オープニング
◆下水探索
テア・ベルゴミは、髪にまとわりついてくる湿気にげんなりとした表情を見せた。
前を行く仲間達は、湿気など気にする様子もなく、テクテクと通路を進んでいる。
彼女らの背後には、外(ローレックの街)への出入り口があり、外の明るい光が差し込んできている。
その光の届く場所以外は薄暗く、視界はクリアとは言い難い。
そんな通路をハウンド達は進んで行く。
ここは、ローレックの街の地下。『下水』と呼ばれている場所だ。
図書館によると『城から街にかけて完備されている下水。遥か古代に作られたものであるらしく、その全容は明らかになっていない‥‥うかつに入ると迷ってしまったり、出てこない者もいることから、魔法の迷宮説や魔物の棲家説がある』とのこと。
今までも探索の依頼があったらしいが、手付かずだったそう。
しかし、ダークヒュージドラゴンの解呪の為に、何か役に立つものがあるかもしれないとのことで、この度探索グループが作られ下水探索が行われることとなった次第だ。
テアは、仲間達に後れを取らないように最後尾へつきつつ、口を開いた。
「ダークサイドの解呪とか、邪神復活の下地作りを阻止すべく、ダークヒュージドラゴンへ直通するドラゴンポータルがなんとかなんて話だとか、あれやらこれやらやることが一杯な中で、こんな下水で何を探索するっていうのかしらねぇ」
聞いた仲間の一人が振り返った。
「まぁ、そのうち調査する予定だったと思うし、それがたまたま今だっただけとかだろう?」
「そうなのかしらねぇ」
「ま、中に入ってしまったことだし、やるだけやってみよう」
テアは立ち止まって腕を組み。
「そうよね‥‥何か役に立つものがあると良いわねぇ‥‥ていうか、あたしたち生きて帰られるわよね? って待って、置いてかないでー!」
テアを置いてスタスタと進む仲間達。
彼女は仲間を追って、駆け出した。
選択肢
a.仕掛けに備える | b.道に備える |
c.その他に備える | z.その他・未選択 |
マスターより
お世話になっております。槻又ともこです。
今回は、ローレックの街にある下水の探索です。
今まで手付かずでした。
色々な説が飛び交っていますが、キャラクターさん達が知りえない情報をここで公開するので、プレイングの参考にしてください。
・中は迷路になっている。
・魔法は使えるらしい。
・古代の魔法によって、色々降ってきたり飛んできたり、床に穴が空いたりするかも。
・結構普通に危ない(何それ
ちなみにモンスターは出没しません。
強靭な肉体や、土地勘や、もしかしたら古代語とかのスキルがあると便利かもです。
プレイングの内容によっては、他の仕掛けがあったり、今公開した仕掛けが出てこない場合もありますので、ご了承くださいっ。
迷宮探索したらそれなりに良い事が起こるかもです。
それでは、皆様のご参加お待ちしております。
※RealTimeEvent【HoundHistory09】ダークヒュージを解呪せよ 連動シナリオ
本シナリオは、世界の歴史を動かす可能性を秘めた企画「リアルタイムイベント」に連動した特別シナリオです。
参加することで【HH09】を冠したグランドシナリオに参加する権利を得ることができます。
登場キャラ
◆下水を侮ってはいけない
先頭を行く
フラールがライトを成就した。前方が明るくなる。そして。
「冒険だー! がんばろー!」
オー! と、拳を天井に打ち出した彼は、翅をパタタタと羽ばたかせながら先へ進む。仲間達がそれに続いた。
「遥か古代に作られた下水とは思えないほど、丁寧な造りの通路だな」
言ったのは
リディオ・アリエクト。罠の警戒の為に天井や壁を確認しながら進んでいく。
ここで唐突に
テア・ベルゴミが、うへぇと声を出した。仲間達が声のしたほうを振り返ると、テアが眉根を寄せて指先をすり合わせている。
「指先をスリスリしているから、何かの合図かと思ったら、汚れを落としているだけですかね?」
と、
キョン・シー。続いて
シャーロット・ショルメ。
「下手に触ると何があるか判らないわよ? ‥‥路地裏の情報屋に話を聞いてみたら、変な罠があるらしいけどほとんど情報が無いって話だったから」
「そうなの? ‥‥気を付けるわね。‥‥ところで、最後尾は怖いから、先頭の次くらいを歩いていいかしら?」
話に怖気づいたのか、テアは急ぎフラールの後ろへ走り寄り‥‥カチッ。
「ん? 今カチッて聞こえた?」
次の瞬間──地面から壁がいくつかせり出してきた。
◆バラバラのうちの二人
「まさか、しょっぱなからバラバラになるとは思いませんでしたよ」
キョンがライトの魔法を成就した。
光に照らし出されたのは、
エア・カイザー。
「ここに残ってるのは2人だけ? ‥‥嘘でしょ」
エアが苦い顔をする。
地面からせり出してきた壁は、天井にがっちりと組み合わさっている。
耳を澄ませるが、仲間達の声は聞こえない。
『元気―?』
フラールが、念話で声をかけてきた。
『無事だよ、皆は?』
『みんな大丈夫ー!』
そして、かくかくしかじか必要事項を連絡しあい、念話終了。
「とりあえず、みんな無事みたいだし、進みながら合流って話だから、行こうか」
「はい! ‥‥で‥‥その杖で何をするつもりですか?」
「え? これ? ‥‥ロングロッドは冒険者の必需品だよ? ‥‥さ、進むよ」
エアは言うとキョンの前に立ち、手を伸ばしてロッドで地面をコンコンと叩いた。
「大丈夫だね」
一歩進む。そして再び地面をコンコン‥‥プチッ。ガッコン!
「ちょっ‥‥と、気を付けてくださいよ、足元に落とし穴が開いちゃったじゃないですか」
「びっくりした! でもほら、2人とも浮いているし‥‥魔法が使える場所で良かったね」
そう、2人の対策は万全だった。事前に魔法を成就して浮いていたわけで‥‥そうしている間に、穴はシュルシュルと塞がった。
「これは危なそうですね‥‥罠のある地面に印をつけておきますね、それから地図も書いておきますよ」
言ってキョンは魔法のインクセットを取り出し、罠があった地面に印をつけてから、羊皮紙に地図を記した。
「じゃ、進みましょうか」
そうして、しばし道なりを探索。
「‥‥? あれ? ここ、床が空く罠がある場所じゃ?」
「そうだね?」
床に、キョンがつけた丸印があった。
「一本道だったよね?」
「ですね‥‥」
しばし頭をひねる‥‥。
「あ! もしかして‥‥」
キョンが罠を踏んづけた。ガッコン。開いた穴を覗き込むと、底の方に鋭い槍先のようなものが何本も突き出していた。
「落ちなくってよかったね」
「ですね、あ、もし途中で塞がったらすぐあけてください」
キョンが言って、突然穴の中へ。そして穴が塞がる前に戻ってきた。
「横穴がありましたよ!」
「進路はそこかな」
再び穴が塞がった。三度穴をあける罠を踏む‥‥プチッ。
そして2人は、穴に飛び込むと横穴へ入っていった。
◆わんことにゃんこグループ
キャサリン・モロアッチは、せりあがってきた壁をげんこつで叩きつつ。
「みんなー? 大丈夫ー?」
声をあげるも、どこからも返事がない。
ここでフラールから念話が届いた。
『元気―?』
『なんくるないさぁー、シャーロットとキャサリンとまじゅんいるさー』
フラールの念話に返事をしたのは、
マヤー・スティックスで。
『まじゅんちゃんってだれー?』
マヤ―は、普段は筆談で会話をしているので、念話だとこうなるのはわかってました。
念話相手交代。
『シャーロットよ、こちらは三人いるわ』
『りょうかーい!』
そして今の状況をかくかくしかじか‥‥何かあったら連絡すると決めて。
「じゃ、さっそく進もっか!」
キャサリンは意気揚々と足を踏み出した。
「っと、足元注意だね」
そうっとつま先で床に触れて‥‥。
「うん、大丈夫! レッツゴー!」
湿気のある通路の天井から、水滴がポチャン‥‥と落ちる。そんなこと気にする様子もなく、キャサリンはいつもどおりだ。
「いやー、こんな場所がローレックの街の地下にあったとは、まさに灯台もと暗し‥‥おっと、ここで二股にわかれる道発見! さ、どっちにいこうか?」
「そうねぇ‥‥」
キャサリンの忍犬柴『シバ君』とシャーロットのペット、ドーベルマンの『モランちゃん』が鼻先を通路に向けてクンクン。
「バウッ」
「ワフッ」
二匹揃って右側の通路に吠えた。
「あっ、なんかボクもそんな気がしたんだよね、ほら土地勘っていうかさ、野生の勘?」
『野生って‥‥』
マヤ―の魔法の羽根ペンが、通路の壁にそう書いた。
「あっ、ボク、羽根ペンで分岐したところに印を付けようかと思ってたんだけど、キミが壁に文字を書いてくれると、それが印代わりになるね!」
キャサリンが、いいね! と言いつつ、サムズアップ。
マヤーは照れ臭そうに頭に手を置いて、ニコリとした。
右の道を進む一同。しばらく行くと、わんこ達が吠えた。足を止める三人。
「罠でもあるのかな? 匂いが違うとか?」
キャサリンが首を傾ける。
シャーロットが魔法のランタンを通路の奥へ突き出す‥‥おかしいところは見受けられない気がする。
「‥‥念の為、先に通ってみるわね」
『大丈夫だべか?』
「わからないけど、ほらキミもエリベイションかけてくれてるし、さらに‥‥」
シャーロットがクリスタルアーマーを成就。体表に水晶のような膜が現れた。
「これでなんとかなるでしょう、ちょっと待っててね」
言って、シャーロットが進む。
ゆっくりと進んでいく。しばらく進むが何もなかった。
「ここまでは大丈夫みたい」
シャーロットがさらに進む。
「緊張するわね」
ふうと一息。壁に手を付いた‥‥カチッ。
「あっ!」
言った時には、両壁からガシャン! 剣先が飛び出してきて、シャーロットはそれに突き飛ばされた。
「だっ! 大丈夫?」
キャサリンとマヤーが駆け寄った。シャーロットはそれに、『なんとかね‥‥』と返事を返す。
『危うく串刺しだったべ』
マヤーの羽根ペンは、先ほどシャーロットがポチッとしてしまった仕掛けの横にそう文字を書いた。さらに。
『罠、注意だべ』
と、横に書き足した。これで他の仲間が万が一同じ道を通っても、罠にかかることはないだろう。
◆盗賊と知的エルフ
リディオの魔法のランタンが下水の天井を照らす。
「フラールが居たから必要ないかと思ったが、思わぬところでランタンが役に立ったな」
「ですね、私は光源を持ち合わせておりませんでしたので助かりました」
セヴラン・ランベールは、リディオのランタンの光に照らし出された天井を見上げた。
(いまのところ、気になるところはありませんね)
ふと横を見ると、リディオもセヴランと同じように天井を見上げており。
「もしや、同じことを考えていますか?」
「あぁ、セヴランもか‥‥罠にはかかりたくないからな」
「なるほど、そちらの観点からの視認でしたか‥‥私は何かヒントになるようなものがないかと‥‥古代に作られた、いわば遺跡ですからね、古代文字などがどこかに記されていたりしないかと思って眺めていました」
ここで、フラールからテレパシーが届き、2人は他の仲間同様、下水を探索することに。
「私は物理的な仕掛けの方に対しては、役に立たないかもしれませんが‥‥」
「あぁ、それなら俺にまかせろ‥‥ほら早速おかしな地面があったぞ」
「‥‥私には普通の地面にしか見えないのですが‥‥それよりも、そこの壁におかしなへこみがあるほうが気になりますね」
「俺は狩りが得意でな‥‥常套手段だ」
「と言うと?」
「壁のへこみに何かあると見せかけて、本当の仕掛けはこっちってやつだ」
「なるほど‥‥勉強になります‥‥しかし、このような仕掛けを施して、ここの持ち主は何を守ろうとしているのでしょう」
「さぁな、ま、罠は俺にまかせて、セヴランはそっちを考えみてくれ」
ニヤリとしたリディオに、セヴランは口の端を軽く上げて見せたのだった。
◆罠にはめっぽう強い
「れんらくしゅうりょうー!」
フラールは離れ離れになった仲間達とテレパシーで連絡をとりあうと、となりで不安そうな顔をしている(というよりもう青ざめてガクブル状態の)テアを振り返り。
「さ! しゅっぱーつ!」
げんこつを振りあげてから、クルリと向きを変えると、パタタと進む。
「ねぇ、罠とかあるのよ? 何があるかわからないのよ? フラールさんのおかげで辺りはとても明るいけれど、そんなに早く進んだら‥‥」
及び腰で一歩一歩進むテア。
「だいじょうぶー、なんか大丈夫な気がするー!」
「そうなの? いや、何の根拠もないのが恐ろしいのだけど‥‥ってあら、道が二股になってるわね」
「なんかこっちの方がいい気がするー」
フラールがビュビューンと左の道へ進む。
「ね、待って、置いてかれたら何も見えなくなるわ」
テアが半泣きだ。役立たずなのか? と思いきや、実はこっそり地図など記していたり‥‥ペンを持つ手が震えていた為、線はガタガタだが!
そんなこんなでいくつかの分岐を経てフラールとテアは、(一度も罠にかかることなく)頑丈そうな扉の前に辿り着いたのだった。
◆最後の試練
扉は押しても引いても開かなかった。なので2人は仲間を待つことに。
続々と仲間達が到着‥‥ドロドロな人、ズタズタな人、水浸しの人。
「あー‥‥みんなだいぶ大変だったみたいね」
「‥‥これでもだいぶ凌いだほうなんだがな」
リディオが形が歪んでしまった魔法のランタンの明かりを消した。
「こっちなんて、壁が動いてて‥‥道が判らなくなるし」
と、シャーロット。
「マヤーは飛び出した槍に危うく刺されるところを寸で飛び避けたりして‥‥いやぁ、あれはかっこよかったよ‥‥じゃなくって、まぁなんとか壁が動く仕掛けに気が付いたからよかったけどね」
キャサリンが言って、照れた表情を見せていたマヤーも、うんうんと頷いた。
「エアさんとあたしは‥‥」
エアとキョンは、溺れかけたらしい。
とりあえず、色々あったが全員無事にここまで来れた。
ここで、セヴランがコホンと咳払い。全員の注意を集めると。
「全員揃ったようですし、扉には古代語で『魔法の言葉を皆で唱えよ』と書いてありますので‥‥『ヒラケゴマ』と唱えましょうか」
「あ、それで開かなかったのね‥‥で、その言葉‥‥意味はわからないけど、こっぱずかしい気がするのだけど、なぜかしら?」
とかいいながら、全員で『ヒラケゴマ』と唱える。
石で出来た大きな扉が、ゴゴゴ‥‥と音を立てて開いた。中に入ると、再び扉がゴゴゴ‥‥と閉まった。
‥‥シュウウゥゥ‥‥。
「‥‥なんだか嫌な音がするわね‥‥」
部屋の中に広がる白い靄。
「‥‥毒霧!?」
「え、待って待って! 『ヒラケゴマ』! え、扉開かないし」
「落ち着いて‥‥わたしは大丈夫だけど、とりあえず上に溜まっていくようだから、みんなは下に伏せるのが正解ね」
ヴァンパネーロのシャーロット以外が地面に伏せた。
リディオが体を捩じって天井を見た。
天井の穴からシュウシュウと音を立てて毒霧が吐き出されているのを見つけた!
「ちょっと借りるぞ」
リディオはエアのロングロッドを奪うと、息を止めて立ち上がり、穴にロングロッドを突っ込んだ!
‥‥毒霧の噴出が止まった。しばらく待つと、毒霧も消えていった。
「ロングロッドは冒険者の必需品だな」
リディオの言葉に、エアが『それ!』とジェスチャーで返す。さておき。
正面に祭壇。祭壇の中央には古めかしい石板が飾られていた。
石板には文字が刻まれている。古いはずなのに、刻まれた文字だけは、風化する様子もなくクッキリと見えた。
「うーん。古代語で書かれてますが、あたしにはわかりかねますね」
と、キョン。
「そうですね‥‥。ざっくりとですが‥‥『選ばれし者よ、この石板を高く掲げよ』といったようなことが書かれてあるようです」
石板を掲げてみる‥‥石板は眩しく輝くと、天井へ向かって光を放った。光を放つと石板は普通の状態に戻った。
それを見たハウンド達は『下水謎すぎ』とか突っ込みつつ。
それと同時刻、ローレックの街の古代遺跡の噴水では、噴水の水が一瞬キラキラと輝いているのが目撃された。
その後調べてみると、噴水から月の精霊力のようなものが発生しているのが確認され、それはこれからきっと何かの役に立つかもしれないと、期待が持てるものであったらしい。
それから、下水についてだが、皆がバラバラになりつつ地図を記していったのが功を奏して、ほとんどの道を把握することができたのだった。
9
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参加者
 | | a.迷宮には罠がお約束だし気を付けないとな。
| | リディオ・アリエクト(da0310) ♂ 26歳 人間 カムイ 風 | | |
 | | b.ではでは、迷わない様に進まないとね
| | キャサリン・モロアッチ(da0421) ♀ 22歳 ライトエルフ マイスター 風 | | |
 | | a.わーい! 頑張って(超幸運・羽妖精の加護)進むよー!
| | |
 | | b.古代に作られた、いわば遺跡……大変興味深いですね。
| | セヴラン・ランベール(da1424) ♂ 26歳 ライトエルフ マイスター 風 | | |
 | | a.では、古典的に1.5フィートの棒で先を突きながら進もうw
| | エア・カイザー(da1849) ♀ 27歳 人間 ヴォルセルク 風 | | |
 | | b.見ると観察するのとでは大違いと言うけれど、私はそのどちらなのかしらね
| | シャーロット・ショルメ(da2142) ♀ ?歳 ヴァンパネーロ パドマ 地 | | |
 | | a.むる、ちばてぃ進むさぁ。(♪エリベイション♪)
| | マヤー・スティックス(da2214) ♂ 17歳 ケットシー パドマ 火 | | |
 | 頑張って探索するわよ。 | | テア・ベルゴミ(dz0038) ♀ 30歳 人間 マイスター 陽 | | |
下水探索。
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今まで手付かずだった下水の探索に行きます。何かあったらめっけもんだ。
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