オープニング
◆
「一体、何があったんだ……?」
ハウンド達は恐慌を来たした仲間のハウンド達の前にいた。
彼らは月のダークヒュージドラゴンに対する威力偵察に向かった部隊だった。
見渡す限り全員、身体は無傷である。
しかし、精神が崩壊したような状態で、ローレック城の中庭にて発見されたのだ。
これは通常のドラゴンポータルによる帰還とは考えられず、あるいは『月のダークヒュージドラゴンの手で送り返された』という可能性すら考えられた。
「みんなに何があったのなのー?」
駆けつけたエルーカ・エルルカは疑問を覚えるが、それは実際に体験した当事者にしか分からない。
だが、必死に呼びかけても、彼らはまったく意思疎通が取れる状況ではなかった。
ある者は怯えてうずくまったままであり、ある者はぶつぶつと放心している。
「ううっ……」
ハウンドの少女に至ってはひたすら号泣するように泣きじゃくっていた。
意思の伝達が取れない――そればかりか、彼らは食事も取れる状態にないため、このままにしておけば衰弱死の可能性さえもあった。
「困ったわね。メンタルキュアティブの魔法でも効果はないわ」
ハウンドの女性が表情を曇らせる。
なお困ったことに、精神異常を回復させる類の魔法や薬もまったく効果がなかった。
精神異常ではない、というより、それが効かないほどの深い傷、あるいは治癒を阻む何らかの措置が仕込まれていることが疑われた。
彼らに共通するのは絶望、無気力。
つまり希望と活力を与えてやる対処療法を試みたいわけだが、ハウンド達がいかに仲間のハウンド達を励ましたり、楽しませようとしたところで何の改善も見られなかった。
「……いや、やり方が弱いんじゃないのか」
ハウンドの一人がそう提案する。
感情は伝播するものだと。
そして、より大きな感情ほど伝わりやすい、と。
ならば、街の劇場に大勢の住民達を集め、大観衆を前にドドーッと盛り上げる。
その場に希望と活力を呼び起こせば、さすがに彼らにも伝わるんじゃないのか、と。
善は急げとばかりに、ローレックの街の劇場で急遽開催される事になったのは『一大ハッピーパーティ』。
「皆様、お集まり頂き、ありがとうございます」
開幕の宣言と共に、まるでお祭りのように盛り上がる観客達。
劇場の真ん中の特等席には無気力なハウンド達が腰掛けている。
「頑張ってみんなの心を救うのなのー」
舞台の準備を整えたエルーカは意思を固める。
大切な仲間を救うために――。
柔らかに囁く春の風の音色と共に、希望に満ち溢れた一大ハッピーパーティが開催されるのであった。
◆選択肢の説明
・『披露する』
歌や演奏や踊りなどを披露したり、こうなってほしいと願う未来の話や将来の夢などを伝えたり、未来への想像図を膨らませたりします。
コネやスキルなどを用いて、新たな出演者を呼んだり、交渉して招いたりする事もできます。
・『アピールする』
強さなら一番、腕力なら一番、魅力なら一番、好きな事を語るなら一番など、自分の好きな事、得意な事などを語ったり、アピールしたりします。
舞台で自分が考えた演目を行ったり、技や魔法などを使って自分の好きな事などを伝えたりする事ができます。
・『希望を語る』
自分の提案がもしも未来の世界に大きく関わる事になったら、こんなものを創ってみたいと語ります。
花に囲まれた都市があったらいいな、お菓子を信仰する宗教があったらいいな、こんな遺跡やお店などがあったらいいな、など未来に存在していたらいいなと思う事を語ります。
選択肢
a.披露する | b.アピールする |
c.希望を語る | z.その他・未選択 |
マスターより
こんにちは、留菜マナです。
今回は月のダークヒュージドラゴンの威力偵察から帰還したハウンド達の心を救う話になっております。
お話は一大ハッピーパーティが開幕したところから始まります。
誰かと一緒に行動を共にする場合は、お相手の名前をプレイングに明記して下さい。
今回、エルーカはお声を掛けて頂いたもの、もしくはお菓子を信仰する宗教について語る予定です。
どうぞよろしくお願い致します。
※RealTimeEvent【HoundHistory09】ダークヒュージを解呪せよ 連動シナリオ
本シナリオは、世界の歴史を動かす可能性を秘めた企画「リアルタイムイベント」に連動した特別シナリオです。
参加することで【HH09】を冠したグランドシナリオに参加する権利を得ることができます。
登場キャラ
◆
開幕の宣言と共に街の人達の活気が溢れる。
しかし、観客席に座るハウンド達は無気力のままだ。
「元気ないねえ」
「みんな、元気ないのなのー」
ユナと
エルーカは心配そうに呟く。
「感情の伝播と……絶望の世界と出ているな」
その時、
ジャアファルが占いの結果を口にする。
実際、占いが示したのは感情の伝播と終末の世界。
それは月のダークヒュージドラゴンに関連する事柄のようだった。
(終末の世界……。わずかでも曇りが見えると……な)
ジャアファルは占いの結果に思案を深めた。
「恐怖の伝播。ダークヒュージドラゴンの狙いはそれだろう」
ジャアファルの言に、
ソレイユはそう推測する。
「手段はわからないけどハウンドの心を折り、無傷のままで帰す事で自分との圧倒的な力量差を示し、人々に絶望を与える」
ソレイユはこれまでの経緯からそう感じていた。
だけど、と確かな想いを込める。
「コモンは一人一人は確かにそんなに強くないかもしれない。しかし、一つになれば大きな力を出せる!」
「感情は伝播するもの……か。その通りだと思うよ」
語り部として多くの事件を見てきた
シルヴァーナは同意する。
「事件が起こった場所ではみんな悲しむから悲しみが大きくなる。ボクもよく見てきたからね」
シルヴァーナはその言葉の意味するところを身に沁みて理解していた。
「だからこそ、みんなで幸せになればその気持ちももっと大きくなるよ」
「そうだな」
シルヴァーナの所感に、ソレイユは頷く。
となれば、やはりハッピーパーティの盛り上がりが肝要となるようだ。
「よく分かんないですけど、みんな悲しかったり怖かったりですのね?」
レネットは舞台裏から観客席の様子を窺う。
「しかも美味しいご飯も食べられないなんて、それは良くないですわ! 元気づけてあげなきゃですの!」
レネットはローレライのハープを手に気合いを入れる。
その可愛らしい仕草にハウンド達の頬が思わず緩む。
「だからこそ、みんなで頑張ろー!」
シルヴァーナはそう言って皆を鼓舞した。
◆
(心を砕かれたハウンドの中にサンドラで活躍した人の顔もあるかな?)
準備を整えた
パメラは観客席へと目を向ける。
(あたしはあの時のハウンドの活躍に憧れてハウンドになったんで、ここで恩返しをしなくては女が廃るってね)
その想いを胸に、パメラは最初の舞台に上がった。
「砂漠の国サンドラの踊りを披露します。これはかつてサンドラを訪れ、砂漠の民を救ってくれたハウンドの勇者への感謝と憧れを込めた踊りです」
そう告げて舞ったのは勇壮なハウンドをイメージした踊り。
サンドラで目の当たりにしたハウンドの活躍。
パメラはそれを体現するように勇壮華麗に熱く激しく披露する。
二刀の扇を振るい、踊りながら流れるように切る動作。
駆けるような動きは、まさに勇敢なハウンドそのもので。
皆を勇気づけるようなそれが観客を盛り上げる。
美しい肢体を駆使して披露される踊りに、観客達は次第に魅入っていった。
(これで熱が戻ってくれればいいけど)
パメラは切に願う。
その願いに同調したように、観客席にいるハウンド達の顔には徐々に熱が戻ってきていた。
次に舞台に上がったレネットはネストドレスの裾を軽くつまんで一礼した。
その様は可憐で、多くの観客から拍手が送られる。
「お歌を歌いますわっ!」
レネットは瞳に決意を漲らせるとハープを奏でていく。
舞台で紡がれるその音色に、観客達は耳を傾ける。
その演奏に合わせて、レネットは歌声を紡いでいく。
それは明るい希望に満ち溢れた歌。
わくわくと楽しさが湧き上がるようなその演奏は観客の心に響き、胸を躍らせる。
次に奏でられたのは穏やかな春の木漏れ日の歌。
その愛らしい歌声と音色が相まって、多くの観客の心を魅了していった。
心惹かれるその演奏に浸りながら、いつしか観客達は歌を口ずさみ始める。
(音楽を聴くと何だかいい気分になりますし、一緒に歌えば楽しい気分になりますもの!)
音色の高まりと同時に、春告げを知らせるような穏やかな斉唱。
(みんなで元気に楽しくなるのが一番ですの!)
絶望の欠片を吹き飛ばすようなそのハーモニーは、観客席にいるハウンド達の顔を綻ばせていった。
次に舞台に上がったのはシルヴァーナだ。
「では突撃語り部として、突撃系の語り部としては一番であることを語るよ!」
シルヴァーナの朗々とした声に、観客達は耳を傾ける。
「ボクみたいに直接取材して物語を紡ぐ語り部もそうそういないからね」
突撃語り部として間近で事件を取材してきたシルヴァーナは告げた。
「今から語るのは突撃語り部たるボクが見聞きした様々な事件だよ」
そう前置きをして、シルヴァーナは様々な事件を面白おかしく語っていく。
その希望溢れる物語から想起されるのは臨場感のある情景。
それは観客を夢中にさせる。
シルヴァーナの語りは次第に観客の心を掴んでいく。
観客席にいるハウンド達はシルヴァーナが紡ぐ事件に心踊らせていった。
シルヴァーナの巻き起こした熱気冷めやらぬ中、舞台に上がったのはジャアファルと柴犬のブロンテだ。
「……芸を見せる。俺じゃなくて、ブロンテが」
ジャアファルがそう告げるとブロンテは最初の芸を披露する。
普段、ブロンテを遊ばせているように。
ジャアファルは軽業を駆使してブロンテの動きに付き合う。
ブロンテが披露した芸は驚きの連続で観客達をワッと湧かせる。
観客の心をつかみ上げたのを確認したジャアファルは続けざまに動いた。
「行くぞブロンテ、フォーメーションBだ」
ジャアファルの声に呼応するようにブロンテは駆ける。
それは割とハードめな曲芸チックなじゃれあい。
「ブロンテ、頑張って!」
そこで子供達が無邪気に手を叩くと、周囲の者達も釣られて手拍子をブロンテへ送る。
いつの間にか観客席からはブロンテを応援する手拍子が一斉に鳴り響いていた。
ブロンテは喜びを示すように新たな芸を披露していった。
「ふむ。私は熟年の色気という奴を見せて笑いを取るかな」
バトルコートに身を包んだ
マサカが舞台に上がる。
それを彩るように、コネで呼んだ四人の楽団がそれぞれ手にした楽器で演奏を響かせた。
まず最初にマサカが示したのは舞台に用意された樽。
「では、まずはこの樽を粉砕してみせよう」
マサカは掛け声とともにDバスターシールドを変形させた。
射出した槍は的である樽に命中し、粉砕する。
その瞬間、観客席からは歓声と拍手が沸き上がった。
「次は彼女達の攻撃に耐えて見せよう」
アースアーマーを成就したマサカの前に新たに現れたのはコネで呼んだ『クモカマエンジェル』。
ナイスバディな女性ハウンドらしい3人組は突如、手にした棒で次々とマサカを殴打し始める。
想定外の事態に騒然となる観客達。
だが、彼女達の殴打はマサカを傷つけるに至らなかった。
実は彼女達に棒で殴り掛かって貰い、耐えて見せる芸だったのだ。
「では、熟年の色気という奴を見せるかな」
マサカはバトルコートを脱ぎ捨ててワンピースの水着姿を晒す。
そして、クモカマエンジェルの3人とセクシーポーズを決める。
美しさはどの角度から見たところで損なわれる事はない。
観客を魅了した後、マサカは一呼吸置くと事実を明かした。
「以上、孫と共にハウンドをしている婆ぁでした」
「ええっ、孫!?」
思わぬ衝撃発言に、観客席からは驚愕の声が巻き起こった。
一方、劇場の一角では
アルトゥールがミニオンズ達の力を借り、屋台を設置していた。
「さて、こんなところかな……」
調理を終えたアルトゥールはひと息ついた。
皿には色々なお菓子が並んでいる。
王子様のような服を着こなしたアルトゥールは皿を手に劇場を巡り、皆にお菓子を振る舞う。
(甘いものは肉体的にも精神的にも活力をくれるからね)
お菓子を口に運んだ人達は皆、幸せそうに舌鼓を打っていた。
(トラウマを受けたハウンドも、周りのみんなが美味しそうに食べていれば食欲を思い出すかも知れないし)
至福の表情の人達に釣られたのか、観客席にいるハウンド達は手元のお菓子へと視線を注ぐ。
アルトゥールは改めて舞台を見つめる。
そこには屋台を設置するきっかけとなったエルーカが舞台に上がっていた。
事の発端、それはエルーカの提案だった。
「ユナ、物理で護るのは得意だけど、気持ちを護るってどんな感じなのかなあ?」
答えが出ない疑問を前にして、ユナは想像を巡らせた。
「みんなうれしいって気持ちになったら、また笑えるようになるのかな?」
「きっと笑顔になるのなのー」
ユナの問いかけに、エルーカは嬉々として応える。
「だったら……お菓子だよねっ☆ エルーカちゃんの手作りお菓子!」
ユナは名案を思いついたとばかりに声を弾ませた。
「食べたらユナ、元気になるし、考えただけで幸せになれるもんっ♪」
「ユナさん、ありがとうなのー。エルーカ、お菓子を信仰する宗教があったらいいなと思うのなのー」
エルーカの笑んだ顔が幸福に彩られる。
「お菓子を信仰するって……なに?」
「お菓子の文化を守るための教団なのー」
アルトゥールが発した疑問に、エルーカは理想の教団を語った。
「アルトゥールさん」
「お菓子、大盛況なのー」
アルトゥールが舞台に上がるとユナとエルーカは駆け寄ってくる。
「美味しいって気持ちだって伝播するんだ。僕も腕を振るわせてもらうよ」
その報告に、アルトゥールは表情を綻ばせた。
「あ、宗教についてはエルーカに任せるよ。僕もあまりわかってないから」
「任せてなのー」
エルーカ達のお菓子教団の話は滞りなく進んでいく。
「エルーカちゃんがお菓子の文化を守る教団なら、ユナはエルーカちゃんのお菓子をおいしくいただく教団を設立したいと思います☆っ!」
それはユナが真剣な眸で紡いだ発案。
「そんな未来を作りたいから、だから……みんなでエルーカちゃんのお菓子食べよう☆」
ユナの宣言は観客席にいるハウンド達の心に届く。
「エルーカがお菓子作りを極めようと思ったのは――」
しかし、上手く言葉にならない。
エルーカは懇願するようにアルトゥールを見つめた。
「アルトゥールさんはどうしてお菓子作りを極めようと思ったのなのー」
「って、そこで僕に振るの? エルーカ!?」
話を振られたアルトゥールは驚愕する。
「えーっと。僕がお菓子作りを極めようと思ったのは、大切な人のため。大切な人が、この先もずっと美味しいお菓子を味わえる様に。そして、その人の笑顔を見られるように。それが僕の望みだよ」
今はこの場にいない主に想いを馳せた。
「そしてそれは、僕だけじゃなくお菓子を作る人みんなの願いじゃないかな」
そこでアルトゥールはエルーカに視線を向ける。
「……これで合ってる? エルーカ」
「エルーカがお菓子作りを極めようと思ったのは……大切なユナさん達の笑顔を見たいからなのー」
その言はエルーカの中で息づいていた想いを解放した。
「お、お菓子……」
舞台に上がった
リザは観客席の様子を怪訝な表情で見つめていた。
いつの間にかパーティの主旨がお菓子パーティに変わっている。
「衣食住、と言いまして」
そう思ったのも束の間、すっと語り始めたのは
ベドウィールだ。
「生きる為に必要なもの、そして人生を彩り充足感を与えるものでもあるそうです。暖かい布団でのんびり寝坊するのも、美味しい食事を満足するまで食べられるのも……意外と難しい事ですがね」
そう告げてベドウィールは肩を竦める。
「えっ大丈夫、変なフラグ立っちゃったりしないよね?」
「大丈夫ですよ。リザは何を語りますか?」
「仕方がないなあ、夢とか希望とか語っちゃおうかなー!」
リザはぱっと目を輝かせて語り始めた。
「やっぱりさ、アレでしょ。お菓子の家。ロマンでしょ?」
「お菓子の家ですか……リザが材料を調達して来てくれるのですよね? わあ、楽しみですねえ」
ベドウィールは棒読みのような口調で応える。
「材料?」
「私、作る人。そうなるとリザは材料を用意する担当ですよねえ?」
リザの問いに、ベドウィールは所持している料理道具を示す。
「それに雨が降ってきたらどうするのです」
「雨が降ってきたらどうするの、とか言わないの! そういうの今はいいから!」
もーと言いつつも、リザは更なる希望を膨らませる。
「壁はビスケットかなあ、窓はキャンディで、屋根は……ジャムクッキーとか彩り綺麗なクッキーとかでカラフルにして。そういうの、平和じゃないと出来ない事だしさ」
「お菓子信仰の教会にもできそうですね」
ベドウィールが発した言葉は更なる活気の呼び水になった。
(エルーカちゃんのお菓子教団も心惹かれるんですけど、あたしは自分の野望を語ります)
キョンは確かな決意とともに舞台に上がった。
「あたしはこの大一番を戦い抜いてからの希望を語ります!!」
キョンの宣言に、観客席からは熱い眼差しが注がれる。
「とある開拓村で育ったあたしは村が魔物に襲われた時、助けてくれたハウンドに憧れ、その時のハウンドの一人だった師匠に弟子入りしました」
キョンの脳裏に去来するのはこの場にはいない師匠の姿。
初めて出会った時の情景を思い起こす。
「あれから幾つもの冒険を重ねて来ましたが、今回の大冒険を乗り切った暁には後世に残る伝説を築く、それがあたしの野望です」
キョンは確固たる意思とともに熱く力説する。
そこでコネで招いた吟遊詩人キノタへと視線を向けた。
キノタはキョンから聞き及んだ今までの冒険を巧みな詩歌に乗せて披露する。
どこまでも、この詩歌が届くように。
どこまでも、どこまでも。
キョンが辿った数多の冒険は確かにこの時、多くの人の心に届いていた。
舞台裏からでも分かる観客の熱気。
観客席にいるハウンド達の活力が戻ってきているように感じた。
王子様風の服を纏ったソレイユは舞台に上がるとおもむろにリュートを奏で始める。
その明るく勇壮な演奏は観客の心を大いに掻き立てた。
『魔奏』と呼ばれる特殊な演奏。
本来ならハウンド達の心に届く事のない演奏。
しかし、街の皆の明るい気持ちが魔奏と共鳴し、彼らに打ち込まれていた『心の楔』のようなものを打ち砕いていく。
まるでその音色の輝きがハウンド達と街の皆の『未来への希望』を呼び起こすように。
(誰だって明るい明日を望んでいるはず)
ソレイユはハウンド達のその心を呼び起こし、街の皆と一緒に歌い上げる事で伝播させていく。
彼らにハウンドの使命を思い出させる。
それは彼らの目の前にある『人々』と、彼らや自分達も含めたみんなの『未来』を守る事。
「苦難の今を乗り越え、明るい未来を掴み取る! それが俺達ハウンドだ!」
ソレイユの誓いに呼応するように観客席からは万雷の歓声が鳴り響いた。
「……ハウンド」
それは予感なんて優しいものじゃなかった。
まるで沁み入るように、それまでのハッピーパーティの出来事がハウンド達の心に刻み込まれていく。
希望に彩られる輝く未来を、多くの人達に見せながら。
◆
「ダークアビスドラゴン?」
「ああ。月のダークヒュージドラゴンはそう名乗った」
ソレイユの問いに、ハウンドの青年は打ち震えるように応えた。
「どんなドラゴンだったんですか?」
「まるで全ての光を飲み込むような漆黒の肌を持つドラゴンだった。そして戦うより前に、その場にいた全員が同じ夢の世界に放り込まれたんだ」
キョンの疑問に、ハウンドの青年はそう打ち明ける。
「そこは世界の終わりのようなところで何もできず、じわじわと絶望に支配された。もうどうなってもいい……と抵抗を諦めた頃、気づけばローレック城に飛ばされていたんだ……」
ハウンドの青年は悪夢に放り込まれた恐怖を思い出していた。
6
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参加者
| | c.お菓子をおいしくいただく教団はどうですかっ☆
| | ユナ・プリセツカヤ(da0671) ♀ 20歳 人間 ヴォルセルク 陽 | | |
| | a.苦難の今を乗り越え、明るい未来を掴み取る! それが俺達ハウンドだ!
| | ソレイユ・ソルディアス(da0740) ♂ 21歳 人間 ヴォルセルク 陽 | | |
| | c.お、お菓子…
| | リザ・アレクサンデル(da0911) ♂ 23歳 人間 ヴォルセルク 水 | | |
| | c.衣食住、と言いまして…
| | ベドウィール・ブランウェン(da1124) ♂ 27歳 人間 ヴォルセルク 月 | | |
| | a.芸を…ブロンテ(柴犬)が。
| | ジャアファル・ジルフェ(da1631) ♂ 19歳 人間 マイスター 陽 | | |
| | c.あたしはこの大一番を戦い抜いてからの希望を語ります!!
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| | c.お菓子を信仰するって……なに?
| | アルトゥール・マグナス(da2136) ♂ 20歳 人間 ヴォルセルク 地 | | |
| | b.ふむ。若者のために一肌脱いで笑いを取るか。
| | マサカ・ダエジフ(da2181) ♀ 51歳 ダークエルフ ヴォルセルク 地 | | |
| | a.あたしはサンドラに来たハウンドの活躍に憧れてハウンドになったんだけどな
| | パメラ・ミストラ(da2242) ♀ 25歳 人間 ヴォルセルク 水 | | |
| お菓子の文化を守るための教団なのー。 | | エルーカ・エルルカ(dz0054) ♀ 18歳 人間 カムイ 月 | | |
未来の兆し
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大切な仲間を救うために――。
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