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焼き芋を君に
オープニング◆アンナは放課後、行きつけの喫茶店、オフィーリアへと向かっていた。行くのは一週間ぶりだ。というのも、一週間丸々オフィーリアが休みだったからだ。休みの前日に行った時、来週を楽しみにしていて下さい、とマスターに言われた事を思い出す。 「何をやるのかしら~♪」 新メニューの開発期間だったのだろう、とアンナは予想していた。きっと何か美味しいものが待っているはず。出来ればスイーツが良いけれど、もしそうでなくてもマスターの作る料理に外れはない。 などと考えながら、角に差し掛かると、漂ってきたのは香ばしく甘い匂い。この角を曲がりきり、まっすぐ歩くとオフィーリアだ。期待を胸に、角の向こうへ目を向けたアンナは、言葉を失った。 登場キャラ
「あ、アンナ先生と学生さん達!!」 最初に気付いたのはナオ。彼女も、その横に立つマスターも、昨日アンナが見たように、微妙に汚いTシャツジーパン姿。 「いらっしゃい」 にっこりと笑うマスターは、姿こそ違えどいつもカウンターに立つ彼で相違無い。 「昨日はごめんなさいね。お詫びと言ってはなんだけど、今日はみんなで来てみたの。人数分、頼めるかしら?」 アンナがそう頼むと、マスターは笑顔で頷き、ナオと共に人数分の焼き芋を一本ずつ紙袋に詰めていく。 「包み終えたらお持ちします。そちらのテラス席にかけて、お待ち下さい!」 新人アルバイトだったナオも、すっかり接客スキルが上達している。ナオの案内に従って、学生達とアンナは席へと向かっていった。 「先生から聞いて来ました! 楽しみにしてたんです!」 ゲルト・ダールは、満面の笑みを浮かべ、マスターから焼き芋を受け取った。 「そう言ってくれると、僕としても嬉い限りですよ」 マスターも嬉しそうにふわりと微笑んだ。 「マスター。先生の分は、私が持っていこう」 そう言って、陳華龍は自分の分とアンナの分の焼き芋を両手に持った。 「先生、食わず嫌いとちゃいますかー? 石焼きやったら肉でもありますやろに‥‥」 キティ・ラップはナオが持ってきた石焼き芋を受け取りながら、アンナに問う。 「肉は良いのよ。溶岩焼きとか、美味しいと思うわ。遠赤外線でじっくり焼くと、凄く美味しいわよね。でも芋よ‥‥芋なのよ‥‥」 マスターとナオがトラックの方に帰っていったのを確認してから、アンナは溢す。 「まぁ、その気持ちは俺もわかる。見た目グロいよな‥‥紫か‥‥」 ずううううん、と重たい空気を背負うアンナに、ベリエス・デルラは頷く。 「ドイツのサツマイモはオレンジなんだ。実際そんなウマいもんでもねぇ。イモっつったらやっぱジャガイモだしなぁ」 疑いの眼差しを向けるベリエス。取り敢えず受けとるだけ受け取ったが、果たしてどうしたものか。 ねぇ、なんだか嫌よね? などと言いながらベリエスと頷き合うアンナに、華龍は思う。 (こうも弱気なアンナ先生を見る事になるとは、食わず嫌いも含めて意外な面があるものだ‥‥これはこれでキュートだが) 食わず嫌いなのであれば、まずは一口食べてみるところから。焼き芋というものは、甘くて美味しいのだ。それを知らないというのは、勿体ない。そう考えた華龍は、一口食べるためのキッカケを作れば、きっと美味しく食べられるはずだ。そう考えながら、華龍は焼き芋を二つ手に持って、マスターの視線からアンナを隠せるよう位置を調整しつつ、彼女の隣の席に腰掛けた。 華龍が色々と考えているその横では、、廻環ゆめが受け取った焼き芋をしげしげと見つめていた。柴犬の武蔵も、地面に座って不思議そうに焼き芋を見上げている。 「焼き芋を見るのは初めてですか?」 そんなゆめを見て、斧箭鎌刀はたずねてみる。鎌刀の横の床にも、柴犬が座っている。名前は頼成。主人にならって、ゆめの方をじっと見つめている。 「やきいもは知ってるけど、食べたことはなかったな‥‥」 そう呟くゆめ。食べたことの無い物の方が多いゆめとしては、特別な事を言っているつもりは無いらしい。 「そうですか」 鎌刀は、ちらりとアンナの位置を確認する。そもそも、そんなにテラス席は数が多いわけではない。みっちり座ったとしても、20人座れるか座れないか。その中でも、今鎌刀とゆめ、武蔵のいる場所はアンナからそう離れてはいない。ここなら、声も届くだろう。そう判断し、鎌刀は口を開いた。 「まずは皮を剥かないといけないのですが‥‥」 その言葉にはっとして目を丸くしたのは、ゆめだけではなくアンナもだったが、それは鎌刀としては計算通りだ。 「すみません、新聞紙を1枚いただけませんか?」 マスターに向けて手を上げれば、作業中のマスターに代わり、ナオが一昨日の新聞を持ち、走ってきた。 「これでいいですか?」 「ええ、ありがとうございます」 礼を言いながら新聞を受け取り、一枚取って手早く半分に切る。 「‥‥何してるの?」 不思議そうにしているゆめの目の前で、A4サイズの紙は折られて小さな箱になる。 「ここに皮をいれましょう」 出来上がった皮入れに、ゆめはびっくりして目を瞬いた。 その様子を呆気にとられながら見つめていたアンナに、氷見彩玻がたずねる。 「せんせい、焼き芋食べないの? じゃあ私が代わりにもらってもいいよね。ね?」 「えっ‥‥あっ、ちょっと待って?」 皮を剥くという新事実に慌て、アンナはとりあえず彩玻への返事は保留にする。それを見て、彩玻は首を傾げた。 「何か誤解をしているみたいだけど‥‥焼き芋は基本は皮を剥いて、中の綺麗な身の部分だけを美味しくたべるもの」 彩玻は皮を剥き、黄色くほくほくした身を頬張った。彩玻は思わず、うまー、と溢した。 「食物繊維豊富な、日本の秋の代表的なおやつ。でも、せんせーが焼き芋食べないなんて、ちょっと意外。新しい美味しさっていう宝物に出会えるかもしれないのに、試しもせずに諦めるとか‥‥」 そう言う彩玻に、アンナはきょとんとする。 「虫料理みたいな、育った文化で食用じゃないものを食べたくないっていうのならわかるけど‥‥芋だし。素材がそもそも食用だし」 アンナは少し考えるように、目線を伏せた。 「言われてみれば‥‥一理ある、ような気も」 首を傾げるアンナに、ゲルトが言う。 「見た目でダメってのは分かるよ。でも、甘くて美味しいよ」 もぐもぐしながら言うゲルトに、アンナはうーんと唸る。 「アンナ先生の口にも合うと思うんだけどな。食べないならもらうよ?」 本日二回目の提案に、アンナの眉間にシワが寄る。 「いや‥‥誤解があった事がわかったのよ、皮を剥けば良いのね。抵抗があったのは見た目と調理法だもの‥‥日本のサツマイモは甘くて美味しいのよね。それならきっと、美味しいのよ」 皮を剥けば黄色くて、ほくほくしていて、甘いらしい。それがわかって、アンナはこれをみすみす手放して良いものかという気持ちになってきた。 「それ、自分で持つわ」 華龍にそう言って、アンナは焼き芋を受けとる。恐る恐る、紫色の皮を剥く。中身は、鮮やかな黄色だった。 「‥‥‥‥」 良い匂いがする。甘くて、スイーツみたいな、美味しそうな匂いだ。アンナは、黄色いほくほくを見つめる。ゲルトも美味しいと言っているし、向こうではゆめももぐもぐ食べている。 (食べてしまえば、きっと美味しい。だけど、だけど‥‥) 「イモ自体がダメなわけじゃなくて、スイートポテトとかなら大丈夫なんだよね?」 葛藤するアンナに、シャール・クロノワールがたずねる。皮ごと、ぱくりと一口。 「皮ごと‥‥?!」 皮ごと芋を食べる姿を目の当たりにし、アンナは目を丸くし、それからはっとして一つ咳払いをする。 「え、ええ‥‥あれはほら、お砂糖とかクリームとか入れて調理してるでしょ?」 手間をかけてあの味にしているのだ。元々の味は多分、そこまで甘くないのではないか。アンナはそう思っていた。 「うーん‥‥なるほど。もしかしたら、アンナ先生が思ってるのと品種が違うのかもよ。ねっとり系のだとスプーンですくって食べたりするらしいし」 「ねっとり‥‥? スプーンですくって‥‥??」 アンナが不思議そうな顔で、首を傾げた。というのも、アンナの知っている芋は、そんなねっとりしていない。どちらかといえばパサパサしていて、口の中の水分が無くなっていくようなものだ。果たしてどういう事なのか。 「いもうまー」 アンナの混乱を他所に、シャールはまた皮ごと芋にかじりつき、満足そうにむしゃむしゃやっていた。 「おぉ、甘ぇ! 何だこの食感、見た目イモなのに菓子のスイートポテト食べてるみてぇ! 焼いただけで完成してるってすげぇな」 そして、アンナのすぐ後ろでそう叫ぶベリエス。アンナはまじまじと芋を見つめる。 「綺麗な色をしていますよね。どうですか、ゆめ先輩?」 そんなアンナを視界の隅にとらえつつ、鎌刀がゆめに問う。ゆめは、はむ、とかじり、そしてもぐもぐと咀嚼する。ごくりと飲み込み、また一口。 「うん、美味しい‥‥美味しいと思う」 なんとなく首を傾げつつも、うなずくゆめ。それから、ゆめは鎌刀にたずねる。 「武蔵も食べられるんだよね?」 「ええ、塩も砂糖もつけていないのなら、問題は無ありませんよ。頼成も、どうぞ」 冷ました焼き芋を頼成にあげる鎌刀にならい、ゆめも焼き芋を冷まし、武蔵に差し出す。 「美味しい? 舌、火傷しないようにね」 そう言って、ゆめは焼き芋をはむっとかじった武蔵の頭を撫でる。武蔵は、しっぽをぶんぶん嬉しそうに振りながら、一口、また一口と焼き芋にかぶりつく。 「先生も食べないの? 欠片‥‥一欠片だけ食べてみたら? 一緒に食べよ」 自分の座る席から、ゆめが言う。その横の床では、ゆめと焼き芋をむしゃむしゃ食べている武蔵が、つぶらな瞳でこちらを見ている。 「‥‥‥‥‥‥そ、そうね‥‥」 しかし、まだ少し、ためらいがあるらしい。一口かじる勇気がなかなか出ないアンナに、隣に座る華龍が口を開く。 「焼き芋は一見不味そうに見えるだろう? あれはアンナ先生も得意な変装をしているんだ」 聞き馴染みのある単語に、アンナが目を瞬く。 「変装?」 聞き返すアンナに、華龍は頷いた。 「焼き芋はとっても美味しくて、味をそのまま見た目にしてしまうと世の怪盗達が放っておかないのだよ」 華龍のそんな説明に、アンナはくすりと笑う。 「まるで物語みたいな事を言うのね」 可笑しそうに目を細めるアンナに、華龍はひょいと肩をすくめた。そして、続ける。 「澱粉が熱されて甘くなる、なんて話は当然知っているだろう? サツマイモはデンプンが多く含まれている‥‥なので、熱されれば甘くなる」 「理論的には‥‥そうね」 頷いたアンナを見てから、華龍は自分の分の焼き芋をぱくりと一口。 「美味い‥‥!!」 普段、見せないようにしている華龍の笑顔に、アンナは目を丸くする。そんなアンナに、華龍はアンナの焼き芋を差し出す。 「どうだろう、先生も一口」 華龍のその言葉に、アンナはふわりと笑い、そして恐る恐る口を開き、ぱくりと焼き芋にかじりつく。数秒後。 「‥‥美味しい」 ぱあっ、とアンナの表情が明るくなる。そんなアンナに、ゲルトが言う。 「ね、美味しいよね!!」 最悪、アンナの分は自分達で食べれば良いとは思っていたけれど、できれば美味しく食べて、笑顔になってほしいと思っていたゲルト。 「ええ、美味しい‥‥びっくりしちゃったわ」 にっこりと笑うアンナに、ゲルトも思わず頬が緩む。 「食わず嫌いは勿体ないんやって、わかったんとちゃいますかー?」 キティはにやりと笑い、ぱくりと二口目の焼き芋を頬張るアンナに言った。 「そうね、やっぱり何でも食べてみないとわからないものよね。勉強になったわ!」 その笑顔はすっかりいつもの、スイーツを前にしたアンナだ。それを見て、学生達は満足げに頷き合うのだった。 「マスター、なに見てるんですか?」 ナオは焼き芋を転がす手を止め、隣のマスターへと目を向ける。自分と同じように焼き芋を転がす作業をしていたと思っていたのに、何を突っ立っているのか。サボるなんて酷いじゃないか。そんな気持ちを込めての問いだった。 「いやぁ‥‥ほら」 そう言って先生と学生さん達へと目を向けていたマスターは、ナオの方への向き直り、肩をすくめた。 「あそこの学生さん達、良い子達だよね、と思って」 「そんなこと言って、サボってたのをごまかそうとしてもダメなんですからね」 ナオがそう言えば、マスターは困ったように笑って、作業に戻る。焼き芋をトングで掴んだ所で、もう一度だけ、ちらりと学生達とアンナの方へと目を向ける。そこでは、楽しそうに焼き芋を囲む、彼らの姿があった。 「うん。良かった」 それを見て、マスターはぽつりと呟き、にっこりと笑ったのだった。
参加者
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