オープニング
◆
夏到来の祭りにて、笛を吹きながら子供達が踊っていた。子供達は村を巡り、里山の森へ向かう。
森の中で休憩がてら子供達は話し合った。ひょんなことから、こんな会話が始まった。
「この中で誰が勇者か決めるぞ」
「どうやって」
「一番すごいことを成し遂げたものが勇者だ!」
最初はなんでもない子供達の会話だった。しかしそれがエスカレートしていった。
「じゃあ大人達が禁止している沼に行って帰ってくる!」
誰かが唐突に言った。確かに何もない辺鄙な村には危険はそうそうなかった。
「オレも、わたしも、ボクも」
次々と子供達は勇者を決めるべく沼へ行くことになった。
◆
数日が経過し村人はハウンドに依頼する。これ以上見つからないと子供達の命が危ないという村長の判断だ。
「うーむ、ここいらで危険といえば森の奥の『不帰の沼』くらいしか思いつかないんじゃが」
村長は子供達が行きそうなところを考える。
「しかし、日ごろから口酸っぱく、森の奥の沼には近づくなと」
ハウンド達は村人の森の捜索で成果が上がらないのは沼を避けているからだと直感した。
「我々は沼に向かいます。危険というなら、まずどんな危険があるのか教えてください」
「沼にいって帰ってきた者がおらぬ故、詳細は分からないんじゃ」
「噂では毒の空気が充満しているとか」
「沼の近くに行くと木が立ち枯れているし、嫌な臭いがしてくる気がするんだ」
村長に続いて村人達は次々と言葉をはさんだ。
選択肢
a.見つけ出す | b.応急処置 |
c.飲食物提供 | z.その他・未選択 |
マスターより
こんばんは、山猫黎です。
不思議な沼にとらわれた子供達を助けてあげてください。
急がないと子供達の命が危ないです。
毒は空気に含まれている物です。
ハウンドでも沼の近くで何も対策がなければ影響を受けます。
(持ち込みの生き物も含む)
子供達は何日も飲まず食わずで衰弱しています。
見つけて、手当をしてあげてください。
子供達の命は皆さんの頑張りにかかっています!
登場キャラ
◆
村人はさながら戦場のようにあちこち走り回って、子供達の救出の準備をしていた。
(……どうか、まだ間に合いますように……)
リュドミラ・ビセットは静かに祈っていた。
将来有望な若者たちを失うわけにはいかない。リュドミラはただ子供達の安否を気遣った。
「お祈り中で悪いが……」
ソレイユ・ソルディアスは人を急かすのは苦手だと言わんばかりの顔でリュドミラに声を掛けた。
「しかし、子供って無茶をする事がステータスだったんだよな。面倒を見る大人にしてみれば、たまったもんじゃないけど。まぁ、ガキの頃から盗賊団にいた身としてはあまり偉そうな事は言えないけどさ」
自分の過去を振り返りながらソレイユは、自嘲気味に話をした。
「いずれにせよ、一刻を争う事態だ」
意を決してソレイユはリュドミラに手を差し伸べる。
「ええ、わたしにできることを精一杯やり遂げたいですね」
リュドミラもソレイユの手を取って立ちあがり、子供たちの救出の段取りを始めた。
それから二人は森に行った子供たちの人数、名前と特徴を村人に聞き、リストにして皆に配った。
「子供たちを解毒できる方はいらっしゃいますか?」
周りのハウンド達に聞いてみる。
「ふあ~、わしができるのじゃ、まかせておくがよい」
ケイナ・エクレールがいかにも眠そうに挙手をする。
「二人いれば、人数分の解毒は容易ですね、助かります!」
そしてリュドミラとケイナは救助後の段取りを確認した。
そうこうしているうちに森に行った村人たちが帰ってきたが、やはりあの危険な沼の近く以外に子供たちの痕跡は見つからなかった。
しばらく話し合ったうえでやはり沼の方が怪しいということになった。
結論として、ハウンド達で沼を捜索する運びとなった。
◆
「毒の濃い辺りは近づけてないだろうが念の為だ。我々は沼の周辺を見て回る。皆は沼に近付きすぎないあたりを見て回ってくれ。私もムーンも毒は効かない体質なので子供らを探そう」
アレックス・ブラックは予め皆に言い含めて沼へと向かった。
(私たちに毒は通じない~! でもこんな沼地はノーサンキュ~!)
「アレックス、早くいきますよ」
ムーン・シャドウは恋人に声を掛けて軽やかに沼地の方向へ走っていく。しかし内面と外面のギャップが激しい。
(ハウンドの皆は子供らの為に無茶をするだろうが、こういう時こそ毒の類が効かない我々の出番だ。任せて欲しい)
アレックスは自らの方針を反芻し、ムーンを見る。すでに彼女は軽やかに走り出していた。
「ちょ、ムーン!」
置いてけぼりにされそうになって、アレックスは慌てて、ムーンに追い付くべく走りだした。
「さすがにここまでは来ないでしょうけど、子供は無茶をするから念のため」
とムーンは足を止めず捜索を始めた。
「全く、子供というのは予想できない事をしでかしますわね。妹を育てて居たときの事を思い出しますわ。コレは早急に見つけ出さないといけません」
ローザ・アリンガムは昔話を思い出しながら急ぐことを決めた。スカイランニングを成就させる。ブーツがそれに答えてローザの体を更に加速させる。
「私たちは毒を気にしなくて良いと言う点で楽ですわね」
ローザは森を最速で飛び越え沼地へと向かう。上空から捜索するつもりだ。そして割とすぐに沼地が見えてきた。
「子どもたちを探すことに集中しますわ」
スピードを緩めて、ローザは沼の周りをくまなく探し始めた。五感を研ぎ澄ませて、葉の揺する音さえ聞き漏らさない状態で子供達の気配を探る。
しかし、子供達の動く気配も、声もなかった。沼地は静寂に満ちていた。
ローザはしばらく探したものの、上空からではどうにも見つけられず、じりじりと焦る気持ちが募っていった。
◆
ティファル・クラウディアは持ち前の土地勘と知覚を生かして捜索を手伝っていた。
「森は私達にとっては庭みたいなものよ」
なので沼以外の捜索は思ったより早く片が付いた。村人の証言に違わず、残るは沼だけに絞ることができたというわけだ。
「ここから先は沼の毒が広がっていると言われている」
勇気ある村人が沼の入り口まで案内してくれた。
ここで捜索班と救護班に分かれそれぞれの役割を分担した。
「じゃあ、これで素早く子供たちを連れ帰れますね」
コニー・バインは村から子供が十分乗れるだけの馬車を用意していた。それを村人に預け、馬の世話を頼む。
「とにかく何があってもすぐに戻れるようにしておいたので、僕と妻はここで食事の準備をしていますね」
コニーは妻の
ナイン・ルーラをともなって、すぐに温かい食事ができるように設営を始めた。
「こちらの荷物を降ろせばいいのですね」
てきぱきとナインは必要な荷物を馬車から降ろしていた。
「アレックス君の言うとおりじゃろうけど、ここで引きさがるのは違うと思うのう」
ケイナは探す気いっぱいであった。
「ストームで毒の空気を吹き飛ばしてからピュアリティを掛けると良いわ」
ティファルは村人たちが言っていた沼の毒対策を考えていた。
「じゃあストームで払ったらピュアリティ、ね。瘴気なら一日払えるんだけど」
ティファルの案に
アステ・カイザーは乗ることにした。
「なるほど、それなら大丈夫か。子供達まで吹き飛ばさないようにな」
ソレイユも二人の案に同意した。
4人は上の段取りに加え、めいめいの持つ技能をフルに使って沼を攻略することにした。
「どれだけ効果があるかわからないけど無いよりはマシだろ。俺はハンカチを口元に巻いておくからな」
ソレイユは携帯していたハンカチで口と鼻を覆った。
エクス・カイザーも同じようにハンカチで口と鼻を覆う。
「私とアステは毒への抵抗力を高める品を持っているが、それでも工夫はしておくべきだな」
2人を見てリュドミラは不安そうにしていた。ハンカチが無かったので口を覆えないのだ。
ソレイユは明るく太陽のように笑った。
「大丈夫。ストームで毒を散らしてしまえばきっと何とかなるさ」
森の土地勘や技能を生かして子供たちを探す面々に交じり、エクスは子供たちの名前を呼びつつ慎重に歩を進めて行った。
「ブラン、エミー、ナン、いたら返事をしてくれ!」
リュドミラは出来るだけ毒の空気を吸い込まないように息を詰めていた。
◆
「捜索と保護はみんなに任せて、お腹を空かせた子供たちの為に美味しい食事の用意をしましょう」
コニーはナインにそう言いつつ、集めた薪で火をおこし、食材を捌いていた。
「きっと子供たちはお腹をすかせて弱っていますよ。お腹にやさしい、あたたかいものがいいでしょうね」
ナインは手持ちの食肉セットから牛と豚の肉の加工品を選び出して、コニーに渡す。
子供達が食べるものだ。野菜や肉は出来るだけ小さめに揃えて切って、鍋で野菜から煮込んでいく。野菜から出た水分が十分量になったところで肉を入れて出汁を取る。
「あとはスープに浸して柔らかくしたパンを食べさせましょう」
と言ってコニーは日持ちのする堅焼きパンを取り出した。
「串焼きも焼いておきます」
横に並んでナインは手際よく味をつけた肉を串にさしていく。
(私、あなたの役に立っているでしょうか、ちゃんと笑顔でこなせてますか?)
ナインは肉に下味を付けながらそんなことを考えていた。
しばらくしてスープが煮える心地よい音がしてきた。それをコニーは確認したのち
「ヴァンパネーロの方のためには草花の精気が食事と聞いたので、彼らの為の草花を採取してきましょう、ナインさんここをよろしくお願いします」
と言って草花を採りに席を外した。
火の番をしながら、ナインは串焼きを辛抱強く炙り続けた。
◆
まず、沼についたのはアレックスとムーンおよびローザだった。
沼の周りは荒地で立ち枯れた木々があちこちにあり死の雰囲気を漂わせていた。
思ったよリ沼は広く、直径で500m以上はあるであろうくらいの大きさだった。
そして毒の空気が沼全体に広がっていて、虫や動物の気配すらなかった。
アレックスとムーンは走ってたどりついた。
ローザはスカイランニングで上空から探したものの動く気配はなく、やむなく高度を落して捜索していた。
「結局、皆して探しに来たんだな、無茶しやがって」
アレックスはやれやれという態度であとから来たハウンドたちと合流した。
「じゃあ、子供を見つけたらアレックスは待機してて、私たちで保護に行くわ。その格好のあなたを見たら子供たちが悲鳴を上げて逃げるでしょ」
ムーンはころころと笑っていた。
沼のほとりまで来たハウンドたちは、予定どおりティファルがストームを成就させて毒の空気を散らした。
ローザが先行して飛んでいたのを見つけたので、皆でストームの範囲から離れるよう大声を上げた。
「これは……、沼全体を吹き飛ばすのは無理そうじゃのう」
ケイナが沼の大きさを見てそうつぶやいた。
「沼、広すぎじゃない。これはピュアリティで全部浄化ってわけにはいかないわね」
ティファルがストームで毒気を飛ばした後、アステは沼に近づきピュアリティを成就させる。しかし浄化できたのは沼の一部のようだった。
「おーい、意識のあるものはいるか、いたら返事をしてくれ!」
エクスが沼の方に大声で叫ぶが返事はなかった。
「ぷはー、これでやっと落ち着いて息が吸えますね」
リュドミラは深呼吸してストームの後の新鮮な空気を吸い込んだ。ここに来るまで結構息を我慢していたらしい。
沼のほとりを捜索しているとぐったりとした子供たちが次々と見つかった。
沼に足を取られて動けず、毒で朦朧としているのかぐったりと近くの枯れた木の幹や岩にしがみついていた。
皆泥だらけで、近くまで行かないと景色に紛れて判別できない状態だった。
◆
ハウンドたちは見つけ次第、沼から子供たちを引きずりあげて処置をした。
アレックスは開口一番お説教を始めたが皆に制止された。まずは手当が先だと。
まず、アステがピュアリティを成就させ、周辺の水を無毒化させた。
「これでこれ以上周りの水から毒が入り込むことはないわ、子供たちを治療しましょう」
アステのそばにいた螺旋角を持つ白馬、ユニコーンのウニも治療に加わり、子供たちをケアする。
リュドミラとケイナが次々と子供たちにアンチドートを成就させ毒を癒した。
話には聞いていたが、実際のところ結構な人数の子供たちが沼で倒れていた。
「お手伝いすることあるかしら、できることはどんどんこちらに回してくれていいからね」
ティファルも医療の心得があるので処置に加わり子供たちを介抱した。
喉が痛いと訴える子供にリュドミラは水を飲ませた。
体力がないものにはキュアティブをケイナとムーンが成就させ、体を癒した。
ケイナはさらに子供たちのコンディションを見て適切な処置を施していく。
ケイナの螺旋角を持つ白馬、ユニコーンも治療に加わっていた。
「あなたたち、結構無茶したわね」
ムーンは慈愛に満ちたまなざしで子供たちを労わった。
幸いなことに村でいなくなった子供全員が見つかり、皆の処置のおかげで元気を取り戻した。
元気を取り戻した子供たちは、さぞ心細かったのだろう。我も我もと大声で泣き始めた。
ローザとエクス、そしてソレイユとムーンが処置の終わった子供たちを抱えて、コニーたちのもとへ急いで運んだ。
◆
炊事場は戦場だった。回復した子供たちは情緒不安だったためだ。
泣きじゃくる子供には、ムーンがメンタルキュアティブを成就させ、何とか落ち着かせた。
「よしよし、美味しいスープと、柔らかくしたパンがありますよ」
コニーがパンをスープでふやかして、子供たちに与えた。
「よくふーふーしてから食べてくださいね?」
ナインが串焼きを、子供たちと、役目を終えたハウンド達に配る。外はかりっと中はジューシーに焼けていて、格別にうまかった。
もちろん、馬の世話をしてくれた村人もご相伴にあずかる。
コニーは採取してきた草木をヴァンパネーロの仲間たちに配った。
「手折ってしまうといけないかと思って、根からそっと持ち帰りました。水を与えて生き生きとした草花です。よろしければどうぞ」
「すまない。ありがとう」
アレックスは草花を受け取った。それをムーンにも「お疲れさまだ」と分ける。
ローザもコニーに草花を貰い、礼を言って精気を吸っていた。
「ひと心地ですわぁ」
ローザは優雅にほほ笑んだ。
子供たちもお腹がすいていたようで、スープもパンも、串焼きも、遠慮なくほおばった。お腹が満たされるとやっと全員落ち着いたようだ。
「さすが、食事は最大の心の治療薬ですね」
ナインは満足げに満ち足りた一行を見回した。子供たちは満足そうな顔をさせていた。
「さあ、片付けまでが食事です、みんなでさっさと片付けて村へ戻りましょう」
そして皆で手分けをして片づけをし、子供たちは馬車に乗り、案内してくれた村人と共に村に戻った。
◆
子供たちは村に戻ると親の元へ行き、再会を果たした。
泣きじゃくる子供、黙っている子供、言い訳をする子供といろいろな個性が見られたが、みな無事に帰ってこられた。
安堵の表情を浮かべ眠そうな子供たちにハウンドたちは厳しい言葉を掛けた。こういうのははっきりしておいた方が良い。
「他人に迷惑をかける行動はとても勇者とは言えないわね。大人が行き先を禁止するというのはそれなりに理由があるものなのだけどね」
ティファルが心配そうにだがはっきりと言った。それには子供たちも反省したようで、
「ごめんなさい」
と子供たちの声が上がった。
「怖いもの知らずと勇気は別だ。もし君たちの中に危険だからやめようと言える子がいたなら、その子こそが本当の勇者だった。臆病者と言われても皆を危険から守れてこそ、本当の勇気なんだよ」
エクスも締めるところはきっちり締める。
「準備を整え毒を恐れず探しに来たハウンドこそ真の勇気であり、無謀な危険を冒す蛮勇は勇者のする事ではない」
アレックスも続ける。
「そうだよ、無茶と無謀は違うんだ、自分の手に負える範囲か否かで変わってくるんだよ」
ソレイユがアレックスの言葉をかみ砕いて説明を足した。
その頃には子供たちはすっかり眠そうな顔をしていた。
それをみてケイナは皆を諭した。
「もういいじゃろ、さすがに子供らもつかれておるじゃろ。あとは親や村の大人のお仕事じゃよ」
それもそうだな、と言ってエクスが頷いた。
7
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参加者
| | a.じゃあストームで払ったらピュアリティで。 瘴気なら一日払えるんだけど。
| | アステ・カイザー(da0211) ♀ 27歳 人間 カムイ 水 | | |
| | c.では子供たちに食事の用意をしましょう。
| | コニー・バイン(da0737) ♂ 22歳 人間 マイスター 月 | | |
| | a.なるほど、それなら大丈夫か。子供達まで吹き飛ばさないようにな。
| | ソレイユ・ソルディアス(da0740) ♂ 21歳 人間 ヴォルセルク 陽 | | |
| | b.アンチドートなら…。
| | リュドミラ・ビセット(da1372) ♀ 22歳 ライトエルフ カムイ 火 | | |
| | a.一刻を争う事態だ。子供たちを早く見つけなければ。
| | エクス・カイザー(da1679) ♂ 30歳 人間 ヴォルセルク 火 | | |
| | c.私も子供たちの食事の用意を。
| | ナイン・ルーラ(da1856) ♀ 29歳 人間 ヴォルセルク 水 | | |
| | b.ストームで毒の空気を吹き飛ばしてからピュアリティを掛けると良いわ。
| | ティファル・クラウディア(da1913) ♀ 26歳 ライトエルフ パドマ 風 | | |
| | b.まあ治療は任せておくのじゃ。
| | ケイナ・エクレール(da1988) ♀ 30歳 人間 カムイ 火 | | |
| | a.私たちに毒は通じない~♪ でもこんな沼地はノーサンキュ~♪
| | ムーン・シャドウ(da2079) ♀ ?歳 ヴァンパネーロ カムイ 月 | | |
| | a.私も毒は効かない体質なので子供らを探そう。
| | アレックス・ブラック(da2081) ♂ ?歳 ヴァンパネーロ ヴォルセルク 陽 | | |
| | a.私毒は無視できますから子どもたち探すことに集中しますわ
| | ローザ・アリンガム(da2138) ♀ ?歳 ヴァンパネーロ ヴォルセルク 風 | | |
子供達を助けて
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村の近くの森で子供達が消えた、みんなで探したがまだ見つからん。
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