オープニング
◆
空に横たわる灰色の雲から雪が降り落ちた。
聖なる雪、と思わず感激を唇に乗せてしまいそうなほどに。
雪が舞い落ちる街の光景は美しかった。
吐く吐息が白く浮かび上がり、身震いしてしまう冷気が漂うアルピニオ地方のとある街。
街の活気を言祝ぐように様々なイベントの装いに彩られていた。
「賑やかなのー」
温かい格好をしたハウンドの少女エルーカ・エルルカは声を華やがせた。
想いや感情は不思議なもので、肌や距離で伝わる事がある。
愛を育み、親睦を深める人達。
冬枯れの街はイベントによる盛り上がりを見せている。
しかし――
「彼女に告白する勇気が持てない……」
「うーん、恋をしてみたいと思うけれど……相手がいないのよね」
街の住民の中には恋愛に対してニの足を踏んでいる人達やなかなか出会いがない人達もいた。
「何かきっかけになるものがあればいいかもしれないな」
「みんな、噴水広場が盛り上がっているのなのー」
ハウンド達が思案に暮れる中、エルーカの目線が多くの人達が集う噴水広場へと注がれる。
噴水広場に漂う賑わいの気配を、ハウンド達は確かに感じ取っていた。
「こちら、噴水広場前です。では、こちらの方にお話をお伺いします」
ハウンド達は噴水広場を行き交う人々に声を掛け回っている男性を目撃する。
どうやらその男性は街の人達にインタビューを行っているようだった。
「今日はこちらで男子会のツアーと女子会のツアーが行われるのですか?」
「はい。よろしければご参加をお待ちしております」
ツアーの主催者と思われる女性から甘い笑みが零れる。
「男子会と女子会のツアーがあるんだな」
「インタビュー、楽しそうね」
ツアーの案内やインタビューのやり取りが楽しそうで、ハウンド達は心なしか温かい気持ちになった。
もしかしたらこのイベントを通して、新たな絆が生まれるかもしれない――。
◆選択肢の説明
・『男子会のツアー』
男子会のツアーは主に男性だけで集い、街やその周辺を巡るものになります。
・『女子会のツアー』
女子会のツアーは主に女性だけで集い、街やその周辺を巡るものになります。
◆ツアーについて
・街のお店を巡って名物料理やスイーツなどを満喫したり、恋バナや理想のデートプランなどを語ったりする事ができます。
・『〇〇会議』を開いたりする事ができます。
〇〇は名前、もしくは今後の目標や応援している内容などが入ります。
(例、エルーカの恋を応援する会議、魔物との不意討ちを想定した街の中での戦闘模擬戦会議、結婚式を想定した会議など)
・街の近くの湖でスケートをしたりする事ができます。
・『インタビュー』
街行く人々にインタビューをして回っている男性の質問に応えます。
男性はハウンド達の冒険譚や武勇伝、ハウンド達の馴れ初めや恋愛論、もしくは理想の相手などを聞いてきます。
男性のインタビューのお手伝いをして頂ける方もこちらの選択肢になります。
選択肢
a.男子会のツアー | b.女子会のツアー |
c.インタビュー | z.その他・未選択 |
マスターより
こんにちは、留菜マナです。
今回はとある街のイベントに参加する話になっております。
お話は噴水広場で街の人達にインタビューしている男性を目撃したところから始まります。
スケートは街の近くにある凍った湖で滑る事ができます。
湖上一面が氷で覆われており、ゆったりと滑る事ができます。
スケートシューズなどの道具類は事前に持参したり、街の領主の使者達から借り受ける事ができます。
今回、エルーカはお声を掛けて頂いたもの、もしくは女子会のツアーに参加する予定です。
どうぞよろしくお願い致します。
※【SubEpisode16】恋せよ戦士愛せよ勇者 関連シナリオ
登場キャラ
◆
雪が舞う冬空の中、街のお店で開催されたのはハウンド達による華やかな女子会。
濃厚なお菓子とスイーツの香りが周囲に立ち込める。
テーブルの上には見て楽しい食べて美味しい、きらきら可愛いお菓子とスイーツばかり。
色とりどりのお菓子とスイーツが並べられたテーブルの上はとても賑やかだった。
「お菓子を全制覇するための攻略会議をするのなのー」
エルーカ・エルルカが高らかに宣言したのは最初の議題。
テーブルの上に置かれたお菓子はとても彼女一人では食べきれない。
お店で売られていたお菓子。
どれも美味しそうだったので、ついつい目移りして多く購入してしまったのだ。
その議題に、
キョン・シーは自身の意見を言葉に乗せた。
「やはりお菓子は一口から二口に留めて、色んな種類をつまむのがいいですねー。あと濃い目のお茶で口直しをするのが大切なんです」
「色んな種類のお菓子をつまむのなのー」
目を輝かせたエルーカは早速、お菓子をつまんでいく。
一口齧れば、とろけるような食感に、中に詰まった幸せな甘さがふわりと口に広がる。
「エルーカちゃん。このお菓子、美味しいですよ」
キョンもお茶で口直しをしつつ、お菓子を楽しむ。
(お菓子の全制覇は一口サイズを食べていくに限ります)
キョンは思う存分、エルーカと共にお菓子を堪能する。
とはいえ、ずらりとテーブルに並べられたお菓子を全制覇するまでの道のりは長い。
そして最初は一口から二口に留めていたものの、次第にその美味しさに三口、四口と止まらなくなってしまう。
そんな和気藹々な二人の様子を見て、
ナイン・ルーラは声を掛けた。
「エルーカさん、キョンさん。お菓子を食べ過ぎないようにしましょう」
「はいなのー」
「つい食べ過ぎちゃって途中で満腹になっちゃうんですよね」
お菓子はほどほどにしながらも、やがてエルーカとキョンは甘い恋の話を紡いでいく。
店内は大切な人と出逢い、愛を交わし合う人達で満ち溢れている。
店内に漂う愛慕の気配を二人は確かに感じ取っていた。
「いつか王子様を見つけたいのなのー」
「そーです。彼氏募集中です」
王子様への想像を巡らせたエルーカとキョンは笑顔を華やかせる。
まるでそれは蕾が花開くように、確固たる意志を表しているかのようだった。
心から楽しそうに語り合う二人の姿を見て、ナインは言を継げる。
「コイバナでしたら、既婚者の私が相談に乗りましょう」
「ありがとーございます」
「ありがとうございますなのー」
ナインの発案に、キョンとエルーカはぱあっと目を輝かせた。
「そうですね。私の体験談ですと、夫と結婚するまでの地道な努力の話になりますが」
ナインは初めて夫と出会った頃の出来事に想いを馳せた。
「田舎から出て来た彼の世話を焼き、同じハウンドとして共に冒険を続けて少しずつ親愛を深めていきましたが、聖職のみ故情熱に任せず慎み深く絆を育んでいき……機を見て一気に押し倒しました☆」
そのきっかけになったのはムーンドラゴン。
忘れもしない――あの時の情景が浮かび上がる。
『お婿にもらうって言ったのです。責任は取ります』
まるでそれは夫の傍にいるだけで、世界の優しさが包み込んでいくような感覚。
噛みしめるように紡いだ言葉は甘く熱い吐息と共に奏でられた。
「結婚した今も仲良しですよ☆」
「素敵ですねー」
「素敵なのー」
ナインが語った話は、キョンとエルーカの心を掴む。
二人はいつか王子様に出会える日を夢見て、想像を膨らませた。
「婚活が捗らないのよねー」
そこで、
アステ・カイザーがため息を零す。
「愛の日で盛り上がってるけど、私は未だ相手が見つからなくてねー」
アステは胸の内を打ち明ける。
「この間は婚活パーティに参加したら、吸血鬼の仕組んだ罠だったし……」
アステはそう呟いてスイーツを口に運ぶ。
スイーツのほど良い甘さが感じられ、心も身体も解けていくような味わいだった。
ゆっくりと味わうまろやかなスイーツは、彼女の心の中に彩を添える。
それは多幸感を感じさせるには十分なものだった。
◆
アステ達が美味しいスイーツとお菓子、そして楽しい時間を満喫していた頃。
インタビューが行われていた噴水広場の前には既に多くの人だかりができていた。
「はい、突撃語り部のシルヴァーナです」
その光景を目撃した
シルヴァーナは朗々とした声で語る。
「今回は謎のインタビューさんに接触してお手伝いを行おうと思っています。語り部の本領発揮です!」
良い物語を書く為には情報集めが肝心。
シルヴァーナは瞳に決意を漲らせると、インタビューを行っている男性のもとへと飛んでいく。
「インタビューと聞いて! 手伝いに来たよ!」
「なっ……?」
花束を抱えたシルヴァーナの申し出に、男性は驚いた表情を浮かべたのだった。
シルヴァーナはインタビューをしていた男性のお手伝いで噴水広場付近を飛び回っていく。
そこで仲睦まじいカップルを発見した。
「こちら、突撃インタビュー中のシルヴァーナでーす! 語り部として二人の馴れ初めについて聞いていくよ!」
シルヴァーナは恋人達のもとに訪れると、持っている花束から花を一本抜き取り女性に手渡した。
「お花……?」
思わず受け取ってしまった女性に、シルヴァーナは核心に迫る質問をする。
「さて、どうしてお付き合いに至ったのでしょうか?」
「それは初恋の彼が父のお店に来店した事がきっかけでした」
女性は頬を染めて、隣の男性と恋人になった経緯を熱く語った。
花束の効果により本心をもらしている。
その場の注目を集める事に成功したシルヴァーナ。
さらに噴水広場を飛び回り、街の人達の馴れ初めや恋愛論、もしくは理想の相手などを聞いていった。
「では、こちらの方にお話をお伺いします」
一方、男性は噴水広場を歩いていた
ヒルデガルド・ベンディクスにインタビューを行っていた。
「なんや? おっちゃん、何か用なん?」
「こちらでインタビューを行っています」
ヒルデガルドの疑問に、男性はこの付近でインタビューを行っている事を伝える。
そこで男性はヒルデガルドがハウンドだと知り、声を弾ませた。
「ハウンドの方ですか。是非、武勇伝をお伺いしたいのですが」
「武勇伝? ウチは荒事得意やないし……あんまないんや」
男性の問いかけに、ヒルデガルドは困ったように瞳を揺らす。
「期待に添えんですまんな」
ヒルデガルドの言に、男性は新たな質問を口にした。
「では、理想の相手を教えて頂けませんか?」
「理想の相手?」
ヒルデガルドは空を見上げる。
寒空――しかし、春特有の気配に覆われているようで不思議な感覚を覚えた。
「……望み出したら、キリがないなあ。金もあるに越したことはないし、仕事に精出して、子どもの相手もしてくれた方がええ」
ヒルデガルドは理想の相手に対して考えを巡らせていく。
「ちゅうても、惚れて何も考えられんようになったら……そんなのも、吹っ飛んでまうやろな」
心の中にある特に大切なものをすくい上げるようにヒルデガルドは言を紡いだ。
「それに、死ぬまで一緒に居るかもしれん相手やし」
特別で唯一な気持ち。
その気持ちはどんなものなのか、まだ答えは出ない。
だけど――
「やっぱ、一緒に居て、楽しくて飽きん相手が一番かもな」
ヒルデガルドは表情を綻ばせた。
そう想うだけで微笑みが零れる。
まるで花が咲くように。
小さな蕾が膨らみ、ゆっくりと甘い香りとともに開く。
花は可憐だけど、それだけではない。
温かい陽の光のように一緒に包み込めたらいい。
心地が良くて、一緒に居て、楽しくて飽きない相手で。
でも、もう少しだけ前に近づくかもしれない二人の距離。
「な? おっちゃんもそう思わん?」
ヒルデガルドは噛みしめるように笑う。
花びらが開く瞬間を見たように男性は目を見張り――息を小さく吐いた。
「毎日、楽しくなりそうですね」
「そうやねー。毎日、楽しくなるなー」
陽の光はヒルデガルドを昔も今も照らしている。
これからも、この先も、ずっと、きっと変わらない。
どこまでも続く空と雲は、どれだけ見ていても見飽きる事はなかった。
「インタビューを行っているのか」
その頃、
エクス・カイザーは噴水広場でヒルデガルドに声を掛けている男性を見かける。
「インタビューに応えてみるか。人々にハウンドを知って貰う良い機会だ」
そう判断したエクスは男性のもとへと歩いていった。
男性に自身がハウンドである事を伝えた事で、エクスは周囲の街の人達から注目される。
「では、こちらのハウンドの方にお話をお伺いします。武勇伝についてお願いします」
「そうだな。地の利を制した暴虐なドラゴン。そして冷酷なデュルガー。どれもが強敵だった」
男性の質問に、エクスは今まで相対したダークドラゴンやデュルガーとの戦いを中心に話していく。
臨場感溢れた戦いの数々。
その話から想起された情景は、街の人達を夢中にさせるには十分すぎるほどのものだった。
「拳から放つエクスプロージョンは数多の強敵を屠ってきたが、独りでは決して勝利は無かった。ハウンドが力を合わせたからこそ、必殺の一撃を打ち込む勝機に繋がった」
エクスがそう告げて話を結ぶと、聞き入っていた街の人達が歓喜の声を上げる。
「僕、勇者に――ハウンドになりたい!」
その中には目を輝かせている幼い子供の姿もあった。
(勇者か)
エクスの胸中に、過去に抱いた感情と似た想いがこみ上げてくる。
蘇るのは故郷を発ったあの日の光景。
目の前の子供のように、エクスも勇者に憧れてハウンドになった。
街の人達が憧れるハウンドという存在。
エクスはそんな彼らの想いに応えたいと切に願った。
「では、次はハウンドの馴れ初めについてお願いします」
「ハウンドの馴れ初めは……まあ、大抵のハウンドは冒険の中で絆を育んでいるのかな」
男性が発した思わぬ質問に、エクスは気恥ずかしそうに言葉を濁す。
その時、街の通りの方から聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「噴水広場に王子様のような勇者様が来ているみたいなのー」
「勇者様に会ってみたいですねー」
噂を聞きつけたエルーカとキョンは意気揚々と噴水広場へと目を向けた。
「キョンちゃん、エルーカちゃん、恋人を探すならハウンド男子は避けた方が無難よ。優良物件は既に相手がいるし、残ってるのは顔が良かったり腕は立っててもイロモノばかりだから」
そこでアステは噴水広場の一角に人だかりができている事に気づく。
そして、その中央にいたのは――
「っていうか、兄さんが何でここに?」
「こ、これは任務だ。人々にハウンドを知って貰う良い機会だと思って……」
エクスが思わず答えに窮していると、キョンは疑問符を浮かべる。
「……あれ? 師匠?」
この後、エクスは妹とキョンの誤解を解くのに苦労したという。
噴水広場を飛び回っていたシルヴァーナの視線が、やがて男性がいる場所へと注がれる。
男性は仲睦まじい夫婦にインタビューを終えたところだった。
「何でおじさんはインタビューやっているのか、インタビューしていくよ」
シルヴァーナが男性に核心に迫る疑問を投げかける。
「……それはイベントを盛り上げたかったからかな」
男性は躊躇いながらも自身がインタビューを行っている経緯を話し始めた。
「実は街で行われている様々なイベントは息子が主催を務めていてね。何か他にイベントを盛り上げる方法がないか、相談を持ちかけられた時に思いついたのがインタビューだったんだよ」
男性が語った話に、シルヴァーナはうんうんと頷く。
「それにこの世界には私の知らない不思議が溢れている。それを多くの人達から聞いてみたかったんだ」
男性の瞳は期待に満ち溢れていた。
街の住民の一人である彼にしてみれば、ハウンドと話したというだけで偉大な英雄と並び立ったように感じるのかもしれない。
「私はこの噴水広場で妻と出会い、愛を誓い合ったんだ」
「コモンとコモンが出会って、絆を深めていけば、その絆は愛となる」
語り部として多くの物語を書いてきたシルヴァーナはぽつりと紡ぐ。
「愛って偉大なんだと思うよ」
その言に男性は口許を綻ばせた。
◆
「ここが湖ね」
アステの視界に広がる湖は人々の笑顔を歓ぶみたいに輝いていた。
「あ、スケートは自前のシューズがあります」
アステとエルーカが街の領主の使者達からスケートシューズを借り受ける中、キョンはナインと共に持参したスケートシューズに履き替える。
「皆でスケートを楽しみましょう」
スケートを滑る準備を整えたナインは湖を見つめる。
感じるのは極めて明確な冷たい風。
春の心地が近づいてきたとはいえ、冬の刺すような空気が感じられた。
「こう見えても師匠に叩き込まれたんで、スケートはお手の物ですよ!」
キョンは得意気にそう言って颯爽と滑り出そうとした。
しかし――
「あれ……?」
湖の上へと足を踏み入れた瞬間、キョンは転んだ。
「キョンさん!」
咄嗟に駆け寄ろうとしたエルーカもまた足を踏み外して派手に転ぶ。
それでもキョンとエルーカは瞳に強い意思を宿し、湖の上を軽やかに滑り始める。
「思う存分楽しむわよ」
アステは憂さを晴らすように、皆と一緒にスケートを堪能していった。
ハウンド達はスケートを通して笑みを刻む。
共に過ごす事で次々と今日の想い出が増えていく。
氷で覆われた湖は訪れた人達の心を踊らせていた。
5
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参加者
| | b.婚活が捗らないのよねー(ため息)
| | アステ・カイザー(da0211) ♀ 27歳 人間 カムイ 水 | | |
| | c.インタビューに応えてみるか。人々にハウンドを知って貰う良い機会だ。
| | エクス・カイザー(da1679) ♂ 30歳 人間 ヴォルセルク 火 | | |
| | b.コイバナでしたら、既婚者の私が相談に乗りましょう。
| | ナイン・ルーラ(da1856) ♀ 29歳 人間 ヴォルセルク 水 | | |
| | b.お菓子の全制覇は一口サイズを食べていくに限ります。食べ過ぎちゃうけど。
| | |
| | c.なんや? おっちゃん、何か用なん?
| | ヒルデガルド・ベンディクス(da2191) ♀ 19歳 メロウ パドマ 月 | | |
| お菓子を全制覇するための攻略会議を開いてみたいのなのー。 | | エルーカ・エルルカ(dz0054) ♀ 18歳 人間 カムイ 月 | | |
今日から明日へ
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ハウンド達と行く街周辺巡りツアー。
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