［鎮魂祭に蠢く闇］
世間は鎮魂祭の季節。魔物の仮装が、カボチャやらドクロやらの飾りが、あちこちで見られる。
この、考えてみれば珍妙ながらも、なんともユニークなお祭りは、これから厳しい冬を迎えるミドルヘイムの人々の、ある種の最後の抵抗なのかもしれない。
そして抵抗というならば――鎮魂しようにも、鎮まらない、そんな勢力もこの世には存在する。それも、様々な形で。
昨今、とくに目立ち始めた脅威は二種。ハウンドは苦労は、絶えることがない‥‥
［吸血鬼の脅威再燃か］
ここ最近、また増え始めたのが、吸血鬼、すなわちバーヴァンの脅威である。
昨年、バーヴァンの王と目される『ガルバ』と対峙して以来、しばらくそのなりを潜めていたバーヴァンであったが、ここに来てあちこちで事件が報告されるようになった。
ガルバ率いる(と思われる)バーヴァンの集団とは、再び相まみえることは、ある種の必然といえるだろう。こんなこともあろうと備えてきたハウンドの多くは、うろたえもせず、見事に迎え撃つはずだ。
今のところ、ガルバ再来の報告はない。しかし‥‥「以前より強力なバーヴァン個体」の報告は、少なからず寄せられているのであった。
［フンドラゴラもかぁい‥‥］
そして、別の意味(？)で悩ましいのが、いわゆる「フンドラの脅威」である。
フンドラゴラ。それはフンドシ的であったり、脱衣的であったりする、系統もアヤしいゴーレム達のことを指す。
そして、それらを製造、ないしは操る、もしくはその両方を担っているのが、謎の組織、『フンドラ教団』だ。
その組織は、政治結社とも、邪教集団とも言われ、狂信者が多く在籍している‥‥という憶測だが、正確なことはほとんど不明だ。その理由は、連中が極度に秘密主義的な組織であることが大きい。そしてもう１つ大きな理由は、正直、誰も連中をマジメに研究したり捜査しようとしてこなかったせいでもある。なんせ、高度すぎる技術力を見せながらも、やってる事は脱衣とかばっかりだったからね‥‥
しかし、それももう、無視できなくなってきた。
連中はついに、組織名を前面に押し出し(それがなければ正式な組織名さえ不明だったのだ)、リムランドやアルピニオ、グレコニア、ウーディア、サンドラと、各地で騒動を頻発させるようになったからだ。
ハウンドに寄せられる依頼も急激に増えつつある。あるいは、フンドラ教団について調査する必要も出てくるかもしれない‥‥悩みのタネが増えるギルド、ハウンド達は、頭を押さえたり、股間を押さえたり、イロイロであった。
［闇の者達の祝宴］
「いよいよ時は来たれり‥‥」
声の主は、城の主でもあった。
森の奥に隠れるように建つ、美しい城であった。かつての居住者であるコモンが死に絶えた今もなお、城自体は美しかった。
「我らが王と共に、コモンは再び、我らが足元に跪くものなり」
複数の声がした。見事に揃った、だが凍り付くような声。それは只ならぬ実力を感じさせる者たちが発したものであった。
彼らは、長い眠りから解き放たれた、高位のバーヴァンなのである。
「行動の時は近い‥‥」
声の主は、秘密基地の主でもあった。
およそ発見が不可能な場所に隠された、壮大な施設。そこでは、外部の者が知り得ない特別で特殊な‥‥言うなればガラパゴスなテクノロジーが、狂い咲いていた。
「フンドルシアの調査状況は？」
「残念ながら、ここ最近の新発見は‥‥しかし、その他の開発は順調です」
「フンドラシオンもか？」
「はい、完成は目前であります」
「ということは、フンドリウム合金が完成したのか？」
「はい、すでに実用可能なレベルです。フンドラシオン以外への応用も早急に」
「ふむ‥‥では、フンドロイドの配備状況は？」
「はっ、すでにミドルヘイム各地にて終えております」
「素晴らしい。まさにフンドラの神に祝福されているかのようだ」
主は思わず立ち上がると、その場の配下に向けて、宣言した。
「いよいよ約束の地、フンドランドを拓く時だ。もはや実力行使にて、コモンらを目覚めさせん。今こそ‥‥原罪を祓い、真なる神を蘇らせるのだ！」
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「冗談じゃない、冗談じゃないよ！