オープニング
◆遺跡
その頃、ローレックの街の広場には一夜にして謎の遺跡が出現していた。
その形状から『門』と仮称された遺跡の実態を解明するべく、即座に有志のハウンドによる調査隊が結成される。
「それにしても、見れば見るほど奇妙なものね……。専門家によればオーディア島の遺跡のいずれの様式にも当て嵌まらないそうよ」
調査隊の一員であるシルヴィ・エインセルが遺跡を眺めてそう評した。確かに、島内で目にする遺跡とは根本的に何かが異なっているように思える。一部からはデュルガーの策略ではないかとの仮説も出たが、いまのところそれを肯定する材料も否定する根拠もない。
「デュルガーかどうかはともかくとして、コモンの手によるものではない気はするわね……理由はないのだけれど」
いずれにせよこうして眺めていても埒が明かない。意を決したハウンドたちが慎重に『門』に近づいていく。
その時。
――『門』が急激に輝きはじめた。
溢れ出た光の奔流に飲み込まれ、ハウンドたちの意識はそこで途絶えた。
◆異変
それから、どれくらいの時間が経ったのか。
「……おい、みんな大丈夫か?」
呼び起こす声に目を覚ますと、そこには見慣れないライトエルフの青年が立っていた。周囲には濃い霧が立ち籠めている。
「いったい何だったんだ、いまの光は? どうやら身体に異常はないようだが……どうした? なぜ不思議そうな顔をしているんだ?」
ハウンドたちが名を問うと彼は怪訝な表情で『シルヴァ・エインセル』と答えた。その出で立ちをよく見れば、男物と女物の差異こそあれどシルヴィの身に着けていたものとほぼ同じである。
「待てよ、そういえばお前たちもどこか奇妙だ……何かが変化していないか……!?」
この時、ハウンドたちは直感的に理解した。
この仲間たちが、先ほどまでとは完全に同一の存在ではないということを。
「……つまり、ここにいる皆はいわば『平行した別世界の、限りなく同一の存在』ということなのか。そんな言葉があるのかどうか識らないが……」
シルヴィ――否、シルヴァが全員の意見をそう纏めた。性別が異なる彼のように、他のハウンドたちもそれぞれがよく知る姿とは何かが変わっている。
その変化は外見であったり内面であったりと画一ではないが――共通しているのは『門』と呼ばれる遺跡を調査していたという記憶だった。
◆悪夢
「ではこの『門』が俺たちを集めたということなのか? だとしたら、何の為に……」
その時、一陣の風が吹き抜けて周囲の霧を吹き飛ばし、そこに広がる廃墟となったローレックの街の姿を晒した。
何十年も、いや、何百年もの歳月が経過したかのように建物という建物は荒れ果て、朽ち落ちている。つい先ほどまで耳に届いていた喧騒は静寂に取って代わられ、初夏の日差しが死んだ街を照らしていた。
言葉を失うハウンドたち。と、そこへ突然影が落ちる。
「……危ない!」
シルヴァの警告に飛び退くと、いま居た場所へと石の塊のような物体が落下して地鳴りを轟かせた。
同時にハウンドたちは数十mの距離をひと飛びで跳躍した自分に驚く。
「これは、俺たちの能力が強化されているのか……?」
どうやらこの世界では身体能力や魔力などが相当に増大しているらしい。これを活かし、ハウンドたちは次々と降り注ぐ石の塊を打ち払い、あるいは魔法で撃ち落としていった。
「この攻撃、ローレック城の方角からだな……」
石の塊は明らかにそちらから飛来していた。ハウンドたちは濃霧のなかを突っ切って急ぐ。
やがて城門に辿り着いたハウンドたちは自らの目を疑った。
ローレック城が『巨大な人の形』へとその姿を変えつつあったからだ。
いままさに腕状に変化した尖塔が城壁を掴み、投擲してくる。先ほどからハウンドたちを狙っていたのはこれだったのだ。
「まさか、城サイズのゴーレムとでもいうのか? 悪い冗談……いや、悪夢だ。そんなものはあり得ない……しかし」
他でもなく、同じくあり得ないほどに増大したハウンドの能力がこれが幻覚の類ではないことを知らしめる。そして。
『……侵入者の存在を感知。これより殲滅を開始する』
そんな声が響き渡り、巨大な人型が立ち上がるなか、ハウンドたちは城のメインキープ(天守閣)に人影があることに気付いた。
「まさかあれは、ローレック王……?」
人影はすぐに濃霧に紛れ、入れ替わるようにして濃密な死の気配がハウンドたちに迫ってきた。
選択肢
a.外見が違う | b.内面が違う |
c.違わなかった | z.その他・未選択 |
マスターより
シネマティック午睡丸です。
今回のパラシナはマルチバース&超バトルがテーマで、DH本編を基準世界として『同一人物だけど何かが違う平行世界のキャラ』として登場します。
シルヴァのように性別だけが変わっていたり、あるいは種族や性格が変わっていたりするなど、マルチバースものならではのifをお楽しみください。
あえて基準世界のキャラでという場合は選択肢cをどうぞ。
名前や口調設定などの変更はプレイングにて記述をどうぞ。特に注釈がなければ基準キャラのものが適用されます。
シナリオ目的としては超巨大人型ゴーレム(?)とのバトルとなります。
装備や魔法は基準世界キャラのものをベースにしますが、このシナリオ内ではハウンドの各種能力が大幅に増大されており、スーパーヒーロー的な立ち回りが可能です。
それに合わせて戦闘ルールのタガも外してしまうので、思うさまに大暴れしていただけるでしょう。
それでは、みなさまの超プレイングをお待ちしています。
※923パラレルシナリオ
これは別世界(パラレルワールド)でのお話です。
竜犬世界への影響・関係はなく、負傷も起きません(但し、なぜかTP・CP・カードの増減等は起こります)。
登場キャラ
◆混在
「ふむ……一時はどうなることかと思ったが、特に困ったことはないな」
ロザリー・シャルンストは臨戦態勢を維持しつつも改めて身体を確認した。
そこにあるのは見慣れたフィルボルグスの女性の姿だ。仲間たちの急激な変化を目の当たりにしては確認もしたくなる。
だがシルヴァの推測が正しいのなら、ロザリーの視点からは他の者が『平行世界の同一存在と入れ替わった』のであって、各人の肉体や精神が別物に変化したわけではない。現にシルヴァにはシルヴィとしての記憶や認識は無いらしい。
しかし、一部の者の反応からはそう断言できないものがあった。
「ふ、ふふふふふふふ……はーはははっはは! ナイスボディ……! 夢にまで見たナイスボディになりましたぁ!」
なぜか快哉を叫ぶ
カーミレ・セリーザ。彼女は肉体の変化を自覚しているらしい。
「これで……これでもう『あら、小さいのにしっかりお使いできて偉いねえ』とか、『駄目だよ。子供にお酒は売れないよ』とか言われないのですぅ!」
確かに、その姿はロザリーの知るカーミレとは違う豊満ものだ。
「あれはどういうことだ?」
「おそらく、『門』による転移の際に『並行世界の記憶』が混在してしまったようだな」
矢を射つつ
シルヴァ・エインセルが推論を重ねる。
「お前や俺のように影響を受けない者もいるようだが……何にせよ真実は知りようがない。目の前の理不尽な出来事と同じでな」
「そうか。ま、理屈がどうあれ私がやることは変わらないがな。今も昔も……どの世界であろうとも!」
ロザリーが愛用の斧で飛来してきた瓦礫を粉砕した。いつもなら押しつぶされていただろう。
「くっくっく……この嬉しさをぶつけてあげましょう!」
具体的に何とは言及しないが『ゆっさゆっさ』と揺らしながらカーミレが歓喜の叫びをあげ、ハウンドたちは本格的な攻勢を開始した。
「なるほど……自前の羽で『飛ぶ』というのは、こんな感じなのか」
興味深そうに呟くのは
ベル・キシニア。
彼女もまた記憶や認識は人間であるベルから連続しているが、その肉体は並行世界のシフールのベルのものとなっていた。
「スカイランニングで宙を駆けるのとはやはり勝手が違うな……おっと!」
またも投げつけられた瓦礫をシフールらしからぬ速度で避け、ルミナパワーを付与したヴァルキュリエランサーを投擲する。
濃霧のなかを突っ切って飛んだ三叉槍が何かを破砕する音が鳴り響いた。
「よし、小さくなっても通るものは通るようだな。不思議な感じだが、戦えるなら文句はない」
その手応えに、ベルの表情に喜色が浮かんだ。圧倒的なサイズ差とはいえ、いまの増大した能力ならやりようはあると踏んだのだ。
それが人間とシフールのどちらのベルの考えなのか、あるいは両者に共通する個性なのかは、もはや彼女にも分からなかった。
「しかし、何だ、身体が急に男になるのは変な感じだな……」
「まったくだべ……」
同じく記憶の混在が見られる
ユミル・エクレールと
エルシー・カルの肉体は男性のものとなっていた。
「といっても、やる事は変わらないけどね……!」
ルミナシールドを用い巨大な拳の勢いを逸らすユミル。本来なら潰されるであろう質量差をものともしない。
「こんなデクのぼう、おれに任せておくべさ!」
再び叩き込まれる拳をエルシーが身体で止め、その間にユミルが反撃に転じた。
「ひええ……ユー姉さんとエルちゃんが男になっています……!」
そんな二人の急激な変わりように、さすがの
シェール・エクレールも動揺を隠せないでいた。
「はっ! まさか私も……?」
念の為に確認する。
「よかった、ミョーなものは生えたりしてませんね……そうだ、ケイ姉さんは無事ですか?」
「私なら大丈夫よ、シェールちゃん」
振り返って確認すると
ケイナ・エクレールの姿が確認できた。いままでは立ち込める濃霧でよく視えなかったのだ。
「まさか、あの勇者王さまが敵なんてね……。でも、誰が相手でも負ける訳にはいかないわ。協力して頑張りましょう」
「ええ、そうですね……ん? 『シェールちゃん』?」
違和感に思わず振り返るシェール。不思議そうに見返すケイナ。
そこにはいつもの面倒臭がりな怠け者ではなく、いかにも『聖職者』という風体のケイナがいた。
「どうかした?」
「ケ、ケイ姉さんも何か変です……」
凄まじい置いてきぼり感がシェールを襲う。
「おいシェール、俺たちの見た目や性格がちょっと違うくらいのこと、気にするな!」
「いまはそれよりゴーレムだべ!」
「そのとおりよ、大したことではないわ!」
「そ、そうですね……大したことではありませんね!」
十分過ぎるくらい大したことなのだが、いまはそれ以上考えるのを止めて流れに身を任せることにしたシェールだった。
◆別人
「じゃあ、『そちらの私』は上手くやれたのね……」
戦闘のさなか、
シャーロット・ショルメは声に涙を滲ませていた。
「そうです。シャロ姉様が誘拐犯から無傷で救ってくれたお陰ですよ。その恩に報いる為に私はハウンドになったんです」
パメラ・ミストラルがやさしい『声』でそう答えた。
シャーロットはこの世界に現れてすぐにその変化に気付いていた。目の前の脅威を排除してから詳しい事情を問おうとも思ったが、出現時と同様にいつこの世界から戻されるとも限らず、我慢できずに経緯を問うたのだった。
「そう、本当によかったわ……」
感極まったのか涙を見せる。パメラの話に嘘がないことは失われたはずの声が雄弁に物語っている。
(そんな風に上手くやれていれば、私の虚勢心も打ち砕かれることはなかった……ううん、たとえ別の世界でも十分よ)
そこにゴーレムが瓦礫を投げつけてくるが、二人はそれを軽やかに避ける。
「お話したいことは山積みですが、とりあえずは脅威を払いのけましょうか!」
そう威勢よく声をかけるパメラだが、対するシャーロットは、
「わ、わた……私は、物陰に隠れつつ攻撃してるわ……」
と、極めて及び腰に答えると崩れかけた城壁へそそくさと身を隠した。
「よ、弱気なシャロ姉様とか初めて見ました……可愛いです」
新鮮な驚きに胸ときめくパメラであった。
「そこだ!」
フィールドドラゴンの『アール』に跨り、呪われた大剣を振るう
トサ・カイザーがゴーレムの脚部を斬り裂いた。
外壁が吹き飛ぶ。だが破損した部分はすぐさま凄まじい速度で修復され、踏み潰そうと巨大な足を振り下ろしてきた。
「むん!」
「はっ!」
その危機を救ったのは
エクスと
エアのカイザー兄妹。
「いまのうちに!」
「すまぬ!」
援護を受け離脱するトサ。
「やはり生半な攻撃では通じないね……どうするの、兄さん?」
問いかけつつもエアはエクスへの不安感を隠せなかった。外見はよく知る兄そのままだが、先ほどから言動の端々に危ういところが見え隠れしている。
「知れたことだ……再生が追いつかないほどの速度で畳み掛けるまで。いまのようにバラバラに動いていては埒が明かないが、ハウンド全員が一斉に攻撃すれば……」
「相手がローレック城でも落とせる、か……よし、では私も覚悟を決めよう!」
そう雄々しく応えるトサにも怪訝な視線を向けるエア。普段は傲岸不遜を絵に描いたようなこのいとこも何か様子がおかしい。
「その通りだ……ローレック王と巨大ゴーレムは必ず止めて見せる! 王の生死は問わずにな!」
「「……っておい!」」
二人から鋭いツッコミが入る。
「ちょ、兄さん! 一応ローレック王みたいなんだからいきなり殺しちゃだめよ!」
「問題無い。勝てば正義だ」
躊躇なく言い放つエクス。
(王の真意が何であれ、このドサクサでローレック王を倒せば私が世界の支配者になれるだろう……)
そんな邪な考えが表情に出るエクス。
(駄目だこのデタラメ勇者……早くなんとかしないと)
エアはそれを見て、これが平行世界の兄だとようやく理解したのだった。
◆攻勢
「よし、では一斉にかかるぞ!」
エクスの提案は速やかにハウンドたちに伝えられ、シルヴァがその号令を発した。
「よかろう……悪魔の力で悪を制するのが我が流儀。貴様が善か悪か、見極めさせて貰おう!!」
トサはそう宣言すると懐から奇妙な肉片のようなものを取り出し、飲み込んだ。
「さあ、ダーインスレイヴよ、我が血を吸ってその力を解き放つのだ!」
そして自らの腕を斬りつけた刹那、トサを呪力による禍々しいオーラが覆った。
本来ならば剣の呪いを鎮める為の儀式が真逆に働いたのは、さきほど飲み込んだ呪物――特級デュルガーの指の所為か。
「うおお!」
アールに跨ってゴーレムへと突進する。振り下ろされる右腕を呪力の塊と化した大剣で迎撃すると、硬い外装が弾け飛んだ。
「……くっ、いまは疼くな……我が右腕よ!!」
代償として取り込んだ特級デュルガーがトサの肉体を乗っ取ろうと蠢く。
「やるな、トサ。では私もいこうか!」
ロザリーが跳躍し、トサによって破壊された腕へと斧を叩き込んだ。
切断された腕部が地表に落下し、土煙をあげる。
「相手がなんであろうと斧で叩き潰す。コレが私の戦い方であり、私の誇りだ……さあ、この力を使って戦い抜こうではないか!」
その間にも切断されたゴーレムの右腕が急速に修復され始めた。
「元に戻る前に畳み掛けましょう!」
シェールが叫び、エルヴンドラゴンボウでドラゴンアローを射る。オーバーロードを用いた一矢は文字通りの攻城兵器となり、ゴーレムの胸部へと突き立った。
「俺の一閃、その身に刻みな!」
濃霧のなかの僅かな光源を目指してユミルが転移(と)んだ。そしてゴーレムの脚部へとチャージングを叩き込む。
超巨体が一瞬ぐらりと揺れるが、倒れるまでには至らない。お返しとばかりに着地したユミルへとその足が振り降ろされてきた。
「させねえべ!」
エルシーが前に出てストンピングを全身で受ける。さしもの鉄壁の防御もこの圧倒的な質量差の前に鎧が曲がり、何本か骨が折れる。
「ぐっ、さすがにやばいべさ……それでも、おれ達は絶対負けねえべ!」
「その通りよ!」
ケイナのキュアティブが圧死直前のエルシーを支え、シェールがドラゴンアローを撃ち込む。
「私がいる限り誰も死なせないわ!」
「がんばってくださいエルちゃん……いや、エルくん? と、ともかく、がんばって!」
仲間からの援護を受け、エルシーの四肢に力が漲る。そして。
「うおお……! 倍返し……いやさ、千倍返しだべさァ!」
ついにゴーレムの足を跳ねあげた。
◆破壊
足を跳ね上げられ、ゴーレムの姿勢が崩れた。そこへ。
「がっしーん! ふふふ、この私に任せなさーい!」
エメラルド像型のガーゴイル、エメラルダと合身したカーミレが突撃した。水創強化による外見変化も大幅に増大され、巨人の如き姿となってゴーレムへと殴りかかる。
「これは子ども扱いされた一昨日の分! これはお酒を売ってもらえなかった昨日の分ですぅ!」
多分に私怨の籠もった鉄拳を打ち込みまくる。巨大化したとはいえゴーレムと比べると圧倒的な差があるはずだがなぜか押し勝っていた。
「これがボン・キュッ・ボンのパワーですぅ!」
「せっかくだし、私もこの身体の利点を活かすか」
殴られてのけぞるゴーレムへとベルが肉薄し、残った左腕へと近づく。接近してよく見ると無数の隙間があり、ベルはシフールの体躯を活かしてその中へと潜り込んだ。
「ふむ、柔軟に動かす為に中はそれほど詰まってはいないのか……なら」
そこでグリーヴァサモンジを存分に振るい、腕を内部から破壊していく。やがて。
「……なかなか暴れ甲斐があったぞ?」
内部から切り落とされ、崩れゆく左腕部から飛び出したベルは満足そうにそう言った。
「……ガイア! き、効いているわ、パメちゃん……!」
「ええ、一気にいきましょうシャロ姉様!」
二人は連携しつつゴレームに攻撃を加えていた。シャーロットのガイアがゴーレムの脚部外装を剥ぎ取り、パメラのグリーヴァオニキリが内部を斬り裂いていく。
腕部を破壊し攻撃手段を奪ったことで勢いにのるハウンドたち。
だが次の瞬間ゴーレムの胸部に禍々しい光が収束すると、やがて赤い光の帯となって放出された。
標的は、シャーロット。
(あっ。死んじゃった……)
反応できず、一瞬で死を覚悟したシャーロットが目を瞑る。だが。
「……大丈夫、シャロ姉様は私が死なせませんよ」
目を開いたとき、シャーロットはパメラに抱き抱えられて別の場所に移動していた。
「パメ、ちゃん……? 私、どうして……」
「悪巧みにでも使えるかと思って持っていたんですが、思わぬ出番がありましたよ」
パメラはそう笑って一枚のカードを示した。それは時間を止めるという破格の能力を秘めた逸品だ。
そうこうしている間にもゴーレムの胸には次の光が収束しつつある。
「さぁ、切り捨てましょうかシャロ姉様」
「……ええ、パメちゃん!」
シャーロットは頷き、覚悟を決めるとダーインスレイヴを抜き放った。
それからゴーレムの胸部が幾度か瞬き、破壊光線が廃墟となったローレックの街を灼いた。
しかし一度判ればそうそう喰らうハウンドたちではない。
「ふっ、悪あがきね……ならばいまこそ秘めたる力を発揮する時!」
エアはそう叫ぶと身に纏った忍者装束を豪快に脱ぎ捨てる。
「……うぉい! 何をやってるんだ、エア!」
妹の奇行にエクスが声を荒げる。恥じらいある妹の行動とは思えなかったからだ。
「安心してよ兄さん、水着ですよ」
奇妙なポーズを決めるエアの肢体は一見すると全裸だが、よくよく目を凝らすと確かに水着が見て取れた。
「ま、紛らわしい……おかしくなったのかと思ったぞ」
たしなめる兄だがこれでも十分におかしい。やはりエアも別世界の存在だったのだ。
「いまの兄さんに言われたくないわね……ともかく! いまこそ見せよう……ニンジャは脱げば脱ぐほど強くなることを! とうッ!」
高く高く、ゴーレムよりも高く跳躍すると、エアは背負っていたロケットランチャーをゴーレムの脚部へと向ける。
「忍術! 無限ロケットランチャー!」
弾幕が形成され、猛烈な衝撃が地面を揺らした。
ちなみに服を脱いだことと一連の行動にはなんの因果関係もない。
「やるなエア……しかし兄より優れた妹などいない!」
謎の対抗心を燃やすエクスは自らも服を脱ぎ捨て、いつのまにか手にしたハンマーとともに集中砲火を浴びるゴーレムへと肉薄する。
「……兄さん、死ぬ気?」
「大丈夫、理屈じゃあないんです」
纏った神褌(シン・フンドシ)が光り輝き、エクスがハンマーを振り下ろすと――。
次の瞬間、ゴーレムの全身が砕け散っていた。
◆DH:Re
その刹那、ハウンドたちは再び光の奔流に飲み込まれた。
『……有機ユニット『ローレック王』の消滅を確認。現時点をもってこの次元の消去を開始する』
意識が遠のくなか、ハウンドたちはそんな声を聞いていた。
それはゴーレムの足元で耳にした声と同じ、まるで感情を感じ取れないものだった。
『当次元で得られた1000年分のデータは中枢次元へと退避。確保した『エクス・カイザー』を有機ユニットとして新たなテストを開始。繰り返す……』
やがてハウンドたちの意識は完全に途絶えた。
「……? 私たち、なぜこんなところに?」
シルヴィが目を覚ましたとき、広場には彼女と同じように横たわるハウンドたちの姿があった。だが、ここに至るまでの経緯は頭に濃い霧がかかったように明瞭としない。
「何があったのか思い出せない……。でも、なんだか奇妙な夢を見ていたような気がするわね……」
心に残った疑問も、すぐに街の喧騒に紛れて薄まっていく。
やがて12人のハウンドたちは何事もなかったかのように日々の暮らしへと戻っていった。
6
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参加者
| | a.不思議な感じだな。まぁ、戦えるなら文句はない!
| | ベル・キシニア(da1364) ♀ 28歳 人間 ヴォルセルク 風 | | |
| | b.王よ、あなたの野望と勇者王の座は私が引き継ぐ。安心して逝け(オイ)
| | エクス・カイザー(da1679) ♂ 30歳 人間 ヴォルセルク 火 | | |
| | b.今こそ見せよう…ニンジャは脱げば脱ぐほど強くなる!!
| | エア・カイザー(da1849) ♀ 28歳 人間 ヴォルセルク 風 | | |
| | a.ふふふ、この私に任せなさーい!
| | カーミレ・セリーザ(da1860) ♀ 41歳 ライトエルフ マイスター 水 | | |
| | c.狙い撃ちますよ。
| | シェール・エクレール(da1900) ♀ 19歳 人間 カムイ 風 | | |
| | a.お、男になっているぜ。
| | ユミル・エクレール(da1912) ♀ 23歳 人間 ヴォルセルク 陽 | | |
| | b.よかろう。悪の力で悪を制する側が流儀。貴様は善か悪か、勝負!!
| | トサ・カイザー(da1982) ♂ 26歳 人間 ヴォルセルク 陽 | | |
| | b.私は回復に徹します。
| | ケイナ・エクレール(da1988) ♀ 30歳 人間 カムイ 火 | | |
| | a.さぁ、切り捨てましょうか。
| | パメラ・ミストラル(da2002) ♀ 19歳 人間 カムイ 月 | | |
| | a.おれに任せておくべさ。
| | エルシー・カル(da2004) ♀ 21歳 カーシー(大型) ヴォルセルク 地 | | |
| | b.わ、わた、‥私は、ダメダメな私は物陰に隠れつつ攻撃してるわ
| | シャーロット・ショルメ(da2142) ♀ ?歳 ヴァンパネーロ パドマ 地 | | |
| | c.やることは変わらないな。今も昔も。
| | ロザリー・シャルンスト(da2190) ♀ 28歳 フィルボルグス ヴォルセルク 陽 | | |
| シルヴァ「どうやら迷っている暇はないようだな……!」 | | シルヴィ・エインセル(dz0003) ♀ 23歳 ライトエルフ カムイ 地 | | |
これもひとつの、可能性
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ローレックの街に突如として出現した遺跡が、ハウンドたちを未曾有の世界へと誘う。超スケール&超バトル! 全世界超ヒットのアクション超大作、ここに超公開!
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