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彼女の元に、幸福を
オープニング◆学生達は、アンナがモニターに映した女性を見つめる。アンナはそんな学生達に、今回の任務の説明を始めた。 「今回のターゲットは彼女‥‥映画か雑誌とかで見たことがある人もいるかもしれないけれど、女優のシエラ・レヴェントン。まだ若いけれど、最近活躍し始めている期待の新人‥‥ってところかしら?」 まぁ、人によって評価は違ってくるだろうけど。そう付け足して、アンナは彼女の胸元に光る黄色い宝石の指輪を指し示した。 「それで、今回盗ってきてもらいたいのはこの指輪。五十年くらい前に、とある貴族の家から盗まれたものよ」 果たして、どういった経緯で彼女のもとに指輪が辿り着いたのか。学生達の間に浮かんだ疑問に、アンナが答える。 登場キャラ
「どうも、こんにちは」 馬並京介はぺこりとひとつお辞儀をし、ステージへと上がっていく。 「馬?」 シエラ・レヴェントンはステージの京介の頭部を見て、唖然とする。馬、だ。頭が、馬。 「僕も最初に見たときは驚いたもんだ。だけど彼、『風の噂に招かれて来ました、自称日本一のマジシャンが皆様方へ驚きと感動を、そして私の魔法が世界に通用するかを是非試したい』なんて言うもんだから、ちょっと面白くなっちゃってね」 横に立ったディレクターがウイスキーを片手に笑う。このディレクターの事は、元々変わった人だな、と思っていたが、ここまで価値観に違いがあるとは。自分なら絶対にそんな怪しい人の申し出なんて受けないのに。シエラはそう思いながら、ステージに立つ京介をみつめる。 「あ、でも面白いからってだけで来てもらった訳じゃないよ。手品の腕も素晴らしかった。その場で簡単なものを、って言ってたけど、僕には全然わからなかったな。『当日は更に凄い魔法をお見せします』なんて言ってたからね、楽しみにしてたんだ」 そう言って、ディレクターはワインを一気に煽ってグラスを手近なテーブルに置く。 「僕は向こうで彼の手品をしっかり見てくるよ。良く見れば、もしかしたらタネの欠片くらいはわかるかもしれない。シエラくんも良かったら、彼の手品見ていってよ」 ディレクターはひらりと手を振ってステージの方へ向かっていく。 「あのディレクター、苦手だわ」 ぽつりと呟くシエラは、右の薬指に嵌められている指輪に視線を向ける。きらきら光る宝石、繊細な装飾。きっと高かっただろうに、恋人のルーカスはお祝いだと言ってプレゼントしてくれた。恋人の存在は公表してないから右手につけてきたけれど、本当は左につけたいくらい、彼の事を愛している。 「楽しんでるかしら?」 視線を落としたままのシエラに、アルカ・アルジェントが声を掛ける。その横にいるのは、身分証明書を首から下げたヴェロニカ・ラプシア。企業名は映画のスポンサー企業だ。それを見たシエラは、アルカも企業の関係者かと判断し、笑顔で頷く。 「ええ、とても」 「貴女はステージの手品‥‥見に行かないの?」 ヴェロニカは首を傾げて問う。シエラはちらりと視線をステージへと向けた。丁度、京介の手から何国旗がぞろぞろと出てきた時だった。 「ちょっと混雑してますよね‥‥どうしようか、悩んでたんです」 確かにステージの前は大変な混雑具合だった。馬の頭のマジシャン、というだけで注目を集めるのに、その語り口に人を惹き付ける魅力があるらしい。 最初はディレクターと二人で見に行くのが気まずくてこの場に留まったのだが、今となってはあの人垣を割って入るのが躊躇われる。 「じゃあ、少しお話しましょ?」 艶やかにアルカは笑った。 ◆ 「今頃、パーティーが始まってる頃ですね」 出席者のメイクを済ませた後、ロビーの椅子に移動した中藤冴香は壁の時計で時間を確認する。 「こっちは‥‥どうなってるでしょうか?」 取り出したAiフォンを操作して、幾つかあるSNSの内、一つをタップして表示する。シエラ、女優、指輪、それから元々の持ち主である貴族の名前を検索バーに入力。 ずらっと並ぶ文字列の中では、冴香がいくつかのアカウントを使って流した情報が、まるで真実であるかのように居座っていた。盗まれた指輪は型を取られ、贋作士による偽物もいくつか制作された、であるとか、彼女の指輪はよく似ているが、使用されている宝石が違う、であるとか。そこにユウキ・ヴァルトラウテがHALCOに流させた情報も混ざり、かなり混沌とした有り様になっていた。今もそれぞれが意見を出し合い討論は続いているらしい。しかし、大方の意見としてはシエラの指輪はそっくりだが偽物であり、本物は結局何処に行ったかわからない、といった方向へ流れつつあるようだ。 冴香はほっと息を吐き、ぐっと伸びをして肩の力を抜いた。 「純粋な想いからの行動でも巡り合わせによっては悲劇の種となる‥‥運命とは皮肉なものだ」 そう呟きつつ、陳華龍はドレス姿のアンナに手を差しのべる。数段の段差ではあるが、紳士を気取るにはこのくらい気障な方が自然だろう。 「想いそのものは尊いものであるとしても‥‥結果はわからないものよ」 ふ、と笑ってアンナはその手を取り、段を降りる。その瞬間、会場にざわめきが起こった。MNで中国系の若手俳優に変装した華龍が、謎の美女の手を取っている。しかも、何故かすごく親しげだ。その事実に、会場の人々は動揺を隠せずにいた。とはいえ、先にステージで京介の手品が始まっていた都合上、その真後ろから会場に入ってきた華龍とアンナに向けられていた視線は、比較的少なかったのだが。 その時、京介が馬の鼻の部分から薔薇の花を続々と出してきて、ステージの方で歓声が上がった。その騒ぎに乗じてか、一人の中年男性が華龍に声をかける。 「そちらのご婦人は、どなたです?」 口調は穏やかながら、その裏にある好奇心は全く隠せていない。そんな男性に、アンナの手を握ったまま華龍は僅かに口角を上げる。 「チャーミングでミステリアス、けれど大きな愛と優しさを秘めた彼女に私の心は盗まれたのさ」 悪戯っぽく告げたその声はステージの方の歓声で周りに広く聞こえる事は無かったが、それでも目の前の男性にはしっかりと届いた。ぽかんと口を開けた男性にひらりと手を振って、華龍はアンナを伴い、シエラのいる席とは逆側へと歩いていく。 「そういえばあまり飲んでいないのではなくて? 遠慮しないで。折角のパーティーなんですもの」 スポンサーの企業の人間とおぼしき人物を目の前にして、緊張しているのだろうか。あまり酒を飲まないシエラに、アルカはワインのグラスを手渡す。 「え、ええ‥‥ありがとう」 断りきれず、シエラは受け取り、口に運ぶ。 「映画、素晴らしかったわ。貴女とご一緒できて本当に嬉しいのよ」 ふふ、と笑うアルカの後ろからこちらに歩いてきたのは、プレスの男性だろうか。今シエラを連れていかれてしまっては困る。ヴェロニカがそちらの方へと歩いていき、にっこりと笑う。 「プレスの方? わが社の映画に興味を持ってくださり光栄だわ」 そう声を掛けるヴェロニカを視界の隅に捉えつつ、アルカはシエラに笑いかける。 「こういう時って、お酒も美味しいからつい飲み過ぎちゃうのよね。今日は指輪を外してきて正解だったわ」 「指輪?」 たずね返すシエラに、アルカは頷く。 「ええ。お酒、好きなんだけど、すぐむくんじゃうのよ。昔バラエティで見たの。手がむくんで指輪が食い込んで大変なことになった女性の話」 特に思い込みを誘うような声音や効果に気を使って話した訳ではないが、それでもシエラはアルカの発言が気になってしまったらしい。 「えっ、そんな事が‥‥? 怖いわ‥‥」 シエラはさっと指輪を外して、それからハンドバッグの中にしまい込んだ。アルカがその様子を見ながらワインを飲み干した時、京介が何もなかった掌からカードを取り出す。その直後、出来上がったカードの山からステッキが飛び出して京介の周りを飛び回る。わっ、という歓声を聞いたシエラがステージの方に目を向けた瞬間を狙い、アンナがその肘を掴んだ。 「ワイン無くなっちゃったわ。向こうにカクテル置いてるみたいなの。取りに行きましょう?」 「え、カクテル‥‥?」 他のテーブルとか、ウェイターが持ってる分もあるんじゃないかしら。シエラが視線を巡らせた時、その視線を遮るようにユウキが立つ。 「カクテルでございますか?」 シエラが誰にともなく発した声に、ユウキは答える。立ち止まったシエラに、アルカも同じように立ち止まる。 「カクテル、あっちにあるんでしょう?」 アルカが指差す先のテーブルは壁に沿うように置かれており、周りに人気は無い。そして、テーブルの上にはグラスに注がれた色とりどりのカクテルが見える。 「ええ。ご自由にお飲みいただけるようになっています」 「ね? 行きましょ」 ユウキの返答を聞くや否や、アルカはぐいぐいとシエラを引っ張り、テーブルの前まで辿り着く。 「どれが良いかしらね‥‥貴女は好みとかあるのかしら」 「私は‥‥」 シエラが答えようとした瞬間、会場の扉から鷲が会場に入ってきた。ざわめく会場に、シエラは目を瞬く。 「え、何? どうしたの?」 シエラが扉の方に目を向けると、鷲は扉から会場の真ん中の方へ飛んで行く。鷲見つめるウェイター姿のゲルト・ダールが、周りの客や他のウェイターに叫ぶ。 「手出しせず、見守って!」 「見守る‥‥そう、危ないものね」 強い暗示を込めた発言に、シエラが呟く。シエラの視線は鷲‥‥ゲルトの相棒、フレズベルグに注がれている。それをチャンスと見たアルカは、さっとハンドバッグの中から指輪を取り、掌の中に握りこんだ。 「ほら、あっち行け! 痛ッ!」 その間、ゲルトはつんつんとフレズベルグにつつかれながら、走り回り、遂に扉の外へと飛び出していく。 「‥‥何だったのかしら」 ぽつりと呟くシエラと、肩を竦めるアルカ。そんな二人の元へ、プレスを軽くあしらってきたヴェロニカが戻ってきた。 「鷲、びっくりしたわね?」 「ええ‥‥怖かったわ」 気遣うようなヴェロニカの声と、ヴェロニカにしなだれかかるアルカ。指輪を握ったその手は、ヴェロニカの服をぎゅっと握る。それを見たシエラは、思わず目を丸くした。 「ちょっと気分が悪くなってきたわ‥‥」 「そう‥‥じゃあ、帰りましょう? シエラさん、申し訳ないけど失礼させてもらうわ」 ふらつくアルカを支えるヴェロニカ。背を向ける二人を見守りながら、ハンドバッグに目を向けたシエラが首を傾げる。 「あら? 指輪‥‥」 その呟きを聞き、アルカはゆっくりと振り返る。 「落ち着いて、今日はそこに指輪なんてなかったわ」 思い込ませるようにゆっくりと紡がれる言葉に、シエラは小さく頷いた。 ◆ 「シエラ、おかえり!」 「ルーカス‥‥!! 今日は仕事じゃなかったの?」 シエラは道路から見上げた時点で、自宅の灯りが点いていたのは気がついていた。シエラの部屋の合鍵を持つのはルーカスただ一人。だから泥棒でなければルーカスなのは間違いないと思ってはいたのだが。 たずねるシエラに、ルーカスは笑う。 「早めに上がってきたんだ。知り合いが、早く帰ってあげてくれって行ってくれてね」 正確には知り合いという程の間柄では無いのだけれど。ルーカスは彼の職場に突然現れた紅嵐斗の姿を思い浮かべる。本当は依頼者に会うのはルール違反である、とまず最初に述べた嵐斗。それでも会いに来てくれた彼という人について、ルーカスは思いを巡らせる。ただの良い人‥‥という訳では無いのだろう。きっと、彼らのような仕事は良い人というだけでは出来ないだろうから。ならば、きっと譲れない信念のようなものが彼の行動の裏にはあったのだろうと思う。 それから嵐斗は、こう言った。 『彼女の輝かしい一歩を祝し、ささやかでもいいからお祝いの場を設けて欲しい。たとえ指輪を盗み出せたとしても、シエラさんの心には傷がつくと思うから』 ルーカスがシエラさんの映画出演を祝ってあの指輪をプレゼントした。だったらその気持ちを形を変えてもう一度伝えてあげればいい。そう言う嵐斗に、ルーカスは確かにその通りだと思った。だけど、あの指輪を買うのにルーカスの財布はすっからかんになってしまったのだ。その話をしようとしたら、ルーカスの心を読んだかのようなタイミングで、嵐斗は料理はこっちで手配すると申し出てくれた。そこまでやってもらうのはさすがに申し訳ないと言ったが、やはり嵐斗としても譲れない物があったのだろう。 数分間の押し問答の末首を縦に振ったルーカスは、すぐに職場を出てシエラの家へ。そうしたら驚くことに、本当に素晴らしい料理が届けられたのだ。 「これ‥‥どうしたの?」 テーブルに並べられた料理の数々を見て、シエラが問う。 「君の素晴らしい活躍と、これからの明るい未来を願って‥‥お祝いをしたくてね」 リビングの机を見て目を瞬くシエラに、ルーカスは笑う。斜め下から見上げてくる瞳は驚きで彩られていたが、程なくしてさっと影が過った。それから、シエラは俯いて、途切れ途切れに言葉を紡いでいく。 「ありがとう‥‥でも、ごめんなさい‥‥。私ね、貴方から貰った指輪を無くしてしまったの‥‥酔っていたからよく覚えていないのだけど、確かに持っていた筈なのよ。なのに、私‥‥」 ああ、彼の言った通りだ。ルーカスは小さく呟き、俯いた。 (選択はきっと正しかった。だけど、シエラを傷付けてしまった。全て、俺のせいだ。だけど、彼らはこんな俺の為に頑張ってくれた。俺は、シエラと彼らの為に、彼女の笑顔を取り戻さなければならない) ルーカスは意を決して、顔を上げる。 「そうか‥‥指輪は残念だった。贈った者としては確かにそうだよ。だけど、指輪は君の不幸を全て肩代わりして無くなったんだろう。君が幸せになる為に、あの指輪は姿を消したんだ。俺は‥‥君に笑って欲しいよ。だって、今日は君のお祝いなんだから」 ルーカスがシエラの目尻に溜まった涙を指で拭う。すると、シエラはゆっくり顔を上げた。その瞳は細められ、口許は緩やかな弧を描いていた。
参加者
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