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春の思い出
オープニング◆「困ったわねぇ‥‥」 変装術講師、アンナ・ヴィドルフは変装術の講義で使う教室と、それから溜まった落し物の山を前に、ふぅと一つ溜息を吐いた。 四月になれば新入生が入学してくる。となれば、満二年間、この学園で講義を行ってきている事になるが、その間忘れ物は溜まっていく一方だ。 勿論、たまに呼びかければ、落とし主が現れ無事回収されていく事もあるが、色々忙しくしている内に、誰からも忘れられてしまうものもある。 「筆記用具、なにかのメモ、写真‥‥何かの部品? 色々あるわね」 登場キャラ
アンナが告知した日の昼過ぎ頃。 「忘れ物の箱は教室の中にあるわよ」 教室の外にいる、忘れ物を求めてやってきたと思われる学生達に、アンナは教室から顔を出して手招きする。 「案外沢山あるのよ。みんな時間のない中行動してたりするから、うっかりって事があるのよね、きっと」 説明しながら学生達を忘れ物の箱の前まで案内し、これでもない、こっちは見覚えが、と物色している学生達を教室の隅で見守るアンナ。廊下から先陣から少し遅れて教室へと入ってきた久良雲修平は、そんなアンナの元へとまっすぐに歩いてくる。 「忘れ物ならあっちの箱よ?」 そう忘れ物の箱を指差すアンナに、修平は穏やかに申し出る。 「いえ、僕は忘れ物ではなく……先生も忙しいでしょうから、お手伝いをさせていただこうかと思いまして」 その申し出に、アンナはふわりと笑う。 「あら、本当? 助かるわ。箱もあんなにあるし、みんなある程度中身を確認したら、また整理しないといけないと思っていたし、人手が必要かしらって思ってたの」 そう感謝を口にするアンナと共に、しばらく修平は忘れ物の箱を確認する学生達を眺めていた。ひとつ、ふたつ、と、他人から見れば紙切れにすぎないものや、何かのネジ、誰かの写真といったものが、持ち主の元へと戻っていく。 「私、箱の中身を見ても、そこまで大切なものとは思えなかったの。まぁ、誰かのものだろうから、勝手に捨てるのは悪いとは思ったけれど」 忘れ物を胸に抱きしめ、もしくは鞄の中やポケットの中に大切にしまいこみ、アンナに礼を一つ述べてから教室を去っていく学生達。そして、また新たに教室に足を踏み入れる学生達。そんな彼らに一言二言声をかけるながら手を振り、アンナは零す。 「それでも、その人にとっては大切なものなんだと思うと‥‥不思議よね」 そんなアンナの横顔に目を向け、修平は少し考えてから、口を開く。 「先生も他人の目からでは分からない大切なものをお持ちなのでしょうか。気になりますね」 修平の素朴な疑問に、アンナは数回目を瞬き、それから。 「そうね‥‥、みんなに貰ったものは全部大切だけど、それは見るからに大切なものになるのかしらね」 そう答えてから、少しだけ考え込み、数秒後、口を開く。 「小さい頃、祖母にもらった紙製の栞、かしらね。両親が忙しくて祖父母の家に預けられてる事が多かったから、私結構おばあちゃんっ子だったの。その祖母に、最初にもらったものよ」 使い古して、今じゃ茶色く変色してるし、所々破れているけど、これで沢山本を読んで勉強しなさい、と言われてね‥‥、そう語るアンナは、壊れやすいガラス細工を眺めるような表情をしていた。 「アンナ先生のお祖母様は?」 問いかける修平に、アンナは寂しげに笑う。 「もうその頃既に若くは無かったからね」 亡くなって久しい、と言いながら、アンナは学生達が見終わった後の忘れ物の箱へと目を向ける。 「さ、一回整理しちゃいましょ?」 そう言われ、忘れ物の山へと修平は目を向ける。確かにそこは、色々と探された後と見えて整理されているとは言い難い。こう見てみると、忘れ物の箱の中身はかなり雑多だ。これではゴミと忘れ物の区別も難しいだろう。これを忘れ物と判断し、保存していたアンナにある意味感心しつつ、修平は呟く。 「こうして忘れ物を見ていると‥‥意味のないものなどこの世にはないのだと、あらためて思い知らされます」 誰かの手で大切にされて、そしていつか役目を終え、廃棄されるのだろう。そのまま大切にされる場合もあるだろうが。 整理する手は止めないまま、修平は考える。 (僕のピグマリオとしての機能も、いつかは終わる。それまでに、僕はどれだけのことを成せるのか‥‥) 手の中にあるネジも、役目を終えてここにあるのだろう。なら、自分は。 「どうしたの?」 動きの止まった修平にアンナは声をかける。その一言にハッとした修平は、すぐに気を取り直し、首を横に振った。 「いえ、何も」 ◆ ひょこりと教室の中を覗き込んだのはアガーフィヤ・コスィフ。 「忘れ物の引き渡し場所は、ここであってますか?」 たずねるアガーフィヤに、アンナはにこりと笑う。 「ええ、正解よ! 今ちょうど綺麗に片付けた所なんだけど‥‥何か忘れ物に心当たりでもある?」 そう問うアンナに、アガーフィヤは首を横に振る。 「心当たりはありませんが、もしかしたら何かあるかも知れないと思って」 そう言ってアガーフィヤが見回す教室には、まだ数人の学生達が箱の中を確認していた。 「そうね、結構色々あるわよ」 遠慮なく確認して、とアンナが答えると、アガーフィヤはゆっくりと箱へと向かっていき、中の物を確認し始める。そんな教室へと、ヴェロニカ・ラプシアとアルカ・アルジェントが足を踏み入れた。 「あら、いらっしゃい」 2人の顔を見てそう声をかけるアンナに、アルカは返す。 「ヴェロニカが忘れ物をしたかもしれないって言うから、ついてきたの」 そう言ってヴェロニカに寄り添うアルカを、アガーフィヤは楽しげに見やる。 「相変わらず、仲が良いわね」 からかうアガーフィヤに、アルカとヴェロニカは微笑みで返す。それから、ヴェロニカはアンナに目を向け、たずねる。 「忘れ物は、こっちの箱の中?」 アンナは頷き、箱を指し示す。アルカとヴェロニカは、アガーフィヤが見ている箱の方へと足を向け、中のがらくたにも見える忘れ物へと視線を落とす。 「忘れ物、ね‥‥」 箱の中を確認していくヴェロニカから視線を離し、アルカは並ぶ箱を眺める。 (確かに在った日々の残滓、誰にとっても大切で、それでも時の流れに取り零した記憶のカケラ) 誰かの忘れた思い出や、誰かの忘れた大切な物、目の前に並べられたその箱の向こう側にあるはずの誰かの思い出を透かし見るかのように、アルカは思案に耽ける。 「あ‥‥」 しかし、その思案は、ヴェロニカの小さな声で途切れた。 「見つかった?」 問いかけながら、アルカはヴェロニカの手元を覗き込む。そこにあったのは、束になったメモ帳だった。 「これは‥‥よく覚えているわ」 日付は、3月30日。だけど、今日ではない。ヴェロニカは、あの日の事へと思いを馳せ、目を細める。 「St.OliverTavern‥‥その日時は‥‥」 そう呟くアルカに、ヴェロニカは小さく頷いく。そんな2人を微笑ましく思っていたアガーフィヤは、ぽつりと零す。 「お熱いこと‥‥」 その呟きが聞こえたらしく、弾かれたように自身へ向けられた2人の視線に肩をすくめ、アガーフィヤはくすりと笑う。 「別に、他意は無いのよ」 そして、アガーフィヤは忘れ物の箱の方へと目を向ける。他人には意味のないように見えるものでも、それは誰かにとって大切な物。だとすると、この紙切れも、クリップも、きっと。 現場に残された証拠から犯人を追う探偵にでもなったような気分でそれらを眺めていたアガーフィヤの目に、銀色に輝く何かの部品のようなものが映る。 「それ、何でしょうね」 箱の整理をしていた修平が、アガーフィヤの視線に気付いてそう口にする。そんな修平に、アガーフィヤは首を横に振った。 「いえ‥‥これは、私の‥‥」 それは、最近せっかく解けたのに失くしてしまった、知恵の輪の片側。どんな難題もパズルのように容易く解いてしまう親友に自慢しようと思っていたもの。 「大切なものよ」 アガーフィヤは銀色に輝く金属のそれを手に取って、優しく抱きしめる。早く、大切な親友に、これを見せてあげたいと思いながら。 「良かったですね」 そんなアガーフィヤに、修平が思わずそう声をかけると。 「ええ」 アガーフィヤは頷き、ふわりと微笑んだ。 ◆ 一年前の今日。前の日の夜、ヴェロニカはアルカと電話でデートの約束をし、日時を確認しながら、メモを取った。 「19時、St.OliverTavern‥‥」 授業の終わり、ヴェロニカはポケットからメモを取り出し、内容の確認をする。何度目になるかわからない確認に、最早意味などないとわかっていても。 「‥‥‥‥」 すぅ、と息を吸い、そして意識してゆっくり吐き出す。冷静沈着を常としているヴェロニカが、その日は何度深呼吸をしただろうか。我知らず浮き足立つ自身に気付く度、落ち着こうと努力をしていたのだ。それでも、このそわそわした気持ちを抑える事が出来なかった。 「いけない、次の授業に行かないと」 メモを見るだけで、幸せな気持ちになる。ヴェロニカはわざと気持ちを切り替えるように口に出し、メモをポケットに入れた、はずだったのだ。 「変わらない夜と変わらないアルコールで、あの日より更に深くなった私達で交わりたい‥‥そうでしょ?」 教室から出た廊下の角で、メモと同じ、今夜19時、St.OliverTavernで、とデートに誘われたアルカはヴェロニカの腰を抱き寄せ、耳元に囁く。 「なのに、そんな上の空‥‥何を考えていたのかしら」 周りに人気は無く、そして廊下の何処からも見えない死角。それを理解しての行動だった。 「勿論、貴女の事に決まってるじゃない」 首筋にかかる甘い吐息に僅かに肩をすくめつつ、ヴェロニカは答える。 「私の?」 問いかけるアルカに、ヴェロニカはうっとりとした視線を向ける。確かに、ヴェロニカの湖面かもしくは青い空を思わせる蒼い瞳に映るのは、アルカの瞳の琥珀色だった。見つめ合う2人の吐息が、至近距離で混ざり合う。 「一年前の事を‥‥アルカとデートの約束をした、あの日の事を考えていたの」 アルカにしがみつくように身体を預けるヴェロニカは、大切にしようと決めたメモをしまったズボンのポケットに触れる。ここにあるのは、愛しの彼女との大切な思い出。アルカはそんなヴェロニカをしばし見つめた後、ポケットをおさえるヴェロニカの手を取り、自分の方へと引き寄せる。密着した胸を通して、鼓動が重なる。互いに互いの存在を実感しながら、アルカは口を開く。 「大切な思い出も良いけれど‥‥それよりも、今目の前にいる私の事を考えてほしいわ」 驚いたように数度目を瞬くヴェロニカにアルカは艶やかに微笑み、その唇に優しく口付けたのだった。
参加者
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