【AS07】海魔王レヴィアタン

担当マスター:楽市
開始14/12/23 22:00 タイプ全イベ オプションお任せオプション
状況 SLvD 参加/募集127/― 人
料金600 Rex Rex 分類事件
舞台国・ユ・鬣・ケ 難易度難しい

◆周辺地図
   

オープニング
●第四の預言
 12月19日。
 ルークス市国、ならびにルークス教の影響が強い国々で大々的に『大降誕祭』が祝われている中、それは起きた。
 場所はルークス大聖堂の一室。数日後にパーティを控えていた法王ヨハネス・ウェイン二世(sz0001)の身に、再び聖痕が刻まれたのである。
「‥‥なんという」
 ポタリ、ポタリと垂れる自分の血を見ながら、ヨハネスは知る。
 彼は徐々に体に文字が浮かび上がっているさなかに、見た。
 この世界の行く末、迫りくる滅びの1つの形を。
 それは、海に呑まれる世界。
 人々が暮らす街が、文明が、人々が、押し寄せる津波に呑み込まれ、押し潰されていく。
 これまでの預言とは違う、ここまで明確に未来が読み取れたことは今までにないことだった。
 ――それだけの脅威が、迫っている?
 ヨハネスには、神の声の全てが聞こえるわけではない。
 ただ、胸騒ぎがした。
 これから世界が迎えようとする、強い、滅びの気配。
 第四の預言には、こう記されていた。

『氷の大地に眠る者へ私は言葉を示す。
 私はあなたを知っている。
 あなたは神を名乗るが、あなたは実はすでに死んでいる。
 海の底に眠るあなたへ私は命ずる。
 目覚め、そして人の世のために礎となりなさい。
 あなたは、あなた自身を完全なるものと言うだろう。
 しかし私はあなたを完全なるものとは定めていない。
 だからあなたは悔い改めなさい。
 あなたが抱く悪しき心が人々を怯えさせている。
 あなたは私の意志を継ぐものに戒められるだろう。
 だからあなたは悔い改めなさい。
 もし目を覚ましていないのならば、私はあなたの全てを奪う。
 それがいつなのか、あなたは決して分からない。
 彼らは勝利を得るに相応しいだろう。
 あなたは敗れ、奪われ、そして嘆くことになる。
 だからあなたは悔い改めなさい。
 あなたが悔い改めたとき、悪しき力は栄光の礎となることだろう。
 海の王よ、悪しき心を持つことをやめよ。
 あなたの名はいのちの書から消えることは決してない。
 さすればあなたは神のそばへと赴くことを赦される』

●激震する世界
 12月21日。
 異常が人々の目に触れた、最初のタイミングだった。
「南極の氷が、異常な速度でとけている‥‥?」
 その話を聖戦機関の職員より聞いたエンリコ・アルベルティ(sz0002)は、耳を疑った。
 ケープタウンの戦いの直後から、ケルゲレン諸島を震源とする大きな地震が続いていた。
 地震によって発生した津波はケープタウンや、オーストラリア南岸、ニュージーランドなどにも押し寄せていた。
 そのせいか、津波が届いている範囲では黒い霧の発生速度がかなり早まっていた。
 そこに、コレである。根耳に水もいいところだ。
「何が、起きているんですか‥‥?」
「私が、話します」
 と、告げたのは、いつの間にそこに立っていたのか、マリア・アンジェリーニ(sz0003)だった。
「マリア、目が覚めたのですか?」
「はい、ついさっき‥‥」
 ケープタウンでの戦いののち、マリアはエンリコと共に出かけたアジア地方の奉仕活動中に倒れ、意識を失っていた。
「みんなを集めてください。私から、みんなに話したいことがあります」

 ルークス大聖堂地下の作戦室に、SINNは集まっていた。
「みんな、来てくれてありがとう」
 まずはマリアが、SINN達にそう言って、頭を下げた。
「みんなに集まってもらったのは、今起きていることと、これから起きることを、説明するためよ」
 マリアのその言葉に、向かい合うSINN達の間に動揺が走った。
「なんで、マリアがそれを知ってるんだ?」
 当然すぎるそのSINNの問いに、彼女は答える。「アリアが教えてくれた」、と。
「‥‥今は、アリアのことは置いておくわ。それどころじゃないから」
 そして一息ついてから、彼女は話し始める。
「みんなも、知ってると思う。黒い霧が世界で広がってること。それは、あのアメリカでの戦い以来、どんどんを拡大してってる」
「現時点で、世界全土の人類の居住域の4割近くに、黒い霧が発生しているとのことです。ほとんどの場所では、まだ霧が薄い状態のようですが‥‥」
 聖戦機関職員の補足説明に、SINN達の間から漏れるざわめきはひときわ大きかった。
「黒い霧は、人々の不安が広がるだけ、その濃さを増して、広がっていく。このままじゃ、どんどん悪循環に陥っていくだけ。そしてこれが進んでいけば、きっと――」
 マリアが一度息をのんで、それから続けた。

「黒い霧の中で、全ての人類が、悪魔化する‥‥」

 黒い霧が目に見えるようになったキニスであるというのならば、それは、当然ことではあった。
 キニスは、全てのディアボルスの源とも呼べるもの。
 全世界がそれに包まれれば、全ての生き物はキニスに狂い、キニスに冒され、その身はキニスに蝕まれていくことだろう。
 全ての人類を悪魔化すること。それが、【獣の軍勢】の目的、なのだろうか。
「――これが、今起きていること。今、世界で起きつつあることだよ」
「‥‥‥‥」
 場が静まり返る。集まったSINN達は、誰も、何も言えなかった。
「これから起きることとは‥‥?」
 次に口を開いたのは、エンリコだった。マリアも、次にその問いが来ることを予想していたのだろう、頷いた。
「魔王レヴィアタン‥‥。その本体が、復活します」
「――そういえば」
 と、SINNのうちの誰かが呟いた。
 ケープタウンの戦いで、分身であるファルスレヴィアタン自身が言っていたことだ。「本当の私」、という言葉。
「今のレヴィアタンの姿は、本当の姿じゃない。本当のレヴィアタンは、神様に封印されてて、今の姿は一部でしかないの」
 他の魔王と同じく、己の世界を創生するだけの力を持った仙級ディアボルスが、実際は本体の一部でしかない。その事実は、さすがにすぐに受け入れられるものではなかった。
「本当のレヴィアタンは、もう、みんなも察してると思うけれど、ケルゲレン諸島。その地下深くに、ルシファーの封印と一緒に封じられてる。
 それは、最強の肉体。聖書によれば、神が直々に創ったとされる、全ての悪魔の中で、最も強い力を持っている身体‥‥」
「‥‥じゃあ、地震や南極の氷も?」
「そう‥‥。全部、レヴィアタン本体の目覚めの前兆よ。本体は、ケルゲレン諸島そのものより、大きいらしいから」
「な‥‥」
 さすがに皆も言葉を失う。そこまで巨大なディアボルスの話など、聞いたこともなかった。
「目覚めれば、それだけで南極大陸の氷全てがとけるかもしれない。そうなったら、海の水位が急激に上昇して、世界の何割かが、海に呑まれるわ」
 話を聞いて、想像しようとする。だが、とてもではないが想像できない。本体とやらが目覚めるだけで、一体、どれだけの犠牲者が出るのか。
 そして、目覚めたレヴィアタンの本体を倒すことができるのか、という、当然の疑問と、莫大なる不安。
「完全に目覚めたら、きっと、私達の負けだね」
 マリアが、そう言いきった。
「――だから、備えて」
 彼女はSINN達に頭を下げる。
「お願い、みんな。もうすぐ戦いが始まる。魔王との、本当の戦い。これに勝てないと、世界は本当に終わっちゃうかもしれないの。だから――」
 話は終わった。SINN達は自覚する。
 ディアボルスの中核をなす【獣の軍勢】六大勢力。
 その一つである【海魔の軍勢】との決戦が、近づいているのだ、と。

●海魔王の目覚め
「ヒ、ヒヒ! ヒヒ、ヒャハハ、ハ! あ、ああ! もう、すぐ、も、も、もうすぐ、だ!」
 ケルゲレン諸島の火山火口付近。
 そこに露わになっている遺跡の中で、レヴィアタン(sz0015)は歓喜に打ち震えていた。
 感じるのだ、己の肉体の目覚めを。もうすぐ、もうすぐ、完全に復活する。それを感じて、喜びが、こみあげてくる。
「ベ、ベヒモス! ベル、ベルフェゴール‥‥! よ、喜べ、わた、私がもうすぐ――!」
「‥‥‥‥ム」
 背後に振り返り叫ぼうとする、だがそこにいるのは【海魔の懐】ベヒモスだけで、もう一体の直属の配下である【海魔の腕】ベルフェゴールは、先日、ついにSINNに討たれたばかりであった。
「ウ、う‥‥、ウウウウウウウウウ!」
 レヴィアタンが、いきなり嘆きの声を上げる。
「ベ、ベルフェゴール‥‥、よ、よ、よくも‥‥。SINN、よくも‥‥! SINN、SINN、許さない、ゆ、許さ、許さないイイイイイイイ!」
 ガツン、ガツンと岩肌を叩く。彼女は彼女なりに、部下を思う心はあるらしかった。
「‥‥とても、そうは見えないがな」
 呟いたのは、その場にいるもう一体の幹部魔将、【巨木の懐】ネビロスであった。さらに傍らには、『アンチクライスト』カリス(sz0009)もいる。
「レヴィアタン様の心は、レヴィアタン様にしか分からないよ。‥‥あ、ベヒモス様なら分かるかも、だけどね」
「お、お、おまえ達‥‥、な、何をしに来た!?」
「‥‥‥‥ム」
 警戒するレヴィアタンの前に、ベヒモスが立った。
「忘れたのか。手伝いに来たのだ」
 ネビロスが告げる。
「ネビロス様はそうだね。まぁ、こっちも忙しいから、割ける人員はネビロス様だけになっちゃうけど。‥‥ああ、僕は見物しに来ただけだから、すぐに帰るよ」
 カリスの言葉に、レヴィアタンは露骨に嫌悪の表情を浮かべている。
「別に、レヴィアタン様の復活を邪魔するつもりはないよ? 復活してもらった方が、こっちにとっても都合がいいしね」
「し、信じられる、もの、か! お、おまえ達の、言葉、な、なんて!」
「どうぞ、ご自由に。じゃあ、ネビロス様、僕は帰るね」
 肩をすくめて、カリスは魔王とその配下に背を向けた。
「そうそう。どうせSINNがここに来るだろうけど――」
 立ち去る前に、彼は少しだけ振り向いて、
「殺してやってよ。全員、全部」
 声の質が、違っていた。いつもの軽口と断じるには、熱と力がこもっている声だった。
「言われるまでもないことだ」
 頷くネビロスに、満足げに頷き返すと、カリスの姿が消える。その足元には、割れたアミュレットが転がっていた。
 地が震えた。レヴィアタンが足元を見る。このとき、彼女はもうすでにカリスのことなど忘れていた。
 この魔王にとっては、小虫一匹にも満たない存在である。
「クヒ、ヒ! ヒヒ! 人間なんて、こ、殺してやる! 全員、全員殺してやる‥‥! もうすぐ、もうすぐだ!」
 魔王の目覚めは、近い。

●ローランからの通信
 12月23日。
 クリスマスイブを前日に控えたその日、聖戦機関にケルゲレン諸島のポルトーフランセに停泊している一時拠点、フランス軍艦船ローランより緊急通信が入った。
『こちらローラン! 現在、多数のディアボルスに襲撃を受けている! また、ケルゲレン諸島に【生命の樹】の発現を確認! 至急、人員を派遣されたし! こちらローラン――』
 それは、戦いの始まりを告げる狼煙であった。

●戦いを前に
「希望は、あるわ」
 マリアが、皆にそう告げた。
 続くようにエンリコが、皆に現在状況を伝えた。
「ケルゲレン諸島の中心に、封印の目覚めの前兆である【生命の樹】が発現しました。
 それに呼応するように、地震の頻度が増しており、周囲では南極の氷の大規模な融解が始まっています。
 先日マリアが話した、魔王レヴィアタン本体の目覚めの前兆であると目されます。
 さらにフランス軍艦船ローランが、魔獣の群れの襲撃を受けています。ここ数時間で、敵の動きが急に活発になったとのこと、関わりは確実にあるでしょう。
 ローランを放置すれば、多数の乗組員が犠牲になるでしょう。それを許すわけにはいきません」
「でも、悪いことだけじゃないよ――」
 そこからは、マリアが引き継いだ。
「クリスマスのお祝いをすること。それが、そんな、日常の光景が、私達を助けてくれる。
 大降誕祭で、みんなが得た楽しい気持ち、いとしい気持ちは、世界の不安を、和らげてくれてる。
 私、感じてるよ――」
 彼女の言葉通りであった。
 ルークス市国を中心として、世界中で開催された『大降誕祭』によって人々が得た様々なプラスの感情によって、ここ数日の黒い霧の広がりは、停滞していた。
「これがなかったら、きっと、ケルゲレンまで黒い霧に包まれてたから‥‥」
 彼女の言葉が本当だとすれば恐ろしいことだった。最悪、ローランの乗組員が悪魔化していた可能性だってあったのだ。
「遺跡についてお話します」
 ここからは聖戦機関職員が説明を始めた。
「まず、遺跡周辺ですが、敵の姿は見えません。先日の魔獣撃滅作戦によって、全て排除されたからです。よって、ここに戦力を割く必要はありません。
 次に遺跡内部ですが、大きく三つに分かれています。第一階層、第二階層、第二階層の奥の祭壇です。
 おそらく、このそれぞれに敵が存在しているものと思われます。
 最後に艦船ローランです。現在、先んじて派遣したSINN達が食い止めていますが、長くはもたないでしょう。
 こちらには上級魔人と思われるディアボルスも確認されています。他、魔獣や下級の融魔もいるようです。注意してください」
「封印があるなら、私も行かなくちゃいけない。だから、みんな、頑張りましょう」
 マリアは皆に、そう告げるのだった。
「勝って、みんなでクリスマスをお祝いしましょう」

■PL情報
・遺跡の第一階層にはネビロスと吸血鬼と半魔の部隊が陣取っています。ネビロスは本物です。
・遺跡の第二階層にはベヒモスと上級アンカリオモンスターが陣取っています。ベヒモスは本物です。
・遺跡の祭壇区域にはレヴィアタンが陣取っています。レヴィアタンは本物です。
・連動シナリオの結果より、アメリカでの人々の不安の増大はありませんでした。黒い霧の被害がその分抑えられています。
・連動シナリオの結果より、ポルトーフランセ、遺跡入口の敵配置がなくなりました。
・全体イベントシナリオ「ケープタウンの災厄」の結果より、拠点配備と物資運輸は無事に完了しました。
・企画イベント「ケルゲレン撃滅!」の結果より、遺跡周辺の敵配置がなくなりました。
・企画イベント「大降誕祭」の現時点(OP公開時点)の結果より、艦船ローランでの黒い霧発生が防がれました。
・企画イベント「大降誕祭」の最終結果の最終結果により、このシナリオ中に限り全参加者は判定にGd1を得られます。
・上記の結果より、このシナリオの難易度が一段階下がりました。

???о?ΣУ?

 マリア・アンジェリーニ(sz0003)・♀・15歳?・エクソシスト・地・聖職者
 レヴィアタン(sz0015)・♀・?歳・?・?・?

◆マスターより

こんにちは、楽市です。
クリスマスを祝おうぜ、この戦いを終わらせてな! な、シナリオをお届けします。
これは全体イベント「【AS07】Leviathan」のメインシナリオです。
全体イベントシナリオは、没ありプレイングとして処理され、MVP(物語に重要な貢献をした者)を中心として物語が描かれます。
選択肢をプレイング第1行で【ア】のように記入し、次行より本文を続けて下さい。(複数選択肢不可)
このシナリオは12月23日午前から24時間程度の状況の物語となります。
企画イベント「大降誕祭」の結果が出た後という扱いになり、その結果に関する影響は出発時に反映されます。

ア:祭壇を目指す
 関連NPC:マリア・アンジェリーニ(sz0003)、レヴィアタン(sz0015)
 第四の封印とレヴィアタンの本体が眠る祭壇を目指します。
 リプレイはこの選択肢の参加者が祭壇に到着したところから開始されます。
 魔王レヴィアタン(本物)との直接対決となります。
イ:第一階層攻略
 遺跡の第一階層の攻略となります。ここで敗北した場合、残った敵は「ア」と「ウ」への増援となります。
 リプレイはこの選択肢の参加者が第一階層に到着したところから始まります。車両を乗り入れることはできません。
 幹部魔将ネビロスの部隊と吸血鬼が待ち構えています。
 痕跡:硝煙の臭い、特になし×6
ウ:第二階層攻略
 遺跡の第二階層の攻略となります。ここで敗北した場合、残った敵は「ア」と「イ」への増援となります。
 リプレイはこの選択肢の参加者が第二階層に到着したところから始まります。車両を乗り入れることはできません。
 幹部魔将ベヒモスと上級アンカリオモンスターが待ち構えています。
 痕跡:大きな足跡、かすかな冷気、獣毛
エ:ローラン救援
 魔獣に襲われている拠点のフランス軍艦船ローランの救援を行ないます。
 ローランには乗組員がまだ多数残っており、このままでは彼らが転移装置を使って逃げ切るよりも先に犠牲が出ます。
 痕跡:磯の臭い、濡れた足跡、羽毛×2
オ:その他の行動
 どの選択肢にも該当しない行動はこちらとなります。
 内容で判断させていただきますので、他選択肢に割り振られたり、採用率そのものが低い場合がありますのでご了承ください。

リプレイ
●第一階層:黒の軍勢
「来たか。神の愚息どもよ」
 第一階層はかなりの広さを持っていた。天井も高く、大規模な戦闘でも充分にこなせそうだった。
 敵も、そう考えているのだろう。すでにそこには、ネビロス率いる敵軍が整列し、布陣を終えていた。
「早く、行け!」
「う、うん‥‥!」
 その場に足を止めたSINNに促されて、マリア・アンジェリーニ(sz0003)は先に急ごうとする。
 だがネビロスもそれを特に止めようとはせず、敵軍が動くこともなく、彼女と仲間達は次の階層へと続く道を駆け抜けていった。
「よいのですかな?」
 剣を抜くダニエル・ダントン(sa2712)に問われても、ネビロスは何も答えず、サーベル型の邪剣の柄に手をかけた。
 そこには、相応の数のSINNも残っていた。この場に魔将がいる以上、看過できるはずもなかった。
「いきます!」
 先制攻撃は、SINN側。アイン・ネーダー(sa1289)。かざした手から放たれた火球が、戦場のド真ん中に巨大な火炎の花を咲かせる。
 しかし――
「無意味なんだよ!」
 真っ赤な炎を突き抜けて現れたのは、武装した兵士達だった。明らかに人ではない。
 半魔か、或いは、吸血鬼か。
「や、やれるだけのことは‥‥!」
 オズウェル・クローチェ(sq1494)が、己の影より、影の狼を具現化して兵士達へと差し向ける。
 その牙に喰らいつかれ、兵士の一人は傷口から血を溢れさせたが、その傷はみるみるうちに再生していった。
「あらあら、あなたがたも魔王の復活に興味がおありですかー?」
「フン‥‥」
 シャムロック・クラナド(sp9296)に尋ねられた兵士は、吸血鬼だったのだろう。彼女を見下すような目をして鼻を鳴らした。
 彼女はにこりと微笑むと、
「あなたがたにはここで天に召されていただきますね」
 一転、その顔を厳しいものに変えて、獣人へと姿を変える。
「やるしかないなら、やってやる!」
 近くで、獅子の獣人へと変じたラチェット・トーン(sp6693)が、ナイフを手に襲い掛かってきた中級の吸血鬼をその拳で殴り飛ばす。
 だが彼の背後へと、迫ろうとする者がある。半魔の兵士。物音を立てず、手にした警棒を高く振り上げて、
「ダセェことしてるなよ!」
 飛び込んできた御剣 龍兵(sa8659)が、三度、拳銃の弾き金を弾いた。
 さらに畳み掛けるように拳による手数を重ね、最後に首筋を打ち据えて、敵兵を昏倒させる。
「ワハハハハハハ! 超絶美形パラディン、ビート・アイン参上!」
 高々と叫ぶと、ビート・バイン(sf5101)がポーズをとって、手にした小太刀で半魔を切り伏せる。
 その刃は相手の超常的な治癒能力を抑制し、傷からは血が噴いていた。
「よーっし、変身!」
 ポーズを取ると、アーク・カイザー(sq0753)は隼の獣人に姿を変える。
 彼が相手をするのは、勿論、吸血鬼である。
「ヴァンパイアの相手は任せてくれ!」
「おいっすー! ついでにもいっちょー!」
 碇矢 未来(sp5129)が、アークが殴りとばした中級の吸血鬼を拳銃で撃った。
「そーれもう‥‥う?」
 さらに、追撃を仕掛けようとした未来が、急に激しい脱力感に襲われた。
 衝撃などがあったわけではなく、それゆえに自覚することができなかった。
「‥‥なん、だよ」
 この脱力感は、龍兵や、近くのSINN達も感じているようだった。
 明確な違和感を最初に感じ取ったのは、イーゴリ・トルストイ(sq0700)。
 元々、警戒していたということもあったが、彼は魔力を宿らせた眼鏡をかけて強く念じてみる。
 すると、裸眼では全く見えていなかった場所に、うっすらと、モヤのような影のようなものがあるのが見えた。霊体に違いない。
 それは、半魔が悪魔魔法によって生み出した霊体の群れだった。
「皆、その場から離れろ。――薙ぎ払う!」
 眼鏡を外したイーゴリが、魔法を成就して魔力を伴った重力波を、その口から発射する。
 SINN達は皆離れて、直後に、超重力の波動が霊体を吹き散らして消滅させる。
「ネビロス以外にも、こんなことができる者がいるとはな‥‥」
 窮地になる前に対応できたイーゴリだったが、敵軍の奥に控える魔将の姿に薄ら怖いものを感じるのだった。

●第二階層:異界の獣
 第二階層へと到着したSINN達を、巨大な炎の壁が出迎えた。
「‥‥危ない! 下がって!」
 エティエンヌ・マティユ(sj6626)がそう告げて、皆を後方へと下がらせた。
 そこは、範囲のギリギリ外縁。炎が、エティエンヌの握るCROSSの結界に阻まれた。
 まだ、SINN達がまともに戦闘準備も済ませていない段階での話だ。
 炎を噴いたのは、三つの頭を持つ異界の獣――ケルベロスであった。
 そしてさらに、
「エティ、まだ、来ます!」
 マリク・マグノリア(sp3854)が、上から迫るものに気づいた。
 それは黒い粘液。ベシャリと、ローレムの結界に当たって弾けたならば、その身はキニスを帯びているということになる。
「‥‥くっ!」
 ギョロリと、大きな目が結界の上からエティエンヌを見ていた。
 デモゴルゴン。
 これもまたアンカリオを通じて異界を渡ってやってくる魔神であった。
 ガツンと、デモゴルゴンが結界を叩いた。するとその衝撃に、媒体たるCROSSは砕けて、結界が消える。
「エティ!」
 マリクが、悲鳴じみた声をあげて、矢を放った。
 その一矢はデモゴルゴンの瞳に命中し、粘液の身体を持つ魔神は、それを嫌がるようにして後方へと退いた。
「‥‥今のうちに!」
 マイア・イェルワジ(sj7576)が祈りを捧げて、仲間に癒しのすべを宿らせようとする。
 だがすでにケルベロスがその屈強なる四肢で地を蹴って、SINNへと迫ってきていた。
「やらせねぇよ」
 獣の狙いがマイアであると見抜いた房陰 朧(sc2497)が、パペットで牽制に入る。
 横っ面を張り倒されて、ケルベロスは苛立ったか、二体のパペットへと吹雪の息を叩きつけて、一度引き下がった。
「今のうちだぜ、マリア!」
「‥‥うん!」
 狼牙 隼人(sa8584)に促されて、マリアと仲間達は先へと急ぐ。
 一方で、大半はその場に残って、異界の獣二体と、それらを両脇に侍らせている巨漢と対峙した。

「‥‥‥‥ム」

 【海魔の軍勢】の懐、地の獣王、幹部魔将ベヒモス。
 さらに、その後方には、異界の獣が現れたであろう、巨大な空間のひずみ――アンカリオがあって、黒い霧を周りに漂わせていた。
「えろうお強そうな敵さんたちばっかりやなあ‥‥。気張っていくしかあらしまへんな」
 と、ラティーファ・アミン(sq2900)が魔法を成就し、周囲の黒い霧を祓いにかかる。
 しかし範囲は狭く、大した影響は与えられそうになかった。
「来ますよ!」
 烏ツ木 保介(sd0147)が声を張り上げた。
 地を蹴ったのは、再びのケルベロス。だがすでにSINN達は、戦いの準備を終えている。
「僕たちは、退かない‥‥!」
 先駆けは癒槻 サルヴァトーレ(sc5529)だった。
 手にしたハンマーに魔力を漲らせ、彼はそれを思い切り振り回した。
 一方で、地を這いずり形を変えながら音もなく忍び寄ろうとするデモゴルゴンへは、アルベルト・ルードヴィッヒ(sa0074)らが向かっていく。
「全く‥‥、しんどいことになってるなぁ‥‥」
 小声でぼやくと、彼はCROSSを手に、
「それでも、そこそこ使えるエクソシストではありたいからね」
 詠唱を終えて、集まった光が、デモゴルゴンを直撃した。
 デモゴルゴンはビクンと震えたのち、尖らせた触手で反撃に出る。
「見え見えだな」
 だがそこに隙を見つけたダニエル・マッケラン(so1035)が、ライフル弾を叩き込んだ。
 これから始まるのは獣による蹂躙か、それとも、狩人たちの狩猟か――

●ローラン救援:船員救援
 甲板を逃げる船員の背後には、青ざめた人型の融魔が迫りつつあった。
 だが悪魔が見えない彼にはそれを知る由もなく、ましてや――
「世を乱す悪魔よ!」
 その融魔が、他の数体と共に走った雷光に貫かれてキニスに還ったことなど、気づけるはずもなかった。
「逃げてください、早く!」
 雷光を放ったエテルナ・クロウカシス(sp1494)に促され、船員は船内へと逃げていった。
「ケガをしている人はいますか? こちらに来てください」
 船員数名が船内に逃げると、ラウラ・シリングス(sq3234)が呼びかけている姿が見えた。
 その近くで、カイ・オウミ(sq3050)が、負傷した船員を魔法で癒している。
「これくらいで、大丈夫」
 と、告げる彼に礼を言って、傷の塞がった船員はさらに奥へと逃れていった。
「皆さん、こちらですよ!」
 と、転移装置近くまで走ってきた船員を迎えたのは、須経 蘭華(sb0118)だった。彼女はローレムを宿したCROSSを通路の一角に配置して、ディアボルスが入ってこられない緊急避難路を作っていた。
「こっちには敵は来てないみたいだね」
 蘭華と共に、船員の避難誘導を行なっていたミリーナ・フェリーニ(sa0081)が、アサルトライフルを構えながら伝えてきた。
 彼女の纏うパラディン正装を見たとき、大体の船員が安堵の表情を浮かべた。
『こちらメーコよ。機関室の近くだけど、今のところ敵の姿は見えないわ』
 蘭華のもとへ、メーコ・カトウ(sh3828)から連絡が入ってきた。
「そうですか、分かりました。一応、CROSSをそこに置いておいてくださいな」
『分かったわ』
 メーコには、蘭華からローレムを施したCROSSが渡されている。今は、そこまで敵が入り込んでいないようだが、用心に越したことはない。
 艦船ローランの内部は、それなりに広さがある。
 悪魔の襲撃によって、船員達は逃げ惑い、中には今も隠れている者もいた。
「こんなところに‥‥」
 物陰で怯えていた若い船員に、ラティエラ・テンタシオン(sb6570)が声をかけた。
 その船員の近くには、観葉植物。それが、彼女に船員の存在を教えてくれたのだ。
「もう、大丈夫だ。だから落ち着いて避難するんだ」
「う、わ、分かりました‥‥」
 彼女に背中を押され、若い船員が教えられた場所へと逃げていく。
 それを見送って、ラティエラは艦橋にいるはずのユビキタス・トリニティス(sa1273)に連絡を入れる。
『分かりました。‥‥では、引き続き探索をお願いします』
 艦橋で、持ち込んだパソコンを使って全体の情報伝達の管理を担う彼から指示を受けて、ラティエラは「分かった」と頷いた。
 一方、船外、甲板の上では、まだ逃げ切れていない船員を狙って、下級の融魔が迫りつつあった。
「どうか、お願い‥‥」
 戦う力は持たないが、それでも願うことはできる、と、リュドミラ・マシェフスキー(sd4001)が祈りを捧げる。
 しかし戦いは彼女の祈りの最中にも続き、
「こっちは通せないぜ!」
 船員へと迫ろうとする融魔を、ヤズゥン・ディガ(sa2434)が重厚な刀身を持った剣で切り裂いた。
「隙を見せましたな」
 一撃を喰らい、仰け反ったその融魔へ、ドワイト・カーバイン(sp3893)の操るパペットが追撃を仕掛ける。繋いだスレッドの効果が、その融魔の身体を凍てつかせた。
「ローラン乗組員は直ちに後退を!」
 叫び、有栖川 彼方(sp2815)がアサルトライフルから撃った弾丸が、甲板によじ登ってきた融魔の頭を砕いた。
「私は、私にできることをするの‥‥」
 栄相 サイワ(sa0543)がかざしたCROSSより白い炎が溢れ出て、ソレは融魔数体を包んで燃やす。
「そっちだ。これ以上、やつらの好きにさせるな」
 と、指示を出しているのは、軍服姿のジュラルディン・ブルフォード(sn9010)だった。自身、ガラではないと思いながらも仲間に指示を出すその姿は、なかなか堂に入っていた。

『まだ外に船員さんがいるんなら、早く逃げなさい! 安全な逃げ道は――』

 甲板に、突如として女性の声が響く。
 それは浮遊しているスピーカー内蔵型のパペットからの、ミラベル・ロロット(si6100)による呼びかけだった。
「こちらです。焦らず、どうか騒がずにお願いします」
「大丈夫、ここから先は安全だからね」
 先導役は、イーノク・ボールドウィン(sd3868)とダニエル・ベルトワーズ(sh5510)だった。
 けが人にはイーノクがサナティを施して、ベルトワーズはまだ逃げていない船員を導いてくる。
 その退路は、ベルトワーズ自身が通ってきた、いわば彼の進路であった道。ゆえに、その途中に危険がないことは確認済みだ。
 ミラベルの呼びかけと、彼が作った退路を通り、程なく、全ての船員は船内へと逃げることに成功したのだった。

●第三階層:封印の獣
 地獄のように寒い空間だった。
 第一階層を駆け抜け、第二階層を駆け抜け、辿り着いた第三階層。
 誰が、一体どのようにして築いたのか。
 誰が、いつ、築いたのか。
 全くの不明である。しかしそこには確かに――聖堂があった。
「き、き、来たな‥‥!」
「レヴィアタン‥‥」
 静謐にして荘厳たる雰囲気を漂わせている、地下の大聖堂。
 壁面に刻まれた巨大な聖印を背に、魔王はやってきたSINNと対峙する。
 マリアは、その姿を知っていた。かつての試練に於いて、彼女はレヴィアタンの姿をしたものとあいまみえている。
 しかし本物のレヴィアタンと相対するのは、これがはじめてのことだった。
「‥‥‥‥あの」
「みんな、寄って!」
 マリアが話しかけようとして、だが、レティシア・モローアッチ(sa0070)が鬼気迫る声で皆に告げて、己の感情を魔力によって広く展開させる。

「し、死ね‥‥!」

 空気が一変した。
 それは魔王の暴虐。生けるもの全てを屈服させる、絶対の恐怖を放つ業。
 魔王の名を冠するディアボルスのみが扱いうる、世界を己のものとする、魔界創世の力であった。
「あ‥‥」
 レティシアのカルマによって、レヴィアタンが放つ絶対の恐怖はマリアにまで届かない。
 しかし彼女は顔を青ざめさせていた。
 対峙する魔王は、こちらと会話するつもりなど、毛頭ないのだと、思い知らされたからだ。
 戦いはすでに始まっていた。前置きもないままに、魔王はこちらに牙を剥く。
「近付かせないで!」
 皆本 愛子(sb0512)がレヴィアタンへとパペットを差し向ける。
 魔王は、笑っていた。嘲笑である。
「お、玩具如きィ!」
 痩せ衰えた、小柄な少女の姿をした魔王が、パペットへと無造作に腕を振るう。
 破砕音がやけに激しく響いて、半ば破壊されたパペットが緩く放物線を描いて地面に落ちた。
 一撃であった。
「冗談‥‥!」
 レティシアが苦く笑いながら、己が錬成した弾丸を拳銃に込めて、レヴィアタンを狙う。
 魔神が持つ高い抵抗力を消失させる弾丸。彼女は発砲し、それは魔王の胸に命中する。
「な、な、なんだ‥‥、い、今の、は‥‥」
 さしたる痛痒もなかったように、魔王は嘲笑った。
「――援護を開始する」
 レティシアが答えを知る前に、テムジン・バートル(sa5945)がライフルを構えた。
 己が使える魔法を全て成就しての、彼の狙撃は、正確に魔王の額を射抜く。
 バキン、と、響いたのは硬い音。
「グ‥‥」
 レヴィアタンが小さく呻く。痛みは、一応あったようだ。
 だが実際のところ、砕けたのはライフル弾の方だった。地の獣王ベヒモスを従える、海の魔王。その肉体の強度は、やはり、見た目通りではないらしい。
 そして、彼女が狙撃によって漏らしたうめき声はただの一度。
 テムジンが二発、三発と狙撃を重ねても、もはやそれはレヴィアタンには通用しない。あらゆる意味で。
 魔王の肉体は、あらゆる外的脅威に即座に順応し、完全な耐性を得てしまうのだ。
「‥‥参ったわ」
 レティシアは今になって悟った。自分が錬成した弾丸は、効果を発揮していない。
 一発目の狙撃を見ても、本来あるべき威力に対し、魔王が受けたダメージは明らかに小さい。小さすぎる。
 彼女は知らなかった。
 魔神と魔王とでは、存在そのものが、全くの別物であるのだ、ということを。
「‥‥か、神の、子。神の子、お、おまえ、だな!」
 レヴィアタンが、グリと首を巡らせ、マリアを見る。
 その澱んだ眼差しに、マリアは思わず、「ひっ」、と、小さく声を挙げていた。
「マリア君、下がれ!」
 マリアの護衛を勤めている一人、陸奥 政宗(sa0958)が、果敢に魔王へ挑みかかる。
「‥‥ば、馬鹿、め! ぐ、ぐ、愚物、私の復活の、贄、と、な、なれ!」
 レヴィアタンは政宗の拳を軽く掴みあげると、腕を軽々振り回し、政宗の体を思い切り壁へと叩きつける。
「が‥‥」
 壁に刻まれた聖印に、政宗の体から噴き出た血がべったりと付着する。
 SINN達を前に、それは不敵な宣戦布告であった。
「さ、さぁ‥‥、わ、私の、復活を‥‥、い、い、祝え‥‥!」

●第一階層:祝われざる復活
 死は、誰にも等しく訪れる。
 それは人であっても、吸血鬼であっても、変わらない。
「が‥‥」
 悲鳴も上げず、心臓を貫かれた半魔は命の灯火を失って、地に倒れ伏した。
「‥‥イヤなものね」
 ウィリディシア・クレール(sj3049)が、戦場の一角に立って死した敵兵を見下ろしている。
 生前に罪を犯そうとも、死したのちまで罪を重ねることもないだろうと、彼女は敵兵の死体が重なっているその場所に、結界を宿したCROSSを置いた。
 あるいはそれはウィリディシアなりの供養のしかたなのかもしれなかった。
 魔将ネビロス。その真価は死者蘇生にこそあるのだと、彼女は知っていたがゆえの対処であった。
 だが――

「‥‥来たれよ、まつろわぬ者ども」

 ネビロスが動く。
 戦況を見据えながら、静かに、彼は邪剣を掲げると、彼は己の世界を場に展開した。
「――魔結界!?」
 それを知る誰かが叫んだ。屋内たるこの場所の景色は、しかし変わらない。だがここが外であったならば、そして昼間であったならば、変化は一目で理解できただろう。
 「陰府」――黄泉、冥界とも呼ばれるその名を持ったこの結界は、まさにネビロスの真価である。
 そしてそれは、ウィリディシアの想定を、大きく超えていた。
「な‥‥」
 ネビロスの周りに現れたのは、数十にも達する異形の影。それらを知る者もいた。知らない者もいた。
 炎を纏う獣頭人身がいる。三つ首の全身鎧の異形がいる。二つ首の異形がいる。
「フラウロス‥‥、それに、ゲリュオン‥‥!?」
 その全てが、上級のディアボルスばかりであった。
 死した人を操ることが分身体の能力ならば、本体の能力は、これ――死した魔神の復活である。
「フフ、クックック、美しい。美しいな、これは!」
 いきなり笑い出す者がいた。それはネビロスのそばにあって、ずっと傍観を続けていた者だった。
 吸血鬼の存在を知覚するすべがあれば知れるだろう。その男も吸血鬼だ。それも、最上位のオリジンに属する者。
「私もそろそろ舞台に上がらせてもらうぞ、監査官殿」
「好きにされよ、『人形遣い』公」
 言って、吸血鬼侯爵『人形遣い』は、クイとその指を曲げる。
 するとどうだ、すでに討たれた中級の吸血鬼や半魔の身体が数体、まるで生きているかのように、起き上がってきたではないか。
「往け、私の『人形』達」
 ウィリディシアの張った結界をすり抜けて、起き上がった死体は武器を手にとって、よどみない動きでSINN達へと向かう。
 それはヴラドと呼ばれる、呪縛の魔法。死したる者を永劫の人形へと変える、『傀儡のヴラド』であった。
「なんて、こと‥‥!」
 起き上がった死体に撃たれた肩を抑えて、ウィリディシアが後方へ下がろうとする。
「ウィリディシア‥‥」
 ブランシュ・ブランシャール(sp4332)が、彼女の方に寄ってくる。ブランシュはエンジェリング。ウィリディシアの傷を癒そうとする素振りを見せて――

「貫いてあげてください」

 彼女の腹に、ナイフが突き立った。
「は‥‥?」
 腹部への灼熱。激痛と。
 驚きに目を見開くウィリディシアが、ブランシュの方を向く。
 すると、そのさらに向こう側に、赤い髪の、見覚えのある男の姿があった。
「あ、なた‥‥」
「お久しぶりです」
 ブランシュを魅了したメフィストフェレスが、顔色を蒼白にするウィリディシアへ、優しい微笑を差し向けた。

「――河の左右に生命の樹ありて十二種の実を結び、その実は月毎に生じ、その樹の葉は諸国の民を癒やすなり」
 ヴェルンハルト・ラヴィーネ(sp3868)の硬い声が詠唱を結び、狭い範囲にいる仲間達を魔力が包み込んで、魔結界の障害を取り除く。
「いける‥‥!」
 身体にかかる負荷が消えて、シュナイト・ヴァール(sp7330)は拳を握ると、魔法を成就。
 自らの皮膚を鋼にも等しい強度に変えて、『人形遣い』が控える場所へと突っ込んでいこうとする。
 だが護衛の中級吸血鬼が、それを遮らんとした。
「こいつでも、浴びていろ!」
 だがカーク・ルッフォ(sc5283)が、魔法の成就によって清い光を帯びたCROSSを、そこに投げ込んだ。
「ぐ、ゥが!」
 光を浴びて、中級吸血鬼共が苦痛に呻く。
 シュナイトがどこに生じた隙へと、身を飛び込ませた。
 だが次に響いたのが、ガシャンという、何かが砕ける音。いきなり、カークが投げ込んだCROSSが、何かに踏み潰されたようにして、壊れたのだ。
「何が――」
 と、カークが疑問を口にする前に、シュナイトの声が、彼の耳を衝いていた。
「うっ、ぐぁ、あ!」
 彼が皮膚を硬質化させていなければ、その一撃で倒れていたかもしれない。それほどの重さと鋭さを持った一撃であった。

「ク、クハ、クハーッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!」

 哄笑が響く。
 その一閃をもって、光を全て透かしていたその身体が、SINN達の前に姿を現した。
「お、まえ‥‥!」
「つまんねェ小細工してんじゃあねェぜ、小兵共がよォ!」
 そこに現れたのは、背に黒い翼を持った、漆黒の全身鎧の戦士。手にした剣の切っ先からは、シュナイトの血が滴っている。
 カークはその存在を知っていた。彼にとっては、忌まわしい記憶を想起させるその名は、
「――グラシャラボラス!」
「ヒハーッハッハッハッハッハッハ! ご名答、よくできました! また会えたな、嬉しいぜSINN共、さぁ、再会を祝して殺し合いだ! 逃げてくれるなよ!?」
 漆黒の戦鬼が翼を開き、兜の奥の瞳を爛々と輝かせた。

「全く、とんでもないね!」
 十文字 翔子(sf7297)が、復活魔神の群れへと、渾身の雷光を放った。
 それは一撃で魔神を屠るには到らないが、敵の気勢を挫くには充分な効果を発揮する。そして生じた隙間に、リュカ・フィオレンツィ(sk3006)が突っ込んでいった。
「『倒せない敵』だったら、『行動不能』にすればいい」
 氷の結晶を纏った彼の拳が、魔神の身体を凍結に寄って縛ってゆく。威力ではない、手数が、彼の攻撃の主軸である。
 さらに――
「ハッハァ! 悪魔も吸血鬼も、将軍サマに率いられて群れてンのかよ、情けねぇなァオイ!」
 現れたのは鷹宮 奏一朗(sp8529)。
「教えてやるよ、ホンモノの獣ッてヤツをなァ!」
 狼の獣人となって、彼は、魔神も吸血鬼も半魔も関係なく、獣としか言いようのない暴れっぷりを見せた。
 だが音が、彼の勢いを殺す。
 突如として、場を満たす耳障りな不協和音。奏一朗の鋭敏な聴覚が、その音を必要以上に大きく捉える。
「獣、だァ‥‥?」
 苛立たしげな声が、その雑音の中にもはっきりと聞こえた。
「キャンキャンうるせぇだけの野良犬が。全く、よく吼えるだけが考えなしの馬鹿の取り柄か? あ?」
「‥‥なんだ、てめぇは」
 奏一朗が睨んだ先に、全身に蛇の刺青を入れた、短い金髪の男が立っていた。
 その手にはナイフ。その口には火のついた煙草。その男の姿を知る者がいたならば、次に彼が言うことを、なんとなく、予想できたかもしれない。

「――苛立たせてくれるぜ」

 奏一朗とリュカ達の前に、魔将ベレトが立っていた。
「来いよ、野良犬。教えてくれよ、テメェの言う、ホンモノの獣ってヤツをよぉ」
「ホザきやがれ!」
 奏一朗が、ベレトに向かって踊りかかる。
 ベレトはナイフを片手に気だるげに、迫る獣を睨んだ。
 魔将ネビロスが展開せし魔結界。そのさなかに於いて、SINNは今一度の過去の悪夢と、対峙するのだった。

●第二階層:獣と狩人
「――そこ」
 抑揚のない声に続く、重い爆音。
 対物ライフルの長い銃身より撃たれた弾丸が、ケルベロスの身に突き刺さる。
 だが敵は高い再生能力を持ち合わせ、傷は、穿たれたその直後からすでに再生を始めていた。
 リディヤ・ジュラフスカヤ(sd9570)はそれに驚くこともなく、同じポイントに、同じ弾丸を、さらに二発、三発と重ねて当てていった。
 再生能力があろうとも、苦痛は変わることはない。
 ケルベロスのあげた悲鳴は、憤怒の雄叫びでもあった。
「あらあら、痛そうねぇ」
 獣が吐き出す毒霧を、風祭 鈴音(si5986)が手を振って風を呼び、こちらに届く前に散らした。
 この場に於いての戦闘は、それだけを見れば順調とも言えた。
 だがアンカリオよりいずる魔神の大半は、そんな状況を覆すすべを持っている。
 例えば、デモゴルゴンなども。
「――何かヤバイ感じがします!」
 今まさに、デモゴルゴンが秘めたる力を解放し、世界を塗り替えようとした瞬間、それを先んじて、茂呂亜亭 萌(so4078)が気づいた。
 或いはどこかの誰かが願ったゆえの、神の奇跡だったのかもしれない。
 軍服に身を包み、軍刀の代わりに何故だかラブリーなデザインのロッドを掲げ、彼女は皆へ向かって指示を飛ばした。
「相手には戦況を覆す手があるようです。速攻、速攻です! 一斉攻撃ィ!」
 指示、そして号令のもとに、彼女がデモゴルゴンより先に攻撃できたのも、きっと、主の思し召し。
「凍っちゃえばいいのよ!」
 荒井 流歌(sp5604)が発現させた吹雪を全身に浴びて、デモゴルゴンの動きが、確実に鈍った。
「‥‥ナイス」
 そこへ、リディヤが対物ライフルを立て続けにブッ放せば、粘液体の魔神は苦痛に身をよじらせた。
 功を奏していたのは、流歌の位置取りだった。
 アンカリオからやってくるディアボルスの中には、アンカリオの近付くことで不死にも近い耐久性を得るものがいる。
 ゆえにデモゴルゴンがアンカリオに近付きすぎないよう、己のホスティアを囮にした上で、凍結を狙ったその行動は正解であった。
 彼女の吹雪と、リディヤの銃撃を軸にして、SINN達は程なく、正体不明と伝えられるその魔神を霧散化にまで追い込んだのだった。

 異界の獣が一体、狩られた。
 残るは三つ首の地獄の門番のみ。
 俄然、SINN達の士気も上がる。
「みんな、もう少しだから!」
 マイ・スズキ(sd2903)が皆へ言葉と共に祝福を送った。
 彼女の願い、祈りは、確かな力を伴って、周りに立つ者達に活力を与えることだろう。
「ケルベロスは案外魔力が低い。狙うなら、そこですよ!」
 保介も、自らが得ている知識を皆に伝える。
「いきましょう、アシェンさん」
「ええ、いくでござんしょ!」
 ナイ・ルーラ(sb0124)が同じく、妻であるアシェン・カイザー(sd3874)に心からの祝福を送ると、自身は槍の柄を掴み、地面を踏み出した。
 それに併走するアシェン。二人は一直線に、ケルベロスへと向かっていく。
 二人のエクソシストの接近に気づいて、ケルベロスが爆炎をその口より噴き出すが、二人はそれを突っ切って、ナイが詠唱を完成させる。
「――凡て偽る者は、火と硫黄との燃ゆる池にて其の報いを受くべし!」
 手の平に刻まれた時計草の紋の聖痕より、放たれた光弾はケルベロスの鼻先に直撃。
 強い力を持つ悪魔であるほど、高い効果を示す光弾は、ケルベロスの三つ首の一つを完膚なきまでに打ち砕いた。
 傷口から、肉が盛り上がって再生が始まろうとする。
 だがその前に、次いで詠唱を紡いでいたアシェンが魔法を成就した。
「――、汝の名によりて多くの能力ある業を為しにあらずや!」
 とっておきの、本来であればベヒモスに使おうと思っていた切り札。
 しかし、夫が作ったこの好機を、如何にして無駄にできようか。
 額を囲うように、荊の聖痕が生まれ、延びた光の荊がケルベロスの巨体に絡みつく。
 途端、再生が止まった。
 真名なくしても、効果が発揮されたのだ。
 ケルベロスはもはや、その身に持つほとんどの能力を失っていた。
 自身、それに気づいたのだろうか、足取りをふらつかせ、オロオロと、残った二つの頭部をせわしなく動かしている。
 無防備とも呼べるほど、隙だらけだった。
「手負いの獣‥‥。だからこそ油断はできません。皆さん、明るい「めでたしめでたし」のために、確殺! 確殺じゃあ!」
 ケルベロスにとってはダメ押しであっただろう、萌による魔法少女ロッドでの追加号令が下って、
 あげた雄叫びは何ら効果を発揮することなく、ケルベロスはアシェンの白き浄炎によって焼き尽くされ、霧散化も許されずに消えていった。
 かくて異界の獣は狩人の手で討ち取られ、場に残るは――地の獣王のみ。
「‥‥‥‥ム」
 沈黙を保っていた巨人が、ゆっくりと、その足を踏み出した。

●ローラン救援:船艇戦火
「見つけましタ! デストロイですヨ!」
 ジェーン・ミフネ(sk6098)が指差したそこは、船室へと続く通路の直前。
「こっちだ! 俺の方が美味いぞ!」
 と、南郷 龍馬(sq3216)が呼びかければ、その豊かなホスティアを感じ取り、隠れていた融魔が顔を出す。
「一発必中!」
 気合の声と共に、ラミア・ドルゲ(sg8786)が撃った一矢が、融魔の首を見事に射抜いた。
「さっさと消えろってもんさ、これがな」
 ダメ押しとばかりに、ハーケン・カイザー(sc1052)が三度、銃声を響かせれば、融魔はもはやなすすべなく、キニスに還るのみ。
 甲板の反対側では、ローウェル 一三(so2674)が、今まさに船体をよじ登り、甲板へ上がろうとしていた融魔を、自らが操る水をぶつけて押し返すところだった。
「イチサン、危ねぇ!」
 しかし彼女の背後を狙い、空から迫る巨大な鷲の魔獣を、間一髪、飛び込んだラルフ・フェアウェイ(sg4313)が思い切り蹴り上げた。
 そのつま先が大鷲の頭をまともに抉り、大鷲は情けない声を出しながら空へと逃れていく。
「ラルフ‥‥、あ、ありがとう‥‥」
 戦いが目の前で一瞬に過ぎて、ポカンとしているローウェルの肩を、ラルフが気安くポンと叩いた。
 空高く逃れた大鷲を、さらにその上空から降り注いだ三本の矢が射抜く。何があったのかと、大鷲は獣程度の知能ながら思ったことだろう。
「このふね、まもる!」
 ポワン・ポワン(sp7345)であった。
 彼女の矢をさらに数度受けて、大鷲の身体は空中に滲んでいくようにして消えた。霧散化したのだ。
 だが空にいる敵は、これだけではない。雷光を纏い、襲い来る鳥型の魔獣へと、ポワンは視線を移すのだった。
 船上、甲板でも戦いが続いている。
「全く、ワラワラと!」
 平柳 アレクセイ(sa8945)が、甲板へと上がってきた融魔へとパペットを差し向けるが、融魔はよほどホスティアに餓えているのか、パペットを無視して彼の方へと向かってくる。
「隙だらけでござる!」
 それを迎え撃ったのが、宅間 馨(sh1949)とそのパペットたちだった。
 彼女が式神と称するパペット達が、その攻撃によって融魔数体を甲板の一箇所へと追い詰める。
「一網打尽や!」
 撃ち放たれる、道摩 歌留多(si1427)の重力波。
 範囲内にいた融魔達がキニスに還るのを見てから、彼女は次なる標的を探し始めた。
「‥‥本当に、どれだけ残っているんですか!」
 焦ったような声を出して、実和 真朋(sn6429)が自ら操るペンギン型のパペットを使い、船壁をよじ登りつつある融魔を凍てつかせて水に落とした。
 レヴィアタン本体復活の影響を受けているせいか、ディアボルス共は数も多く、何より餓えていた。
 倒せども倒せども、水面から新たに現れて、この船を登ろうとしてくるのだ。
 物量は、それだけで戦力である。ゆえに、或いはこの状況が続けば、SINN側が追い込まれるかもしれない。
 そう思う者が出てきてもしょうがない現状、エリオット・フレイザー(si0562)がアルケミーを完了させた。
「これで、どうかな?」
 完成したのは、汎用型くらいの大きさのアザラシ型パペットだった。
 パペットの素体を材料にして作り上げたソレを、彼はスレッドを繋いで海へ放ると、船の周りを巡るようにして泳がせ始める。
 状況の変化は、すぐに現れた。
 元々、エリオットはそれを、時間稼ぎ用のものとして作り上げた。
 しかし強いホスティアの反応を帯びるように調整されたそのパペットは、海中にいた多数の融魔を、まるで光に集まる虫けらの如くに惹きつけた。
 ホスティアへの餓えが、この結果をもたらしたと言ってよい。
「う、わわわ!」
 視覚を共有しながらパペットを操作するエリオットは、パペットめがけて一心不乱に泳ぎ、迫ってくる融魔の群れにちょっとした恐怖を感じつつ、それを泳がせた。
「水面近く、来れる?」
「え、え?」
 そんな彼に、文倉 羽留(sn2556)が声をかけた。
 何か考えがあるようだと、感じ取ったエリオットは、うなづくと操るパペットを水面ギリギリまで浮上させた。
 当然、融魔の群れはそれを追い、水面近くまで上がってくる。
「お、見えた見えたー」
 羽留はヒラリと空を舞い、手をかざす。
 そして敵の群れが見えた瞬間に、魔法を成就、放たれた雷光は高い威力を持って、一直線に融魔の群れをブチ抜いた。
 たかが、下級のディアボルスに耐え切れるものではなかった。次々、海中でそれらはキニスに還っていった。
 さらに二発、三発と、雷光が瞬いて、エリオットのパペットを釣り餌とした電気ショック漁は、これ以上ない程の成果を挙げたのだった。

●第三階層:海魔王の蠢動
 ズズズと、地面が重く震えるのを、マリアは確かに感じた。
 悪寒がする。背筋を、とても悪いものがせり上がってくる感覚が不快だ。
 眼の前では、戦いが続いていた。
「我が身命、ここで燃え尽き果てようとも!」
 鬼神を模した聖面で顔を覆い、それこそ鬼の如くに、御剣 キョウ(sp0401)がレヴィアタンへと拳を振り抜く。
 その身は炎に包まれていた。早々に、切り札たる魔法を切っての猛攻、ではあった、が――
「な、なめる、な‥‥、よ‥‥!」
 レヴィアタンが笑っている。
 通じないのだ。
 ただの一撃で即座に順応を完了する魔王の肉体は、手数を要とする格闘技者にとっては悪夢のような存在である。
 キョウの攻撃をその身に浴びながら、魔王はスゥ、と息を吸い込んだ。
「いけないの!」
 それを見て取った栄相 セイワ(sa0577)が、レヴィアタンが口から吐き出した青白い炎の息を、操った風で吹き散らす。
 恐ろしい熱量を孕んだ息だった。散ったあとの、その余熱だけで、セイワやキョウが肌に痛みを感じたほどだ。
「じゃ、邪魔を‥‥、す、する、な!」
 不快げに顔を歪めたレヴィアタンが、キョウを殴り飛ばし、セイワごと吹き飛ばした。
 魔王は依然として、マリアの方へと近づこうとしている。
 よほど、神の子が邪魔だと思っているらしい。
「マリアちゃん、もうちょい下がってな」
 護衛の一人、ギィ・ラグランジュ(sf9609)がマリアの前に立った。
「ギィ、でも‥‥」
 ギィは何も言わずにマリアへ頷くと、赤い光を帯びた剣を手に、駆け出した。
「‥‥ば、馬鹿。見て、分かれ、よ。わ、分かれ、よォ!」
「ああ、おまえは強いんだろう。理解はしてるさ。‥‥だが、諦める理由にはならねぇ!」
 剣に全体重を乗せて、ギィはそれを振り下ろした。
 己でも最高の一撃と分かる手ごたえ。それは魔王の額にまともに命中し、確かな衝撃を、彼の手に伝える。
「ラグランジュの名にかけて、この一戦、取りに行かせてもら――」
 だが叫び、二撃目を放たんと剣を引き戻そうとして、気づいた。
 剣が動かない。
「‥‥い、痛い――」
 レヴィアタンが、その刀身を握りしめていた。
 強烈な握力に、刀身は折れないまでも、小さく軋みをあげている。
 魔王は、その身を震わせた。怒気が、殺気が、瞬く間に膨れ上がっていくのを、ギィはその肌で感じ取る。
「痛い、い、痛い、痛い、痛い、痛い痛い痛い痛い、痛い! よ、よ、く、よくも、よくも、よくもよくもよくも、よくもォォォォ!」
 短絡的に過ぎる、怒りの爆発。
 ギィはとっさに身構えたが、その上で魔王の癇癪は凄まじいものだった。
 彼の身は打たれ、蹴られ、投げ飛ばされ、しかしなお、レヴィアタンの怒りは収まらず、
「何なんだ! な、なんで邪魔するんだよ! お、おまえ、おまえらァ! おまえらは、じ、自由なクセに! 私は、わた、わた、わ、私は、やっと、や、やっとここまで、来れたんだぞ、じゃ、邪魔するな、邪魔するなよォォォォォォォォォォ!」
 魔王の絶叫に呼応するように、また、地面が震える。
「‥‥‥‥ッ!」
 ギィへ駆け寄ろうとしていたマリアは、震えの大きさに思わず身を屈めていた。
 立っていられないほどの、今までにない大きな震え。そして聞えたのは、ピシリ、と、何かが砕けるような音だった。
 見上げて、マリアは、絶句した。
 壊れたのは、壁。聖印が刻まれた、壁面の一角。そこに亀裂が入り――

 壊れた壁の向こうから、巨大な瞳がこっちを見ていた。

「ひ――ッ」
 うわずった声が、その喉から漏れる。
 SINN達の間に広がる動揺。
 皆が感じていた。壁の向こうからこちらを見る、強烈な視線。その圧倒的な存在感を。
 レヴィアタンは、笑い出していた。
「ヒハッ! も、もうすぐ、もうす、ぐ! もうすぐだ、すぐ、す、すぐ! 私は、わ、『私』はじ、自由になれる‥‥! じ、自由に、やっと、や、やっとォ!」
 その反応から、疑問に思うまでもない。あの巨大な瞳は、レヴィアタン本体の瞳、なのだろう。
 だが、恐怖の内にありながら、マリアの意識が向いたのは、そこではなく、
「子供‥‥、みたい‥‥」
 怒り、嘆き、そして今、歓喜に叫んでいる魔王が、わがままな子供のように感じられて仕方がないのだ。
「‥‥ガキみてぇだな」
 村正 刀(sf6896)がマリアの気持ちを代弁するように言った。
 きっと、考えていることも、同じだろう。
 敵ならば戦うしかない。
 ――しかし子供ならば、諭せるかもしれない。
「プレゼントを用意しておいて、よかったかもしれないね?」
 気楽な物言いで、すでに練成を終えたマスコットを手にしたニア・ルーラ(sa1439)が、レヴィアタンの方へ歩み進む。
「な、んだ‥‥、お、おまえ‥‥?」
 レヴィアタンがニアに気づく。その、人を睨み殺せそうな眼差しに、しかしニアは臆することなく、
「君は知らないだろうけど、僕は君にテスラを上げると約束してるんだ」
 それは、レヴィアタン本人は与り知らぬこと。
 ニアが、時のはざまと呼ばれる場所で、レヴィアタンの過去の虚像と出会ったときの約束だった。
「だから、ほら」
「ぐ‥‥!?」
 ニアが放り投げたものを、レヴィアタンは反射的に受け取ってしまった。
 それはニアが操るパペットを模したマスコット。彼女のアルケミーによって、精神に作用する力を宿している。
「――‥‥‥‥」
 それを握った瞬間に、レヴィアタンの顔から険しさが消えた。
 ニアは己のアルケミーに確実な手ごたえを感じ、彼女に続くように、媛 瑞玉(sd3404)が言葉を投げかけた。
 瑞玉は、本体の一部が覗いている壁面を見上げて、
「本体も美人さんですわね。その格好も愛らしくて好きですけど」
 と、まずは告げると、さらに言葉を重ねていく。
「私は、あなたの命を奪いたいとは思っていませんのよ?」
 だからまずは話そうと、レヴィアタンを諭す。
 アンネリーゼ・ブライトナー(so1524)も同様に、対話を試みた。
「主は、あなたに悔い改めるよう、申しておりました。レヴィアタン様、世を滅ぼすことを、お考え直しくださいませんか」
 アンネリーゼの言葉は、第四の預言を根拠として、魔王説得の可能性をここで模索する。
 だが二人の言葉に、レヴィアタンが返すのは、ただただ、沈黙のみ。
「もうひと押し必要かい? だったらこいつでどうだ!」
 アントーニオ・インザーギ(sa5938)が、錬成によって生み出した白球をレヴィアタンへと投げつける。
 魔王は、そちらを見もしないまま、彼の投球を掴んだ。すると、白球が淡い光を放つ。
「人対魔じゃない、向かい合ったらそれは‥‥魂対魂だ!」
 彼は、熱を以て弁を揮う。
 錬成したのは感情を激しく揺り動かす、本当の心を呼び起こす白球。その名も潔く、『全力ストレート』だった。
「‥‥‥‥カ」
 沈黙し、動きを止めていたレヴィアタンが、小さな動きを見せる。
「そうだぜ、分かるだろ。お嬢ちゃんが目覚めさせたいのは本体であっ――」
 言いかけたアントーニオが、固まる。

 それは単純な、殺気だった。

 どこまでも単純で、簡単で、純粋で――巨大で莫大で膨大な、強風のような、殺気だった。
「――殺す」
 レヴィアタンの声。
 小さくも、だが鋼のように硬く冷たい、殺意で塗り固めたような声。
 或いは、説得もできるだけの余地は、あったのかもしれない。
 しかしいっときの説得でそれをなすには、魔王が身にたぎる怒りと憎悪は、あまりにも強すぎた。
「か、感謝くらいは、し、してやる‥‥。う、う、浮かれすぎた、お、おまえ達、よろ、喜ぶのは、お、おまえ達、殺してから、だ!」
 その矮躯より溢れ出る殺気は、その場にいるSINNに、もはや説得の余地がないことを悟らせるに十分だった。
 レヴィアタンが、告げる。
「こ、こな、粉微塵に、して、やる‥‥!」

 二つの影が、遺跡の中を走りゆく。
 片方は狐の獣人。
 もう片方は栗鼠の獣人。
 魔法によって獣化し、足を早めた状態で、二人は今、遺跡の通路を走っていた。
「間に合うかな」
 栗鼠の獣人――アンナリーナ・バーリフェルト(sp9596)の問いに、
「間に合わなけりゃ、そんときはそんときだろ」
 狐の獣人――ルナール・シュヴァリエ(sp6369)の答えは簡潔だが、その足取りはどう見ても全速力である。
 内心に、焦りはあった。これを伝えてどうなるのかという、不安もあった。
 ただ、伝えなければならないという確信が、二人の身体を突き動かしていた。
 二人は急ぐ。一路、魔王とSINNの決戦の場へと――

●第一階層:人形の糸を切れ
「ハァァッ!」
 アンリ・ラファイエット(sp6723)が振るった拳が、中級の吸血鬼のあごを捉えた。
 ゴキリと、相手の骨が砕ける感触。肉も裂けて、顔からダラダラと出血しているその吸血鬼の、傷が、治らない。
 死んでいるのだ。この吸血鬼は、すでに命絶えて、それでも、額に描かれた血印によって『人形』として操られている。
「もぉ、いい加減にしろぉ!」
 アンリの義弟、オリヴィエ・ベル(sp7597)が高い場所より、体重を思い切り乗せた飛び蹴りを『人形』にお見舞いする。
 回避もせず、みぞおちに蹴りを喰らった『人形』は数mも吹き飛ぶが、何事もなかったかのように起き上がった。
「しつこいなぁ‥‥」
 彼は肩で息をする。もう何分、この『人形』どもの相手をしているのか。
 いかに体力に優れるクレスニクとはいえ、限界はあった。
 ただ、再生能力が働かないこともあって、壊せば壊した分だけ『人形』の動きは鈍っていった。対処は、幾分しやすくなっているのだ。
 オリジンを討たねば、どうしようもなさそうだが。
「クハッハッハ、どうした愚かな畜生たちよ。私はここにいるのだぞ」
 吸血鬼侯爵『人形遣い』は、戦場の最奥でクレスニク達を嘲った。彼らと彼との間には、半魔と中級吸血鬼、そして『人形』が壁を作っている。
 あの壁を、どうする、どうやれば――
「突っ切るしかねぇっすよ」
「それに同意ではあるな」
 悩む者達へ、そう、志島 陽平(sa0038)とアスラン・ノヴァク(sq1286)だった。
「‥‥大丈夫か、セイディ」
 アスランは、これまで共に戦い、血のあとを防具に残しているセイディ・ゲランフェル(sp8658)へと声をかける。
「これくらいなら、まだなんとか。それより、やすんですね」
「ああ‥‥」
 アスランは頷くと、イーゴリが後を続けた。
「敵の壁に穴を開ける。狙いは吸血鬼だ。方法は――頼めるな?」
 と、彼は陽平と、その相棒のヒメコ・フェリーチェ(sq1409)に頼んだのだった。
「やってやるっすよ!」
「はい、なのです」
 やろう、と、エスターが言った。
 その声を合図にして、一斉に走るクレスニク達。
 『人形遣い』公から見れば、それは獣畜生共の反逆行為に他ならない。
 彼にとって獣人とは、いわゆる奉仕種族。自らに仕えるために生きている存在に他ならないのだから。
「不敬であるぞ!」
 怒りと共に怒鳴ると、『人形』と中級の吸血鬼が、クレスニクに襲い掛かろうとする。
 だが輝きが、吸血鬼の動きを止めた。
「なぁ‥‥!?」
 この場にあるはずのないソレは、まごうことなき太陽の光。吸血鬼にとっては忌まわしいばかりの光である。
 陸からは陽平が、空からはヒメコが、前にかざしたその手より、太陽の光を放ちながら、敵陣へと突っ込んでいく。
 エスターやイーゴリは、吸血鬼の存在を己の五感で感知できる魔法を成就していた。
 そして、敵の壁の中で、特にそれが多く集まっている場所を割り出して、そこからは陽平達の出番であった。
 吸血鬼だけではない、吸血鬼の『人形』も、陽光を受ければその肌が焼けていた。
 セイディやアスランが、ここぞとばかりに切り込んで、
「突っ切るわよぉ?ん」
 群れる半魔へは、ニーチェ・シュートラー(sp6098)が飛び込んでいった。
 彼女は、自らの首に巻いた『美神の鎖』と呼ばれる伝承宝具をここで使って、瞳に妖しげな光を宿し、自身を見る半魔を見つめ返した。
 その眼差しに冒されて、半魔は思わず、構えていた武器を下げてしまう。
 だが中には、彼女の瞳に抗った半魔もいた。そちらへは――
「あっち行っててねぇん」
 力宿した言葉が、染み込むようにして半魔の心を捕らえて、道を開けさせた。
「オリジン!」
 こじ開けられた、兵の壁。
 そこに開いた穴より走る雫石 雪凪(sp8252)が、慌てふためく『人形遣い』へと蹴りの連打を喰らわせる。
 数にして八度。獣化したクレスニクの蹴りをその身に受ければ、オリジンが誇る極限じみた再生能力も中和され、『人形遣い』はその端正な顔を憎悪に歪めた。
「お、おのれッ、下賎の輩が、口臭き者如きがこの私に傷をつけただとォォォ!」
 激情のままに、引き抜いた剣の刀身にも血塗りの文字が描かれており、それは呪いによって擬似的な邪剣としての能力を有していた。
 だが雪凪も、伊達でクレスニクを名乗っているわけではない。
 彼の戦士としての純粋な技量は、侯爵位という高い地位にある『人形遣い』と互角に渡り合えるほどであった。
 ならば両者に差をつけるのは、数、であろう。
「援護、させてもらうよ、雪凪!」
 雫石 結氷(sp9763)が、雪なぎのすぐ背後より現れて、至近距離から『人形遣い』に弾丸を叩き込む。
 身体に幾つも穴を穿たれて、激痛より、そして自らが傷つけられた恥辱より、オリジンはその瞳を強く血走らせた。
「小僧如きがァ!」
「あ‥‥!」
 『人形遣い』は雪凪ではなく、結氷の腕を掴み上げると、その腕に深々と、己の牙を突き立てた。
「結氷!?」
「ぅ、グァ‥‥!」
 激痛に耐えながら、結氷が発砲して、強引に己から『人形遣い』を引き剥がす。
 だが『人形遣い』は彼の血を口元から垂らしたまま、いきなり狂ったように笑い出した。
「くだらん! 血を吸ってもらって、感謝しろ! 貴様らは所詮、使えるだけしか能のない卑しきものだと、これで――ッ‥‥」
 だが笑い声が突然止まって、彼はその場に膝を着く。そして、大きく見開いたその目で、結氷を睨んで、
「き、貴様ァ、ァァ‥‥」
 噛まれ、呪縛に囚われた結氷は、しかし、その顔にかすかな笑みを浮かべていた。
 彼の血は魔法によって、強い毒を帯びていたのだ。
 万が一を考えての毒血化ではあったが、それが、功を奏した形だ。
「ガハ‥‥、馬鹿、な‥‥」
 『人形遣い』の身体には、ほとんど力が入らなかった。
 その毒血は、吸血鬼であろうとも関係なく、体を蝕む。今や『人形遣い』の身体能力は、一般人並にまで落ちていた。
 クレスニクが彼を囲むのは、無論、簡単すぎることだった。
「‥‥同胞の仇、とらせてもらうっすよ」
「絶対に、許せないのです」
 手に太陽をかざした二人が、告げた。
 今この場に、呪いを解くすべを持つ者はいない。結氷を吸血の呪縛より解き放つことは、今すぐにはできないのだ。
 その怒りを、クレスニク達は目の前の怨敵へと、今、ぶつけようとする。
「や、やめろ‥‥。その光を、ち、近づけるな‥‥!」
 にじり寄るクレスニク達に、『人形遣い』は怯えの表情を見せて、尻餅をついて逃れようとする。
「私を、わ、私を誰だと思っている。私は、『王』の信任も厚き――」

「「消えろ」」

 声は、重なって、
 『人形遣い』の長すぎた生涯が、怒る獣達の牙により、今、終わりを告げた――

●第二階層:地の獣王
 デミル・ウルゴスティア(sd9633)が幹部魔将ベヒモスをその目にするのは、実は初めてのことだった。
「うげぇ、‥‥いかつい男とかちょーやだー」
 と、いうのが彼の正直な感想であり、その魔将の巨躯もあからさまに鈍そうで、いかにもパワー型であることが伺えた。
 だからこそ――巨体が霞のように消えたことに、デミルは目を見張った。
「来やがるぞ!」
 刹那、遅れて隼人が警戒を促す。
 だが遅かった。
 その身に光を帯びたベヒモスは、4mの巨体からは想像もできない速度で間合いを縮めると、次の瞬間にはデミルの眼前に現れていた。
「わ、わ‥‥!?」
 振り下ろされる拳。それは具風を伴って、デミルへと叩きつけられる。
 彼がローレムを己のCROSSに付与していなければ、それだけで終わっていたかもしれない。
 ただ、拳の衝撃にCROSSは耐え切れず、叩き砕かれてしまったが。
「わぁぁ!」
 思わず、デミルが後ずさる。
 その隙間のような刹那にも、巨体は速度を保ち、彼へと前蹴りを食らわせていた。
「クソが!」
 保介がベヒモスに向かって、拳銃を向けた。そこで、世界は塗り替えられる。

 ――ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオゥ!

 雄叫び。そして景色は移り変わった。
 遺跡の内部はそのままに、鉄色の柱が乱立する空間。これこそが、ベヒモスの魔結界の景色である。
「これだけするんだもの。こけおどしなんかじゃないわよね?」
 ノーラ・ローゼンハイン(so6720)が、指を振るって三体のパペットを操り、ベヒモスの背後を取る。
「期待、させてもらうわ」
 言葉と共に、パペットが一斉に魔法によって起爆。紅蓮が三度、戦場に炸裂した。
 いずれも高い威力を持つ、パペットの爆弾化魔法である。
 並のディアボルスであれば充分に霧散化にまで追い込める火力である。が、
「‥‥‥‥ム」
 ヒュルリと風が流れたかと思えば、ベヒモスはすでにノーラの側面へと迫っていた。
 その巨体に、傷はほとんどなかった。
 あらゆる外的脅威に対し、無類としか呼べない耐久力を得る。
 シンプル極まりないそれこそが、この魔結界の内部でベヒモスが得る効果であった。
 これと、巨体を加速させ攻撃の手数を数倍にも変える彼の悪魔魔法が重なったとき、ベヒモスの肉弾戦における実力は、ついに極まる。
「‥‥凄いのね」
 ノーラの一言の間にも、ベヒモスの鉄鎚が如き拳が、幾度も彼女を打ち据えていた。
 肉が裂け、骨が折れて、ボロクズに変わり果てたノーラの身体が地に投げ出される。
「やってくれるじゃない‥‥。人間の強さ、見せてあげるわ!」
 厳島 雪花(sp0998)が、アサルトライフルの銃口をベヒモスへと向けて、トリガーを引き絞った。
 魔力を纏った弾丸の雨が巨体を狙う。
 だが加速し、馬鹿げた回避性能を得たベヒモスは、そのいずれをもかわして、雪花に肉薄した。
「――こっ、の!」
 ライフルを捨て、雪花はベヒモスに殴りかかろうとした。
 だが先に伸びてきた巨大な手が、彼女の頭を鷲掴みにすると、ベヒモスは無造作に彼女の身体を片腕で持ち上げて壁へと投げつけた。
 激突音は鈍く、硬く、生々しく、SINN達の耳に届いてしまった。
「強い、硬い、速いだって‥‥? さすがに馬鹿げてるよ」
 雪花へと駆け寄って、治癒の魔法を施そうとするアルフォンス・ヴィヴィエ(sf9647)が、のっそりと構えを取ったベヒモスを見て、そう漏らした。
 連れている聖獣を向かわせようか、と、思わなくもないが、まだ機でもないように思えた。
「‥‥‥‥ム」
 聖書にも記される地の獣王。
 その身が放つ威圧感は、流石の一言に尽きた。
 アンカリオからの異界の獣とは、比べるべくもない。獣を狩って高揚していた士気も、たった数分で打ち砕かれた。
 最強の個。
 まさにそう呼ぶに相応しい、魔なる将であろう。
「フハハハハッ! まだまだ、これからですぞ!」
 腕を組み、消沈の空気を笑い飛ばす、ウルセーヌ・モローアッチ(sp5281)。
 彼は槍を高く掲げると、その槍から大きな旗の幻影が現れた。
 旗には力強い虎が描かれて、彼はそれを振り回して皆を鼓舞する。
「ピンチこそチャンス、今こそ我々にチャンスが訪れているのです!」
 その言葉が、場

MVP
ダニエル・ダントン (sa2712
♂ 人間 パラディン 地
柴神 壱子 (sa5546
♀ 人間 ハンドラー 風
狼牙 隼人 (sa8584
♂ 人間 パラディン 風
三輪山 珠里 (sb3536
♀ 人間 エンジェリング 風
烏ツ木 保介 (sd0147
♂ 人間 エクソシスト 風
エリオット・フレイザー (si0562
♂ 人間 ハンドラー 水
鷺沼 妙子 (sp1602
♀ 人間 パラディン 地
ルナール・シュヴァリエ (sp6369
♂ 獣人 クレスニク 水
雫石 結氷 (sp9763
♂ 獣人 クレスニク 水
アリス・フリュクレフ (sq1159
♀ 獣人 クレスニク 水

参加者一覧
九門 蓮華(sa0014)H水 轟 弾護(sa0018)H風 志島 陽平(sa0038)K地 レティシア・モローアッチ(sa0070)H水
アルベルト・ルードヴィッヒ(sa0074)E火 ミリーナ・フェリーニ(sa0081)P火 煌 宵蓮(sa0253)P水 クリシュナ・アシュレイ(sa0267)P水
栄相 サイワ(sa0543)E地 栄相 セイワ(sa0577)A風 陸奥 政宗(sa0958)P火 アビス・フォルイン(sa0959)E水
ユビキタス・トリニティス(sa1273)H風 アイン・ネーダー(sa1289)A火 ニア・ルーラ(sa1439)H水 メイリア・フォーサイス(sa1823)A風
ヤズゥン・ディガ(sa2434)P火 ダニエル・ダントン(sa2712)P地 柴神 壱子(sa5546)H風 アントーニオ・インザーギ(sa5938)H風
テムジン・バートル(sa5945)P水 狼牙 隼人(sa8584)P風 御剣 龍兵(sa8659)P風 平柳 アレクセイ(sa8945)H地
須経 蘭華(sb0118)E地 ナイ・ルーラ(sb0124)E地 皆本 愛子(sb0512)H地 ライラ・ルシュディー(sb2519)A地
神代 翼(sb3007)A風 三輪山 珠里(sb3536)A風 アドリアン・メルクーシン(sb5618)P火 ラティエラ・テンタシオン(sb6570)A地
ハーケン・カイザー(sc1052)H風 房陰 朧(sc2497)H風 カーク・ルッフォ(sc5283)E風 癒槻 サルヴァトーレ(sc5529)E風
烏ツ木 保介(sd0147)E風 マイ・スズキ(sd2903)E火 媛 瑞玉(sd3404)P風 アガタ・フォーシュベリ(sd3867)H風
イーノク・ボールドウィン(sd3868)A火 アシェン・カイザー(sd3874)E火 リュドミラ・マシェフスキー(sd4001)A地 リディヤ・ジュラフスカヤ(sd9570)P風
デミル・ウルゴスティア(sd9633)E地 ビート・バイン(sf5101)P火 村正 刀(sf6896)A火 十文字 翔子(sf7297)A風
リン・ブレイズ(sf8868)P火 ギィ・ラグランジュ(sf9609)P地 アルフォンス・ヴィヴィエ(sf9647)A地 轟 琳瑚(sg2457)P火
ラルフ・フェアウェイ(sg4313)E風 ラミア・ドルゲ(sg8786)P風 宅間 馨(sh1949)H風 メーコ・カトウ(sh3828)K風
ハルキュオネ・バジレア(sh3934)A水 酒匂 博信(sh4156)P地 ダニエル・ベルトワーズ(sh5510)A水 エリオット・フレイザー(si0562)H水
オルフェオ・エゼキエーレ(si1323)P地 道摩 歌留多(si1427)A地 御剣 四葉(si5949)E水 風祭 鈴音(si5986)A風
ミラベル・ロロット(si6100)H風 シャーロット・エルフィン(si6767)H水 ブリギッタ・ブライトナー(si7746)P火 エルマ・グラナーテ(sj0377)E水
ウィリディシア・クレール(sj3049)E地 エティエンヌ・マティユ(sj6626)E地 マイア・イェルワジ(sj7576)A地 花枝 美咲(sk2703)A水
リュカ・フィオレンツィ(sk3006)P水 ジェーン・ミフネ(sk6098)E風 テオ・マリピエーロ(sk8101)E水 文倉 羽留(sn2556)A風
実和 真朋(sn6429)H水 九門 桔梗(sn6431)A火 トウマ・アンダーソン(sn7273)P地 ジュラルディン・ブルフォード(sn9010)H風
ダニエル・マッケラン(so1035)P地 アンネリーゼ・ブライトナー(so1524)E火 ローウェル 一三(so2674)A水 茂呂亜亭 萌(so4078)A風
ノーラ・ローゼンハイン(so6720)H火 サラ・オブライエン(so7648)H水 御剣 キョウ(sp0401)P水 厳島 雪花(sp0998)E風
小茄子川 隆人(sp1454)H火 エテルナ・クロウカシス(sp1494)A風 児玉 初音(sp1503)A火 鷺沼 妙子(sp1602)P地
有栖川 彼方(sp2815)P火 神楽坂 凛(sp3316)E風 マリク・マグノリア(sp3854)H水 ヴェルンハルト・ラヴィーネ(sp3868)E水
ドワイト・カーバイン(sp3893)H水 ブランシュ・ブランシャール(sp4332)A風 碇矢 未来(sp5129)P火 ウルセーヌ・モローアッチ(sp5281)H地
荒井 流歌(sp5604)A水 ニーチェ・シュートラー(sp6098)K火 ルナール・シュヴァリエ(sp6369)K水 ラチェット・トーン(sp6693)K風
アンリ・ラファイエット(sp6723)K水 シュナイト・ヴァール(sp7330)K地 ポワン・ポワン(sp7345)K火 オリヴィエ・ベル(sp7597)K風
雫石 雪凪(sp8252)K火 鷹宮 奏一朗(sp8529)K火 セイディ・ゲランフェル(sp8658)K水 ゴスタ・ユオン(sp9246)K火
シャムロック・クラナド(sp9296)K風 アンナリーナ・バーリフェルト(sp9596)K風 雫石 結氷(sp9763)K水 エスター・ゴア(sq0475)K風
イーゴリ・トルストイ(sq0700)K地 アーク・カイザー(sq0753)K火 アリス・フリュクレフ(sq1159)K水 アスラン・ノヴァク(sq1286)K地
ヒメコ・フェリーチェ(sq1409)K風 オズウェル・クローチェ(sq1494)K水 ラティーファ・アミン(sq2900)E水 久留須 以久(sq2919)K風
カイ・オウミ(sq3050)A水 南郷 龍馬(sq3216)A風 ラウラ・シリングス(sq3234)A地
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