」
 幸村は先のごとく、喜々としての単独突入を開始した。

 幸村・幸村隊との戦いが始まったのと、時を同じくし。
「「グォォォッ!!」」
 五百貫青鬼、そして‥‥参百貫黒鬼どもで構成された大鬼隊。そんな大型の鬼が侵攻する、一の橋が前方にて。
「手裏剣を投擲したのち、援護行動へと移行します」
 優先順位から。幸村隊が橋を突破するのには、それなりの時間が掛かると判断してか。
 赤井 狐弥は上級の、摩利支天隠行真言と猿飛ノ術‥‥さらには忍打法ノ術を成就したのち。それら大鬼どもの前に、ひとまずの姿を現したようで。
「‥‥赤井に続きます」
 すぐあとに、鈴鹿 恵子々が上級の漆黒ノ掌――それの成就を終え。
 自らの身体を通し、魔法効果が伝わった半月の鉄甲を得物として。大物との戦いへ備えるなか。
(僕は、大きい鬼‥‥その角折りを狙おう)
 警戒を強めながら、中級の猿飛ノ術を成就した富士 影百もまた。橋前への到着と同時に、加速術をもってしての斬り掛かる機を窺い。
「この先にあるモノを、貴方たちに壊させるわけにはいきません。残念ながら‥‥こちらで頓挫するのです」
 程なくして。到着した高杉 蘭子も大鬼隊へ向けての、鬼退治宣言を口にし。
「なぜなら、今宵のワタクシは大鬼を狩る鬼。うかつに‥‥この橋渡るべからず、ですわよ!」
 凛とした態度のまま、その啖呵を切り終えると。
「きゆの拓く道、蘭ちゃんとともに♪」
 遠田 きゆが傍らから、両手グッとの気合を入れ――仙級の天照大御神ノ舞を成就。
 それな日射の力を、蘭子が手にした桃太郎の大太刀へ与え。
「俺の役目はガードだ。皆の盾になるぜ」
 同じく、傍らで。
 上級の神使ノ太刀、その魔法効果を伊賀の打刀に付与し。即座に身構えた村正 一刀や。
「死にたいやつから掛かって来な。ま、何にせよ‥‥全員ぶった斬るだけだがな」
 二振りの小太刀を携えたまま。まずは、一振りの大太刀を抜いた雨宮 竜胆と。
(さぁ‥‥鬼頭、それと鬼角を狙い撃ちにしていくよ)
 少し離れた供養塔付近の狙撃位置から、対物ライフルの支持脚を展開。照準器を覗いたレヴィ・ライトニングの三人も順次、戦闘態勢に入り。
「私らも、前線の皆様が戦いやすくなるよう。全力を尽くしましょう」
「――情報収集なら、俺が!」
 幸村隊と大鬼隊、どちらの支援にも駆け付けられる位置にて。戦況を窺うは、佐藤 長行の言葉に。
 目を輝かせた、渋川 香が頷き。
(くぅ~‥‥いつかは、俺もメインで戦いをやりたいもんだぜ)
 ある種の憧れ的な思いをもって、香も役割を果たそうと。中級の猿飛ノ術を成就したところで。
「まずは大黒‥‥きゆちゃんに付与してもらった力で、大鬼退治の幕開けとしますわ!」
 例の日射効果、それが付与された得物を手に。
 大黒鬼に目掛け、走り出した蘭子を始め。対応組の面々もまた各自に、大鬼隊への攻撃を開始した。

◆奥之院を守りし者
 その頃。最終防衛地点のひとつ。
「「――」」
 百基の燈籠に囲まれた弘翁ら僧が、奥之院萬燈会の完成を目指し。
 何もかもに構わず、一心不乱と経を唱える奥之院の一画でも、来世人の面々が行動を始め。
「結界師アッキー見参! だったりするのだよー」
 漆黒の無音鎧――シュヴァルツパンツァーを着込んだアッキ―こと、藤 あきほが。上級の小反閇道術、その成就を目指す来世人の一人として。
「結界を作るのには、少し時間が掛かるけど。皆も諦めるな、なのだな」
 共闘中の僧兵らへ声を掛けつつ。
 神代の蓑をもって、己の姿を消し。奥之院周辺を包める大きさ、それを目標に単身――結界を作るための摺り足歩法を始めると。
「私たちの歌が、皆の翼になるのよ!」
「私たちの歌が、皆の翼になるんだから!」
 経の邪魔にならない位置にて。シェリア・ノームリンカ・リーフの二人は、心からの願いを歌声に。
 自前の歌を熱唱し。
(さーて、ここは来世人ならではのチームワークってやつかい? いざとなりゃ俺も、得物抜いて腰ダメで構えるが。何だか‥‥ヤクザみてぇだな)
 そうしたなか。
 厚藤四郎の短刀を手にした霧原 矢塚も、儀式完成に尽力すると改めて誓い。
「ところでココ、禁煙‥‥煙管を吸っても大丈夫かい?」
 喫煙行為については。重要儀式中ということで、僧兵らに煙管・刻み煙草の使用許可をもらいつつ。
 奥之院前の階段、そこの近くにて楽しんだらしく。
「怪我人はキッチリ面倒見ちゃるけん、思い切り‥‥はっちゃけたりぃ!」
 さらに奥之院の一画では。
 毒島 右京が各鬼将・各鬼軍団と対峙、すでに対決中であろう仲間たちを思い。心よりの声援を送っている真っ最中であり。
「「「ブッポーソー」」」
 それに加え、そんな彼の真上では。治療・援護要員として連れてこられた三尾ノ木葉梟の二羽、二尾ノ木葉梟の一羽‥‥通称『三羽梟(右京命名)』が飛び交い。
(もし、弘翁が殺されても。蘇生させれば‥‥とまぁ、それは毒っさんあってのことだしな)
 一方‥‥それら獣ノ怪姿を眺めながら、九条 鰤々之進はというと。不謹慎な考えをよぎらせるも。
 すぐさま、思い直しての――。
「‥‥」
 お供な妖怪、ぬりかべの『ぺったん子』や。
「基本、右京の助手を務めるが‥‥万が一の場合は、わしも迎撃に加わろう」
 あいさつを交わした、最上 龍三とともに。
 時が来るまで、右京近くでの戦闘待機を選んだ。

◆元親との対峙
 戦いの場を変え、燈籠堂前の森中。
 その、奥のほうでも。
「貴様らは、側面の来世人どもを相手にしろ。合流されると面倒だ」
「「御意!」」
 浄天眼をもって、長宗我部 元親が来世人集団の位置を確認し。
 傍らの鬼軍団、混成隊の大人鬼どもへ。迎撃の命令を下したところであり。
「お久しぶりですね。元親様、お会いしとうございました」
 離れていく混成隊を警戒、目の端に捉えつつ。根子 ナラが皆に先んじての、元親へ声を掛け。
(観念していくか‥‥)
 それな様子を、相葉 楡や。
(何度お会いしても、元親さんには結局のところ。鬼と人は分かり合えないのだと、教えて頂いた気がします)
 空木 椋が緊張した面持ちで、ソワソワしながらも見守るなか。
「先日は、首を獲りそこないましたが。今回は頂きます」
 続けざまにナラが、挑発の言葉を投げ。
「オウ! 御勤めご苦労さん、悪いがここは通行止めだぜ!」
 さらに続き。
 元親戦へ向けて、大きく気持ちを高ぶらせた大文字 渚も一歩前に。
「戦うのは三度目か‥‥いつも、こっちに刺さること言いやがって!」
 あとから、鈴城 透哉も行く手を阻むように続き。
「けど‥‥これが最後だ。みんなを守るため、今度こそあんたを倒す!」
 今日こそはとの思いを叫び、前衛の一人として身構えると。
「俺は皆ほど、鬼チカ‥‥もとい元親と面識ねぇし。できるだけ想いがあっ人に、お任せしてぇけど――」
 一歩引いての、様子を窺っていた平口 工助もまた。ドサクサに紛れる形で。
 戦いを前に自らの。鬼チカとも呼ぶ、鬼将への思いを口にするも。
「でも、まぁ結界が張られた時は勝負じゃん」
 作戦が展開されたら、それはその時と。知覚をフルに、すぐさま身構え。
「残念だが‥‥俺は幸村や貴様らほど、戦いに飢えてはいないし。この首もくれてやるわけにはいかぬ」
 対し、先の敗退で慢心を戒めているのか。
 そういう来世人らの挑発や態度やらに、元親は素っ気なく。冷静なる反応を見せたものの。
「――だが、幸村との約束もあるしな。いいだろう、少しだけ相手をしてやる」
 しかしながらと退かず、手にした槍を構えての戦闘態勢へ移行した。

 こうして。敵同士が互いに、その緊張を高めていく頃。
(此度は、どう仕掛けてくる‥‥?)
 と。来世人の出方を窺う、いつになく慎重な元親の目線が先では。
「天狗は何も教えちゃくれなかったけど。その修行で判ったことがあるのさ」
 捨て身になるが、あたしに鬼将を倒す策ありと。池袋 春子が述べ。
「僕も、春子姐さんの策に乗ったぜ」
 そうした彼女の傍らにて。
 対応組の皆、彼らの代表として。越中 団次郎も、それに同意。
「無茶はわかってらあ、男・団次郎‥‥せいぜい元親を苦しめてやるさ」
 春子は作戦の鍵と、わが身を盾に。前衛の一人を務め。
「「‥‥!」」
 中級の弁慶ノ伎を成就し、得物を腕中へ取り込んだ工助と透哉ら。前衛二人を筆頭に。
 対応組の面々が、各自に春子作戦の準備へ入ったのに続き。
「男・大文字、推して参る! なんてなァ!」
 上級の斬鉄ノ太刀、光世音菩薩真言の魔法二種を成就した渚が。之定の太刀を手に元親の足止め――。
 奥之院萬燈会の完成‥‥そんな全体を含めての時間稼ぎへ向かう、そのあとから。
「どうやって仲間を揃えたのかも、なぜに高野山を狙うのかも知らないけど。儀式を邪魔させはしないわよ」
 春待 朔もまた、思いを声に。仙級の機巧操法、それと中級の火ノ秘伎法を併用しての。
 人形と狼、縫包型の機巧三体を操り。
「人間をゴミみたいに扱う、あんたたちに‥‥負けてたまるものですか!」
 その強き意志をもって、元親のもとへ向かわせると。
「僕のほうも、狼機巧を送りますね」
 椋が同じように。
 上級の機巧操法と、機巧大仏ノ法の併用を終え。巨大化の幻影を纏わせた狼型の機巧二体を同行させ。
「まあ、相手するとは言っても‥‥まともに戦ってやる道理はないな」
 渚と機巧らの突撃に対し、元親は回避行動を選択。
 超転移の魔法により、来世人らの側面付近へ。瞬間的な移動をしたのち。
「あいさつがまだだったな、代わりに喰らっておけ」
「「!!」」
 水流波の魔法を成就――それによって発生した水流を、中衛・後衛のナラたちへ放った。

◆混成隊、側面へ
 元親の水流が、ナラたちを襲ったのと同じ頃。
 元親戦が始まった近くの森中でも。
「いたぞ、元親様のご命令通りにやれ!」
 黒鬼を隊長格とし、接近中の混成隊を前に。
「何でか、こちらの位置がバレてるけど。チームの方針通り、混成隊に仕掛けるぜー」
 ミア・カイザーも、ほぼ家族・親戚らで編成した来世人チーム『カイザーズ』を率いる者として。
 指揮を執りつつ、打ち合わせを済ませた隊の面々へ。行動開始を呼び掛け。
「それじゃ、甥・姪のエクスとアステに。従弟のマイト、それと助っ人のヴァネッサ君もよろしく☆」
 その四人にも声を掛けたあと。
「‥‥」
 ヴァネッサ・ノクターンが猿飛ノ術を成就し。神代の蓑‥‥その道具を使って姿を隠し。
「死ぬぜぇ、俺の姿を見たヤツは、みぃんな死んじまうぞぉ!」
 斬り込み隊長として、混成隊への奇襲に駆け出していくなかで。
「というわけだから‥‥三人とも。いきなりの大一番だが、ちょっとした冒険と思ってくれ」
 カイザーズ主力の一人、ミスト・カイザーもまた。
 自分と同じ、カイザー家の三人へ声を掛け。
(まあ、彼らもカイザー家の人間ゆえ。その神経は我らと同様に図太いはず――)
 という認識で接したところ、どうやらその考えは当たっており。
(やれやれ、行方不明だった従姉弟たちがいたのには驚いたが。俺の漫画より‥‥現実は破天荒だな、おい)
 漫画家なる頃の、思考などはそのままに。
 とりあえずの得物――村正の槍を手にしたマイト・カイザーを始め。
「えっと、形代を‥‥」
 照れながらも、中級の除傷形代道術。
 その成就により生み出した形代数枚を、カイザーズの主力らへ貼り付けたアステ・カイザーとともに。
「はい、あとは玄武さんと朱雀さんの力を借り。鬼の妨害を――」
 エクス・カイザーが上級の斬鉄ノ太刀による、破壊・魔的・封鬼の効果を。
 ミアとミストのカイザー二人。そして――。
「先行、いえ‥‥潜行します」
 そう述べたカイザーズ主力の一人、カミラ・ナンゴウの各得物に付与していき。
「「‥‥!!」」
 そんな、己の仕事を要領よくこなしたアステとエクスの二人が各自。次なる行動へ備えると。
「――なんせ俺は、死神(自称)だからなぁ!」
 程なくし。先頭の赤鬼一体と接敵したのか。デスサイズを振るう、ヴァネッサの足元付近を。
「お帰り下さいませ、鬼の団体様――」
 上級の土遁ノ術、それな潜航能力を用いて。カミラが進んでおり、ある程度のところで新たに中級の猿飛ノ術を成就。
 跳躍し――地上へ飛び出してからの、鳶加藤の忍者刀なる一撃でもって。
「グァッ!?」
 狙った青鬼一体の角を、ポッキリと破壊せしめ。
「もっとも、今後のため‥‥帰すつもりなどございませんが」
 鬼の反撃を、何とか回避したのち。
 冷ややかな退治宣言とともに、カミラが今一度の地中へ潜ると。
「よーし、鬼の混成隊に突貫だぜ!!」
 続けざまにミアが、中級の分身ノ術を成就し。事前に決めた合図と同時に、チームを率いて突撃を開始したらしく。
「おう、鬼の混成隊など。我が金砕棒で葬らん!!」
 すぐあとから。
 やる気まんまんなカイザーズの主力、アイナ・ルーラ(ka00830)も力太郎の金砕棒を携え。
「アイナ姉様、援護いたしますわ!」
 澄肌の脇差を手に、駆け寄ってきたヒデコ・ルーラや。
「ウチも手伝う! 何かしら、やれることがあるはずだ!」
 捕縛能力を有する波平の袖搦に投網など、各装備を携えた高槻 眞琴の二人を連れて。
 色とりどりの鬼退治へと出撃した。

◆女鬼隊と村娘
 元親・混成隊戦の前方、燈籠堂付近の森では。
「ほら、奥の建物を目指すんだよ!」
「さっさとしな‥‥あたいらに喰われたくはないだろう?」
 鬼軍団の一角、女鬼隊の赤女鬼どもが。今この時も、逃げまどう村娘たちを追い掛け。
 足を止めた者に鞭を振るい、しばきまくるという非道を繰り返しており。
「女鬼がいるのは‥‥こっちか!」
 そこへ。上級の猿飛ノ術を成就ののち、夜目をもって周囲の確認を終えた莱堂 凌駕や。
「儀式のことは分からないけど、鬼のためにならないことは確かだし。それの成就がため、私も全力でがんばるわよ!」
 同じく、中級の加速魔法を成就した沖田 芽衣子ら。女鬼隊の対応組が、己の感情に合わせ。
 各自に急行するなかで。
「最近、自分の力に限界を感じてるの。皆の役に立っているか、自信なくて‥‥」
 続いての出発前に、升田 千絵代がふと。来世人として戦うことの弱音をもらすも。
「来世人サマは強いし、きっと乗り越えられますよ!」
 要請に駆け付けた僧兵の一人、砲念を始め。
「あたしもいつだって、あんたの味方さ。指示に従うし‥‥全て終わったら、旦那にイイコトしてもらいな」
 彼女の様子を気になり。蓮美 イヴが、ひと声を掛けた結果――。
「ありがとう、何百年も燃え続く灯火を消すわけにはいかない。消えてしまったら悩む未来もなくなるし、今はできることを精一杯やるわね」
 頬を赤く染めながらの前向きなる方向へ。気持ちを切り替えた千絵代は、すぐさま。
 お供の、一反木綿『ぱんてぃ』に乗り。
(それにしても‥‥なぜ、喰わずに女を逃がす? 女のほうが化けた時に演技しやすいから?)
 変化魔法も扱う、赤女鬼の行動を読みつつ。ともに森中へ。
「正体とか、バレたら終わりだけど。村娘に紛れて女鬼を討ってみるよ!」
 そして、あとから。村娘らが身に着けていたという衣服については、報告を聞いたばかりで時間がなく‥‥似た物を用意できなかったが。
 自身の風貌をもって、女鬼隊を奇襲すると述べた華音 雪歌のほか。
「早く、凌駕に追いつかないと!」
 鞭や投網に‥‥まきびしといった、支援用の各装備をいくつか携えた朱凰 魅衣奈たち。数名の来世人が駆け出した。

 各場所と同じくして、燈籠堂の前。
 その一画に集まった来世人らはというと。
「煌びやかな儀式らしいし、僕も観光客として見たかったけど。ひとまずは鬼のお嬢さんから、村のお嬢さんを守ったりしないとね?」
 奥之院萬燈会への思いを経て、森中に突入した八十神 不動を先頭に。
「しばわんだふる! 娘たちを守りにいくぞえ!」
 ヤームル・アイマーヴィも、茶柴犬型の機巧『ゴンスケ』を伴ってのあとに続き。
(フン、鬼どもめ。わざとらしい真似しやがって‥‥どーせ、村娘っつー生餌を使った夜釣りを兼ねてるんじゃねぇの?)
 そんな、彼・彼女らを見送った千杜 伊織もまた。
 女鬼隊の行動を、不自然と考えるも。
(まぁ‥‥それなら。釣られた自分らが餌を喰らって、あの世という沼底まで引きずり込んでやろう)
 そうであった時の対応は、すぐに決まったようで。
「いいか、ここへ仲間以外は近寄らせるな。妙な奴が現れたら、遠吠えで呼べ‥‥寝るなよ?」
「‥‥ウォフ」
 随伴狼の『甕星』へ指示を与え。除傷形代道術による形代を複数枚、保険として貼った燈籠堂前に待機させたのち。
 とにもかくにも。村娘を救出するため、彼も少し遅れての森中へ――。
(さてさて、あの方(かた)には恨みがありますからね)
 と、その一方で。
 元親への思いを遂げるため、燈籠堂の守りについた藤枝 梅花は中級の式神道術を成就。
(計画を潰すことで、意趣返しをさせていただきましょう)
 これにより得られる情報は少ないが、追の役割を与えた鳥折紙に。ひとまず自身の視線が先にいる、伊織の尾行をさせると。
「僕も偵察、情報収集しておくよ!」
 マティルダ・モロアッチもまた。
 機巧操法と空ノ秘伎法を併用し、隠密行動を取らせた豹型機巧を森中へ送り。
「「「‥‥」」」
 こと静かに。彼女らと甕星は皆の帰還、もしくは敵の到来を待った。

◆単独の幸村
 幸村の先制から、始まった中の橋――防衛戦。
「なんだァ、ハズレじゃねェか!」
 しかし、幸村が貫いたのは。桜花の幻影分身なるほうで。
(一ノ太刀‥‥いや、まだ早い)
 一方、彼女は。本気の反撃を考えたものの。
 神回避の正体が掴めるまでと改め、鬼切な得物を手に。上段から幸村へ斬り掛かり‥‥それが避けられると。
「――ユキムラァァァ!」
 今度は豊が、岩融の薙刀を得物とし。上級の一ノ太刀を成就しての突撃を試みるも。
「遅ェ!」
 何らかの魔法成就により、速度を増した幸村が。その突撃を避けつつ、連続的な爪攻撃を仕掛け。
 それらを回避できず、傷を負った豊はガクリと膝をつく。
「カバーしろ! 豊を救援しつつ攻撃!」
 ‥‥が、まだ終わってないと。田中 真司が静らに支援を要請。
「隙を作ります!」
 すぐに、鷹型機巧を降下させた静や。
(次は‥‥しくじるなよ、大門!)
 縄ひょうを投げたマルグリット・ニッタが応じるも、それらは幸村に当たらず。
 爪の猛威が、より近くのマルグリットを襲う。
「――ッ!」
 しかしだが‥‥対物ライフルを用いたタチアナの。不意打ちによる射撃が一瞬ではあるも、幸村に傷を与え。
「ハハッ、そこかァ!」
 そんなこんなで。面白ェと笑い‥‥またもや、幸村が浄天眼なる能力を用い。
 狙撃者の位置を把握し向かうは、その行く手に。
「長物はなぁ、懐に飛び込んじまえば使い物になんねぇだろ! 槍もなんも折ってやらぁ。刀はケツで真剣白刃取りしてやんぜ! やったことねぇけど!」
 次は、まぁ俺が相手と。
 賑やかしくも挑発を継続中なる、焔羅とともに。
「ねぇ‥‥幸村はどれも持ってないわよ?」
 上級の斬鉄ノ太刀を成就した咲夜が、ツッコんだのち。得物を鞘に収めたまま、「今宵の大包平は一味違うわよ?」と立ち塞がり。
「ここからは僕が、冷静に‥‥そして堅実に。儀式もみんなも無事に終えられるよう、最後まで戦い抜くよ」
 その、左側からは。
 マジカルシールドを前面に置き、誓いをもって身構えた清十郎と。
「まぁ‥‥人が傷つくなんて、嫌だものね」
 玄武水帝占術と朱雀炎帝占術、それらを併用しての飛行能力を得た純子が――。
(‥‥ここまで来たら)
(もちろん、勝たないとね!)
 また、右側からは。
 サイワやセイワの姉妹二人が。地蔵菩薩慈悲真言などにより、支援活動を行なうなか。
(弱点の角は‥‥あからさまだとバレるから。他の部位を狙いつつ、ひと思いに!)
 退魔剣を手に、隙あらば飛び掛かろうとする渓と。
「――渓、タイミングは任せる」
 中級の斬鉄ノ太刀を成就し、身構えた凪や。
「足止めになればいいが」
 中級の機巧操法、効果上昇させた風ノ秘伎法などを併用し。狼型機巧を操作中な燎らが行く手を塞ぎ。
(気付かれてはいない‥‥はず!)
 さらに、幸村の後方からは。
 神代の蓑を用い、透明化の効果を得た龍重が。宗三左文字の打刀でもって斬り込むべく接近中であり。
「どんなことをしてくるか、分からないわ。みんなも充分に注意してね!」
 そうした彼を除く、幸村を包囲する来世人仲間。
 戦う皆を見守り、自らの番に備えるは藤花の傍らにて。
(もう一度、結界作っておくか‥‥?)
 ヤズゥンもまた、護衛の備えを続け。
「藤花おばちゃん! みんな! おっさんが動き始めたで!」
 機巧操法と風ノ秘伎法を成就、それな二種を併用しての機巧合身ノ伎をもって。鷹型機巧を取り込んだ白鳳 桃花が。
 藤花サポートの一人として、夜空から。皆に警戒を呼び掛けたところで。
「まずは‥‥テメェらだァ!」
 幸村は猟奇的な笑みを浮かべての、戦う相手を見据え。二度目の単独突入を開始した。

◆幸村隊、川中とかの攻防
 幸村隊とも対峙中なる、中の橋――。
 そこの一画でも戦いは激化し。
「前方の鬼に集中じゃ! ともに倒すぞ!」
 足を止めることなくの加速術から、美乃が赤鬼一体へ。岩融の薙刀を振るい、すぐさまに後退すると。
「――心得た」
 一反木綿に乗ったままの彩霞が、それな鬼へ向けた追撃の矢を放ち。
「ぬぉぉぉりゃぁぁ!」
 続けざまに。雄叫びを上げ続けての勢司もまた、赤鬼の反撃に構わず。
 ひたすら暴れ回ることで、幸村隊の被害を増やしていき。
「支援する」
 そんな美乃らに混ざり。影縫の縄ひょうを得物に忍も、地中から飛び出しての不意打ちにて幸村隊を絡め。
「「燃エル‥‥!」」
 さらには。焼夷の焙烙玉を投げ込み、赤鬼どもの被害を拡大させるが。
「川ヲ泳イデ、奥ヘ向カウゾ!」
 火消しの意味も兼ねてか、幸村隊は倒れた仲間鬼を盾に。
 中の橋下に流れる川へ避難。
「‥‥川に飛び込んだか」
 元々そういう作戦だったのか、その過程にて‥‥忍が橋前に設置したという望月六郎の地雷を避ける形で。
 幸村隊の一部は。中の橋を突破、迂回ルートからの奥之院侵攻を再開した。
 ‥‥。
「宣言通り、押し返すよ!」
 と、えあ子が水龍神霊迎えノ舞を成就。川を泳ぎ出した幸村隊に、水流を放つも。
「「御廟ノ橋ヘ急ゲ!」」
 赤鬼どもは構わずに泳ぎ続け。
「むぅ‥‥」
 そう唸った彼女が、弓矢での迎撃に切り替えたのを。
 夜目をもって、遠目に見てか。
「向かうには、仲間たちが控えておる。ウチらは大鬼のほうを加勢するぞ!」
 橋上に残った幸村隊を――美乃が。自らの阿修羅王真言と合わせ。
 仙級の猩々ノ舞をもって、支援に努めていた鏑木 奈々ら。近くの仲間と倒し終えたのち、信頼とともに一の橋方面へ足を向けたさなか。
(――絃瑞さん、川から赤鬼が)
 機巧操法、風ノ秘伎法の二種を成就併用しての。昆虫型機巧を飛ばし、付近の戦況を窺っていた司から。
「やはり、元親と関わりのある軍勢。川を利用するのでは‥‥と踏んでおりました」
 斑鳩占術を用いた遠話、それを受け取った絃瑞が頷き。
 僧兵らへ声を掛けるとともに。幸村より先に現れた幸村隊へ対しての、射掛ける準備を促す‥‥そのすぐ前では。
「鬼幸村と赤鬼たちの距離が‥‥遠い?」
 これからの予定として――澄香は、ひとまず。上級の呪禁霊符道術、その霊符でもって赤鬼を化身操作し。
 操作した幸村隊の赤鬼に。リーダーの幸村を攻撃させることでの激昂、または動揺などを誘うつもりであったものの。
「まさか、足並みを揃えることなく。別々に行動するなんて‥‥」
 幸村の単独突入やら、幸村隊の迂回行動により。どこか計画のズレを感じており。
「鬼の大将は、まだしも‥‥赤鬼のほうはどうかな?」
 それな計画の要であると同時に、幸村・幸村隊の予測侵攻ルート上――の地中へ。小反閇道術の結界を作った煌尚も同じく、小首を傾げたが。
「グワ――ッ!?」
 上陸を終え、少し進んだ先にて。
 赤城 祥子が仕掛けた望月六郎の地雷を踏んだのか。赤鬼一体が爆発に巻き込まれての転倒。
「二手ダ! 二手ニ分カレルゾ!」
 しかも、落とし穴にも落ちたことで。警戒した幸村隊は足を止め。
 地上と川に分かれての移動再開により、一部が何とか予定通りに‥‥煌尚の作り出した結界内へ踏み込んだ。

◆蠢く大鬼隊
 そして――幸村隊が、中の橋を突破し。
(鬼の後続を断てるよう、橋を落としておくか‥‥?)
 破片の手榴弾を手に、忍が爆破的かつ過激なことを考え。
 やがては実行に移すも、手持ちの爆発物では橋の支柱が壊せず。火力が足りないと実感する、少し前――。
「「グォォッ!」」
 大鬼隊との戦いも続く、一の橋が前にて。
「防御は気にせず、派手にやってくれ!」
 盾として身構えるは、一刀ら仲間の皆を信頼しつつ。
「承りましたわ!」
 上級の一ノ太刀を成就した蘭子が、日射効果の伴った桃太郎の大太刀を振るい。
 参百貫黒鬼の身体に、鋭き一撃を喰らわせると。
「ォォン!?」
 痛みの感情をあらわにした大黒鬼は。さらに彼女が装備する神鬼の総面、鬼喰の武者兜‥‥その効果によって再生能力を封じられ。
「――狙い撃つ」
 後方から、レヴィが対物ライフルの照準器を覗きながらも。
 大黒鬼の頭部を狙撃――。
「こちらも撃つぞ」
 加えて。刑部 京も同型のライフル射撃でもって続くなか。
「いきます!」
 何度目かの加速術を用い、岩融の薙刀を手にした影百が。より大きい五百貫青鬼の一体、それな角折りを狙って。
 左や右に移動し‥‥上級の一ノ太刀を成就しての、跳躍攻撃をいく度か仕掛け。結果、左角一本の破壊に成功したものの。
「‥‥ォォ!」
 巨青鬼は幸村の命令通りに、棒を叩きつけての反撃とか前進を続け。
「いくわよん」
 ともに、マッスル・オネェが中級のとゐ波占術。その――精神波動による攻撃を仕掛けるも。
 それを含めて、巨青鬼は‥‥一切の感情を表すことなく。幸村に与えられた命令を繰り返し。
「ォォ!」
 さらには。高い再生能力により、巨青鬼の傷が癒えていくのを目にしてか。
「まだ、右角が残ってますが‥‥仕掛けます」
 再度の忍打法ノ術、それをもって。
 筧針という手裏剣の16本を、そうした巨青鬼へ。狐弥が連続投擲することで、一気に鬼の体力を削り。
「追撃です」
 すぐあとから、恵子々が。
 これまた何度目かの漆黒ノ掌、その効果を伴う半月鉄甲でもって殴り付けたのち。
「「――!」」
 前線に駆け付けた長行を始め、マッスルらはとともに。
 大黒鬼・巨青鬼の反撃を喰らった皆を、地蔵菩薩慈悲真言の力により癒した。

◆元親を閉じ込めろ
 幸村側と同じく、元親が先制攻撃を決めた森の中。
「こう見えて‥‥私、存外にしつこいのです」
 そう述べつつ、ナラが。
 先の水流波により。受けた傷、その治癒をひとまず――。
「負けず嫌いの向上心は、大事なこと」
 上級の地蔵菩薩慈悲真言を成就した由冬 右一に、お任せしたあと。
 彼は。ナラの気合に応える形で、コクリと頷き。
「引導渡してヤルー!」
 弓胎の和弓に矢をつがえ。今にも放たんと身構える、森住 ブナや。
「今度は逃がさねっぜ!」
 上級の光世音菩薩真言なども成就し、走ってきた工助たち前衛の面々。
 それと、狼型を始めとした機巧数体とともに。
「陣形を組み、元親さんを取り囲みましょう」
 連携を呼び掛けるは、椋の言葉がもと。
(来世人どもめ。相も変わらず、油断ならぬ相手だが‥‥)
 次なる転移先を探してか、しばし動きを止めた元親を。
「さあ、もっと‥‥鬼の本性を見せてくださいな!」
 ナラもすぐさま。
 上級の摩利支天隠行真言、その成就を終えての取り囲み。
「いくよ、ガチ勝負だ!」
 続けざまに。上級の抜刀ノ太刀、漆黒ノ掌‥‥。
 そして、金剛力士真言などを成就した団次郎らの声を聞き。
(‥‥今回の壺中天道術は、魔法封じると聞いた。奴が前回同様と思ってる内に勝負をかけるぜ!)
 元親の懐へ飛び込んだ透哉が。
 槍の反撃を受けながらも、上級の一ノ太刀を成就したのと。ほぼ同じくして。
(この捨て身戦法が間違いじゃなかったと、皆も信じてくれてる)
 春子が元親攻略の鍵となる――仙級の壺中天道術、その成就により。効果範囲の者は特殊空間に引きずり込まれ。
(‥‥ここは上手くやるしかないだろ)
 元親の得意とする転移、水流を放つ各魔法を脅威に感じ。彼女が選んだ二つの効果。
 白虎(氣の効果半減)と、青龍(魔法は新たに成就しない)をもって。特殊空間は敵味方問わず、引きずり込んだ者全てに効果を発揮した。

「「‥‥」」
 と。特殊空間の発生直後、モノトーンに変わった景色のなか。
(右角を折ったのと同じ攻撃だ。当然、避けようとするだろうが――)
 槍怪我を負ったまま、透哉は目の前の元親へ。
 素手による格闘攻撃を仕掛け。
(――何ッ?)
 不意によぎった不覚の記憶から、元親は予想通り。超転移を用いての回避を試みるも、化身魔法を成就できず。
「貴様ら‥‥やってくれるな」
 結果的に。透哉が左角を狙い。
 弁慶効果をもって、即座に取り出した桃太郎の大太刀。それによる一撃は外れたものの、元親の鬼将としてな自尊心は傷付き。
「望み通り、左角をくれてやる」
 喪失をまぬがれた鬼角での、反撃を繰り出そうとするが。その前に。
「ぷすぷすするよ~」
「というわけで‥‥矢の援護だぜ」
 弓引くブナに続いて、ロビンフッド・ムビョウも弓引きからの矢を放ち。
「ッ――」
 矢傷を負った元親の側面から。
「そっちも観念してね?」
 特殊空間前に成就したという機巧操法に、上級の機巧合身ノ伎により。
 操作中の蜘蛛型機巧を取り込んだ楡が、長船の長巻を振るっての。火伎の6連続攻撃で追加となる‥‥いくつかの傷を与え。
「わらわらと‥‥邪魔だ」
 さらには。口から炎を吐くなど、奇天烈な攻撃を仕掛けてくる朔の縫包型機巧やら。
 数体の機巧に、元親は退路を塞がれ続け。
「‥‥どいてろ」
 しかしながらの強力な再生能力でもって、元親の戦闘能力は健在だが。
「避けきれねっが、それならそれで‥‥反撃喰らわせてやっぜ!」
 槍の一撃を身に受けつつ、その柄を何とか掴んだ工助もまた。
 弁慶ノ伎の効果にて取り出した怨鬼の長巻、強化されたそれを振るっての反撃を喰らわせ。
「何が起きるのかは知らないが、テメェらが躍起になる程の儀式なんだろ? 意地でもヤらせるわけにはいかねぇよなァ! オイ!」
 あとから。之定の太刀を手にした渚が、何度目かの挑発言葉を声にしながらも続いたところで。
「残念だけど。ここは通さねえ、通すわけがねえ」
 マッチョな幻影を纏った団次郎も、追撃にと。
 漆黒の炎付与な、拳の一撃でもって元親の体力を削り‥‥そうした攻防戦がのち。一度目の特殊空間は閉じた。

◆混成隊、ボコボコになる
 とまぁ。混成隊との戦いも激化していく、その森中で。
「では‥‥鬼どもに、潜む場所などないと恐怖させてあげましょう」
 いく度か成就の加速術、それと土遁ノ術などを用いての。地中飛び出しから、カミラが深夜の戦場を駆け回りつつ。
 木々に紛れての抵抗を行なう、それら鬼どもの角破壊を執拗に狙い。
「我が桃太郎の太刀‥‥その一撃を受けてみよ!!」
 ともに駆け回るミストもまた、手にした得物を振り抜き。
 混成隊の角切り、あるいは刀効果でもって。再生能力を封じた鬼どもを斬り捨てていく、彼らの傍ら。
「私も‥‥ひたすら、金砕棒を振り抜くのみ!!」
 混成隊の顔面を、アイナが勢いよく殴り飛ばし。金剛力士真言を成就――まるで、ビルドアップしたかのようなマッチョ幻影を纏ったあと。
「貴様らぁ‥‥よくも同胞を!」
 近くの黒鬼一体と対峙した彼女は‥‥次に。上級の漆黒ノ掌、中級の阿修羅王真言を順に成就し。
 それに備えての、化身魔法により。自らの体表に魔法の防御膜を付与した黒鬼、その顔面へ。
「この殴打の回数は、僧と村娘と倒れた仲間の分だ!!」
 という、思いを込めた殴打を4回入れるも。
「おい‥‥あと一発は誰の分だ!?」
「そう、何度も思いつくか!!」
 それな殴打に耐え、そしては黒鬼が疑問を述べたのに反応してか。
 アイナは拳から、金砕棒に切り替えての。さらなる殴打で応えたらしく。
「さすが姉様、見事なオチですわ♪」
 その様子を目で追い掛け。魔王神璽ノ舞を舞いながらも続く、ヒデコとともに。
「‥‥アイナさん、木々の陰に!」
 眞琴も優れた視覚をもって、アイナの補佐を努め。
 微塵隠ノ術の成就により、派手に鬼どもの背後を取ると同時に。何度かの極技を繰り返し、赤鬼一体を絡める‥‥同じく森中の一画では。
「霊符、飛ばします」
 残る力を注ぎ、上級の太上神仙秘法道術にて作り出した霊符数枚。
 それらをアステが、混成隊の各鬼へ放ったのに加えて。
「‥‥」
 斬り込みしすぎて倒れたヴァネッサやら仲間に、大島椿油を与えると。
「これは‥‥ゲームでいうところの僧侶だな」
 中級の地蔵菩薩慈悲真言、そうした治癒を用いて。マイトもまたとりあえず、ひと仕事を終わらせ。
「鬼の動きを妨害する!」
 そんななかで。玄武水帝占術、朱雀炎帝占術の併用から‥‥皆に続くエクスも継続の時間は短いが木々の間を飛び。
「ミア叔母さんや皆の邪魔はさせないぜ!」
 迦楼羅の伎楽面、それを使った炎や。
 鞭剣に変形させたガリアンズソードの一撃をもって、混成隊を強襲していく甥の姿を。
(エクスったら、張り切っちゃって‥‥)
 叔母としての温かな目で、ミアは見守ってか。
「それなら僕も頑張って、手裏剣投げるぜ☆」
 角折れの黒鬼一体へ。
 ミアも負けじと、十字謎熊の手裏剣を投擲し。
「おのれ、来世人めぇ‥‥!」
 怒る黒鬼どもから、多少の反撃は受けたものの。
 彼女らカイザーズ&仲間たちは力を合わせ、混成隊のほとんどを壊滅させることに成功した。

◆森中での攻防戦
「お助けを~‥‥!」
 そののち。村娘の悲鳴響く、森中で。
「ッ――誰だ、お前は!」
「来世人、莱堂凌駕。見知っとけ!」
 娘らと女鬼の間に割って入るとともに。LEDランタンを用いた目潰しからの、投網により‥‥赤女鬼一体を絡めた凌駕は。
 怯える村娘たちに、助けがきたと知らせる意味を含めての名乗りを上げ。
「これ以上、一歩も進ませないんだから!」
 続いて、芽衣子が到着し。
 加速術からの跳躍、それと鳶加藤の忍者刀をもって。近くの赤女鬼、一体の角を破壊せしめたあと。
「そうさ、こっから先には行かせらんないねぇ!」
 弾幕重視に、SMGとアサルトライフルのトリガーを引き。制圧射撃を行なうティリア・クルツや。
「相手が鬼ならば、女相手でも情け無用!」
 分身ノ術で自衛しながら、一ノ太刀を成就しての。二念仏の太刀を振るう不知火 天牙ら、来世人の面々も駆け付け。
(おそらく、村娘を逃がすのは。赤女鬼を紛れ込ませるための偽装、視界が悪いのを利用して変化するつもりね)
 そうした場へ急ぐ、ぱんてぃの上にて。
 今現在も、千絵代は想像を膨らませ。
(後方の元親自身が囮に、来世人の多くを引きつけ。女鬼の一部と包囲、変化した女鬼は優しい来世人が保護‥‥隙を見て、燈籠堂の火を消す作戦というところかしら)
 元親が計画したであろう、作戦を推測。
「もし推測通りで、これが通れば。私たちの思惑は一気に瓦解する‥‥そんなことはさせないわ」
 考え通りな場合を想定しての、鬼作戦打破を目指し。上級の見鬼道術を成就するなか。
「夜の森は、何かと面倒だ。自分が先導してやる」
 優れた土地勘を持つ、伊織を始めとした。
 村娘救出組ら‥‥その面々も、悲鳴や戦闘音から判断してか。目標地点と決める、前方の森中では。
「この先に仲間がいるから、その指示に従え――いいな」
「「はい‥‥!」」
 仲間と共闘しつつ、女鬼隊の前に立ち塞がった凌駕が。村娘らに声を掛けたのち。
 ランタンを消すと同時に、加速術などを駆使――。
「弱った個体から、ぶちのめしていくわよ!」
 得物を、地蔵切の太刀に持ち替え‥‥上級の一ノ太刀を成就した芽衣子と同じく。魔法跳躍による立体的戦闘を繰り出したところで。
「助け――」
 女鬼隊の大半、それらの視線が前に向いている隙に。後ろ側へ回り込んだ雪歌が、逃げ遅れた村娘の一人を演じ。
 油断を誘おうと、命乞いをするものの。
「‥‥お前は、来世人だね!」
 村娘の履き物とは思えない欧州製の靴など、いくつかの不審点から。彼の演技は赤女鬼らに看破され。
「ほらほら、丸裸になりな!」
「演技がバレたのは残念だけど‥‥舐めるなぁ!」
 脱衣波なる魔法攻撃を受けるが。
 弘法塗香の御守り、それのスパイシーな香りで。雪歌は全裸にならず、ひとまずの事なきを得た。

 女鬼隊との戦闘、それらの前方で。
「ん――!?」
「おい。騒ぐな! 鬼どもに位置が知れる」
 助けを求め、逃げてきた村娘‥‥その一人の口を。彼女らへ近付いた伊織が塞ぐとともに。
 不器用ながらも、落ち着かせたあと。
「‥‥次へ行くぞ」
 砲念ら僧兵に、とりあえずの身柄確保を任せ。まだ近くにいるであろう村娘の救出へ赴く、すぐ後ろ側にて。
「ごめんよ。きみらの中に、鬼娘さんが混じってたら困るわけでさ」
 救出済みの村娘数名が、僧兵らに連れられていく前に。
 不動は疑念を晴らすべく、鎮宅霊符道術を成就――。
『正体を現せ』
 という法力のこもった霊符を複数枚ほど作り。同意を求めつつ、その身体に貼り付けたところ。
(なんだ、この気持ちは‥‥任務のために化けたのに、正体を明かしたいような‥‥でも、うーん‥‥いっそ正体を明かして暴れたほうが、手っ取り早いかもねぇ‥‥?)
 人知れず、心中での葛藤(かっとう)を続けた村娘の一人が‥‥やがては。
「ええい、しゃらくさいねぇ! みんなまとめて、ぶっ殺してやるよ!」
 変化魔法を解いたのか。
 女鬼隊の一体と思われる、青肌の女鬼姿に戻り。
「「ひぃ‥‥」」
「えっと、やっぱり混じっていたね」
 それな姿を見て。怯える村娘らを尻目に、不動が上手くいったと頷き。
 ゴンスケや来世人仲間と協力しての、青女鬼一体を倒したのと時同じくして。
「――ォォォォン」
 燈籠堂のほうから、甕星のモノらしき遠吠えが響く。
「形代の効果も切れた頃か‥‥チッ、女連中は任せるぜ」
 と。指示通りなら敵の襲来か、など‥‥いろいろな考えにより。
 村娘らの護衛などを、同行中のヤームルらに託した伊織が。猿飛ノ術を成就し、道中――豹型機巧とも合流して急ぎ戻ると。
「降参スル! 保護シテクレ!」
 燈籠堂には。そう叫ぶ青鬼どもの姿があり――どうやら高野山もとい、来世人側への亡命を求めているらしく。
「頼ム、信ジテクレ!」
 というので、話を聞くと。彼らはカイザーズとの戦闘中に。
 化身魔法による加速をもって、どさくさに紛れて逃げ出した混成隊のようで。もう戦う気はないとのことだが‥‥。
「駄目です、お帰りください」
 嘘っぽいため、梅花が現場代表として。丁重にお断りするも。
「――チクショウ、カクナルウエハ!」
 彼女の言葉を聞いた青鬼どもが、友好的姿勢から豹変し。燈籠堂へ向かっていったため。
「まぁ、そうなりますよね」
 破壊される前に、梅花は壺中天道術を成就してからの。中級――魔王神璽ノ舞を舞い。
 にこやかな笑顔のまま、M4のアサルトライフル弾を連射。
「おとといきやがれ‥‥だね!」
 まぁ、あとから。マティルダも雷上動の和弓、その効果付きなる矢を射掛け。
「「ギャ――!?」」
 特殊空間のなかにて、青鬼どもをボコボコにし。
(鬼ども‥‥お気の毒にな)
 それを、伊織が甕星とともに見届けたあと。
 程なくして空間はもとへ戻り、射撃によってボロボロになっていた燈籠堂も。特殊空間に引きずり込む前の綺麗な状態へ戻った。

◆幸村無双
 と、幸村が向かった先は。
(どうや‥‥たとえ微力でも、翻弄されるのは嫌やろう)
 上級、加速術からの。さらに上級、魔王神璽ノ舞を舞い。
 盾を前面に構えながら、霞の忍者刀を振るってくる清十郎と。
「ボス男の精神力、どんどん削るわよ」
 何度目かの飛翔を繰り返しつつ、中級のとゐ波占術よりの精神攻撃を仕掛けてくる純子ら二人組であったが。
「チョコマカと動きやがッて、面白くねェ‥‥」
 しばしの攻防戦に発展するも。攻撃を回避し続ける彼やら、上空から送り込まれてくる精神波動にもイラついたのか。
 清十郎の攻撃が当たる寸前、幸村は超転移の成就を終え。別な来世人のほうへ。
「幸村ぁ、てめぇ軽そうじゃねぇか! ぶん投げてやる!」
 次の相手は。上級の一ノ太刀を成就し、一寸法師の鉄拳を得物に。
 軽めのジャブ、フック、ストレート‥‥というような格闘戦を仕掛けてくる焔羅と。
(神楽法の雷撃は‥‥これだけ近いと、皆を巻き込んじゃいそうね?)
 身構えたまま。攻撃手段についてを考え直したばかりな咲夜の、二人組で。
「痛――でもなあ。角が刺さっても気にしねえ! そのほうが投げるのに‥‥都合いいからな!」
 先ほどのお返しに。焔羅はグサリと、幸村角による反撃を喰らうものの。
 押し寄せてくる痛み、それを我慢した状態から。
「喰らえ! 大江戸プロレスの心意気! ノーザンライト・スープレックスだ――」
 勢いに任せての投技を繰り出すが、幸村の体重は予想以上に重く。
「――面白かったが、テメェは退場だァ!」
 投技失敗の隙を突き。
 またも加速の魔法成就により、速度を増した幸村は逆に。二連続の爪攻撃を喰らわせ。
(俺のことは構わねぇ! みんな、やっちまえェ――!)
 瀕死になりながらも、そう叫ぶかのように倒れた焔羅を目にしてか。
「バカ焔羅!」
 すぐに接敵した咲夜が、抜刀ノ太刀の成就による一撃を――。
「あとは私たちが――」
 さらに、あとから。
 上級の一ノ太刀、神威ノ伎を順に成就した桜花が角を狙い。不意打ちからの一撃を仕掛けたが、それらは決まらず。
「下がれ‥‥」
「‥‥クックッ、もっと楽しませろォ! もっと殺し合おうぜェェェェ!」
 彼女らへと後退を促し、向かって来た綜哲も。爪の二撃でもって仕留めたあと。
 血に塗れた幸村は続けざまに。超転移のとは違った魔法を成就しての、とにかく楽しめそうな来世人たちのもとへ向かっていき。
「あの、おっさん‥‥たまにやけど。攻撃を見ずに避けとるで!」
 驚きを声に出した桃花、そんな彼女が手にするガーンディーヴァの弓など。
 いくつかの射撃武器‥‥その援護に放たれた一撃を受けたり、避けたりしながら進むなか。
(本当なのかは知らないけど。幸村って満身創痍でも‥‥家康を追いつめたらしいから、角が折れても油断は禁物よね)
 迫りくる幸村を前に、渓も改めての覚悟を決め。
「なら‥‥こっちも、少しくらいの怪我じゃ退かないし。完全に倒すまで気は抜かない!」
 接敵と合わせ、得物を振り抜くも。
 幸村の持つ爪は、彼女の覚悟よりも強く。結果的に、覚悟以上の傷を負った渓の血飛沫が周囲に舞い。
「「――渓!」」
 なりふり構わずの救援にと急ぎ。
 燎の狼機功が、幸村の動きを多少なりとも阻害し。身を呈しての凪が飛び出したところで。
「やれ、大門!」
 彼を串刺しにした幸村の背後から、マルグリットが縄ひょうを投擲――。
「ユゥゥキムルァァァァアアア!」
 どうにかこうにか、鬼将一体を絡め取ったのに続いて。
 仲間の回復魔法により、復帰を果たした豊も‥‥すかさず。先の返礼を込めた岩融なる一撃を、幸村の身体へ叩き込んだ。

◆幸村隊とか大鬼隊の行方
 幸村が暴れる前方、御廟の橋。
「何事ニモ構ウナ! 奥ヲ目指セ!」
 そこな橋下に流れる川中にて。
 幸村隊の一部が、自前の牙を用い。罠の細縄を容易く食い破ると同時に、奥之院方面を目指しての泳ぎを続け。
「今でございます! 一斉に、矢の雨を降らせてやりましょう!」
 そうした水泳中な赤鬼どもへ。絃瑞の合図がもとに、僧兵らの放った無数の矢が降り注ぐと。
「えあ子も‥‥感電矢、いっくよー」
 彼らと合流した、えあ子も雷上動弓からの一撃を放って続き。
「――呪禁霊符道術!」
 一方。小反閇道術の結界、その一画へ踏み込んだ赤鬼どもの一体へ。
 神代の蓑を用い、透明化の状態から近付いた澄香が‥‥上級の呪禁霊符道術。それの成就により作り出した、お札大の霊符を貼り付けるとともに。
「‥‥」
 意識を失った赤鬼一体を操り、これまた予定通りに幸村襲撃へ送り出すも。
「同胞ニ何ヲシタ!」
 予想よりも早く、幸村隊側に操ったのがバレたようで。怒った数体の赤鬼どもに囲まれたが。
「これ、終わったら。俺もう部屋から出ない‥‥」
「煌尚さん、お願いします!」
 打ち合わせ通り。オフロードバイクに乗って駆け付けた煌尚が間に入り込み。
 後部に乗せられて、回収された澄香は。どうやら事なきを得たらしく。
「構ウナ!」
 対し、凄まじい速度で逃げていく彼らを見て。追うだけ無駄と少しクールダウンしたのか。
 襲ってくるなら迎撃はするが、使命を果たすのが優先と。赤鬼どもは何度目かの侵攻を再開――。
「「ウォォ――ッ!」」
 やがて、地上侵攻側の幸村隊は。
 鬼特有の再生能力をもって‥‥矢の雨に耐え。川中からの上陸を終えた一部と、再合流しての勢いを増し。
「悔やんでいる暇などありません。あとを追いましょう」
 残り三体まで減らしたものの、幸村隊に御廟の橋を突破されたのち。絃瑞は呼び掛けに応じ、無事だった僧兵らと追撃に動き。
「まだ終わってないよ、がんばろー!」
 そんな。最後の橋を抜かれたことの挽回をすべく、奥之院へ向かった彼らを見送ると。
 えあ子もまた‥‥突破時に攻撃を受け、負傷した僧兵らへ。上級の地蔵菩薩慈悲真言による治療を行ない、自らも急ぎ奥之院へ赴いた。

 その頃、一の橋――。
「大鬼は足じゃ! 足元を狙え!」
 援護に駆け付けた美乃が。大黒鬼一体の傍らで、チョロチョロと動き回り。
「「喰らうがよい!」」
 別の大黒鬼には。上級の与一ノ弓を成就、それによりの矢を放った彩霞と同じように。
 奈々が効果上昇ノ舞にて、威力を上げた中級の鳴る神霊迎えノ舞を放ち。
「――次の隙を狙ってください」
 またも、加速術からの回避行動により。
 いく度となく狐弥も援護役として、大鬼隊の注意を引き付け。
「斬って、付与して‥‥なんだか。お餅つきみたいだねー♪」
「これで‥‥終わりですわ!」
 再度の日射効果を付与できるよう、きゆがピッタリと寄り添うなかで。
 蘭子は大黒鬼一体に、トドメの一撃を加え。
「「ガァァァ‥‥」」
 少なからずも、来世人の対応組数名に被害を与えた大黒鬼ども‥‥その全てが倒れたあと。
(右角も頂くよ)
 表と裏の口調は違えど、引き続きの巨青鬼を狙う影百に続き。
「グォォッ」
 先ほどと同じ、上級奥義法を成就した蘭子もまた。角折れだが前進と攻撃を繰り返す、相変わらずの巨青鬼へ斬り込み。
「要救助者は‥‥お任せして。倒し終えたら、奥の増援に向かいますわよ!」
「はい、しっかりとカバーさせていただきます」
 前衛の盾役に努め、倒れた仲間らを長行に任せ。
 その彼が頷いてから、しばしののち。
「‥‥!」
 最期の時まで、抵抗を続けた巨青鬼は。ついに一の橋を越えたところで力尽きたのか、来世人の道を塞ぐかのように倒れ。
 来世人どもの足止め、そう幸村に命じられていた大鬼隊。それな隊長格としての役割を全うした。

◆蒼き鬼将、堕つ
 そうしたわけで。特殊空間での魔法防止が、元親を窮地に追い込み。
「‥‥戻ったか」
 もとの通常空間へ戻ったのを認識した元親が。
 今一度の一ノ太刀成就から、透哉が今度も弁慶ノ伎の効果により。大傾奇の大太刀を取り出しての、不意打ちを仕掛けたのに対し。
「やってくれる‥‥!」
 超転移での回避・移動を選び、来世人のほうへまた。水流波の魔法を放つさなか。
「わー! 私もろともかー!」
 それより先に。除傷形代道術の成就による形代を――ブナは目の前のナラを優先し、貼り付けるも。
 放たれた水流は、彼女らを巻き込んでの傷を与え。
「頑張ろう、美味しいお酒が待ってる」
 それでもと。皆を激励しつつ、上級の地蔵菩薩慈悲真言を成就した右一や。
「次の結界時は、私も前に出ます――今の内に回復を」
 マジカルシールドを構えながら。
 同じくの仙級、地蔵菩薩慈悲真言の成就をもって。皆の傷を癒していくナラを始め。
「今度は、あたしが皆を癒すわ。ガンガン攻めて頂戴!」
 宣言した朔らの数名が、来世人皆の治癒行為を担当すると告げ。
「んじゃ‥‥俺たちと一緒に。ご機嫌な日の出を見ようじゃねーか! もっとも見れるもんならの話だがなァ!」
 得物を掲げた渚が、一層と暑苦しく。
 挑発を続け、迫って来るのを目にしてか。
「‥‥付き合ってられぬ」
 背を向けた元親は、有利な立ち位置を確保するため。次の転移先を探し出すも。
「森中で退路探すっなら、こっちくっと思ったぜ!」
 ようやく探し当てた転移先は。
 優れた土地勘でもって、工助が先回りしており。
「皆、準備はいいかい? もう一度いくよ!」
 その矢先。
 皆の魔法成就を確認した春子が。二度目の壺中天道術を成就し、またも元親を前と同じ効果の特殊空間へと引きずり込んだところで。
「またか‥‥厄介な」
「僕たちは、これを何度でも繰り返すよ! 鬼の元親さんを倒すまでね!」
 再度の特殊空間に、不満げな表情を浮かべた元親の横っ面を。
 これまた。金剛力士真言を再成就した団次郎が、思いっ切りに殴り付けた。

 ほぼ同じ頃。元親と交戦中の先、そこが森中では。
「左手側のは‥‥村娘に化けた女鬼よ!」
 下着のような名を持つ、一反木綿の上から。
 幻影看破の力と、自前の卓越した視覚をもって千絵代がガーンディーヴァの弓を構えたまま。変化中となる赤女鬼の居場所を、対応組の皆に伝え。
「どうだ、どこから襲われるか分からないだろ?」
 それな呼び掛けに応じ。
 森中の木々やら、闇夜を紛れての加速術から。女鬼隊へ近付いた凌駕が、残りの村娘らが逃げ切る時間を稼いでいくと。
「側面だ、木々の陰にいるぞ!」
 鬼の殺気やら、何やらに反応した天牙は。舞い戻りな十字型手裏剣の投擲にて。
「一気に仕留めるよ!」
「「身体が冷えちゃう‥‥!」」
 猿飛ノ術を成就した魅衣奈は。まきびしなどの各装備を用い、凌駕の足止め行動に続いたのち。
 素戔嗚息吹迎えノ舞の成就でもって、赤女鬼ども数体の動きを鈍らせ。
「‥‥!」
 ようやく、村娘の撤退が終わったところで。
「無抵抗な者に化けるとか‥‥汚ねぇ真似した奴らには、情けなど無用!」
 敵の殲滅に気持ちを切り替えた凌駕が、一寸法師の鉄拳なる一撃にて。赤女鬼どもの再生能力を封じつつも。
 続けざまに。影縫の忍者刀を振るっての麻痺毒を、女鬼どもの数体へ与え。
「よーし! 気合を込めた一撃を‥‥ぶち込んでいくわよ!」
 やがては――上級の一ノ太刀を成就し、駆け出した芽衣子とともに。女鬼隊の角を破壊していき。
「全裸になろうが‥‥己の体に恥ずべきところなんて、何もない!」
 また、彼女らの眼前では。
 女鬼どもに、脱衣波の魔法を受け続けた結果らしく。衣服解除な格好になりながら、皆との挟撃を続ける雪歌がおり‥‥それな彼姿をチラ見してか。
「ぱんてぃちゃん‥‥もしもの時は、私を包んでね」
 例の一反木綿へ。ひと声を掛けたあと――変化中の赤女鬼を狙い。
 上級の与一ノ弓を成就しての矢を、次々と射掛けていくは。弓主体の千絵代に。
「この矢使いな。あたしは忍者刀の二振りがあるからね、それを使うさ」
 自らの予備矢使用を促したイヴも、上空の彼女を気に掛けたまま。両手の得物を振るっての攻撃を続け。
「‥‥ああ、元親様!」
 最後の赤女鬼、それが地面に屈し。他の女鬼同様に動かなくなると。
 女鬼隊に与えられた役目もまた。来世人におおかた阻止された形で終結し。
 ‥‥。
 やがては。女鬼隊が敗北した後方、森中でも。
「俺も‥‥ここまでか」
 いく度となく繰り返した壺中天道術の特殊空間にて、元親の残った左角が折れ。
 さらには。折れた槍を手に、多量の血を流しながらも彼が見つめる先にて。
「これが最期なら言っとく。あんたが人なら良かったって――」
 全力で戦いを挑み、勝ちをもぎ取った来世人の皆を代表し。透哉は静かに告げ。
「俺は、俺らは。自分の力を確認するため、戦い殺し続けなけりゃならなかった、そんな‥‥あんたみてぇにはならねぇようにする」
 勝利者としての誓いとともに、その言葉を終えると。
「フン‥‥最終的に、どうなるかは‥‥貴様ら次第だが。俺も言っておく、まだ‥‥この戦いは、終わってないと、な」
 元親もまた、最期だからと語り始め。
「そろそろ、貴様らの助けた、娘どもが‥‥儀式の破壊に、動き出す‥‥頃合いだろう、よ‥‥」
「「!!」」
 意味深なセリフを述べつつ、吐血した元親は最期の力を振り絞り。
(幸村――約束を守り、この遊びに付き合ったのだ。貴様も‥‥与えられた己の役目を果たせ‥‥!)
 特殊能力である伝心をもって、幸村にテレパシー的な思念を送ったようで。
 それを最後に、元親の力は尽き。満身創痍の皆に代わって、透哉がトドメの一撃を入れた。

◆紅き鬼将も、堕つ
 そして、中の橋付近での戦いも。刻々と終わりに近付き。
 幸村の身体に、豊の一撃が入るも。
「オラ、倍返しするぜェ!」
 またも加速的な動きをもって、幸村は彼女の身体に。先のと同じ爪の二連撃を返し。
「「――!」」
 さらには。とゐ波占術を成就したタチアナらの、波動なる精神攻撃に構わず。
 豊にトドメを入れようと、爪を振り上げたところで。
「覚悟しろ‥‥!」
 何度かの透明化を繰り返し、幸村へ接近していた龍重が。上級の一ノ太刀成就によって姿を現したらしく。
「テメェも返り討ちにしてやるぜェ!」
 それに気付いた幸村も、爪の二連撃で迎え撃ち。
 龍重の身代わり石が、爪一撃目の威力を肩代わりするものの。二連撃目は通り。
「くッ‥‥それでも!」
 しかし、退くわけにはいかないと。龍重は傷を負ったまま、反撃覚悟の一撃を与え。
「同じ過ちはもう犯さん。まだ間に合うはずや‥‥!」
 その一撃に幸村が耐えての、さらなる連撃を加えようとするまぎわ。
 駆け付けた清十郎が、先のように舞い。忍者刀を振るうも‥‥それが命中するより早く、転移の魔法成就でもって幸村は避け。
「ボス男は‥‥後衛のところよ!」
 少しずつ御廟の橋へ近付いていく、幸村の転移先。純子が声にした通り、そこは――。
(結界は念のためだし‥‥いいとして。影縫のは、夜間じゃ影が分かりにくいな)
 中級の中反閇道術を、何度か成就したという。ヤズゥンの作った結界内で。
 そんな彼が――中級の太上神仙秘法道術を成就しての、霊符2枚を飛ばし。剛忍の鎖鎌を振るうも、鎖鎌のほうは超転移にて数m先に回避され。
「「「‥‥!」」」
 次の転移先で、幸村を出迎えたのは。
 杏花が率いる野獣の群れであり。彼女の合図がもと、一斉に襲い掛かるが。
「喰われてェか、獣ども!」
 人肉はもちろん、妖怪肉も喰らう幸村にとっての彼らは『おやつ』みたいなモノであり。
「がるる‥‥!」
 命の危険を察した大蝦蟇、クマーの二匹は早々に逃亡。
 結果、豹のみが臆することなく戦い。
「鬼真田の口を狙って、フィッシングチャーンスなのです」
 それな隙にと。中級の阿修羅王真言を成就した杏花が、釣り竿を連続的に振るうも。
「飼い主のほうは‥‥避けるまでもねェ」
 そう述べた幸村は、釣り竿アタックを回避することなく。
 先に豹を仕留めての、杏花へ手を伸ばすと。
「やらせないわ!」
 鍛神の金鎚を手に、上級の阿修羅王真言を成就した藤花が子どもを守るべく――突撃。
 少しの傷と引き換えに彼女は、瀕死の傷を負わされたことで。
「二人は、やらせません!」
 さらに桜花が二人を救うべく、上級の一ノ太刀を成就しての突撃を敢行する。そこを狙う幸村、桜花はあわや、串刺しにされかけたが。
(‥‥ここ!)
 爪を受ける直前に、神威ノ伎による超転移を敢行。背後へ瞬間移動し、振り向いた幸村のその頭へ、鬼切の大太刀を振り下ろし。
「転移だと‥‥ぐあっ!」
 かろうじてではあったが、鬼将一体の左角を斬り落とすことに成功した。

 とまぁ、幸村の角が残る一つとなり。
「面白くなってきたなァ――ん?」
 ある意味、凄みを増した幸村が仕切りなおすとともに。
 桜花らのほうへ歩き出すも、どうやら元親の伝心‥‥それによる最期の言葉が届いたようで。
「待ってろ‥‥元親」
 元親の死により、戦闘好きな自分を戒めたのか。笑みが幸村の表情から消え。
「今から弘翁を斬り、テメェの亡骸に喰わせてやるからよォ!」
 場の来世人らを一瞥すると。奥之院を目指しての、勢いよく駆け出し。
「ここで逃がしでもしたら、後々‥‥厄介なことに!」
 すぐに渓が、月読命ノ舞を舞い。
 光の矢を放つものの、幸村の足は止まらず。
「‥‥邪魔だァ!」
 途中。操られているのか、襲って来た赤鬼の一体を。
 連続行動というべき加速を得る魔法を用いて、一気に仕留めたのち。幸村は御廟の橋を通過――。
「「幸村!?」」
 進路上にいた僧兵、手負いの来世人も何人か斬り捨てると同時に。奥へ続く階段も駆け上がり、目的の奥之院へ到達した。
 ‥‥。
「オラァ! 公翁、首寄こしやがれェ!」
 何人かの躯を投げ捨て、奥之院到達を知らせる幸村。それな彼が目にしたのは。
「守りを固めるのだよー」
 幸村隊の襲来で、少しばかり完成予定を早めたようだが。
 上級の小反閇道術により、充分な大きさの結界を作ったあきほ。その彼女を始め。
「やれやれ、荒事は苦手なんだけどね」
 そうボヤキながらも、公翁ら僧を守るように。
 上級の太上神仙秘法道術、それを成就し作り出した霊符3枚を飛翔させ。赤鬼らへ飛ばす矢塚や。
「すぐに動けるよう、しちゃるけえのう!」
 お供の三羽梟をもちろん、吉祥天慈悲真言やら大島椿油やらも用いての来世人・僧兵の治癒に当たる右京と。
「何やら、忙しくなってきましたな」
 その助手として。地蔵菩薩慈悲真言などを用いた回復補助。
 それと玄武水帝占術、青龍雷帝占術を成就併用しての防衛に努める龍三。
「いけ、ぺったん子! ぐるぐるパンチだ!」
「‥‥」
 あと、幸村の存在に気付いたのか。ぬりかべに攻撃を促し、自らはM16Sアサルトライフルを構える鰤々之進ら防衛組で。
「「!!」」
 残るは消耗した来世人、僧兵らの数名であり。
「公翁は‥‥奥かァ!」
 それだけ確認した幸村は。
 今しがた倒され、己らの役目を全うした幸村隊を横目に。連続行動・無条件回避などの各魔法を成就しての、全力攻撃を開始し。
「せっかくだ、冥土の土産に‥‥いいこと教えてやる! 高野山周りの神社破壊したのは、鬼の封印を弱めるためよォ!」
 あきほの結界にて、能力の半減を感じながらも。
 来世人の数名と戦うなかで、幸村は鬼の封印についてを語り出す。
「要するに、ここだけが封印の全てじゃねェ! いくつか破壊したからなァ、大鬼のようなデカい存在も今後は湯水のごとく、溢れ出すことだろうよ!」
 そして、今後の鬼情報を口にすると。目の前の来世人らを斬り刻み。
「しかしなァ、やはり真に狙うは‥‥ここの儀式! これを叩き潰せば、日本中の至るところに鬼が溢れるッてぇ寸法よォ!」
 自らも傷を増やしつつ。
 鬼軍団の目的を語り終えた幸村は、奥へ向けての前進・戦闘を続け。

 やがて――幸村は。
 精神波動による攻撃も相まって、これ以上の魔法成就が不可となり。
「粘りやがッて‥‥本当に忌々しく、面白ェ奴らだぜ」
 さらには。高野山で動けうる来世人のほとんど、それらに包囲された幸村が。
 折れた両爪で身構えての、奥へ向けた最後の突撃に移行するも。弘翁の首を目前にして、底なしとも思えた体力が底を尽いたらしく。
「くそッ‥‥オレも、ここまでかァ‥‥! 面白くなってきたのによォ!」
 その場へ倒れ込んだ幸村は、いさぎよくも敗北を認め。
「そういや、オレを‥‥目の敵にしてたのが、いたな‥‥介錯、よろしく頼むぜェ‥‥」
「いい覚悟ね、親の怒り受けてみなさい!」
 トドメを要求、それには藤花が応じ。
 中級の金剛力士真言、上級の阿修羅王真言を順に成就した彼女が。溜めこんでいた親心を爆発させたところで。
「――ッ」
 二体目の鬼将も、完全に動きを止め。傷だらけの来世人や僧兵らの面々には、安堵の笑みがこぼれた。

◆高野山の夜明け
 夜が明ける。
 それは、奥之院萬燈会の完成を意味しており。
「‥‥申し訳ございません、来世人さま」
 夜明けの少し前。保護していた村娘らの何人かが反乱を起こし。
 隠し持っていた元親水軍設計の焙烙玉で、燈籠堂などの破壊を企てたものの。壺中天道術を扱える来世人らが、その場にいたことで何とか未遂に終わり。
「家族を人質に取られておるのです。協力せねば‥‥人質もろとも食い殺す、と――」
 事情を聞くと、どうやら彼女らは元親に脅されていたようで。本来であれば、人質らに助かる見込みもないと思われたが。
「こちら、高野山調査隊――」
 人手ならぬ鬼手不足、あるいは儀式破壊後の朝餉(あさげ)か。それとも別の使い道を考えていたのか、いずれにせよ不明ではあるも。
 高野山の近くで行動していた来世人の一団が、村娘らの家族を保護したとの報告が機巧などを介して伝えられ。
「勝ちましたね、来世人サマ! やっぱ俺を倒すことだけあって、すげーや!」
 はしゃぐ砲念の言う通り。
 これにて鬼軍団、全ての作戦行動が来世人らの結束が前に屈したことと相成った。

 そうしたのち。動ける来世人の皆は、公翁のもとに呼び出され。
「なあ、公翁さんよ。空海さんが万燈会の願をかけた夜も、綺麗な星空だったんだってなぁ」
 集まった来世人が晴れやかな朝空と、まだ火が灯ったままの燈籠群を見つめるなか。
 矢塚は誰ぞから学んだのか、哲学者ぽくも。公翁へ話し掛け。
「宇宙の真理を解いちゃうような人だったんだろ? そりゃ秘法の一つや二つは残してるんだろうよ。世界の本質、因と果ってな」
 しばし、空海についての話を続けつつ。
「凡ての命は親があって、この世に生を受けるっていう‥‥原理が説かれてるわけだけどさ。鬼ってのは、どういう因果で、この世に現れたんだろうな?」
 ふとした質問にて、話を終えると。
「鬼の出生については、分かりかねますが――」
 今回の鬼軍団侵攻を経て、全てを打ち明ける気になったのか。公翁は静かに語り始め。
「どうやらこの高野山は、強大な何かを封ずる力の礎、その中心になっているのだそうで、それを承知で大師様はこの地に寺を築かれたというのです」
 まずは、高野山の成り立ちから。
「そして‥‥大師様は、自らの身体でもって、それを補強したといいます。そのためか、その身仏が眠る御廟は、ここ数百年、1度も開けられておりません」
 封印の基礎、それらについて。
「しかし、この儀式が無事に終わったことで、しばらくは弘法大師様の御力が続くことでしょう。たとえこの高野山が潰されたとしても」
 最後には。
 高野山のこれからについてを話され。
「と、重苦しい話は終わりにして‥‥来世人様。この度は高野山を、紀伊国を救っていただき、まことにありがとうございまする」
 改めての高野山、紀伊国を代表し。
 感謝を述べた公翁の笑顔は、この朝空のように晴れやかだった。



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参加者

a.やっぱここ、やんねぇとヤベェだろ?来いよ、ヤンキー!タイマンじゃぁ!
不知火焔羅(ka00012)
Lv316 ♂ 23歳 武僧 来世 異彩
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c.此処を守り切らんとダメなんだろ。弘翁に訊きたい事もあるしな。
霧原矢塚(ka00031)
Lv265 ♂ 32歳 陰傀 来世 大衆
d.ヨッシャァ!気合い入れて行くぞォ!超粘ってやるから覚悟しやがれ!
大文字渚(ka00052)
Lv220 ♂ 19歳 武僧 来世 婆娑羅
b.相変わらず援護しか出来ないが、可能な限り討伐や時間稼ぎに助力致そう。
大狼忍(ka00063)
Lv231 ♂ 20歳 忍傀 来世 真影
f.これ以上一歩も進ませないんだから!
沖田芽衣子(ka00120)
Lv270 ♀ 22歳 武忍 来世 大衆
d.さて、啖呵きった手前、こっちかしらね?
春待朔(ka00135)
Lv265 ♂ 20歳 傀僧 来世 異彩
d.とりあえず全力で行っか
平口工助(ka00157)
Lv378 ♂ 22歳 武僧 来世 婆娑羅
b.よろしくお願いします。
赤井狐弥(ka00215)
Lv204 ♂ 20歳 忍僧 来世 影
サポート
a.足止め、できっかねえ。まあ、やってみるさ。
吉弘龍重(ka00291)
Lv226 ♂ 17歳 武忍 来世 大衆
b.難しいとは思いますが、赤鬼を相手にしてみます。
水上澄香(ka00399)
Lv216 ♀ 17歳 陰傀 来世 異彩
サポート
d.これが最後の防衛戦にしたいもんだぜ!
鈴城透哉(ka00401)
Lv221 ♂ 15歳 武僧 来世 傾奇
b.ワタクシは鬼を狩る鬼でございますれば。日射も準備させて頂きましてよ
高杉蘭子(ka00512)
Lv533 ♀ 20歳 武神 来世 婆娑羅
サポート
g.最終防衛戦は決して抜かせませんよ。
藤枝梅花(ka00566)
Lv281 ♀ 22歳 神陰 来世 麗人
サポート
a.幸村本人でないと分ると、高揚は薄れますね。やる気は増しましたが
藤枝桜花(ka00569)
Lv298 ♀ 23歳 武忍 来世 大衆
サポート
a.微力ながら前線に立たせてもらうよ。みんなが戦い易いよう援護するつもりや
潤賀清十郎(ka00609)
Lv297 ♂ 27歳 神忍 来世 異彩
サポート
f.鬼はこっちでどうにかする。娘さん達はみんなに任せるぜ!
莱堂凌駕(ka00613)
Lv325 ♂ 17歳 忍僧 来世 大衆
サポート
e.然らば、混成隊を迎撃致す。 我が桃太郎のの太刀を受けてみよ!!
ミスト・カイザー(ka00645)
Lv272 ♂ 24歳 武忍 来世 質素
b.御廟の橋で、射撃にて敵を迎え撃ちます(選択肢はこれで良いですかね?)
遠野絃瑞(ka00651)
Lv223 ♂ 28歳 武忍 来世 質素
サポート
e.よーし、混成隊に仕掛けるぜー。 サポートにも分身ノ術を付与するよ。
ミア・カイザー(ka00679)
Lv243 ♀ 24歳 陰忍 来世 異彩
サポート
b.自力で戦線に立てる回復役として参加しようかと
佐藤長行(ka00775)
Lv250 ♂ 25歳 神僧 来世 大衆
サポート
e.よーし、混成隊など、我が金砕棒で葬らん!!だ、これがな。
アイナ・ルーラ(ka00830)
Lv215 ♀ 24歳 武僧 来世 婆娑羅
サポート
f.正直、私は役に立ってるかしら?自信なくて。今やれる事をただ頑張るだけね
升田千絵代(ka00869)
Lv475 ♀ 25歳 武陰 来世 傾奇
サポート
g.よろしくお願いします。
ヤームル・アイマーヴィ(ka00918)
Lv275 ♀ 15歳 忍傀 来世 異彩
d.おうおう、元親さん。ここは通さねえ。通す訳がない
越中団次郎(ka01138)
Lv331 ♂ 32歳 武僧 来世 婆娑羅
サポート
c.ここは守るのだ!だったりするのだよー
藤あきほ(ka01228)
Lv351 ♀ 20歳 陰僧 来世 異彩
サポート
b.ここは絶対通さないよ! 通ろうとしても水龍で押し返すんだから!
霧ヶ峰えあ子(ka01260)
Lv329 ♀ 16歳 神僧 来世 麗人
a.やっぱりこっちと遊びますね。……ユゥキムルァァァァ!
大門豊(ka01265)
Lv178 ♀ 15歳 武忍 来世 質素
サポート
a.前宣言した通り襲ってくるならぶっ倒す!
東雲渓(ka01290)
Lv250 ♀ 21歳 武神 来世 異彩
サポート
b.主力の手を煩わせる訳にゃいかんのじゃ、雑魚は大人しく退いとれ!
荒戸美乃(ka01301)
Lv191 ♀ 25歳 忍僧 来世 質素
サポート
e.お帰り下さいませ、鬼の団体様。ぶぶ漬けの用意は出来ております。
カミラ・ナンゴウ(ka01313)
Lv218 ♀ 23歳 忍僧 来世 大衆
c.限界まではっちゃけたりぃ!後の面倒は見ちゃるけのう。
毒島右京(ka01318)
Lv291 ♂ 35歳 陰僧 来世 大衆
サポート
a.来世人は決して侮れない存在である事を教えて上げないとね
藤枝藤花(ka01346)
Lv246 ♀ 40歳 武僧 来世 大衆
サポート
g.夜釣りじゃねぇだろうな……。森なら多少は分かる、さっさと見つけて戻るか
千杜伊織(ka01367)
Lv259 ♂ 16歳 陰忍 来世 影
f.村娘に紛れて女鬼を討ってみるよ!
華音雪歌(ka01505)
Lv283 ♂ 25歳 武忍 来世 傾奇
d.壷宙天で来世人ごと魔法を封じるよ
池袋春子(ka01511)
Lv331 ♀ 34歳 神陰 来世 麗人
g.村娘さんたちを助けないとね。回復役はまあ、任せてよ。
八十神不動(ka01514)
Lv237 ♂ 23歳 陰僧 来世 異彩
d.借りはお返ししたいものですね。こう見えて、しつこいのです私。
根子ナラ(ka01549)
Lv261 ♀ 22歳 神僧 来世 婆娑羅
サポート
b.よろしくお願いします。
富士影百(ka01570)
Lv185 ♀ 18歳 武忍 来世 質素
サポート
 クックッ‥‥面白ェ!邪魔するなら、弘翁ともども斬り刻んでやるぜェ!
真田幸村(kz00071)
♂ ?歳