帰らずの洞窟

担当山猫 黎
出発2023/04/24
種類ショート 冒険(他)
結果成功
MVPキョン・シー(da2057)
準MVPソレイユ・ソルディアス(da0740)
エクス・カイザー(da1679)

オープニング


 その村の近くの洞窟には死者の国へとつながる扉があるといわれている。
 その洞窟にまつわる言い伝えはこうだ。
 女神様の忠実なしもべが眠ったまま目を覚まさなくなった。
 困った女神様は洞窟へ潜っていき、扉の向こうの、死者の国に生えている果実を持ち帰り、自分の忠実なるしもべに与えて命を救ったのだ。
 女神様の恩恵を十分に受けられない、へんぴな村での不思議な言い伝えである。

登場キャラ

リプレイ



「最愛の人のために危険を省みないか。一人で行くのは無謀だが、同じ男として共感するものはある。そしてその切なる願いを助けるのが勇者の務めだ!」
 エクス・カイザーは勇敢なマルトをそう評価し、自らの役目を務めんがため暗い洞窟に踏み込んだ。
「ユニコーンのウニは洞窟に入るのは無理かな?」
 アステ・カイザーは螺旋角を持つ白馬、ウニを入口につないで待っていてもらうことにした。
 慌てて、エクスの後を追う。
「洞窟探検ならライトの魔法の出番ですね! こんな事もあろうかと覚えといてよかった!」
 キョン・シーは、どや顔でライトの魔法を成就させ灯りをつけた。
「さあこれで洞窟探索など恐るるに足らずです」
 キョンは努めて明るく振舞った。周りの重い空気を察したところがあるのだろう。
 もちろんキョンは何があるか分からないが最前列で皆を鼓舞していた。
 しかし洞窟内はがらんとしていて魔物どころか動物の気配すらなかった。
 ハウンド達は足早に洞窟を進んでいく。
「マルトの、マルトの両親の、そしてマーシャの為にも、あいつを無事に連れ戻さないとな」
 ソレイユ・ソルディアスは気を引き締めた。足もとには遥か東方異国グリーヴァの特務犬、忍犬柴のクナイがぴたりと寄り添っている。
「人助けはハウンドの勤めだからね」
「ありゃま。こりゃ早く助けてあげないと」
 エア・カイザーはさっきまでにこにこ笑顔を絶やさなかったのが、引き締まった顔になった。義賊の表情という奴だ。
 洞窟に入るときに成就させたスカイランニングで地形の影響を受けないようにしているが、ここまでの道程はさほど難所もなく思えた。
「あんたの両親から話を聞いた。俺達ハウンドにも手伝わせてくれ」
 ソレイユはマルトに話しかけた。アステがマルトの手を取ってキュアティブを成就させる。爪が剝がれ、血だらけになっていたマルトの手が綺麗に治っていく。

「扉の向こうに伝説の果実があるんだね?」
 キャサリンがマルトに確認を取る。マルトはうなずいた。
「この向こうは恐ろしい死者の国と村では言われているんだけれど、そこに魔法の果実があるはずなんだ。マーシャを助けるにはまず果実を手に入れないと!」
「よし、扉を開けてみよう」
 エクスとエアが力を合わせて扉の取っ手をつかみ、引っ張る。重たい石の扉は、唸るような音を立てて、ゆっくりと開いた。
 どこか乾燥した、死者の匂いのような雰囲気が洞窟に流れ込んでくる。扉の向こうは広い空間のようだった。
「さあ、行こう。あんたの大切な人を助けるために」
 ソレイユがマルトの肩をポンと叩いた。


 扉をくぐると、そこも洞窟になっていた。空を見上げても天井が続いている。
 キョンがライトを照らし、犬のクナイとキャサリンの技能で探索を進めていく。
 扉からはまず下り坂が続き、続いて丸太で自然にできたような橋を渡り、少し小高くなっている丘のようなところに、一本の木が立っていた。
 枝には小ぶりながらもたくさんの実が生っている。
 アステが植物知識で鑑定する。
「これが伝承の果実かしら? こんな洞窟の奥に生えているなんて不思議ね。食べても害は無さそうだけれど……」
 アステはそう言って、果実をもいだ。慎重にマルトに手渡す。
「マーシャの意識、戻るといいな」
 ソレイユがそう言った時。

 ひゅうう。
 風ではない何かが、風のような音を立てた。
 ざわあ、ざわあ、と何かの気配が迫ってくる。 

「囲まれているよ!?」
 エアはシノビエイプのジローとエクスに声をかけ、ルミナパワー、オフシフト、ダブルアタックを成就させた。
 そう、彼らのいる小高い丘は、いつの間にか、顔色の悪いコモンと思しき人影に囲まれていたのであった。
 気味の悪い、死人のような肌の色。でも、腐臭や悪臭は特に感じない。
「何者ですか?」
 キョンが誰何しても答えは返ってこない。ただ無言でじりじりと間合いを詰めてくる。
「この数……逃げた方がよさそうだな」
 ルミナパワーとマルチパーリングを成就させたエクスがそう判断する。しかし、丘は完全に囲まれており、丸太橋の方向へ進もうにも、奇妙な住人たちに塞がれている。
「こんな時は何を使えばいいんだろ? 伝承とかあるんだよな?」
 ソレイユは鞄の中にあった三つのアイテムについて、震え上がっているマルトに尋ねた。
「小さな卵を投げてください。出来るだけ遠くに。そうすると、この木と同じ木が生えてきて、守り人の気を逸らしてくれると言われています」
 マルトは震える声を押し殺して答えた。ソレイユは小さな卵を、出来るだけ遠くへ投げた。
 卵は守り人たちの頭上を超えて遠くへ落ちた。そこににょきにょきと木が生えてきて、守り人たちの気がそれた。守り人たちは今生えたばかりの木に一斉に群がり始める。
 少しだけ活路が拓かれた。
「三つのアイテムが頼みの綱ね!」
 アステが言い、一行は果実をマルトがしっかりと抱えていることを確認してから走った。
 灯り担当のキョンが先頭を行く。続いてマルトの手を引いたソレイユが駆ける。
 殿はエクスが務め、さくさくと守り人たちを、謎の魔法金属ティラノシルバー製の両刃直刀レーヴァティンで斬り捨てる。

 息を切らせて一行は丸太橋までやってきた。そこも守り人たちで埋め尽くされていた。鋭い犬歯を見せつけ、丸太橋ごともの凄い力で転覆させようとする。
 キャサリンはディレクトガガを成就させ、フィルボルグス型ガーゴイル、GGのフィルボを前面に立て、銀のダーツで応戦した。
 足場の悪い難所と判断したソレイユは、バウンスブーツと軽業で軽妙に跳びまわりながら、異常なまでの斬れ味を誇るグリーヴァンニャミツ改でソードボンバーを放つ。
 エアのルミパソードも守り人たちを撃退するのに役立った。
 キョンもゼウスで守り人たちをひと薙ぎにするが、ひたすらにわらわらと湧いてくる守り人たちに圧倒されかけていた。
「次はウサギの彫刻を使うんです! 確か、ウサギの彫刻には、守り人をはねのける力があると聞いています!」
 マルトの言葉に、ソレイユが鞄からウサギの彫刻を取り出し、勢いよく守り人の群れに投げ込んだ。
 ウサギの彫刻はむくむくと大きくなり、守り人たちを跳ね飛ばした。
「今のうちに丸太橋を渡り切るんだ!」
 殿を守るエクスの言葉に急いで橋を渡る一行。次なる難関は坂道だ。今度は上り坂となっている。

 上り坂はめまいがするような傾斜だった。行きには感じなかったが、帰り道の消耗した体力では登るのがしんどい。まして、一般人のマルトはふらふらであった。
 そこを守り人と追いつ追われつ駆け上がる。
 余裕のある顔をしているのはスカイランニングを成就させているエアだけであった。
「マルトさん、はあ、はあ、今度は何を使えばいいんですか、はあ、はあ」
 キョンが息を切らせながらマルトに問いかける。マルトもふらふらになっていた。息が切れて答えられない。
「残っているのはロウソクだよな」
 ソレイユが鞄の中を確認した。伝承が分からないので、普通に投げてしまっていいものか悩むが、マルトが倒れそうなので決意した。
 投げられたロウソクは大きな火炎となって坂道の下を燃え上がらせた。追手の守り人たちは煙に巻かれて一行を見失った。その隙にと皆はあの石造りの扉まで走る、走る。

 ようやく扉まで来たので、守り人に追われないうちにと素早く全員潜り抜けて、扉を閉めようとする。
 石造りの扉は重い。エクスとエアが頑張って元通りに閉めた。
 隙間から何体かの守り人が手を滑り込ませてきたが、キョンのダーツと、エクスのレーヴァティンで仕留められた。

 やっと一息ついて、一行は、マルトの負っていた傷に気が付いた。
 マルトは発熱していた。どこで守り人に嚙まれたのか、今や一歩も動くことがかなわない状態であった。
「ピュアリティで消毒するわよ」
 アステはそう言ってマルトの傷口を消毒した。続いてキュアティブを成就させるが、発熱は治まらないようだ。
「あなたが頑張ったのは、幼馴染の婚約者を助ける為よね。そういうカップルには幸せになって欲しいから、何としてでも助けたいのよ!」
 一生懸命に肩を貸すアステ。
 力の入らないマルトの体は重くて、熱い。
「ここで終わらせるわけにはいかない。とにかく、担いででも村に連れかえるぞ」
 エクスは周囲を一応警戒しつつマルトを担いで洞窟内を歩きだした。
「あたしのつけた印が最短距離を教えてくれます、とにかく急ぎましょう」
 

 ほどなくしてハウンド達は洞窟を出た。
 マルトの両親は息子の病状に驚いたものの急いで看病の準備をし始めた。
 アステはユニコーンのウニを牽いて村へと向かった。
  
 アステ、キャサリン、エア、キョンはマーシャの家を訪ね容態を診ていた。
 マーシャは昏睡状態でかなり衰弱していた。アステは緊急性を考えて、マーシャに先に果実をすりおろしたものを与えた。
 すると、ゆっくりとマーシャの顔色は良くなっていき意識を取り戻した。
「マルト……」
 マーシャは目を覚ますと弱弱しくつぶやいた。
 エアは看病をずっと手伝いながらマーシャの意識の回復を喜んだ。
 ただ、意識は戻ったものの持病は依然としてマーシャを蝕んでいることも分かった。
 あとは、マルトが持っているという薬だけが頼りだった。

 一方、マルトの家でエクスとソレイユはマルトの回復を待った。
 マルトは看病の甲斐もあって1日で状態は回復した。
「はっ、オレは一体……」
 ソレイユはやっと起きたマルトに事情を説明した。
「マーシャは……よかった、意識を取り戻したのか、それならオレが買ってきた薬が効くはずだ」
 懐から大事そうにしまってあった薬を持ってマーシャの家へとよろけながら向かった。
 
 キャサリンはマルトから薬を受け取り、煎じてマーシャに飲ませることにした。
 もちろん、飲ませる役はマルトに任せた。
「マルト……、久しぶり。見違えるほどに大きくなったね。わたしの為に薬を手に入れてくれたのね、ありがとう」
 二人はあつく抱擁した。ハウンド達はほほえましく見守った。
 その後はマルトが薬を少しづつマーシャに与えることによってマーシャは回復の方向へ向かった。
 
 しばらくして、ハウンド達の手が必要なくなった頃、すっかり元気になったマルトは皆の前でマーシャにプロポーズをした。
「ずっと君の支えになりたい、結婚してくれ」
 マルトはまっすぐマーシャを見て言った。
「はい、喜んで。こんなわたしでよければ」
 マーシャは恥ずかしそうに、しかしはっきりと答えた。
 拍手喝采の中、二人は照れくさそうに将来を誓い合った。



 4

参加者

c.果物を探すけど、欲をかいてたら罰が当たるわね。
アステ・カイザー(da0211)
♀ 27歳 人間 カムイ 水
c.では果実を探すよん。
キャサリン・モロアッチ(da0421)
♀ 22歳 ライトエルフ マイスター 風
b.あいつの心意気、無駄には出来ないからな。
ソレイユ・ソルディアス(da0740)
♂ 21歳 人間 ヴォルセルク 陽
a.魔物の足止めをする役は必要だろう。
エクス・カイザー(da1679)
♂ 30歳 人間 ヴォルセルク 火
c.ありゃま。急いで助けに行かないと。
エア・カイザー(da1849)
♀ 28歳 人間 ヴォルセルク 風
b.ライトの魔法で照らします。
キョン・シー(da2057)
♀ 22歳 人間 パドマ 風


息子が、不帰の洞窟へ!

うちの大事な息子が、行ったものは誰も帰って来ない洞窟に向かった! 誰か連れ戻して! 息子が、息子までも失いたくない!