シフールの花嫁修業

担当槻又ともこ
出発2023/06/28
種類イベント 日常
結果大成功
MVPチャウ(da1836)
準MVPレネット(da0035)
シルヴァーナ(da1215)

オープニング

◆あの決戦から25年
 あの決戦からおおむね平和な日々が続いていた25年後‥‥ローレック王の結婚生活に破綻が生じてしまった。
 離婚発表は約1年前。
 原因は定かではないが、シーリーコートとしてコモンとは子を成せなかったためだとか、王妃の尻に敷かれ過ぎたせいだとか、王が浮気をしたせいだとか‥‥そんな噂が流れた。
 ギルドマスターのマクールも、この件にはほとんどダンマリだったが。
「不器用なアイツらしいケジメの付け方なんだろうよ」

登場キャラ

リプレイ

◆シフール花嫁修業の会
 池の水面付近まで長く伸びた木の枝には、青々とした葉がもっさりと生え、枝が頭を垂れている。
 爽やかな風が吹くと、揺れた葉が水面を打ち、水紋が太陽の光を反射しキラキラと輝いた。

 ‥‥要するにとっても晴天。絶好の花嫁修業日よりである。

「花嫁修業ですのっ」
「花嫁修業だよー!」
「花嫁修業だね? 記録に残すよ!」
 
 本日修行に挑むのは、レネットチャウシルヴァーナのシフールっ娘三名。
 それぞれに思惑があるようで、それはまた後々明かされていくわけだが(というほど大袈裟なものでもないと思うけれど)その三名とあとは、指南役が数名。
 そして今回、なんと元妃様までいらしてらっしゃる(じゃじゃ~ん!)勇者王とペアのリングが太陽の光を受けて、キラリ♪(じゃじゃじゃ~ん!)
 特別講師のアリー・アリンガム様。言わずと知れた元王妃。
 シフールの皆様は、彼女に対し、どうぞよろしくお願い致しますと元気に挨拶した。
「任せて下さい。あれやこれや、隅々まで手取り足取り教えていきますよ」
 特別講師のアリー様は、ニッコリと笑顔を見せる。元王妃の余裕というか貫禄が顔を覗かせた。

「っで、何から修行しようかー?」
「シルヴァーナさん、やる気ですのねっ。私も頑張りますのっ」
「わたしもがんばるよー! ‥‥あっ、そうだ! コレね。そこに落ちてたよ! もしかしてしゅぎょうの役にたつかなと思って、拾っておいたよ」
「チャウさんは、何を拾ったのですのっ? 羊皮紙ですの? 広げてみようですのっ。シルヴァーナさんも一緒に見るのですのよっ」
「ふむふむ‥‥『王妃になりたい人必見! これだけ習得すれば大丈夫! 王妃になる為の3つのレッスン』? へぇ、これは興味深いね」

 古びれた羊皮紙は、カビとホコリの匂いがする。どこかで長く保管されていたものだろうか‥‥さておき、内容を確認していこう。
「『レッスン1、王妃になるための振る舞いなど』だそうですのっ」
 レネットが読み上げたタイトルに、シュゼット・ティトルーズは大きく頷いた。
「それは重要な事案ですわね、私に任せていただければ、悪いようには致しませんわ」
 どうぞよろしくお願い致します。

「次はー‥‥『レッスン2、『王の横に立つときの笑顔の練習』だって!」
 チャウの言葉に反応したのは、ナイン・ルーラコニー・バイン夫妻。
「あぁ、それも大切そうですね」
「笑顔‥‥そうですね重要です、なに、心の持ち方で素敵な笑顔ができますよ、僕たちに任せてください」
 なるほどなるほど。どうぞよろしくお願いします。

「で、最後が『レッスン3、王妃になる心構え』‥‥ふむふむ」
 シルヴァーナの言葉には、アリーが反応。
「それは私に任せてください。しっかりレッスンしますよ♪」
 ありがとうございます!

 さぁ、それぞれの講師も決まった。

 ‥‥と、一方、花嫁修業の会を行っている場所から、もう少し後ろの樹木が立ち並んだ場所。
 そこには数名の人影があった。
 『ふむ、読んでいただけているようですが』
 『王妃になりたい人必見! これだけ習得すれば大丈夫~? あんなもの、何処で見つけて来たの?』
 『青空市場の骨とう品屋で手に入れたんだ。役に立ちそうだろ?』
 『内容は確認したんでしょうね?』
 『いや? だって書名が立派だったからな!』
 声を潜めて顔を突き合わせている彼ら。身を包んでいる衣類がそれぞれの体形に合わせて綺麗に仕立てられている所を見ると、オーダーメイドだろう。
 生地も高そうだし、庶民には手が出せない代物であることは間違いない。彼らが、花嫁選定係の面々である。
 如何わしい羊皮紙を出してきたあたり、どうも頼りない気もするが、次期王妃の選定は彼らの選定眼にかかっている。ぜひとも平等に選定していただきたいと思う。
 それでは、あらためて、レッスン開始だ!
 
◆レッスン1・王妃になるための振る舞いなど。
「シュゼットさん、よろしくですのっ、レッスン1のしゅぎょうですのね‥‥かんばってしゅぎょうしますのっ」
 レネットの言葉にシュゼットは笑顔を見せ、口を開いた。
「こちらこそ宜しくお願いしますわね」
 シュゼットは、横一列に並んだシフール達と対面に位置する場所に移動すると、シフールと向き合った。
 シュゼットは淡い茶色の髪に白い肌の優雅な美少女さん。胸は大きめだ。
 その胸は、コルセットで絞められた腰との対比で、一層強調されているが、お嬢様オーラのおかげか、それはみだりがわしくはなく、清楚さが前面に出ている。

『素敵なお嬢さんだな、王妃候補で拉致するか』
『ねぇ、それってあなたの好みなだけで、彼女、シフールじゃないからね? 自分の為に言っているんじゃないでしょうね?』
『解っているって、冗談だろ。痛っ! 腕をつねるんじゃない』
 木陰からヒソヒソ。

 これからヒソヒソするのは、選定係さん達です。合わせてお楽しみください。

「一応メインで修行のお手伝いを致しますけれども、ここには元王妃のアリー様もいらっしゃいますことですし、何かありましたらお力添えを頂けたらと思いますわ」
「はい。未来の王妃の為に頑張りますね」
 アリーがシュゼットの補佐をすべく、横についた。
 シュゼットは隣に立った元王妃と目を合わせて頷くと、シフール達の方へ視線を向けた。

「では、この羊皮紙の説明と、私の経験に基づき修行をはじめますわね」
「はーい! がんばりますの!」
 レネットが元気良く一番に手を挙げると、他のシフール二人も続けて返事をした。
「っと、そうだわ。まずは、羊皮紙をよく読まないといけませんでしたわね」
 シュゼットが羊皮紙をしばし黙読。
(‥‥結構沢山書いてありますわね‥‥どれも大切な事ではありますけれど、これを一度に覚えさせるというのは無理な話ですわね)
 顔を上げた。
「多くの事が書かれてありますけれど、全部は大変そうですのでまずは、挨拶等の身のこなしからですわね」
「挨拶ですの? こんにちは、ごきげんよう! ですのっ!」
 レネットがぴょこんと頭を下げた。

『はうっ! カワイイ! うちの子にしたいわっ』
『ちょっ、可愛いのに目がないとはいえ、こんな序盤で腰が砕けてしまったら、これからが大変ですよ、シフールの選定と聞いた時点から危惧していた事ではありますが‥‥』
 ‥‥選定係の1人にカワイスギに遭遇すると腰が砕ける爆弾を持っている者がいるようだ。んなことは、どうでもよい話で。

「そうですわね。これはこれで可愛いらしいのですけれど、この羊皮紙によると、こんな感じですわね」
 シュゼットがドレスの端を両手で持ち、膝を曲げた。
「正解ね。流石社交界のマナーに精通しているだけあります」
「アリー様にそう言っていただけると、嬉しいですわ」
 屈託のない笑顔を返す。
 そうして、シフール達は、カーテシーの練習。
「こうですの?」
「もう少し、こう‥‥ですわね」
「‥‥ぐむむむ。綺麗におじぎするのって、むずかしいのですのねっ」
 レネット苦しむの巻。
「んー、そうですわね‥‥ダンスと思えば難しくはありませんでしてよ」
「ダンスですのっ? ダンスは得意ですからお辞儀も上手ですのよっ! こうかしら?」
 レネットが片方の膝を曲げ、もう片方の脚を後ろに引いてお辞儀。ネストドレスがその動きに合わせてフワリと揺れた。
「上手ですわ! とても素敵です」
 シュゼットの拍手に、レネットは顔を綻ばせて、何度もカーテシー。ついでに鼻歌まで出た。
 そうして他の二人も、形になり。レッスン1を終える‥‥。

「あっ! ところで、きみはどうして、王と離婚したのかな?」
 レッスン終わりに突然、シルヴァーナがアリーに手を差し出した。
 アリーは一瞬驚きで身を引いたが、彼女はシルヴァーナが摘まんで差し出しているピンク色の野花を受け取ると、それに顔を寄せつつ。
「それは‥‥秘密です♪」
「あぁ、秘密かー‥‥インタビューできなくて残念だよ」
 シルヴァーナの差し出した野花には、思わず本音を言ってしまう効果があるらしいが、今回は突然のインタビューに対して、放置はされなかったものの、全てを聞き出すのには失敗したらしい。
「でも‥‥」
 アリーは野花を空に向け太陽に当てながら、上を向く。
「まあ愛がなくなっての離婚ではないですよ。少なくても私はそう信じています」
「なるほどなるほど!」
「これからは一市民として国のために頑張っていくつもりです。商売するのも良いですね」
「商売だね、では、お店を出した暁には、またインタビューに行っても良いかな?」
「勿論です♪」
「やった! これでまた記録することが増えるよ!」
 シルヴァーナは羽根ペンをスラスラと羊皮紙に走らせ、ふぅと息をつくとハッと辺りを見渡して。
「あっ! 邪魔しちゃったよ。ごめん! あぁそうだ、羊皮紙を出したついでに、挨拶のしかたも記録しておこう!」
 彼女は再び羊皮紙に視線を落とすのだった。

◆レッスン2・王の横に立つときの笑顔の練習
「ふむふむ‥‥まぁ要するに幸せそうに、おおらかに、母のような貴婦人のようなそんな笑顔をしよう、というような事がかかれてありますが‥‥」
 羊皮紙から顔をあげたコニーが、皆を見渡した。
「わからないでもないけれど、難しそうですね」
 ナインが呟く。チャウの方へチラリと目をやると、チャウは近くを飛ぶ蝶々を、シフール達と一緒に追いかけている。
 やる気はあれど、シフールちゃん達とは、こんな感じで。頑張るときは頑張るけど、休憩の時も全力で休憩! これぞシフール魂。
 シフールちゃん達にはもう少し休憩して頂くとして。

「この笑顔はシフールの皆さんには難しそうですね」
「屈託のない笑顔の代表みたいな子達ですからね」
 47歳のコニーと53歳のナイン。 
 夫婦は10人の子宝に恵まれた。初めて子供が生まれた時にも、チャウはその場にいた。
「お腹を空かせてたチャウにご飯を上げて懐かれてからの長い付き合いでしたね」
「そうですね、子供達が巣立って、今はチャウと三人暮らしですから、チャウを嫁がせることになると2人になりますね」
「寂しいような誇らしいような、そんな気分ですか」
 コニーは農作業で日に焼けた両手に視線を落とす。

「ねぇねぇ、まだれっすん2は、はじまらないのー?」
 いつのまにかチャウが背後で翅を揺らしていた。
「あっ、そうですね、たっぷり休憩もしましたし、レッスン2はじめましょうか、ね? ナインさん」
「えぇ、容赦しませんからね? 恥ずかしくないように、しっかりと指導しますから、覚悟してくださいね」

「さて‥‥まずは何もしない普通の笑顔を見せてください」
 ナインの言葉に、シフール達はニコリとする‥‥いや、したつもり。
「あぁ、目が笑ってないやつですね」
 コニーの呟きにチャウ達が反論。
「しゅぎょうは楽しいけど、ニコニコするほどかなー?」
「ですのっ。ふつうにご挨拶のにっこりはできますのよ?」
「だよねー、きみ達の説明によると、今から修行する笑顔は微笑みとかそう言われているやつと推測するんだよっ」
 シルヴァーナは書き溜めている取材の記録から、それっぽい言葉を拾ってきた。

「そうですよねぇ‥‥うーん‥‥」
 ナインが頭を抱えた。
「でも、ニコニコする練習するよ! だってコニーとナインみたいになりたいから!」
「チャウ?」
「チャウ‥‥」
 ナインとコニーが同時に友人の名前を呼んだ。
「ナインが花嫁修業しているのだって見てきたからー、わかってるのー、ほほえみ? たぶんナインがいっつもコニーとか子供達に向けていた笑顔だとおもうんだよ!」
 チャウは、こうだよね? とやさしく微笑んだ。
(ヤバイ‥‥泣きそうです)
 コニーがフルフルと震えている。娘5人が巣立っていく時と同じような心境。

『うっ‥‥ううっ、グスッ』
『ちょっ‥‥私の服で鼻かむの禁止だからね』
『がたいが良いのに、涙もろいですよね、あなたは』
 ボソボソ、グスグス‥‥。

 ナインもウルッときている。
「ねねっ、ところで、休憩時間におやつ食べなかったんだよー、お腹すいたな。あっ! 王様、ショコラ食べるかな?」
「ふえっ?」
 全員がずっこけた。
「フッ! フフフ、チャウらしいですね」
 コニーが笑いだすと、皆も笑顔に。
「わたし、何かおかしいこと言ったかな? あっわたしショコラ持ってきたから、あなた達もたべるー?」
 チャウがレネットとシルヴァーナにショコラを見せると、2人は目を輝かせて首をブンブンと縦にふった。
 しばしショコラ休憩‥‥。
 その後、笑顔の修行を行ったシフール達は、なんとなーくそれっぽい笑顔を習得できたようだ。
「笑顔のコツは、みなさん掴めたようですね。それではこのレッスンはこれで終わって、休憩にしましょうか」
 コニーの言葉に、全員は頷いた。

◆ここで番外レッスン。
『みんな羊皮紙を見ながら順調にレッスンしていますね』
『だね、んーでも何かふと思ったんだけど、みんなおんなじじゃ面白くなくない?』
『そう言われてみればそうだなぁ。それぞれの個性とかも見てみたいよな』
 ボソボソ。
『では、個性を見てみましょうか』
 選定係の1人が、羊皮紙を取り出し、スラスラと何かを書き留めた。
 それを持って、こっそりと動き出す。
 シフール達は、花を摘むのに夢中だ。保護者(?)の面々も羊皮紙を見ながら、次のレッスンの相談中。
 選定係は少し離れた場所に着くと、こっそりと羊皮紙を地面に置き、重しとして小石を乗せて戻ってきた。
 ガタイの良い選定係が足元にあった小枝を拾い、ヒョイっと羊皮紙の付近に投げる。
 ‥‥ガサッ!
「っ!? 誰かいますの?」
 耳の良いシュゼットが、音のするほうへ顔を向けると、羊皮紙が風に吹かれてカサカサと音を立てていた。
「なんですのー?」
「おっ羊皮紙だ」
「わたしが拾ったのよりも綺麗だねー」
 シフール達に取り囲まれた羊皮紙を、アリーが拾った。
「あら。『王妃になりたい人必見! これだけ習得すれば大丈夫! 王妃になる為の3つのレッスン番外編』ですって」
「そんなのがあるんだ、これは発見だね」
 シルヴァーナが嬉々として、マイ羊皮紙に記録。
「なんて書いてあるんですか?」
「えー‥‥。『これが出来れば、さらに王妃に近づける! あなたの得意な事をアピールしよう!』だそうです」
「ほぅ‥‥」
「得意な事ですのっ? それはもちろんダンスと歌ですのっ」
 真っ先に手を挙げたレネットが、翅を動かしながら歌い出した。
 歌に合わせてクルクルと回りながら、伸ばした指先まで細やかに注意を向け、一点の淀みもなく踊っている。

『はうっ! うっ、誰かっ』
 ガクッと膝をついた、カワイスギ腰砕け選定係。
 今にも意識を失いそうだが、かろうじて耐えている様子。
『そんなに辛かったら見なきゃいいのに』
『そっ、そそそんなもったいなことは、はうっ』
『トキメキまくってますね』
 彼女、最後まで生きていられるだろうか(大袈裟)

 ダンスを終えて、先ほど覚えたてのカーテシーをすると、拍手が起こった。
「本当に上手ですわね、王もお喜びになりそうですわ」
 シュゼットに言われて、レネットは嬉しそうに頬を赤くした。

「チャウには何があるかしら」
「そうですねぇ‥‥」
「わたしはねっ、ごはん!」
「ごはん?」
「王がもし、好き嫌いをしたら、おいしいよって食べて見せてあげるよ! おいしい食べ物も沢山見つけてきて、王に喜んでもらうよー!」

『あの子は、思いやりのある子のようですね、王の健康と幸せの為には良いかもしれませんね』
『とか言って、美味しい食べ物のおすそ分けがあるかも? って思ってない?』
『えっいや、決してそんなことは‥‥』

「んー、ボクの得意な事かー。当然突撃系語り部の経験と記録だねっ。戦いの事や、街の住人の諸事情なんかの情報収集もできそうだよ」
 シルヴァーナはドドーンと、羽根ペンと羊皮紙を空にかざした。
「ていうか、あれだよね。シフールが次期王妃と聞いた時には、大丈夫かな? と思ったけど、こう見てみると、シフールでもいいのかなって思っちゃったよね。これも未来では貴重な資料になるから、しっかり記録しておこうっと」
 シルヴァーナは再び、羽ペンをスラスラと動かした。

『ほうほう、これは有益な人材だな。王妃としてだけでなく情報収集の天才ということか』
『あなた、自分の仕事の一部を請け負ってもらおうとしてない?』
 このガタイの良い選定係は、どうやら情報収集係も兼任しているらしい。

 それぞれの特技は把握した。選定係のお眼鏡にかなったのは果たして誰なのか。さておき、レッスンはまだまだ続く。

◆レッスン3・王妃になる心構え
「最後のレッスンですね。『王妃になる心構え』。内容を読んでザックリ把握しましたが、要するに民を思う気持ちですね、私も日々考えていましたよ」
 アリーの言葉に、レネットが首をかしげながら。
「困った民が居らしたら、幸せな気持ちになってもらう為に考えてあげる‥‥とかですの?」
 聞いたシュゼットが、人差し指を顎に当てた。
「んーそうですわね」
 しばし思案した後、顔を上げた。
「具体的に言うとそうなりますわね。大きくまとめると、優しい心。民を想う気持ちこそが王妃に必要と存じますわ」
「優しい心ですのねっ?」
「そうね、レネット様の言ったとおり、幸せな気持ちになってもらいたいというのも、優しい心ですわね。でも万が一、間違ったことをしてしまった場合は、厳しくするのも優しさのうちですのよ」
「厳しくですの?」
「えぇ」
 シュゼットが首を縦に動かすと、続けてアリーも頷いた。
「シュゼット様の言う通りですね」
「全てが上手く進んでいくことなんて、あまり多くはありません。良くない事を考える者や、うまい事を言って騙してくる者もいます。そういう者達を厳しく指導するのも上に立つものの役目だと思いましたね」
「叱って、罰を与えるのかな?」
 シルヴァーナの言葉に、アリーは小首をかしげた。
「あなたの言う事も間違っては無いのですが‥‥良くない事をする者にも事情がある事がままあります‥‥まぁ、根底から腐っている輩もいますけど」
 アリーから一瞬怖いオーラが出た気がする。
「でもほとんどが善良な民です。事情があるなら、その事情もくみ取って大元を指導する事も考えますね」
 ここでフッと笑顔を見せ。
「でも、王妃は王の妃ですから、1人で全部を抱える必要もありませんし、王のお手伝いをするというくらいの気持ちで、でも民の事はきちんと考えていますよというバランスで良いのではないかと思います」
「王妃ってなんだか大変なんだねー、おいしいごはんも食べたいけど、わたしに出来るかなー?」
「チャウは、優しい子ですから、そのままで十分民の事を考えることは出来ると思いますよ」
「ナインさんの言う通りです、自信を持ってください」
「とはいえ‥‥」
 ナインがアリーへ視線を向けた。
「勇者王が奥様と別れた理由は深い理由がおありでしょうが、些か不安もありますが」
 ナインが保護者‥‥というより、母親としての不安をアリーにぶつけた。
「そうね、心配なのは分かります。理由は述べませんが、でも妃の間は幸せでしたので、どうぞご安心ください」
 アリーがそう言うと、ナインは、あなたがそう言うのであれば‥‥と言葉を止めた。

『大丈夫ですよ』
『そこはわたし達が保証しますから』
『間違いない』
 選定係が木陰で口を揃えた。まぁ小声なのでナイン達には聞こえていない。

「なるほどなるほど」
 シルヴァーナは、羽根ペンをスラスラと動かす。
「悪いことをする民が全て悪いわけではないけど、厳しくするのも優しさっと」
「よくわかりましたわっ、王妃様はみんなに優しくなくちゃですわよね! 優しく仲良くがいいですわっ!」
「その一言に尽きますね」
 アリーとシュゼットは、大きく頷いたのであった。

◆花嫁選定係
「いやー、良い取材と経験ができたよ!」
 満足げに伸びをしているシルヴァーナ。彼女、王妃になるというより、取材目的だった気がする。頭の中には気になる人が浮かんでいるんだ、みたいなことを休憩時間にアリーにオフレコで話していたし。

「修行は終わりましたが、チャウの気持ちは変わりませんか?」
 コニーに聞かれてチャウは、両手をパタパタとさせながら。
「うん、わたし、王においしい食べ物を沢山教えてあげるよー! あと、たみのこともきちんと考えるからねー」
「そうですか‥‥」
 コニーの背中が少し寂しそう。
 隣に立つナインも心なしか寂しげ。
「とうとうチャウを嫁がせる番かもですか」

「レネット様はどうですか?」
「まだ良くは分かんないですの。でも綺麗なお洋服が着れるの楽しみですのっ」
 お洋服が一番のような言葉だが、さきほどシュゼットが言った事はしっかりと頭に刻んだつもりのレネット。
 王妃の心構えはしっかりと出来たようだ。

「ということで、どなたにしますか?」
 保護者の皆さんが、背後の木陰を振り返った。

『!!』
 息をのむ音と同時に、草を踏む音。選定係の三人がこちらにやってきた。
「バレていましたか」
「当たり前ですよ。これでも元ハウンドですからね」
 そう、コニーはハウンドを引退していた。いまさらだが。

 ショートカットでブロンドの髪の女性。
 小太りでちょっと背の低い男性と、体格の良い男性。
 選定係の面々を見て、シフール達は普通にビックリしていた。
「ずっと見ていたのですのっ? 全然きがつきませんでしたわっ」
「だれだか知らないけど、ショコラ食べる?」
「選定係ってお仕事は大変なの? 未来に役立つ情報プリーズ!」
 シルヴァーナの取材がはじまろうと‥‥。
「取材はあとからゆっくりでいいですわよね? 花嫁の選定はできましたのかしら?」
 シュゼットが割って入った。取材は長引きそうなので、賢明な判断と言える。

「んーそうね。わたしはダントツレネットちゃん推しよ! だってほら、ダンスも可愛かったし、歌も可愛かったし‥‥はうっ」
 思い出して倒れそうになっているのか? この選定係の女性。
「‥‥失礼。彼女の事は放っておいてください。僕はそうですね。チャウ様推しですね、ご両親の育て方がよかったのか、優しく食いしん坊にそだっているようですし」
 や、まぁほぼご両親ではあるが、実際は違う。
「食いしん坊って妃の素質なんです?」
 コニーが首をかしげるも、特に気にされることも無く。
「俺はシルヴァーナ嬢だったんだがな」
 ガタイの良い選定係の言葉に、アリーは。
「あぁ、聞いていたかとは思いますが、彼女には気になる方もいるようですし」
「ですね」
「あら、私に対しては敬語なんですね?」
「そりゃまぁ、元王妃ですからね、粗末に扱ったら王に何言われるかわかったもんじゃない」
「あら、それ次の妃から王に告げ口してもらいましょうか?」
「いや‥‥それは勘弁」
「やだ、冗談ですよ」
 アリーがフフフと笑った。

「さておき、悩ましいもんだな、どうする?」
 ガタイの良い選定係が、仲間に視線を送る。
「そうですねぇ‥‥、下手に選定するよりも、全員連れて行って選んでいただいた方が良いかもしれませんね」
「そうね、立ち居振る舞いは問題なかったし」
「では、レネット嬢と、チャウ嬢を連れて行ってみるか」
 コニーとナインの肩がビクリとした。
(そうですか‥‥とうとうお嫁にいってしまうのですか)
「でもまぁ、最後の選定が残っているし、今生の別れというわけでもない、最後の結果を待ってもらえたらと思う」
「わかりました」
「そうですね」
「わたし、頑張ってくるよ!」
 チャウの言葉に、2人は、うん、頑張ってください! とエールを送った。

「シュゼットさん、ありがとうですのっ、勉強になりましたわっ」
「レネット様、良く頑張りましたわ。王の前にでても堂々と胸を張ってアピールしてくださいませね」
「心配ないさ~♪ ですのっ」

「ねー! ボクも行っちゃだめかな? 最終選定なんて滅多に経験できないし。だめかな?」
「そうだなぁ。どうする? まぁ、俺としては、妃ではなく情報収取係としてのパイプが出来てありがたいがな」
「んー、じゃ、1人だけ置いていくのもアレだし、連れて行っちゃおうか」
「‥‥ま、いいと思いますよ」

「よっし! で、今から行くの?」
「そうですね、流石にお疲れでしょうし、花嫁修業に磨きもかけていただく為、10日後に迎えに参りますよ」
「承知しましたのっ!」
「じゃもうちょっとだけ、コニーとナインと一緒にいられるねー!」
「了解、じゃ皆さん、10日後にまた合おうー!」

 ということで、シフール三人。花嫁選定係に見事見染められ、これから王の最終選定に向かって、今しばらく修行の日々が続くのであった。頑張れシフール。負けるなシフール!



 5

参加者

b.王妃って良く分かんないですけど綺麗なお洋服着れるの楽しそうですの!
レネット(da0035)
♀ ?歳 シフール パドマ 陽
c.チャウとも長い付き合いですが、もしかしたら嫁に出すかもしれませんか。
コニー・バイン(da0737)
♂ 23歳 人間 マイスター 月
c.皆様が立派な王妃になれるようアドバイスしますよ♪
アリー・アリンガム(da1016)
♀ 29歳 人間 パドマ 月
b.どういう修行するんだろう。コレは記録に残さないと!
シルヴァーナ(da1215)
♀ ?歳 シフール カムイ 月
a.王様、ショコラ食べるかな?
チャウ(da1836)
♀ ?歳 シフール カムイ 月
c.子供たちも独立しましたが、今度はチャウを送り出す時ですか…不安が。
ナイン・ルーラ(da1856)
♀ 29歳 人間 ヴォルセルク 水
c.レネット様の修行をお手伝い致しますわね。
シュゼット・ティトルーズ(da2115)
♀ ?歳 ヴァンパネーロ カムイ 火


シフール花嫁修業の会!

皆様ふるってご参加ください♪