月明りの下。高野山に集った来世人の皆へ、弘翁(こうおう)は‥‥そう語りかける。
「どうか。『奥之院萬燈会(おくのいんまんどうえ)』の完成に、ご助力を」
と、頭を下げた弘翁いわく。
現在、高野山では。奥之院萬燈会という、大規模な儀式の下準備が行なわれている真っ最中とのことで。
「この儀式は、今宵を最後に始まり。夜明けまで続きまする――」
という――続けざまの説明に加え、儀式中の奥之院全体には。百基の燈籠が飾られ、院の中央に座した僧らが一心不乱に経を唱え続けるらしく。
「また、全ての燈籠には。燈籠堂から分けられた神聖な火‥‥幾多の聖人・偉人が贈ったとされる清き火を灯しまするゆえ、それらも消されることなきようお願い申し上げます」
此度の儀式を完遂するため、高野山自体の防衛はもちろん。
数百年もの間。消えずに燃え続けている聖火も守ってほしいと、弘翁は告げた。
「鬼武者の兄弟が、弘翁さん殺害を狙っていたようだし。鬼側も奥之院萬燈会の重要性を知っているのかも?」
とまぁ、これまでに得た情報を纏める来世人たち。
どうやら、様々な準備儀式を経て。この年、まさしく、この時に、奥之院萬燈会を成立させる必要があり。
「そう‥‥これが。代々、私どもに申し送られてきていた『寛永16年の儀式強化』でございまする」
改めての説明にと、口を開いた弘翁によれば。この儀式はやはり――何百年もの前、あるいは開山の時から、高野山の座主に伝えられてきたことらしい。
「戦いの準備もござりましょうが。来世人様のおかげで‥‥儀式は今夜を残すのみとなりました」
そして、最後に礼を述べるも。
「‥‥儀式が成立したとして。どんな効力を発揮するんですか?」
「私でも、それは‥‥」
手を挙げた来世人の問いに。
詳しくはわからないと、弘翁は視線をそらしつつ答え。何かしらを隠している様子だが。
(そういえば‥‥飯神様から、奥之院萬燈会に関係してそうな話を聞いたはず)
それよりも、儀式を守ることのが先決と来世人の皆は。神代の地、そこで知り得た情報を思い返し。
「たしか。空海は『仏教を広めるのが真意ではなく、ある秘法の維持を模索していた』と述べたとか‥‥」
「「‥‥」」
来世人一人の言葉に、仲間たちは頷く。
もしそうなら、奥之院萬燈会が‥‥空海の残した秘術として。鬼と関係している可能性が高く、とどのつまりは儀式を無事に終わらせる必要があるだろう、と。
「死者の魂にも報いるため!」
「人魚の‥‥お平さんや、お鱗さんの安全も守るため!」
そののち。
来世人の皆は各自、鬼どもの再来に備え。動き出した模様で。
「来世人サマ! 俺らも戦えます‥‥手足のように使ってください!」
加えての士気が高く、共闘する僧兵のなかには。来世人からフルボッコにされ、心を入れ替えた砲念という卓越者も含まれており。
「はい! 来世人サマの善戦と修復により、高野山各所の守りは万全です!」
さらには。現状を訊ねたところ、砲念は背筋を伸ばしたまま。
高野山全体の応急処置もまた、イイ感じに終わりを迎え。簡単な罠‥‥落とし穴の設置も、同じように終っていると爽やかに答えた。
◆月下ノ将鬼ども
こうして、高野山の防衛準備が進む頃。
時を同じくしての、月明りの下。高野山の一画にて。
「‥‥儀式が始まッたか」
夜空を見上げる、一体の鬼がもとに。
槍を手にした蒼き鬼将、長宗我部元親の率いる鬼軍団が合流する。
「月夜の約束を果たしに来たぞ、狂犬。いや‥‥来世人どもにならって、幸村‥‥それとも信繁とでも呼んだほうがいいか?」
と。来世人に右角を折られ――自慢の鬼水軍を壊滅状態へ追いやられながらも、律儀に現れた元親の声掛けへ対して。
「クックッ‥‥テメェの好きなように呼べ。生前なんぞは知らんが、どれもオレという存在を表わすのに相応しい名前だからなァ」
一体の鬼もとい紅き鬼将、真田幸村は嫌味なく答えると同時に。
その元親と、再編された鬼軍団を出迎え。
「数は多くねェが。弘翁をぶっ殺し、ここを破壊し尽くすのには充分だろうぜ」
鬼軍団のなかより、半数の鬼どもを引き取ったあとすぐ。それらを引き連れた幸村は高野山の奥之院へ向けて歩き出し。
「それと‥‥詳しくは知らんが。来世人どもは流玄とかいう新たな力を得たそうだ、気を付けることだな」
別れぎわに元親が、どこぞで得た来世人情報を口にしつつ。
残りの鬼軍団を引き連れ、彼もまた自らの目的を果たすため。高野山の燈籠堂方面へ歩き出すと。
「そいつァ、ぶっ潰す楽しみが増えていいじゃねェか」
振り返ることなく、蒼き鬼将と片割れの鬼軍団を見送った幸村は。口もとに不気味な笑みを浮かべ。
再度、弘翁のいる奥之院へ向けて歩き出した。
◆蒼ノ将鬼
しばしの時が過ぎ、燈籠堂付近の森にて。
「さて、仕掛けるとするか」
各色の大人鬼で編成された混成部隊を傍らに。元親は高野山侵攻の号令を送り。
「逃げないと、食べちゃうわよ?」
「「ぃゃ――」」
鬼軍団から編成した女鬼隊、その赤女鬼どもに追わせるかのごとく。
高野山への道中にさらい、幸村の目に留まらぬよう拘束し、隠しておいた若い村娘たちを前方の森へ解き放つ。
「「お助けぇ~!」」
鬼に捕まり、追い掛けられる‥‥そんな恐怖に駆られ、燈籠堂のほうへと逃げまどう村娘たち。
「本来なら、幸村にも分けてやるところだが‥‥娘どもには鬼水軍の代わりとして。せいぜい働いてもらおうか」
そのあとから、鬼の混成部隊を率いて。鬼将の一体である元親が続くと。
燈籠堂方面の森では、やがて。僧兵とともに身構えた来世人たちが元親率いる鬼軍団と対峙。
「「――ッ!」」
居合わせた村娘らを含め、神聖な火を守り抜くための戦いを開始した。
◆紅ノ将鬼
一方での同時刻、奥之院へ続く一の橋付近でも。
「‥‥オレに続けェ!」
鬼軍団の赤鬼ども、それらを幸村隊とし。
各部隊に号令を出した幸村が突撃を続け――僧兵に来世人の抵抗、それと仕掛けた罠で、何体かの部下鬼を失うものの。
「「ォォォォッ!」」
五百貫青鬼を始めとし、参百貫黒鬼ら大鬼隊が一の橋を突破。鬼軍団の後方から、ゆっくりと罠を粉砕しながら進撃していき。
「「「‥‥!」」」
また――数百m先では、すでに。弘翁らが燈籠に囲まれた奥之院の中心に座し。
例の強化儀式を完遂しようと、経を唱え続けているようで。
「狙うは弘翁の首ィ! そのほかはついでだァ!」
やがて、こちらも。
生き残りの幸村隊を率い、突出した幸村と。本命の来世人たちとが中の橋で対峙。
「「――ッ!」」
しばしの睨み合いを経て、来世人の皆は弘翁らはもちろん、奥之院を守り、奥之院萬燈会を終えるための戦いを開始した。
※幸村の侵攻方向、鬼軍団の展開位置
・一の橋(大鬼隊)
↓
・中の橋(幸村、幸村隊)
↓
・御廟の橋
↓
・奥之院
※元親の侵攻方向、鬼軍団などの展開位置
・森(壱)(元親、混成隊)
↓
・森(弐)(村娘たち、女鬼隊)
↓
・燈籠堂
化身
二足の影・大きな二足の影・大きな二足の影
選択肢
a.幸村:幸村本人 | b.幸村:幸村部下 |
c.幸村:支援(壱) | d.元親:元親本人 |
e.元親:混成隊 | f.元親:女鬼隊 |
g.元親:支援(弐) | z.その他・未選択 |
マスターより
本シナリオは、世界の歴史を動かす可能性を秘めた企画『RealTimeEvent【SenkitaHistory07】浄土を喰らう鬼真田』のグランドシナリオになります。
詳しくは、シナリオページの『シナリオって何?』の『グランド』の項をご参照ください。
なお得られる化身知識は3種のみですのでご了承ください。
黒鳥です。来世人の活躍により、元親の鬼水軍は壊滅。鬼軍団の戦力も低下しましたが。
何かしらの影響で、鬼の数が増えたのか。元親&幸村が戦力を整え、高野山への侵攻を再開しました。
夜の高野山を舞台に。鬼軍団の攻撃などに対応しつつ、奥之院萬燈会を無事に終えるよう努めてください。
『◆月下ノ将鬼ども』の項は、来世人キャラは知り得ない情報ですが。
以降の項は、僧兵などの報告により。知り得た情報として扱ってください。
高野山の各所に。簡単な罠として大人サイズの『落とし穴』が仕掛けられています。
砲念を始めとした僧兵らは、要請に応じて共闘します。
奥之院は高野山の奥にあり、院の周囲に火の灯った燈籠(石製)が百基並べられています。
奥之院、弘翁ら僧への直接攻撃に加え。燈籠が破壊されると、儀式失敗の可能性が高まります。
敵は。将鬼の幸村、赤鬼で構成された幸村隊(罠で数減少)、参百貫黒鬼や五百貫青鬼で構成された大鬼隊となります。
燈籠堂の近くには森が広がっています。
聖なる火は燈籠堂の内部に奉納されているため、堂の破壊により、火が消える可能性もありえます。消えた場合は、儀式に悪影響が生じます。
堂付近の森には、女鬼隊に追われている村娘たちがいます。
敵は。将鬼の元親、各色で構成された大人鬼の混成隊、赤女鬼で構成された女鬼隊となります。
幸村側の、一の橋、中の橋、御廟の橋には泳げる大きさの川があります。
来世人の初期位置は自由で、以下は各選択肢の補足です。
a.幸村:幸村対応
主に、幸村を対応します。
b.幸村:幸村隊・大鬼隊対応
主に、幸村の部下どもを対応します。
c.幸村:支援(壱)
弘翁ら僧の護衛や。奥之院・燈籠の防衛などに努めます。
d.元親:元親対応
主に、元親を対応します。
e.元親:混成隊対応
主に、元親の部下。女鬼以外の鬼どもを対応します。
f.元親:女鬼隊対応
主に、元親の部下。女鬼どもを対応します。
g.元親:支援(弐)
村娘たちの確保や。燈籠堂の防衛などに努めます。
それでは。将鬼どもの野望を砕くため、皆様の力をお貸しください。