［吸血鬼、現る］
長く厳しいオーディア島の冬も、その終わりが見えてきた。
3月。白の日、祈願祭、断食からの開放日など、様々なイベントを経て、ついに人々は春を迎える――誰もがそう願っていた。
しかし、この冬のミドルヘイムは、そうはいかなかった。
「またですか‥‥どうしてこんなに、ヴァンパイアの事件が頻発するんでしょう‥‥」
コー(dz0021)は今日もまた、ハウンドギルドに顔を出していた。だが、遊びにきた様子ではない。気がかりな情報を届けにきたようだ。
「ヴァンパイア出没の報告なんて、この近年、あった記憶がないですよ。いや、まぁ、私が忘れてるだけかもしれませんけど‥‥」
シフールだから仕方ないね‥‥とはいっても、ハウンドギルドもまた、設立以来、ヴァンパイア絡みの事件はまるで触れることがなかった。
理由は、大きく分けて2つだろう。
1つには、ハウンドの任務とまったく関係ないからだ。ハウンドの本分はダークサイドの退治、研究、そして解呪。最近でこそ、対デュルガーにも足を突っ込まされているが、ヴァンパイアはデュルガーと関係がない、といえる。
もう1つは単純な話で、コーが言う通り、ヴァンパイアの事件は本当に稀だからである。「存在する、脅威である」というのは定説ではあるが、なにせ報告事例が少なすぎて、存在を疑う学者も少なくないのだ。
「ハウンドの皆さんにはあんまり関係ないかもですけど、あちこちで出没しだしたとなれば、ミドルヘイムのどこかで出遭っちゃうかもしれませんし。気をつけてくださいね」
「関係ないだって？ それがな、大アリなんだな」
と、割り込んできたのは、ギルドマスターのマクール(dz0002)だ。
「ついさっき、ローレックの王サマから正式に依頼された。ヴァンパイア事件の調査や解決の仕事も回すから、よろしく頼む、だとさ。ったく余計な仕事押し付けやがって。なんでも、ダークサイドやデュルガーの活発化と、無関係ではない可能性があるから、だとよ」
ふざけんな、報酬上げろ、寒い日は仕事したくねーんだよ‥‥と、ひとしきり愚痴るマクールであった、が。
最後に、腕を組むと、その場にいたハウンドらに、こう言い足した。
「癪に障るが‥‥実は俺もな、同じ予感がこの胸にあるんだよな。ヴァンパイアか‥‥しち面倒なことになりそうだぜ‥‥」
「ともかく、人々が怯えてたら、春を迎えるお祭りも楽しめませんよ！ 皆さんで頑張って、困ってる人を助けましょう！ では、かいさ～ん！」
なぜかコーが〆た。
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「今年の開放日も嘘つきまくり、おかしな事を起こし‥‥もとい起こりそーなのだよー。