[寛永15年3月~来世人大量出現]
島原の乱が終わった頃だったかなあ。ちょうど大勢の来世人がやってくるようになったんだよね。おかげで来世人ギルドはてんやわんや。
どうしてこうなったかは後で詳しく教えるけど‥‥わたし達の出現に合わせるかのように、多くの化身が現れて、いろんな事件を起こすようになったんだ。
[寛永15年6月~【SH01】山王祭と百鬼夜行]

山王祭はすっごい大きなお祭りでね、屋台をやったり、イベント開催したり、みんなで盛り上げて、楽しかったなあ。
あとね、御前試合っていう、天下一ナントカ会みたいなのに挑んだりもしたんだけど‥‥御前試合はすごいんだよ。将軍様の目の前で、あの
宮本武蔵とかと戦ったんだから! でも、すっごく強くて来世人でも歯が立たなかったんだ。あれ以来、なんとかして武蔵さんを倒そう、と狙う来世人もたくさん出たんだよね。
でもね、その御前試合と同時期に、百鬼夜行が起こっちゃったの。大量の妖怪が出現するっていう現象なんだけど、なんでか「すねこすり」っていうカワイイ妖怪ばっかり出てきちゃって。いや、笑い事じゃないんだよ、カワイイ顔して危険なやつなんだから! まあ、みんなでなんとか江戸の混乱は収めたんだけどね‥‥
[寛永15年8月~【SH02】くれなゐけぶる鬼ヶ島]

おっきな鬼事件は、これが最初になるかなあ‥‥伊豆大島で噴火が起こったらね、大量の鬼が島全体を支配しちゃったんだ。本当、多くの人が犠牲になっちゃって‥‥
鬼もね、リーダーがいてね、砦を築いたり人質を取ったりしてね、本当に戦争みたいだった。で、やっとリーダーを追い詰めたと思ったら、
天草四郎がそいつをやっつけちゃったの! 天草四郎は、島原の乱を起こして逃亡中の鬼将(きしょう)でね、幕府や宮本武蔵も追跡してた大物で。
四郎については後でちゃんと話すけど、この時の狙いは、自分より下位の鬼達をどの程度コントロールできるか、っていう実験みたいなものだったみたい。
[寛永15年10月~【SH03】日ノ本ほっこり霜月祭]

この時は焦っちゃったよ。すでに広まりかけてた「くりすます祭」なんだけど、幕府が待ったをかけちゃったんだ、キリシタン由来のお祭りはけしからん、って。だから悪知恵‥‥オホン、苦肉の策でね、日本古来からある霜月祭の一環であるというふうにごまかして開催したんだ。だから今も寛永では、大きな声でクリスマスなんて言っちゃダメだよ? あくまで、霜月祭だからね、ふふ。
で、その霜月祭をみんなや幕府に認めてもらうために、日本各地で子供相手に「よきサンタさん」を演じたんだ。たくさんの子に喜んでもらえて、嬉しかったなあ‥‥でもね、それが原因でなまはげさんに誤解されちゃって、江戸に大量なまはげ大襲来事件が起こっちゃったの! あの時の戦いは、なんていうか、みんなの過去とか黒歴史をえぐるような恐ろしいものだったんだ‥‥
いちおう、なまはげさんとは和解できたんだけど、やっぱり今でも、あの顔と「泣く子はいねがー!」はコワイね、はは‥‥
[寛永15年12月~【SH04】怨嗟渦巻く乱れ雪]

この年の冬は寒かったよ‥‥関東地方だってのに、すっごい大雪でね。で、その原因が化身にあるっていうんで、みんなで震えながら退治して回ったんだ。
結局、一番の原因になってたのが、悲しい恋をしていた雪女さんでね。みんなでその凍てついた心を温めてあげて、それで吹雪を止めたんだけどね‥‥来世では、結ばれてるといいなあ、おふうさんと寒太郎さん。
そうそう、医王寺の和尚さんによると、化身が度を超えて凶暴化したり、災害の原因になったりするのは、これからも起こりそうなんだってさ。やだなあ。
[寛永16年3月~【SH05】荒ぶる瀬戸内鬼水軍]
長宗我部元親、って知ってる? 四国の有名な戦国武将なんだけど、その遺体を元にして蘇った鬼将が、ついに戦争を仕掛けてきたの!
鬼の水軍を従えてね、瀬戸内海をすっかり占領しちゃってたんだけど、ギルドのみんなも船に乗ったりなんかして、なんとか鬼を撃退したんだ。ま、このときは鬼元親を逃がしちゃったんだけどね。
でも、衝撃的だったよ。戦国武将さながらにすっごく強くて、しっかり準備していろんな戦略を仕掛けてきてさ。本当にもう、鬼との戦国時代突入ってかんじ。
[寛永16年5月~【SH06】海に燦々、陽と災難]

あー、この時は、海! ってカンジだったねー。なんていうか、ウーミーッてカンジ!
海から百鬼夜行がくるかもしれないっていうからね、浜辺でいろんなお祭りをやったんだよ。あ、お祭りといえば御前試合もまたあったんだ。これが昨年に輪をかけて壮絶だったよ。来世人vs剣豪って趣向だったんだけど、来世人同士の予選は阿鼻叫喚の展開だったし‥‥ちょ、ちょっとわたしの口からは言えない。で、決勝でもすっごい事件が起こっちゃったし‥‥え、結果? 来世人の精鋭も頑張ったんだけどねえ。服部半蔵さんとはなんとか引き分けにできたけど、宮本武蔵さんや
柳生十兵衛さんには、まだまだ敵わなかったんだ。
おっと話が逸れたね。で、結局、お平さんていう人魚の長と、悪い人魚との竜宮バトルに巻き込まれちゃって、お祭りパワーとかでドカンと解決したんだよ、海の中まで入ってね! え、意味わからない? ま、とにかく平和になったってことで!
[寛永16年8月~【SH07】浄土を喰らう鬼真田]

で、また出たんだよ、鬼将! 今度は
真田幸村だよ、しかも取り逃がしてた鬼元親まで連れて! それが高野山とその周辺をガシガシ攻めてきちゃったから、もうお寺の防衛と各地への応援・派遣にてんやわんやで‥‥どこも激戦だったんだから。
でも、なんとか踏ん張って、二鬼将とも倒すことができたんだ。あれは自信に繋がったんじゃないかな、みんな。
そうそう、鬼幸村が言ってたんだけどね。鬼将を束ねているのは、やっぱり鬼として復活したっていう豊臣秀吉なんだって。でも、鬼秀吉の情報は一切見つかってないし、いったいどこにいるかも不明なままなんだ。うーん謎だねえ。
謎といえば、高野山近くの人魚のお鱗(りん)さんとも仲良くなったんだけど(やたらギャルっぽかったっけ)、それでしばらくしたら、人魚みたいな流玄属性の来世人が、急にやってくるようになったんだよねえ‥‥なんでだろ?
[寛永16年10月~【SH08】ご奉仕致さにゃ神無月]

そういえば神代の話をしてなかったっけ。神代っていうのは、八百万(やおよろず)の神様が羽を休めにくるっていう、おっきな温泉宿のある異世界なんだ。面白いことが起こったり、すごい素材が見つかったりするから、行きたがる来世人も多いけど、
蜘蛛次郎ってヘンタイ神様やその他おかしな神様に無茶ぶりされることも多いんだよね、はは‥‥
で、そうそう。神在月で忙しいということで、いつも以上に神様にご奉仕してね、ついでに鬼とか来世人に関する情報を聞いて回ったんだ。そしたら、いろんな話が飛び出したんだよ。鬼が出たのはどうやら千年くらい前で、聖徳太子がすっごい儀式で鬼たちを封印したとか。その後高野山の空海が封印を強めたけど、それでも鬼の封印はほころびかけてるとか‥‥この話については、後でまた詳しく、ね。
あと、みんなで安倍晴明の洞窟というか、試練というか、それに挑んだんだけどね。そこに晴明さんの手紙が遺されてて、それによると、なんと晴明さんこそが来世人を召喚する儀式を行なったんだって! なんでも、鬼に対抗し世界を救ってもらうためだとか‥‥これだって700年くらい前の話なんだよ。寛永より700年くらい前の人が、寛永の400年くらい後の平成から人を召喚って、どーゆーワケ!? って思ったよね、ほんと。
そりゃあ、さ。どーしてもわたし達じゃなきゃ世界を救えない、っていうなら、仕方のない選択だったのかもしれないけどさ‥‥でも、そのへんの詳しい理由は、このときは結局書いてなかったし。
そもそも、事前承諾もなしに、未来からこんな世界に引っ張り込まれてさあ、怒ってた人はたくさんいたよ。ことが終わったとしても、現代に帰れるかもわからなかったし‥‥はあー、ため息でちゃう。
[寛永16年11月~【SH09】業に流され東へ西へ]

そんなわけで、世界を救う勇者みたいにされちゃった来世人だけど、この頃は大きな事件もなく平和だったから、霜月祭を楽しんだり、装備の強化に努めたりしてたんだ。
実は蜘蛛次郎さんに不思議な金平糖を分けてもらっててね。それを使うといいものができるそうだから、日本各地の職人さんを訪ねて、武具や道具を作ってもらったんだ。こんなの作ってねーって頼んだら、それをちゃんと作ってくれたんだよ! みんなのアイデアで新装備! ‥‥ま、中にはナナメ上の作品もあったけど。
でもね、ちょっとした大事件もあって。巨大なモミの木怪獣モミラが江戸に来襲して、あとまたなまはげさん達が大量にやってきて、もうしっちゃかめっちゃかになっちゃって! ま、みんなで巨大化したりヒーローになったり巨大ロボめいたことしたりして、子供達のパワーをもらってやっつけて、あげくそのモミラまで武具の材料にしちゃったんだけどね‥‥え、これも言ってることが意味不明? うん、うまく説明できないよコレは‥‥(笑)
[寛永16年12月~【SH10】黒く雪崩し蝦夷大地]

いやあ寒かった‥‥だって真冬の蝦夷だよ? ホッカイドーだよ?
そこに、なんだかムチャクチャ強い羆(ヒグマ)とかが大挙して暴れ出しちゃって。松前藩は壊滅、大和の人はすっかり蝦夷から追い出されちゃって。アイヌの人もいろいろ困ってたんで、助けに行ったんだ。
なんだか、すごくアウェーなかんじの土地で、気候にも獣にも苦労して‥‥でも、最終的にはアイヌの人たちとも仲良くなって、ちょっとした交流とかもあってね。面白いよね、アイヌの文化って。
それで結局、蝦夷地の異常は、真っ赤で巨大な羆が、蝦夷じゅうの獣たちを操ってたのが原因だってわかってね。大雪山で死闘を繰り広げて、それで、やっと倒して‥‥でも、あまり嬉しくなかったな。あんな普通じゃない羆が生まれたのも、この日本全体の異常と無関係じゃないんだろうし。でもね、ボス羆の赤ちゃんグマは、来世人に引き取られて、今はギルドにいるんだよ。かわいいんだこれが。
ギルドといえば、お世話になったアイヌの三姉妹(
シラコル・
ヌプキナ・
パラキナ)も、江戸にやってきてね。そしてそれと同時期に、また新しい属性を宿した来世人がやってくるようになったんだよね。うーん、意味深‥‥
[寛永17年2月~【SH11】井伊の赤鬼、母女鬼]

この戦いは‥‥あまり、思い出したくないよ。つらいこと、たくさんあったからね。
ざっくり言うと、善光寺に、また鬼将たちが攻めてきたんだけどね。
井伊直虎と
井伊直政、鬼将が2体も出て、他の鬼も今までのより強くなってて。そこに天草四郎まで混ざって、これは大変な戦いになるんじゃないかって。まあ四郎とはさいわい、戦わずに済んだんだけどさ。
大変な戦い。でもそれこそが、鬼の策略、演出だったのかも。大きな戦い、正面に目を惹きつけておいて、そして内側から‥‥そう、はめられたんだよ。
華蓮っていう尼さんが、来世人を騙してて。
ううん、正確にいえば、華蓮は直虎そのものが化けてたんだ。身寄りの無い尼僧に変身して、わざと尼寺に拾われて‥‥鬼に襲われて、来世人に助けられるのも演技、一緒にお寺を守ろうと頑張ってたのも演技、温泉まで連れてってくれたのも演技! それを‥‥ぜんぜん見抜けなくて‥‥わたしは華蓮に、いや直虎に奇襲され、まんまと秘仏を奪われちゃって。まあ、この秘仏は、照元さんの機転で偽物をすり替えてたから、大事には至らなかったんだけど、でも、結局3つのうち2つまで壊されちゃって。それもこれも、わたし達が鬼を甘く見てたせいかも‥‥
なんとか、鬼将は倒せた。最悪の事態は防いだ。でも、きっと、これからもっと、鬼との戦いは厳しくなる気がしたよ。もっと強くて、悪いやつが‥‥
[寛永17年4月~【SH12】ギルド討つべし正雪の乱]

由井正雪って知ってる? 幕府に不満を持つ浪人を集めて、幕府転覆を計画した軍学者なんだけど‥‥史実では、10年後に起こるはずの事件だったんだよ。
でも、それが今、起きちゃったんだ。しかもなぜか、来世人ギルドをターゲットにしてさ! なんか、ギルドの上層部が腐敗してるとか、汚職してるとか、武士の仕事を奪ってるとか言って。結論から言うと、全然そんなことなかったんだけどね。
この時も本当にいろいろ苦労したよ。だって、相手は化身じゃなくて、人間だもん。正当防衛だから、襲われればやっつけるけどさ。ギルドの協力者のはずの将軍様は何もしてくれないし、襲ってくる剣客たちは『氣』を使って翻弄するし。
後手後手に対応するしかない、しんどい時期だったけど、とにかく粘って粘って‥‥最終的に、正雪も将軍も、同じ九尾ノ狐にそそのかされてることがわかって、ひとまず事件は解決したんだ。九尾ノ狐は逃がしちゃったけどね。
でもね、九尾ノ狐から奪った漢文書のおかげで、『氣と魔法が両方使える大和人』を育成できるようになったんだよ! これで、来世人ギルドも戦力アップだね!
[寛永17年6月~【SH13】飢饉けちらせ山王祭]

蝦夷の駒ケ岳が大噴火して、『寛永の大飢饉』が起こる‥‥その史実を回避するために、将軍様は準備を進めてたはずなんだけど、予想以上の被害で、やっぱり飢饉になりそうだってなっちゃって。
でも
沢庵和尚は、こんな時だからこそって、山王祭を盛り上げろっていうんだ。だからみんなで、みんなを元気づかせようと頑張ったの!
でも、それを嘲笑うかのように、あちこちで民を苦しめようとする動きがね、コソコソとあってね。毒を撒いたり、改造した虫(うげぇ)で畑を荒らしたり‥‥その黒幕は、鬼将の
黒田官兵衛だったとあとで判明するんだけどね。今までの鬼将と違って、鬼を従えて戦いを挑む、ってわけじゃなくて、なんかやりづらくって‥‥結局、いろいろ卑怯な策略ははねのけてやったんだけど、官兵衛自身はまんまと逃げちゃったんだ。卑怯なやつめ。
そうだ。この山王祭ではね、恒例の
御前試合もあって。この決勝で、ついに! 来世人が宮本武蔵に勝利したんだよ! けど、それを上回る事件が、直後にね‥‥
三枝守全。将軍直属の御庭番の筆頭で、これまで何度も来世人ギルドと共闘してくれてた人が、実は、正体が‥‥天草四郎だったと判明したんだ。直虎に正体を騙されていたときもショックだったけど、これはそれを上回るショックというか、その、どう考えればいいのか、あの時はボーゼン‥‥。
[寛永17年8月~【SH14】人と化身と鬼と死と]

この事件は、多くの人に複雑な思いをさせたり、後味の悪い気持ちにさせたりしたみたい。うん、わたしも、その1人だけど‥‥
来世人が拉致され、血を抜かれる事件が頻発してね。その裏には、あの九尾ノ狐、リンリンがいることがわかったんだ。そしてリンリンは、その血で謎の儀式を行い、ギルドのみんなを呪って苦しめようとしたの。さいわい、儀式は防げたし、リンリンは今度こそ退治できたんだけど‥‥
リンリンはどうやら、良人っていう来世人の少年を独占したいがために、ギルドを付け狙ったみたい。それは、歪んだ愛情だと思うし、良人君がずっとリンリンのそばにいたほうがよかったなんて、絶対思わないけど、でも‥‥大勢の人間をたぶらかしてきた九尾ノ狐の最期が、子供1人への愛情に固執したためだなんて。憐れ、というのかな、これって。
それで、良人君はギルドに引き取られたんだけど、もう2人、ギルドが預かることになった人がいて。
新免独楽と
狗っていう姉妹で。もともと、由井正雪のときからリンリンに従っていた敵だったんだけど、あっさりとギルドに転向してきてね。でも、あまりの暴力性に、ギルドは姉妹を幽閉したんだ。だって目を離せば誰か殺しちゃうかもしれないんだもん。姉妹を迎え入れるべきだったのかどうか、ギルドでも意見が割れちゃったりね。
そしてついに、天草四郎の正体にも近づけたの。このとき四郎は、『人を喰わない善なる鬼』を率いてたんだ。前例のない事態に、これもギルドのみんなは戸惑っちゃって。
はあ、いろいろ起こりすぎだよ‥‥愛とか、生きる意味とか、そんな難しいこと考えるの、あたし得意じゃないんだから!
[寛永17年10月~【SH15】いけば判るさ聖夜もとっとこ]

どういう順番で話そうかなあ。ええとね、まずね、導師とか名乗るアヤシすぎる少女の
十人ちゃんってのが、ギルドにやってきてさ。おっきな犬にまたがって。で、「サンタを探せ!」だなんて。
結論から言うと、サンタは三太さんのことだったんだ。あるある。
で、話を変えて‥‥ついに、天草四郎と、ある意味で決着がついたんだよ。四郎は、ギルドが捕虜というか保護というか、とにかく、前回の戦いで捕えていた善なる鬼を、たった1人で助けにきたんだ。でも、凄まじい強さで、結局、来世人は勝てなかったんだよね。でも、四郎とは‥‥わかりあえた、って言えるかな‥‥
はっきりとはいえないけど、四郎は来世人を認めて、一緒に善なる鬼の新天地を探してほしいと頼んできたんだ。そういう次第で、四郎とは、敵ではなくなったんだ。
ここで、三太さんの話に戻るよ。この不思議なおじいさんは、あのしつっこい鬼官兵衛に襲われたんだけど、みんなでこれを追い払って。でも、もう三太さんは寿命だったらしくて、天に召されたんだ。その時、不思議な青い玉を、ギルドに託したの‥‥『孝』って書かれた玉を。
で、同じ玉を、なんと四郎も持ってたんだ。四郎のほうは『智』で、まだ四郎が持ったままなんだけどね。
十人ちゃんや三太さんは、これがあと6つあるから、集めろって。なんだろうね、8つ集めたら、ドラゴンが出てきて、願いを叶えてくれるとかかな~なんて、この時は思ってたけどね‥‥
[寛永18年1月~【SH16】使命競いし六犬士]

‥‥というワケで、集めることにしたんだ、残りの玉を。
十人ちゃんが、どこにそれがあるかとか、なんとなくわかるらしくて、玉を持つ残りの6人も見つかってね。でも、それぞれがなにか、使命みたいなのを抱えてるらしくて、そう簡単には譲ってくれないんだ。
6人の悩みを聞いたり、お手伝いをしたり、試されたり――ギルドのみんなで頑張った結果、久礼光さんからは『礼』、仁郎くんからは『仁』、悌悟って傾奇者からは『悌』の玉を貰うことができたんだ。うん、集めるほどに、玉の力は強くなっていくみたい。
だけど、お忠さんはもう一押し、義助さんもなかなかガンコなかんじ。それに、お信さんにいたっては‥‥
実はね、ずっとウザい邪魔ばかりしてた鬼将、黒田官兵衛がまた仕掛けてきて、今回こそは、やっとやっつけることができたんだけど‥‥気付いたら、お信さんはさらわれちゃったみたいで、ずっと行方知れずで‥‥うう、すごく心配したっけ。
鬼将とか強い化身とかも、これまで以上に出てくるようになって。ギルドのみんなも必死に備えてるけど、戦いは厳しくなる一方なかんじ。正直、ツラかった。
そういえば十人ちゃんが、なんか新たに思い出してね。なんと! 安倍晴明の生まれ変わり、みたいなことを言い出したんだよ! 信じられないよねー、セーメーじゃセーメーじゃと言っても、変わらず、十人ちゃんなんだもん‥‥
[寛永18年4月~【SH17】魔王と龍虎の狂謀島]

ついに出たよ、誰もが知ってる歴史の武将、もとい鬼将たちが‥‥
織田信長、そして
武田信玄と
上杉謙信! どれもこれも大暴れだよ、信長なんか目が3つあるし、信玄なんか下半身ウマだし、謙信はなんかヘンタイっぽいし!
佐渡島が結界で封鎖されたり、そこにお信ちゃんが拉致されてたり、大変だったけれど、でもなんとか、来世人が激戦を制したよ。お信ちゃんは、無事ではあったけど、また心に深い傷を負ったみたいな‥‥
あとね、聖徳太子の遺した古文書も見つかったんだ。それによると、鬼は、聖徳太子自身が生み出した存在らしいんだ。だけど、蘇我馬子に、ええと、グンジテンヨーというか。悪用された結果、暴走して、どうにもならなくなって‥‥そこで聖徳太子が自分の命と引き換えに、鬼を封印したんだって。でも、千年しかもたない封印で、今まさに、その千年が経とうとしている‥‥というか、もう経ってるというか。ともかく封印がボロボロ状態なんだ。
そうだ、8つの玉も、聖徳太子の遺したものだったんだ。封印をどうにもできない以上、これを集めるしかないのかな‥‥? 残るは、あと3つ。
[寛永18年8月~【SH18】猿は小粒な邪智暴虐王]

ついに出たんだよ‥‥鬼神、
豊臣秀吉が。そう、全ての鬼のトップだよ。
でも、鬼の封印が解けたわけじゃなくて、なんと思念体だけを強引に送り込んできたんだ。思念体はかわいいおサルさんみたいな見た目で、そんなに強くはなかったんだけど、配下の鬼に『絶技』を付与したり、鬼たちを集団でワープさせてあちこち奇襲させたり、そのうえ倒しても倒しても思念体はまた復活するわで、メチャクチャ憎たらしい存在だったよ。
配下の鬼将
石田三成も、見た目と態度はすごくおとなしいのに、やる事はえげつなかったしね‥‥
こんな事態だから、急いで残る玉を集めたんだ。おかげで、四郎のを除く7つが集まって、鬼の力をだいぶ抑えられるようになって。
そしてついに、秀吉本体が出現したんだ。それが、大鬼に牽かせる一夜城を生み出して、江戸に進軍を始めて。だから来世人ギルドと幕府の精鋭は、関ヶ原で決戦を挑んでね。
秀吉は最初、メッチャ強かったけど、四郎が援軍に駆けつけると、玉が本来の力? を発揮してね、秀吉の超再生能力が止まったんだ。そこで一気に追い詰めたんだけど、すんでのところで逃げられて、八咫鏡の力で、どこか別の世界だか次元だかに逃げちゃったっぽいってさ。
というわけで、秀吉を倒せたわけじゃないんだけど、もう秀吉がこの世界に来る可能性はほぼ無いってことらしいから、勝った、んだよね? その後すぐに鬼の封印が完全に解けたけど、それも対処できたし。つまり、もう寛永は鬼に滅ぼされる心配をしなくて済むってわけだよね? これで、めでたしめでたし、だよね‥‥?
なあんて、考えていたら――
[平成29年12月(寛永18年11月)~【SH19】鬼神が平成来ちゃいました]

寛永はすっかり平和になったー! でもどうやって現代に戻ればいいんだー、なあんて考えていたら‥‥
なんと、新たな来世人がもたらした情報で、来世つまり現代に、秀吉が出現したことがわかったんだ。それも、怪獣みたいに超巨大化して!
それが大暴れして、東京は壊滅。日本は大混乱、世界も危機――異常な再生能力を持つ巨大秀吉は、現代兵器じゃ倒せそうもないっていうんだ。だから十人ちゃんが、取り返した八咫鏡を使って、一方通行な『現代へ通じるポータル』を開いたんだ。
これを通れば、もうここへは戻れない‥‥その覚悟をもって、多くの来世人が、いや有志の大和人さえも、現代へ向かったんだ。秀吉との戦いに、終止符を打つために。
でも、怪獣化した秀吉は、メチャクチャ脅威でさ。正直、打つ手が全然浮かばなかったんだ。でも、いろいろ会議して、実験して、研究して、ついに魔法と科学の力をミックスさせることで、なんとか最終作戦が固まって。
あの戦いは、すごかったよ‥‥誰もが、死を覚悟したと思う。けど、誰もが、勝利を信じてた。少なくとも、これが最後の戦いになるとわかってた。
そして、決着はついたんだ‥‥でも、私は泣いた。秀吉の最期の姿に‥‥
でもでも、平和は取り戻せたんだ! これで、戦いは終わったんだ!
それから私たちは、決断を迫られたんだ。この現代に残るか、寛永へ戻るか、一度限りの選択を――
[物語は続く]

ま、これが来世人ギルドが辿ってきた歴史、ってやつかな。
ハッピーエンド、って言っていいと思う。だけど、本当の物語は、ここからなのかもしれない、なんて思うんだ。
たしかに、鬼の脅威は去ったよ。でも、鬼というのは、昔むかしの人間が作り出したもの。人の愚かさが、鬼を生み出し、それがこれだけ長い刻を、時空を超えて、人間を苦しめ続けたんだ。
鬼が、人の愚かさや傲慢さが生み出すものだとしたら‥‥油断すれば、いつだってまた、生まれるんじゃないかって。いや、すでに『鬼』は、いるのかもしれないって。現代でも、寛永でも‥‥
なあんて、ガラにもないこと考えちゃうほど、私も成長しましたよ、へへへ。
さあ、君もギルドを通じて、人間的に成長したよね? なら、これからも、私たちと一緒に、鬼退治しよう!