imitation

担当椎名
タイプショート 事件
舞台ノルウェー(Europa)
難度普通
SLvB(アメリカ程度)
オプ
出発2018/10/03
結果成功
MDPアルカ・アルジェント(pa0217)
準MDPヴェロニカ・ラプシア(pa0222)
紅嵐斗(pa0102)

オープニング


「最近、ノルウェーの若者を中心に静かなブームになってるアクセサリーがあるの」
 アンナは集まった学生達に、そう説明を始める。
「購入はインターネットの特設サイトから。天然石と民族工芸の新しい融合の形‥‥とかなんとか銘打ったネックレスとブレスレット、それからキーホルダーね。これがまぁ良いお値段で‥‥でもまぁ、天然石と職人が作った民族工芸品なら妥当かしら? っていう感じなんだけどね」
 そこで、アンナは、はぁ、と溜め息を吐く。
「これが良くできた贋作だったのよね‥‥。民族工芸品と銘打った部品は美大生がアルバイト感覚で作ってるもので、石は天然石には間違いないんだけど、色味と光沢を加工して値をつり上げているだけなの。彼らには元々騙すつもりがあったという話だから詐欺罪‥‥もしくはそれに準じる処罰が下される可能性はあるし、少なくとも学校は退学処分、良くて停学処分になるでしょうね」

登場キャラ

リプレイ


 よく晴れた昼下がり、カールとヨハンの二人は、とぼとぼと遊歩道を歩いていた。
「今夜か」
 ベンチに座り込むカール。彼の短い髪は、紫とピンクで染められて、見るも鮮やかだったが、その顔色は真っ白だった。
「仕方ないだろ」
 そう返すヨハンは、濃いブラウンの髪に緩いパーマをかけ、後ろで纏めていた。溜め息を吐き、ヨハンはカールの横に腰を下ろした。
「そうなんだけどさ」
 カールは呟き、スマホを取り出してメッセージ画面を開く。そして、マフィアからのメッセージと、マリアからのメッセージを表示させた。マリアからのものは、一時間後に駅前で待ち合わせ、という内容だ。そんな二人の元へ、アルカ・アルジェントは迷い無く歩いていく。
「ねぇ、あなた達?」
 突然声を掛けられ、二人はひっ、と小さく悲鳴を漏らす。
「なんですか?」
 ひきつった顔で、ヨハンがたずねた。ヴェロニカ・ラプシアが情報屋を使って調べたところによると、ヨハンの方が社交的なようだった。
「あなた達の事、私は全て知っているわ。今夜何があるのかも。私には、あなた達を助ける手段がある。だけど、あなた達を助けるか助けないかは、あなた達次第。ねぇ、私の話を聞く気は無い?」
 そう問うアルカを前に、震える唇でyesと紡いだカール。それを見て、アルカは艶やかな笑みを浮かべる。
「じゃあ、私の事務所で詳しいお話をしましょう?」
 二人へ顔を近づけて、囁いた。

 呼び鈴が鳴る。こんな時に、誰だろうか。マリアは祈りの言葉を止め、立ち上がる。
「はい」
 インターホンを押せば、相手は宅配便だと言った。怪しい相手かも、とマリアは思った。しかし、ここは学生寮だ。共通入口にはパスワードを入力するか、管理人を通すかしなければ入ることは出来ない。
「大丈夫」
 マリアはそう呟く。でも、もしもの場合もある。一応、何かあればすぐに連絡できるように、とマリアはスマホを操作する。ワンクリックでヨハンに繋げられるよう準備をした。そのスマホを手にしたまま、マリアは扉を開く。
「誰?」
 マリアが慎重に開いた扉の縁を、ヴェロニカはがっと掴んで身体を捩じ込む。そして、そのままマリアを肩で押し退ける。片手でドアノブを掴んで扉を閉め、もう片方の手での取り出したAiフォンを操作、ポケットの中のマグネトロンを起動した。
「!!」
 ハッとしたマリアは、スマホを操作する。しかし、スマホは妨害電波で圏外になっていて、繋がらない。
「えっ?!」
 スマホを両手で握り締め、必死に操作を繰り返すマリアに、ヴェロニカは言う。
「強引な手段に出てごめんなさい。私はあなた達が何をしてきたのか知ってるわ。そして、今夜何があるのかも知っている。あなたは、後悔、しているかしら?」
 彼女達三人は、マフィアを恐れている。ここ最近調子が悪そうだ、何かに怯えているらしい、と彼らの友人達は口を揃えて言っていたらしい。情報屋から聞いた話から考えても、アンナの情報から考えても、積極的に手を組もうとしている訳では無い筈だ。
「私はあなた達を助ける事が出来る筈。勿論、犯した罪に対する償いはしてもらう事になるけれど」
 肩を跳ねさせ、マリアはカーテンの閉じられた窓の方へと後退りする。
「なんで、私がそんな話に乗らないといけないの」
 助けて欲しいのだろうが、自身の罪を償う事はそれ相応の犠牲を伴う。停学、退学もあるだろう。しかし、それは彼らがやってしまった罪なのだ。
「窓の外を見てみなさい」
 ヴェロニカの指示に、恐る恐るカーテンを捲った。
「ひっ?!」
 僅かに悲鳴を上げるマリアに、ヴェロニカは肩をすくめる。
「あなた達が取引しようとしている組織と敵対している組織の連中よ。あなた達が今夜会う相手と取引をすれば、あなた達は外にいる彼らの敵になる。その意味がわかる?」
 窓の外で待機しているヴェロニカが雇ったマフィアの下っ端に、マリアはすっかり怯えてしまったようだ。その場に崩れ落ち、マリアは言う。
「こんな事になると思っていなくて‥‥」
 ぽたりと落ちた涙は、彼女の後悔と反省の証だろう。
「被害者への返金と警察への自首‥‥それを約束するのなら、私はあなたを助けてあげる」
 そう言うヴェロニカを、マリアは涙で濡れた瞳で見上げる。
「本当?」
 すがるように問うマリアに、ヴェロニカは頷いた。
「犯した罪は拭えない。けれど、償うことはできるわ。貴女はまだ間に合うの」


 アンナは市販の懐中電灯を持ち、工場の方へと歩いていく。服装もMNで一般女性の平均的なものへと変えていた。
「あの、この辺りに民家はありますか?」
 アンナはそう言いながら、巡回している二人組のマフィアへと駆け寄っていく。二人は顔を見合わせ、ひょいと肩を竦めた。
「お姉さん、ここらへんは危ないよ」
 その内一人がアンナの方へと歩いていく。もう一人は溜め息を吐きながら、その場で夜空を見上げている。
「でも、この向こうに親戚の家があるって聞いて」
「いや、この辺りには民家はありませんよ。引き返した方が良い。この向こうには使わなくなった工場しかない。機械とかね、危ないんだ」
「じゃあ、間違えたのかしら。すいません、ありがとうございます」
 そう言ってアンナが踵を返したのとほぼ同時に、どさっ、と何かが倒れる音がした。
「どうし」
 男が振り返ろうとしたその時。
「ぐがっ、何だ?!」
 激しい痛みと電撃に苦悶しつつ、しかしなんとか意識は保っているマフィアへ、陳華龍は再度銃口を向け、素早く照準を合わせる。そして、引き金を引くが予想される銃声は全く無い。しかし確かにその銃口からは弾は発射される。秒より速く男に撃ち込まれた弾は、その身体に再度電撃を与える。
「!!」
 男はびくりと身体をのけ反らせ、今度こそ意識を手放した。
「お疲れ様」
 ふわりと笑い華龍を労うアンナに、華龍は小さく息を吐く。
「いや、アンナ先生こそ‥‥囮に使って悪かった」
 そう返しながら、華龍は手の中の拳銃へと視線を向ける。そして、それをホルダーへ戻し、呟く。
「無音発砲出来る拳銃、か。私好みの口径ではないな」
 役に立つ事は確かだが。小さく息を吐きながら、華龍はポケットからAiフォンを取り出す。二人の捕縛と連行を依頼すべく、警察の番号をリストから呼び出した。

(マフィアに会おうとしている時点で‥‥もう救いようがない気もするけど)
 暗闇の中気配を消してラファエル・ケルルは巡回のマフィアを待つ。夕方に大学生達に接触した二人から、彼らはマフィアに怯え、後悔していたらしいと連絡は受けた。マフィアと知らず話に乗った訳では無く、そしてマフィアに積極的に協力しようとした訳でも無い。だからと言って、彼らの犯した罪は依然として罪のままだが、マフィアと協力して一儲け、などと思っていた訳では無いので、まだ同情の余地はある、かもしれない。とはいえ。
「何にせよ、浅はかだけど‥‥でもまぁ‥‥やり直せるなら、それに越したことないよね‥‥」
 彼がぽつりと呟いたその時、コツコツという靴の音が聞こえてくる。
「眠くなってきたぜ‥‥」
 マフィアの一人がそう言えば、もう一人がからりと笑う。
「なんだよ、お子様か?」
「うるせぇな」
 冗談を言い合いながら、歩いていく二人がラファエルのいる物陰へと一歩、また一歩と近付いていく。二人はラファエルには気付いていないらしい。
 そんなマフィアの一人に、ラファエルは狙いを定める。そして。
「がっ?!」
 一人の首目掛け、腕輪に仕込まれた鋼糸を発射。放たれた鋼糸は、油断していた男の首にくるりと巻き付いた。
「なっ‥‥おい、どうした?!」
 ラファエルが鋼糸を引けば、ぐっと首を締め付ける。そして、僅かに表皮を抉り、そこへ仕込まれていた麻痺毒が男の身体を蝕む。
「くっ、この!!」
 無事な方のマフィアは、その場に倒れた一人を庇うように立ち、拳銃を懐から取り出して構える。そして、引き金に指をかけた。
「くそっ、この辺りか?!」
 しかし、どこに狙えば良いかわからない。左右の怪しいと思われる物陰に適当に銃口を向けていく。
 それを見たカフカ・アドゥセイの怪盗としての姿、ライジングサンが公道側から距離を詰め、そして、掌へ気を集中させていく。
「中の奴らに連絡を」
 呟きながらポケットに手を突っ込んだマフィアへ向け、ライジングサンは気合いと共に掌を突き出す。
「はっ!!」
「ぐっ」
 ライジングサンの遠当でポケットから出したスマホを取り落としたマフィア。
「ちくしょう!!」
 自棄になったマフィアは、片手で持ったままの拳銃の引き金を絞る。
「くっ、間に合いません!!」
 銃声がしてしまえば、中のマフィアも気付くだろう。撃たせる訳にはいかないが、ライジングサンの手が届くより引き金を引く方が早そうだ。
「させないよ」
 そう言って、ラファエルは暗殺者のリボンを振るう。しゅる、と伸びたリボンは、マフィアの拳銃を持つ手首を浅く切り裂いた。
「!!」
 拳銃はかしゃりと地面に落ち、マフィアは神経毒によりその場に崩れ落ちたのだった。


(外は片付いたみたいネ)
 エラ・ウォーカーはAiフォンに送られてきたメッセージを確認し、小さく息を吐く。エラが身を潜めているのは、工場内、マフィアの死角に位置するパレットの後ろ。今まさに、マフィアと大学生二人に変装したリュヌ・アカツキ紅嵐斗が接触し、交渉をしている所だ。
「君達に協力の意志があることはわかった。持参してくれた装飾品も、なかなかの出来だ。売れるのも納得した。しかし、君達は三人で来るものだと認識していたが、あと一人、女性がいたな? 彼女は?」
 本物のカールに借りたアクセサリーを受け取りながら、カールに変装したリュヌとヨハンに変装した嵐斗は互いに顔を見合わせた。そして、一時間ほど前にアルカからの電話の声を参考にし、可能な限りカールに似せた声音でリュヌが答える。
「あいつ、この期に及んで怖いとか言って」
 二人の視界の隅で、エラがパレットの影から、合図を送る。アルカとヴェロニカの連絡から、三人の安全についての問題はない事がわかっている。あとは外のマフィアが問題だったのだが、そちらも片付いたらしい。
「彼女を呼べ。さもなくば」
 そう言いながら、三人のマフィアが拳銃をこれ見よがしにちらつかせた。その内一人が、嵐斗とリュヌへと交互に銃口を向ける。
「あ、あぁ‥‥ヨハン、マリアに連絡だ」
 頷いた嵐斗は狼狽えたように視線をさ迷わせ、エラに目線を送る。エラが頷いたのを確認してから、ポケットに手を突っ込み、そして。
「あっ」
 ポケットから落ち、マフィアの方へと飛んでいくコイン。
「すいません‥‥!!」
 震える小さな声で嵐斗が謝罪するのを、マフィア五人が肩をすくめて嘲笑する。コインが地面に落ちた、その瞬間。
「うわ?!」
 コインが炸裂し、煙が辺りに充満する。そのタイミングでMNを起動する嵐斗。怪盗サイドスワイプへと姿を変えた嵐斗は、現れたファントムビジョンで状況を確認する。
「なんだ?!」
 マフィア達の混乱に追い討ちをかけるように、エラがパレットを倒す。
「いざ、参るネ!」
 言いながら、エラは手裏剣を投げる。
「が!!」
 二人に銃口を向けていたマフィアの拳銃の機関部に命中した。
「どうした?!」
 拳銃を取り出そうとしたマフィアの手首に、リュヌのファントムワイヤが巻き付く。
「何だ?!」
 くいっ、と引かれれば、マフィアの手首に痛みが走り、拳銃が床に落ちた。
「なんなんだよ!!」
 混乱の最中にある残りのマフィア達はその場でそれぞれの武器を取り出す。そんなマフィア達へ、サイドスワイプは香水型の手榴弾を投げた。香水型手榴弾はマフィア達の真ん中付近へ落ち、特殊な青いジェルを撒き散らした。
「動けねぇ!!」
 予想外の出来事に慌てるマフィア達だが、その内一人、拳銃を持つマフィアが同士討ちの危険性をものともせずに適当に狙いを定め、引き金に指をかけた、その時。
「自棄は起こさない方が良いヨ」
 エラの投げた手裏剣が、マフィアの持つ拳銃と、マフィアの手首に命中。カシャン、と拳銃が床に落ちた。


 動けなくなったマフィア達は、煙幕が晴れる頃にはナイフも全て取り上げられていた。マスクを外したリュヌと嵐斗を見て愕然としたマフィア達は、全員警察に捕縛され、連行されていった。
「すいませんでした」
 その後、アルカの用意した事務所に匿われていた大学生三人は、合流した学生達に謝罪した。
「約束通り、俺達自首します」
 三人はそう言って、顔を見合わせる。ローゼンナハトの贋作師として活動する、という提案は、アンナに首を横に振られてしまったので話してはいない。過ちを犯し、真の芸術を貶めるような行動をし、それで謝ったから良しとする訳にはいかない。アンナはそう返した。
 しかし、贋作師への道も、美術品の修繕の仕事などの彼らの技術を生かす為の未来も、これからの彼らの今後の振る舞い次第だ。
「頑張ってね」
 アンナは、三人に優しく微笑む。学生達は、彼らに明るい未来がおとずれる事を祈りつつ、自首すべく事務所から出ていく三人の背中を、静かに見守る。
「スマホを‥‥あれ?」
 ヨハンが警察に連絡すべく荷物に手を突っ込んだその時、ころりと何かが床に落ちる。出てきたのは、リュヌが忍ばせたファントムフラックだった。三人は顔を見合わせ、互いに目を細めたのだった。



 10

参加者

a.ふむ、入れ替わるか。
リュヌ・アカツキ(pa0057)
♂ 30歳 忍魅
a.事前に美大生たちを説得出来れば学生に変装して入れ替わるつもりだよ。
紅嵐斗(pa0102)
♂ 25歳 英忍
b.火遊びの代償はヤケドくらいで済ませてあげないとね。
アルカ・アルジェント(pa0217)
♀ 28歳 弾魅
b.犯した罪は拭えない。けれど、償うことはできるわ。貴女はまだ間に合うの。
ヴェロニカ・ラプシア(pa0222)
♀ 26歳 英忍
c.外を無力化しておくよ…
ラファエル・ケルル(pa0579)
♂ 26歳 忍知
a.では、ここを担当しまショウ!
エラ・ウォーカー(pa1057)
♀ 29歳 刃忍
c.外を担当しよう。
陳華龍(pa1190)
♂ 31歳 弾探
c.私も外の連中を一掃しましょう。
カフカ・アドゥセイ(pa2114)
♂ 28歳 刃機
 私は巡回のマフィアの警戒に当たるつもりよ。みんな、よろしくね!
アンナ・ヴィドルフ(pz0010)
♀ ?歳