【SH07】揺るがぬ光

担当 海月
出発2016/09/27
タイプ ボイス A(Lv250以下) 連動
結果 普通
MVP 鈴城透哉(ka00401)
準MVP 平口 工助(ka00157)
大門 豊(ka01265)





オープニング

◆高野山境内
 痩せた月の光さえ厚い雲に遮られ、何かに怯えるように焚かれた篝火だけが、地上に影を落とす夜のことだった。有事に備え高野山に詰めていた来世人の耳に、異変を知らせる僧兵たちの叫び声が聞こえてきた。どうやら、招かれざる何者かが侵入したようだ。
 すわ、敵襲か――と飛び出した彼らの目は、地を弾丸の如く疾駆する影を映した。制止しようとする僧兵、追いすがる僧兵を置き去りに、影は来世人の下へとやってくる。
 篝火に照らし出されたその体躯は漆黒、知性を湛えながらも野性を残した鋭い眼光、そしてふさふさと揺れる六本の尾――六尾ノ狼か。
 どこか殺気立った様子の六尾ノ狼。しかし、此方へ危害を加える意思も無いようだ。何用か、と誰かが問うと、彼はくわえていた二つのモノを宙に放った。
 これは――赤鬼の指か? 食いちぎってきたのか? しかし、大きい。通常の赤鬼のものではあるまい。そしてもう一つは何かの紋章のようだが。

登場キャラ

リプレイ

◆全編通して再生



◆オープニング


◆焦燥

 朝日なす輝く宮、夕日なす光る宮――けれど、今は。

 神さびた境内を吹き抜ける生温い風、混じる鉄さびた臭い。
 かつて静謐であったその地に、陰惨な殺戮の痕が影を落とす。

「これ以上、鬼の好き勝手にさせる訳にはいかないわ!」
 決然と言い放ち、升田 千絵代は迫りくる脅威へと目を走らせた。
「左から回り込むように赤いのが六、正面から黒いのが六……でも、これは……まさか……全て大鬼なの!?」
「はは。でけぇ……数もすげぇ多い。こりゃ、きついな……」
 思わず漏れた弱音、人としての正常な反応。抑え込み、鈴城 透哉は六尾ノ狼を見る。
「けど、俺らならってわざわざ寺まで来てくれたんだろ。ならその期待……答えない訳にゃいかねぇよ!」
「だな。それじゃいっちょ、突っ込んでみっか?」
 あっけらかんと。気負い無く応じるのは平口 工助だ。
 その温度差にやや戸惑い、初陣となる天河 静水が尋ねる。
「ちょっと待ってくれ。マズイ状況なのか? 何とかなりそうか?」
「ん? んー、どっだろ?」
「正直に言いますと……倒しきれないかも知れません」
 考えるのは他の仕事、とばかりに工助。
 代わって答えたのはバイクに跨る大門 豊。張り詰めた表情が状況を物語る。
(こいつでの戦闘は……無理ですね。魔法を使わずに歯が立つ相手では無い)
 愛用のオフロードバイクも今はその鼓動を止めていた。
「彼我の数的戦力差は、狼を入れても六対十二……此方の不利は否めないわ。少なくとも、大鬼は本来複数がかりで戦うべき相手よ」
「……大鬼の方が倍も多いようだが? それはもう、戦いにならないのでは」
「策が打てれば、戦いようもあるのだけど……」
 打開の道を探る千絵代。その表情は険しい。本殿周囲の敷地は石垣で守られていたが、大鬼の巨躯に対しあまりに頼りない。
「確かに、あの数と一度に戦うのは辛ぇ。だったら基本どおりにやるしかねえよ!」
「……集中攻撃で、まずは一体ずつでも数を減らさないと、ですね」
 闘志を漲らせる透哉。
 豊は愛車との名残を惜しむように一撫でし、頷いた。活路はその先に。
「そうね。幸い、敵は横に広く展開しているわ。皆は回復力の劣る赤いのを集中して倒して」
「おう。赤い奴からだな! って、升田はどーすんだ?」
「私は――その間に黒い奴の角を折るわ」

◆打開

「ひょっとしたらだが、本殿には生き残った人が隠れているのでは?」
「……そっか。鬼が広がってのは逃がさないためにか! はは、天河、初戦闘なのにすっげ落ち着いてんじゃねェ?」
 鬼の動きを見ながら呟いた静水。その声を拾った工助が頼もしげに笑う。
「そうか。だとしたら――」
 本殿と思しき建物は四つが連なっていた。透哉が六尾ノ狼を見ると、彼は一つ頷き、向かって左側の大鬼たちを示した。
「行きましょう。包囲の輪が閉じる前に……食い破る!」
 あの数を同時に相手にすれば、一分と持たず磨り潰されるだろう。やられる前にやるしかない。
 覚悟を決め、豊は自らの足で地を蹴って走りだす。
「こんだけの鬼ぶっ倒して神社守り抜きゃ、鬼共にゃ大打撃でみんな安心できるだろ。……さぁ、来世人の力見せてやろうぜ!」
 鉄拳に漆黒の炎を灯し、透哉が続いた。
「おっ? これは……ありがとな!」
 体が軽い、六尾ノ狼の魔法か。
「はは、こりゃいっな!」
「う、ううん……。バイクより走った方が速いなんてぇ……」
 見る見る間に敵との間合いが詰まり、先ずは透哉が先手を取った。自らの倍ほども背丈のある大鬼、その懐へ飛び込み鉄拳を見舞う。黒焔が大鬼を灼く。
「さぁ、こっちだデカブツ!」
 とるに足らぬはずの弱者から受けた痛み。大鬼の怒りが、頭上から唸りを上げて降ってくる。殺意に塗れ、技術は無く、けれど圧倒的な破壊力を秘めた一撃。
「そうだ、ほら、こっちだぜ!」
 ひらりとかわし、透哉はそのまま次の大鬼へと攻撃を仕掛けていった。
(確実に仕留めてけるように、俺が囮になって足を止める。倒すのは任せたぜ!!)
 そして――
「敵には再生能力がある。無駄撃ちはできない。集中攻撃をかけて、確実に仕留める……!」
「うし、行っか大門!」
 一ノ太刀を成就させ、豊と工助が仕掛けた。
「人喰いがっ! 消え去りなさい、この世から! 一匹残らず!!」
「……っるぁああああ!!」
 豊の薙刀と、工助の長巻が一閃。血煙があがる。
 苦悶の声、苦し紛れの反撃。至近にて地を抉る一撃に冷たい汗が流れるが――
「うし、まずは一匹ー!」
「引きつけて貰っておけば、いけそうですね……!」
 巨大な赤鬼は追撃を受けてついに倒れ伏した。
 豊と工助はそれを見届けると一旦離脱し、再び魔法を成就させる。
(ただ、魔法も回数は限られている。これをあと何度繰り返せば良いのか、気が重いですね……それに)
 集中攻撃に晒される透哉の負担も相当な筈だ。
「おう。さっさと片付けて、升田と天河の方にも回んねっとな!」
「ええ。急がないと……!」
 黒い大鬼の角を狙うと言った千絵代。来世人の中でも豊が知る限り一二を争うだろう実力者。
 彼女の傍には静水も残ってくれたようだが……その安否を思うと、どうにも嫌な予感が拭えなかった。

◆重責

「悪いわね、付き合ってもらって」
「いえ、流石に一人では無理でしょうし。時間を稼ぐくらいなら何とか」
「よろしくね」
 緊張を孕んだ静水の声。おっとり微笑み、千絵代は弓を構え正面を見据えた。
 大鬼はまだ、此方を敵とも認識していないようだ。奴らにとって人間はただの餌だ。そのささやかな抵抗など如何ほどの物か。
 ――だから、無防備にもその危険な人間の射程へと踏み入ってしまったのだ。

「ひとーつ!」
 風切り音が走り、そして、何かが砕けた。
 その象徴たる角を失った大鬼の泣き叫ぶような絶叫が響き渡る。
「ふたーつ!」
「すごい……」
 二つ目の絶叫。
 黒い大鬼共が一斉に凶相を向ける。敵対者の血肉を啜り溜飲を下げるべく、襲い掛かる。
「みぃ……っ外した!」
 千絵代の引く弓――笛籐は強力な反面、取り扱いは難しい。かの那須与一であったとしても、動く細かな標的を狙うのは容易い事ではなかったろう。
 そして、次の矢を番え狙いを定めきる前には、すでに敵は目前。
「……っ止まれ!」
 ジャラジャラ、と鎖が巨体の腕にかかる。静水の鎖鎌だ。
(せめて、こちらに気を逸らし時間を稼げれば……)
 だが、次の瞬間には静水は逆に鎖に引かれ、宙を舞っていた。
 彼の連れた小型の機巧が本領を発揮するのは偵察などで、戦闘は不向き。初陣に臨む少年にとって、現状はあまりにも過酷だ――。
「ぐぅう……っ!!」
「みっ……つ! 天河君、大丈夫!?」
 強かに地面に叩きつけられ、くぐもった呻きが漏れる。
 かき消すように鬼の狂ったような叫びが響き、千絵代が駆け寄る。
「ど、どうにか」
「一旦距離をとるわ。付いてきて」
 地を抉る金棒の乱打を潜り、第一殿と第二殿の間を走りぬけ、裏手に一旦身を隠す。
 射手である千絵代にとって、接近され数でも劣る現状は不利を通り越して最悪に近い。
(厳しい戦いになるのは承知の上よ。この盤面で、私に打てる手はこれしか……)
 煮えたぎる憎悪に身を焦がすような、怨嗟の叫びが近づいてくる。幸か不幸か、大鬼は本殿よりも此方を優先するようだ。
「……どうやら、とんでもないところに来てしまったようだな」
 口元から溢れた血を拭い、静水が零した。
「怖い、かしら?」
 反撃の算段をたてながら、千絵代が問う。
「何せ、初めての実戦だ。恐ろしく無いと言えば嘘だが……」
 大鬼と戦い、その破壊力を身を以って知った今――静水は、死を意識していた。それでも。
「弘翁さんに高野山を助けると約束したからな」
「義理堅いのね」
 溜息と共に吐いた言葉に、千絵代がクスリと笑った。
「それじゃ、行くわ」
「ああ。本殿には手を出させたくない」
 千絵代が矢を番え、弓を引く。気付いた大鬼が叫んだが、もう遅い。黒い大鬼が、もんどりうって倒れた。
「よっつ……!」
「……来るぞ!」
 鬼の鬼たる証、生命線をへし折り続けたその行為は敵の逆鱗に触れたか。大鬼どもがこぞって殺到し――その先頭を切った大鬼が、突如として倒れこむ。
「腕力では敵わなくても、足元ならどうだ?」
 建物同士の間を繋ぎ、大鬼の足元に張られた鎖。静水は格上の敵に初陣とは思えぬ働きを見せる。
 だが、所詮は多勢に無勢だ。
(むぅ。流石にこれは、手の打ちようがないな……)
 頭上を振り仰げば、三体の巨大な黒鬼が得物を振り上げていて――破滅が、降り注いだ。
「ぐ……ぁあああっ」
 人体が、ひしゃげる音が響いた。
「天河君!? ……うぁああああああ! いつーつ!!!」
 静水は今において黄金に勝る一時を稼いだ己の戦果を見届け、目を閉じた。
「ぐ……後は……たのんだ……ぞ」
 血溜まりが広がっていく。全ての音が消え、静水は孤独で、静かな世界へと落ちていった。
 そして、敵中に孤立した千絵代もまた――
「しまっ……!」
 土中からぬぅと伸びた手に足をつかまれやすやすと持ち上げられる。息のかかるほど間近に、憤怒の形相。
「……きゃぁあああああああ!!」
 大鬼は彼女を地面へと叩きつけた。
 何かが砕けるような、何かが割れるような、取り返しのつかぬ不吉な音が響き渡った。
(……ぁ……あの人が、料理を作って待ってる、のに……怒られちゃう、わね……)
 急速に薄れいく意識の中、愛しい人の面影が浮かぶ。
 ――ただ、逢いたい。今すぐ、逢って甘えたい。

「……ごめんなさい、あなた……」

 力尽きた千絵代の頬を、一筋の涙が伝い落ちた。

◆困憊

「……っ。間に合わなかったか……くそ!」
 透哉たちが駆けつけた時、黒い大鬼どもは仲間の躯を貪ろうとしていた。
 そうはさせじと突撃する。
「おおおっ……これ以上は……やらせっかよ!!」
「よくも、よくも私の仲間を――!!」
 工助が、豊が猛火の如く襲い掛かる。
「くぅ、天河ぁ……初陣で死んじまう奴があっかよ……」
 変わり果てた仲間の姿に工助の声が湿り気を帯びる。
「皆殺しにしてやる……! もっとだ! もっと速く、もっと強く……この身砕けるまで、斬り進むのみ……!」
 激昂した豊の勢いに、鬼が怯む。
 だが、赤い大鬼との戦いを経た彼らは全員が手負い。対する黒い大鬼は内五体が角を失ったとは言え、六体が健在。
「っ!? 駄目だ、黒いヤツは多少――」
「えっ……くっ!?」
 透哉の警告は間に合わなかった。土中から黒い手が伸び、豊が態勢を崩す。そこへ致命の一撃が叩き込まれた。
「……っは……」
「大門ー!! ……るぉおおおおっ!!!」
 重傷を負った豊を庇おうと、奮迅の働きを見せる工助。だが、彼も限界は近い。
 今回居合わせた来世人に癒しの術を使う者は居らず、立て直すことも叶わない。疲弊し、数で劣り――敵は強靭。
 こうなれば、全滅は時間の問題。

 その時だ。神主らしき老人が姿を見せた。本殿に潜んでいたのか、白鞘の刀を引っさげ来世人とは逆の方向へ駆けていく。
(……今更、逃げようと? いや、違う。あれは)
 朦朧とする意識の中で、豊は一度だけ振り向いたその老人と目が合った。
(――そうか。もう、それしかないですよね……)
 老人は呆気なく鬼に捕まり、食われ始めた。その分だけ、鬼の攻勢が僅かに緩む。
 無口な狼が小さく呻く。
「……なんで、あんたらはそんな」
 透哉の握り締めた拳から血が滴る。
(皆、皆、守りたいものがあって……必死に……なのに)
「お前らは、なんなんだよ!」
 体力を失い、神経をすり減らし、薄氷を踏むような戦い。それでも、折れるわけにはいかない。
「……ぉおおおおおお!!」
 ただ、怒りと共に拳を振るい続けた。
「工助さん、透哉さん、一端下がって!」
 豊は後方に仲間を呼ぶと、自らは敵中へと飛び込んだ。
「……大門!?」
「あんた、一体何を!」
「……私は、魔法も尽きました。それにこの傷じゃ、もう満足に動けませんから」
 身に着けた篭手から呪いが溢れ出す。気休めに放ったそれは、黒い大鬼には本来効果のない物だ。だが、彼女は最後に見た。確かに何体かの鬼の動きが鈍るのを。
(あれ……まぁ、この人数で戦えていること自体、奇跡のようなものか。後は……あの人達がきっと、後をやってくれます……)
 呪いの代償に生命を失い、くず折れる豊。鬼たちが容赦なく滅多打ちにする。幾度も、幾度も、不快な音が響く。
「くぁ……。あ……ああああああああ!!!!」
 鬼への怨み。それを自らの一部に工助が吼えた。切れ味を増した刃で角を残す大鬼へ斬りつける。
 敵は最早ただ二人。侮る鬼は――しかし、その一撃を受けどぅと倒れ伏した。
 会心の一撃だったとしても屠れる相手ではない。或いは何かの『タガ』が外れたか……理由は分からない。
「これで五対三、か……こっちは退く気はねぇ。これ以上は誰も……やらせねぇ!」
 透哉の視界の端に、第一殿の隙間から恐る恐る此方を窺う影が見えた。
 既に満身創痍だが、逃げる、という選択肢は無い。

 ――絶望的な状況の中、戦いは続いた。

◆守護者

 僧兵たちが現場へ辿り着くと、数体の黒い大鬼が逃げていく姿が見えた。
 撃退したのか? だが、来世人の姿は見えない……。
 怪訝に思いながら進む彼らが見たのは、本殿の傍で背中あわせに立つ二人。

 まるで一筋の焔のように赤く染まった彼らは、しかし、すでに事切れていた……。


◆スタッフ◆

平口工助(ka00157):ケント
鈴城透哉(ka00401):Full-Go-Ri
升田千絵代(ka00869):瀬良ハルカ
大門豊(ka01265):美鈴唯
天河静水(ka01544):mugikon
ナレーション:大和 稟

原作:海月
編集:大和 稟
企画:才川貴也(REXi)



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参加者

b.声は灰根リオウVAさま希望で。とりあず、攻撃は突っ込んでっか
平口工助(ka00157)
Lv332 ♂ 22歳 武僧 来世 婆娑羅
a.なんとか、間に合ったな…。俺が囮になるぜ! 倒すのは任せた!
鈴城透哉(ka00401)
Lv175 ♂ 15歳 武僧 来世 傾奇
c.正直、厳しい戦いになると思うわ(瀬良ハルカVAを希望します)
升田千絵代(ka00869)
Lv297 ♀ 25歳 武陰 来世 異彩
b.あーもーどーにでもなれ。とりあえず集中攻撃で1ターンキルできれば
大門豊(ka01265)
Lv132 ♀ 15歳 武忍 来世 質素
a.とりあえずaがいないからaにしてみる。……うん。ううーん……
天河静水(ka01544)
Lv123 ♂ 16歳 忍傀 来世 影