オープニング
◆
魔物が暴れて周辺住民が襲われ、被害が出ている。それに加え、終末の噂‥‥小さくても悲しみの連鎖を断ち切るべく、情報にあったウーディアの片隅にある小さな田舎村に訪れたハウンド達。
「そうなんです。少し前から魔物達がこっちの村を襲うようになって‥‥でも、あの‥‥」
「あの?」
首を傾げるベリルに、村長は少し視線を彷徨わせてから、こくりと頷く。
「助けてくれたんです。メロウの皆さんが」
聞くところによると、その村は以前より細々と森の奥の湖に住まうメロウ達との交流があったという。それが公言できるようになったのは、ハウンド達の活躍によってメロウがコモンであると認められてから。
「ハウンドの皆さんのおかげで、大手を振って彼らと良き隣人として過ごす事が出来るようになりました」
そう語った村長は、それから少し言いづらそうに続けた。
「我々はあの優しき方々に助けていただいたので、もう平気なのですが‥‥魔物達がどうなったか、我々には知る術がありません。彼らは私達を庇ってくれましたが、悲しいかな我々にそれだけの力は無いのです。ハウンドの皆さん、メロウの皆さんを助けてください」
お願いします。そう頭を下げたのは、村長だけではなかった。
◆
村人達に請われたハウンド達が森に入ってしばらくすると、辺りに殺気が満ち始める。それを察したハウンド達は、それぞれに武器を構え始めた。
森に入り、真っ直ぐに西。それがメロウ達の住む湖のある場所だそうだが、果たして彼らは無事なのか。疑念を胸に抱きつつ、進むハウンド達。そこへ。
気配と共に、がさっ! という、草木を掻き分ける物音。
「誰だ?!」
聞き覚えのある声に、ベリルは目を瞬く。
「エリンじゃないか」
「あ! ハウンドの皆さん!!」
彼女は手に己の獲物である剣を握り、顔を綻ばせた。
「ちょうどいいところに!! 私がお世話になっているメロウの集落が襲われてるんです。加勢をお願いします!!」
そう言った彼女は森の奥へと駆けていく。こうして、ハウンド達は碌に説明もされないまま、森の奥へ奥へと連れて行かれ、そして、そこでは。
「殺気は‥‥こいつらか」
半身が鷲で半身が獅子の黒いキメラと、半身が獅子で半身が魚の黒いキメラ、それからヤギの胴体と脚を持ちライオン、ヤギ、大蛇の頭を生やした魔物、その三体とメロウ達が、激しい戦闘を繰り広げていた。その周囲には怪我をして動けなくなったメロウ達の姿が。
「任せろ!」
ベリルはそう一声掛けてから、地面を蹴って走り出した。
◆選択肢詳細
a.陸から
対魔物戦を陸から行います。
b.水中から
対魔物戦を水中から行います。
c.怪我人救助
メロウの怪我人達の救助を行います。
選択肢
a.陸から | b.水中から |
c.怪我人救助 | z.その他・未選択 |
マスターより
こんにちは、椎名です。
久々のメロウ大好きエリン・カークランド登場です。村人達の為、メロウ達の為、そしてメロウ達と共に暮らす村人達の為、集落を襲う魔物達の一掃をお願いいたします。
皆様のご参加、お待ちしております。
登場キャラ
◆
「助けに来たぞ!!」
真っ先にそう叫んだ
エクス・カイザーは、五つの獅子の頭の装飾を付けた全身鎧に身を包んでいた。
「貴様の相手は、この俺だ!!」
ルミナの力を付与したルミパソードを向けた先の獅子と山羊と蛇の頭を持つ魔物──ダークキマイラは、元より知性が高いが故に、その言葉の意味を違える事なく理解し、三つの頭の視線をエクスへと向けた。それだけではない。もう一体の陸上の魔物、ダークグリフォンもそれに釣られて、エクスの方へと意識を向けた。しかし、水中のマーライオンはその限りでなかった。エクスに構わずマーライオンが傷付いたメロウに追撃をかけようとした、その時。
「あんたたち、もう好きにはしゃしぇんばい!!」
水中に飛び込むや否や、尾鰭で水を蹴りマーライオンへと突進していく
アクア・パッツア。その手には、ローレライで生み出した水の刃が握られている。
「私が来たー!!!!」
追随する
ミニー・マンフレディの手にも同様に、水の刃が握られている。マーライオンは2人の勢いと殺気に気を引かれ、すっかり他のメロウの事は意識の埒外となっているようだった。
それを見て取った
アステ・カイザーの判断は早かった。
「兄さん、怪我人の救助は引き受けるわ!」
言うや否や、
ベリル・ボールドウィンとエリン・カークランドに目配せをして、走り出す。
「私は正面の湖、ベリルさんは右、エリンさんは左! 私達が来た方は安全だったから、そっちに逃すようにして!! 怪我人の手当ては後回しで、避難を優先して、どうしても間に合わなければ私達を呼んで!!」
そう言ってアステは連れてきたユニコーンのウニを指し示してから、一番被害が多く見える正面で魔物達と戦っていたメロウ達の方へと駆けていく。
「さあ、もう大丈夫。集落を襲った魔物は兄さんやアクアさん達がやっつけるからもう安心よ」
水辺で血だらけになっているメロウ達の傷はウニと手分けしてキュアティブで癒しながらそう声を掛け、歩けるメロウ達は安全な方向へと逃がしていく。
「嫌な予感がしますね‥‥」
魔物達の方へ向かう随伴のブラウンベアーのクマーを視界の隅に捉えつつ、ダークキマイラの様子を伺っていた
アンカ・ダエジフ。少しの逡巡の後、攻撃に参加するより先に前衛で魔物達の注意を引いている従兄弟のエクス、自分と同じく陸で戦う事を選んだメンバーへとレジストファイアを付与して、ふんと息を吐く。
「これで万が一にも安心安全」
そのタイミングで、ダークグリフォンの注意が逸れた。視線の先は、ベリルの肩を借りて森の方へと動き始めた傷付いたメロウ。可能ならキュアティブの必要な怪我ではあるが、ギリギリ後回しにしても良いだろう程度の怪我ではあるが、避難に際して障害になる程度のものではある。
「っく‥‥担いでも良いか?!」
尋ねたベリルにメロウは申し訳なさそうに頷き、それを見てからベリルはメロウを肩に担いで走り出す。だが、それも時間稼ぎにしかならない。刻々と迫り来るダークグリフォンの羽根へと、
リュドミラ・ビセットの射ったフリーズアローが突き刺さる。
「ギャウゥッッ!!」
濁った呻きをあげるダークグリフォンは、メロウを追っていた足を止めてリュドミラを見る。
「今の内に逃げてください! 余裕があれば、後で回復に行きます!」
そう叫びながら再度エルヴンショートボウにフリーズアローをつがえるリュドミラに、ベリルは走る足は止めないままに叫び返す。
「助かった!!」
これであのメロウはきっと助かるだろう。すっかり攻撃対象をリュドミラに変更したらしいダークグリフォンと睨み合いながら、リュドミラは内心ほっと胸を撫で下ろす。とは言え、近接戦闘になれば不利は火を見るより明らかだ。この距離を保ちながら戦うのは、かなり厳しい。内心リュドミラが覚悟を決めたその時、
エイラ・グルューンがダークグリフォンへ杖の先を向けた。
「ガイア」
放たれた重力波に負け、ダークグリフォンはその場で転倒する。
「キマイラは美味しいと聞きましたが、グリフォンはどうなんでしょう」
ぽつりとこぼしたダークグリフォンにとって不吉な言葉は、おそらく追撃をかけるリュドミラにもダークグリフォン自身にも、聞こえはしなかっただろう。
◆
牙を剥きながら、アクアを追うダークマーライオン。水中での動きに関して優れているメロウではあるが、それはダークマーライオンにも同様に言えた事だった。
「ガウッ!!!!」
唸りを上げるダークマーライオンは、この距離ならばきっとアクアに追いつくだろう。それを悟ったアクアは、鎧の効果を発動した。
「っ!!!!」
振り上げられた爪にアクアが覚悟を決めた数秒後、氷の結晶を纏った鎧へとダークマーラインの爪が突き刺さる。その瞬間、ダークマーライオンは冷たさに、身体の動きを止めた。そこへ肉薄するミニー。
「メロウの恐ろしさ、味わわせてあげよう!!」
鎧の魔力で強化された水の刃は、ダークマーライオンの胴体を深々と抉る。ごぽりと血液を吐き痙攣するダークマーライオンへ、その間に距離を取ったアクアがバルアクアを手にチャージングを繰り出す。
「メロウの平和を乱す奴は許さない‥‥水の中では私が法律なのよ!!!」
アクアの怒りの籠った全力の一撃に、ダークマーライオンは腹部を深々と貫かれ、生き絶えたのだった。
弱点が、どこかにあるはず。
リュドミラはどこにあるかわからないその場所を探すように、出来る範囲で角度と向きを変えながら、矢を放つ。その間、エイラもガイアを打ち込む機会をうかがっていたが、確実に他に当たらないタイミングがなかなか見つからず、シュバルツドルヒを投げてはキャッチして逃げるを繰り返し、意識を分散させる事に集中していた。
「ぎゃうっっっ!!!!」
それを繰り返す内、リュドミラの放った矢がダークグリフォンの背中の真ん中に突き刺さった。その瞬間、ダークグリフォンが大きく呻きをあげ、姿勢を崩した。
「今です!!」
探していた弱点だったのだろうか、それとも。しかし、今すべきはその判断や検証ではない。
「任せてください」
リュドミラが身を避けると、そこから真っ直ぐ向こうにはメロウもハウンドも誰もいなくなった。それを視認して、エイラは杖の先をダークグリフォンへと向け、そして。
「ガイア!!」
放った重力派は、ダークグリフォンを押し潰した。
アンカが杖を向けた先、ウォーターワールドの効果で意思を持っているかのように湖の水が細長く形を作り、ダークキマイラへと飛んでいく。
「っ!!!!」
その水が鋭く尖った氷の矢となり、腹部へと突き刺さる。三つそれぞれの口から名状し難き呻きを怨嗟のように吐き出すダークキマイラ。
「覚悟っ‥‥!!」
今がチャンスと淡く光るルミパソードを握りしめたエクス。しかし、次の瞬間、恨みを称えた獅子の瞳と、視線がかち合った。かぱりと開いた口の奥、渦巻くような炎。不穏な気配に気付いたエクスが身を屈めるよりも早く吐き出された炎の弾は、エクスに直撃しその身体を焼き尽くさんとするが、しかし。
「嫌な予感、大当たりですね」
そう言いながら尚も水を操り攻撃を加えていくアンカ。エクスはといえば、ダメージこそ負っているもののアンカが付与したレジストファイアの効果により、炎の魔法による影響はない。
「とはいえ、痛い事は痛いが‥‥」
呟き、エクスはデュエルリングの効果を発動し、片手にルミパソード、片手にエクスプロージョンの効果を付与したカイザーナックルに覆われた拳を握りしめ、地面を蹴る。そして。
「これで、トドメだ!!!!」
アンカの連れてきたクマーの一撃を受けぐらりと姿勢を崩したキマイラへと、エクスは渾身のルミパソードの一撃、次いでカイザーナックルによるエクスプロージョンを叩き込んでいく。
「はぁっ!!」
気合と共に放たれたルミパソードの強烈な一撃と爆発的な威力のルミナの力の前に、キマイラはなす術なく頽れたのだった。
◆
「傷はこれで大丈夫そうね」
避難誘導の後、傷ついたメロウ達の手当を行っていたアステは、自身の周りにいるメロウの内傷の深かった最後の一人の傷をキュアティブで癒してから、立ち上がる。ここの集落の長が確認したところ、的確な避難誘導と早急の魔物討伐により、死者は一人もいないという。それが何よりの成果であると言えよう。
他に怪我人はいないかと目を向けた先では、ウニとリュドミラに同じようにキュアティブを施されたメロウ達がそれぞれに無事を喜びあっていたり、荒らされた湖周辺、それから水中の掃除や片付けなどの算段を話し合っていた。
ひとまず傷の方は大丈夫そうだと、アステはほっと胸を撫で下ろす。回復の必要がないのなら、あとは片付けだ。そう思い、破壊された木々や抉れた地面などの後片付けの手伝いに参加していたベリル、エリンに合流しようと足を向けた時、ふわりと何やら美味しそうな匂いが鼻腔を擽ぐる。
「皆さん、お腹が空いてはなんとやらです。キマイラの肝はとても美味しいと仲間から聞きました。是非」
そう言ってエイラが鍋で持ってきたのは、キマイラの肝と肉とをエリンに借りた火で炙ったものだった。確かに美味しそうな匂いだとは思ったが、果たして‥‥実物を見て知った上で食べるというのは、どうだろうか。と、他のハウンド達が疑問に思ったのも束の間。
「ばり美味しそうばい!!」
「丁度お腹空いたところやったんばい!!」
口々にそんな事を言いながら集まってきたメロウ達の図太さと逞しさに、苦笑しながらハウンド達も共に鍋を囲む。
量は然程多くはないものの、やる気は出る程度に小腹が膨れた頃。戦闘の気配が止んだ事に気がついたのか、それとも痺れを切らしたのかは判然としないが、ハウンド達に相談を持ちかけてきた村の若い男性を中心とした面々が森を分け入って集落のある湖までやってきた。そして、メロウ達と村人達は互いに無事を確かめ合い、それからハウンド達も共に作業に取り掛かる。
またこの場所で、メロウと村人達とが手を取り合い、平和に楽しく暮らしていける日々が来る事を、思い浮かべながら。
5
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参加者
| | c.怪我人の救助は引き受けるわね!
| | アステ・カイザー(da0211) ♀ 27歳 人間 カムイ 水 | | |
| | a.援護射撃と回復しますね。
| | リュドミラ・ビセット(da1372) ♀ 23歳 ライトエルフ カムイ 火 | | |
| | a.不謹慎だが、新装備を試させて貰おう!
| | エクス・カイザー(da1679) ♂ 30歳 人間 ヴォルセルク 火 | | |
| | a.釣り師のマナーとしてメロウは守るのですよ。アクアさん、感謝しなさい。
| | アンカ・ダエジフ(da1743) ♀ 26歳 ダークエルフ パドマ 水 | | |
| | b.メロウの平和を乱す奴は許さない。水の中では私が法律なのよ!
| | アクア・パッツア(da2185) ♀ 17歳 メロウ ヴォルセルク 水 | | |
| | b.ふっふっふ、メロウの恐ろしさ、味あわせてあげよう。
| | ミニー・マンフレディ(da2235) ♀ 19歳 メロウ ヴォルセルク 水 | | |
| | a.ガイアで狙い撃ちです。そういえばキマイラは肝が美味しいそうですね。
| | エイラ・グルューン(da2236) ♀ 19歳 ライトエルフ パドマ 地 | | |
| 私はエリンと救助にあたろう。 | | ベリル・ボールドウィン(dz0037) ♀ 28歳 人間 ヴォルセルク 火 | | |
メロウ達と、村の人々と
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ハウンドがやって来た事がこうして村の在り方を少しでも変えていると思うと感慨深いが‥‥とにかく今はこいつらを片付けないとな。
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