オープニング
◆職人
――魔法の箒。
これがどういう物であるかハウンドには説明不要だろう。
乗りこなすにはルミナの才能と専用の技術が必要だが、跨った者を空へと誘う魅惑のアイテムである。
ハウンドの仕事にとっても移動に戦闘にと利用の幅が広く、愛用者は多い。
そんな魔法の箒に関する、腕の確かな職人がウーディア地方のとある都市にいるという情報がハウンドギルドにもたらされた。
折りしもXmasプレゼント選定に頭を悩ませていたところである。渡りに船ということで、早速ギルドは作成依頼の為にハウンドを派遣したのだった。
◆名物
「……うーん。お話はとってもありがたいんだけど、実はいまそれどころじゃないのよ~」
だが、件の職人の工房に赴くと返ってきたのはこんな言葉だった。
職人の名前は『レレ・レー』。人間の女性で、年齢に関しては本人自ら『不詳』だと公言して憚らない。17で数えるのを止めたそうだ。
それはさておき、なぜ依頼を受けられないのかの理由を詳しく尋ねてみると――。
「……実は『空中パレード』がもうすぐなのに、乗り手の子たちが怪我をしちゃったの」
聞き馴染みのない言葉にハウンドたちが顔を見合わせる。
よく聞けば、この街では年の瀬に開催されるパレードが名物となっているらしい。それも、文字通りに空中が舞台の特殊なパレードだ。
そしてレレこそがその主催者だった。本業の傍らこの日の為の箒をせっせと作り、乗り手を集めて年に一度のパレードを開催するのが彼女の、いや、街の住民の楽しみになっていた。
「練習中にちょっとした事故が、ね……幸い、みんな命に別状はなかったのだけど~」
レレは眉をハの字にして落ち込む。ほんの不注意からの事故だが乗り手の殆どはしばらく安静、加えてパレード用の箒も破損してしまった。
知っての通りルミナの才能をもつ者は数少ない。そこからさらに魔法の箒に乗れる者を集めるとなると、その苦労は想像に難くないだろう。眉も斜めになるというものだ。
「というわけで、いまはパレードが中止になるかどうかの瀬戸際なの。とても他の仕事を受ける気分ではなくて……ごめんなさいね」
そこでハウンドたちは再び顔を見合わせる。
ルミナ才能があり、かつ箒を乗りこなせる人材に心当たりがあったからだ。
それはもちろん――。
「……えええ~! あなたたちがパレードに出てくれるの~!?」
思いもしない申し出に、レレはただでさえ細い目をさらに細めたのだった。
◆説明
「……コホン。じゃあ、パレードのことを簡単に説明します」
ひとしきり小躍りするなどして喜んだあと、レレは真面目な顔に戻って説明を始めた。
「パレードは日暮れ直前の、一番人通りが多い時間帯に行われます。こういうコースで街じゅうの通りをぐる~~~って回ってもらっちゃいます」
街の地図を指でなぞりながらルートを説明する。パレードである以上はゆっくり飛ぶことになるから小一時間か、それ以上はかかるだろう。
「なので後半はすっかり日が暮れます。だから灯りとかを持っていないと、『肝心の見物人さんから視えなく』なっちゃうわ。そうでなくてもこれはパレードだから、明るいうちでも『できるだけ目立つ』ような工夫をお願いします」
パレードのきっかけは街の商店の宣伝だったそうだ。いまもそれは変わりなく、乗り手はスポンサーの屋号や紋章が描かれた布を箒に吊り下げる。
興味を惹かなければ――それ以前に視えなければ、宣伝として機能しない。
「ハウンドさんたちにはマイスター魔法を使える人もいるんでしょ? だったら、なにか派手なことが起きるマジックアイテムを作って貰うのもいいかもしれないわね。なんにしても、私の準備してた箒はほとんど壊れちゃったから、用意はあなたたちでお願いね」
水泡に帰した苦労を思い出したのかレレの表情が曇る。が、彼女はすぐにポン! と手を叩いた。
「そうそう、別にパレードは箒でなくとも、飛べるならなんでもいいのよ~。いままでそういう人が見つからなかっただけだから。でも、箒も含めて『どれぐらい続けて飛べるか』は気にしておいてね~」
連続可能な飛行時間はものによって様々だ。もし終始参加できないなら特定のルート間だけに絞るという手もある。
それに休息時間も重要だ。単純に考えて頻繁に飛行と着陸を繰り返すようなパフォーマンスは難しくなるだろう。
「……こんなところかしら? 本番まで時間が無さすぎて、ほとんどあなたたちの即興にお任せしちゃうことになるけど……どうかよろしくお願いします! さあ、街のお偉いさんたちに話を通してこなくっちゃ!」
忙しくなるわよ~、とレレはハウンドを置いて工房を飛び出していった。
こうして、演出の大部分がハウンドのアドリブに任された空のパレードが催されることとなったのである。
選択肢
a.明るいうちを重視 b.日暮れあとを重視
c.ショーアップ重視 z.その他・未選択
マスターより
微睡むようなピンクの午睡丸です。
年の瀬の街を彩る空中パレードへの参加者を大募集します。
魔法の箒でもそれ以外でも、飛べるならば何でもOK! サポートに徹しての参加も歓迎です。
a
まだ明るい前半を重視します。
灯りがなくとも見物人からの視認性が高く、細かい動作が伝わりやすいでしょう。
b
暗くなった後半を重視します。
視認性が一気に下がりますが、これを逆手にとった光の演出が可能です。
ただ、それが本当に『ルミナ才能の無い一般人からでも光って視えるかどうか』は確認をお願いします。
c
アルケミー系魔法でのマジックアイテム作成をはじめ、ショーアップの為のサポート行動はこちらで。
特定のキャラを対象にする際はプレイングにて相互指名が必要です。また、abのキャラでサポートを受けても問題ない場合は『サOK』などの注釈があればMS判断で各自を組み合わせます。
それ以外の場合はNPCがサポートを受けます。
それでは、みなさまのパレードプレイングをお待ちしています。
※【SubEpisode15】聖夜の星は誰が為に 関連シナリオ
シナリオ結果に応じ、新たなアイテム登場に繋がります(イベントページを参照して下さい)。
登場キャラ
◆出発
パレード当日の午前。
ルートである街の通りには
セヴラン・ランベール の姿があった。
「人の目を惹くようなもの……ですか」
「ああ、何か作れないか?」
リディオ・アリエクト が頷いた。パレードに用いるマジックアイテムの作成を頼んでいたのである。
「そうですね……一応、素材はいくつか見繕っておきましたが、さて」
セヴランは腕を組むと、掌にある複数の素材と街並みを交互に眺めた。
「……ふむ、やりようはありますか。わかりました、協力しましょう」
「そうか、助かるよ。パレードを成功させてやる気になってもらえば便利な箒が増えるからな。戦略の幅も広がる」
「ええ。いちハウンドとしても魔法の箒の性能は良いに越した事はありませんしね……ただ、出来上がった物を活かせるかどうかはリディオ君しだいですよ?」
「それはもちろん」
セヴランの問いにリディオは自信ありげに頷いた。
やがて太陽が西に大きく傾いた頃、ハウンドたちはレレに連れられてパレードの出発点に集まっていた。それぞれに屋号や紋章が描かれた布を吊り下げ、あるいは掲げて準備を終えている。
一方で街の通りは数多くの見物人で溢れていた。
「うわ~、すっごい人手なんだニャ!」
そんな人混みに
トラエ・モン が声をあげる。裕福な都市だけあってローレックの街に勝るとも劣らない数だ。
「だ、大丈夫かな……僕、箒には乗れるけどあんまりアクロバティックなことはできないんだニャ……」
「あら、そんな心配はいらないわよ~」
声を聞きつけたレレがトラエの肩に手を置いた。
「だって、普通に生活していたら魔法の箒で飛ぶ人を見ること自体が稀なのよ? ケットシーの乗り手なんて、それだけで人目を惹くわね~」
確かに、ハウンドという組織が極めて特殊なだけで、ルミナの才能をもつ者はそもそもが希少だ。となれば特定種族の割合はさらに少ないのが自然の摂理である。
「ニャるほど、箒で空飛ぶケットシーは希少価値ということニャ! ……なんか、あざとすぎる気もするけど、まあいいニャ」
トラエは覚悟を決めると服のポケット――ではなく、背負っていた箒に手を伸ばした。
「そ~ら~を自在に飛びたいな~……はい、魔法の箒~♪ では行ってきますニャ!」
「ええ、楽しんできてね~」
こうしてレレに送り出され、ハウンドたちが飛び立っていった。
◆先行
わっと、街に歓声があがった。
「おっ、来たぞ!」
「おおー、今年はいろんな種族がいるんだな!」
「何でもハウンドとかいう連中が代役を買って出たらしいぞ」
見物人からは口々にそんな声が聞こえてくる。ハウンドの知名度はあるものの、直接見たことがない者も多いようだ。
「よし、ならば挨拶代わりといこうか」
先頭を飛行していた
エクス・カイザー は声に応えるべく箒の柄を握りしめる。
すると、次の瞬間に彼の箒は急加速していた。そのまま通りの流れにそって上空を急旋回し、くるりと空中回転をして見せる。
「すげー!」
「ハウンドってのはずいぶん箒に乗るのが上手いんだな!」
傍らで安全飛行を心がけるトラエとの対比もあり、エクスのアクロバティックな飛行を口々に褒め称える見物人たち。
「普段の空中戦の経験が活きたか。これでハウンドが空も飛べることがわかってもらえたかな?」
そんな感想を背に、エクスは満足そうにパレードの列へと戻るのだった。
「むむ、箒乗りばっかりに良いところをもっていかれるワケにはいかないな……」
そうした先行の様子を見て
エア・カイザー がアップを始めていた。
「自前で空を飛べる……いや、駆ける? とにかく、それができるのが風属性のヴォルセルクの強みってね!」
後を追うべく地を駆けるエア。
「……え?」
「なんで走ってるんだ?」
魔法を知らない者にはエアが何をしているのかは理解できないだろう。やがて見物人たちの前で大きくジャンプする。
「おおっと!」
一瞬バランスを崩したように見せかけ、次第に安定するような動作を演出する。
そして、最終的には文字通り華麗に空を駆けた。
「うわっ!」
「なんで、どうやってるんだ!?」
「これぞスカイランニング……ってね!」
エアは呆然と見上げる見物人たちに手を振って応えたのだった。
「……なるほど。名物になるだけあって、なかなか素敵な催し物ね」
ティファル・クラウディア はそんな仲間たちのパフォーマンスと、それらを楽しみ笑顔を浮かべる見物人たちの様子にそう独りごちた。
「それにこうしているとみんなの趣向がよく見えるわ。まさに特等席ね」
フライを成就してパレードに参加していると、そういう状況がつぶさに観察できた。
新しい年を迎える直前のどこか浮足立った気持ちを向ける対象として、このイベントはこのうえなく相応しいのだろう。
とはいえ、ティファルも見物する為だけに参加したわけではない。
「せっかくだし、少しは派手にいっておこうかしら?」
ティファルはおもむろに列を離れると持ち前の身軽さを活かして宙返りをしてみせた。
回転を増すごとに速度を上昇させつつ、やがて通りの上空へと至ると、そこで空へと向けてストームを成就する。
冬空へ向けて暴風が巻き起こると同時に、使用した魔法の杖の特性でティファルの周囲に幻影の薔薇の花弁が舞い散った。
「……こんなところかしらね」
送られる拍手に一礼すると、ティファルは列へと戻っていくのだった。
◆双竜
『……い、いま先頭がルートの半分くらいを進んだところです』
雑踏のなか、
パオラ・ビュネル は成就しておいたテレパシーによって進み具合などの状況を逐一仲間に中継していた。
こうすることでパレードを平均的に進行させることが狙いだ。それに万が一のアクシデントがあっても誘導などを柔軟に対応できる。
『そろそろ次の方を出発させても大丈夫です……!』
パオラはパレードの進行に合わせ、人波を縫うようにして通りを進むのだった。
「おーし、ここらで皆に見せつけるんだぜー!」
順番が回ってきた
グドラ が咆哮を響かせる。竜語魔法を成就したのだ。
「うわ!?」
「なんだ!?」
聞き慣れない声に見物人がざわめくなか、巨大化した翼をはためかせてグドラが飛翔した。
「どうだい!? これがキングドラゴンが空を飛ぶ勇姿なんだぜー!!」
布をマントのようには棚引かせながら、威風堂々と空を舞うグドラ。
「わー! ちっちゃいドラゴンさん!」
「かわいいー!」
キティドラゴンが珍しいのだろう、子供たちからはこんな声がかかる。
「かわいい? ちょっと心外なんだぜ……」
自身のイメージと見物人の感想に多少のギャップを感じるところだが、それはさておき。
「グドラ様ー!」
そんなグドラに後続の
アクア・パッツア が追いついてきた。
「お、アクア……って、いつの間に箒に乗れるようになったんだ!?」
「グドラ様と一緒に飛ぶ為に、頑張って練習してきました! これで一緒に陸海空を制覇です!!」
胸を張るアクア。だが気概とは裏腹に箒の扱いはおっかなびっくりだ。
「といっても、まだ上手に乗れないんですけどね……わわっと」
アクアの箒がフラフラと揺れると、合わせて彼女の尾ひれも揺れる。と、それに気付いた数人の見物人が顔を見合わせた。
「……ねえ。あの女の子って……メロウ?」
「まさか。……いや、でも」
この街ではメロウが身近な存在ではないのか、様々な声が聞こえてきた。
無論、メロウがコモン扱いとなったことは識っているのだろうが、そうした実感はなかなか伴わないものだ。
「みんな遅れてるな! いまどきのメロウは空だって飛ぶんだぜー!」
「そうよ! これからの流行は空飛ぶメロウなんだから!」
そのまま二人は並行して飛行し、存分にアピールを続ける。
と、やがて背後でどよめきがあがる。
「ふふ、良いわね。盛りあがってきたわ!」
注目を集めているのはムーンドラゴンの『クイーン』と、その背に乗った
マリカ・ピエリーニ だった。
スモールとはいえ体長6mにもなる正真正銘のドラゴン、その迫力はかなりのものだ。痩身に浮かんだ銀色の鱗に夕陽を映しながらゆったりと飛ぶ。
「しかし空中パレードとは、なかなか派手なことを考えるわねぇ」
ならばさらに派手に、ということでマリカはムーンドラゴンの騎乗を選んだのだった。その甲斐あって十分に注目を集めている。
「クイーンちゃんを連れてきていて良かったわ……あら?」
「おーい! ちょっと止まらせてくれ!」
と、前を飛んでいたグドラが戻ってくるとクイーンに同乗してきた。
「悪い、そろそろ魔法の効果が切れそうでさ……ここでやってもいいかな?」
どうやらグドラの扱える竜の翼はパレードの終わりまで続かないらしい。列を外れるのもあまり見栄えがよくないだろうと快諾するマリカ。
「いいわよ、クイーンちゃんが驚かないようにしておくから。それに……なんだかウケているみたいだしね」
思いがけない大小のドラゴンの組み合わせ。滅多に見られない光景に見物人は大喜びだ。
「へへ……いまはちとかっこ悪いかもだけど、いつかはどこまでも羽ばたいてみせるんだぜ!!」
再び咆哮をあげたグドラがアクアの元へと飛び立っていく。
「じゃあ私たちも負けていられないわね……いくわよクイーンちゃん!」
マリカはクイーンを大きく蛇行させ、空中に銀色の軌跡を描いたのだった。
◆風花
「見物人もあったまってきたことだし……そろそろ派手にいくか!」
リディオがタイミングを見計らって箒の軌道を変える。
それまでのゆったりとした飛行から一転、通りの幅をいっぱいに使った急旋回を繰り返す。
同時に手にした鳥の羽――雄孔雀の上尾筒を振ると、そこから鮮やかな何かが背後に流れ出した。
「わああっ!」
「キレイ……」
見物人から溜息のような声がもれる。
リディオが振っているのはセヴランが錬金したマジックアイテムである。生み出しているのは七色の風とでも呼ぶものだ。
「ちょっとド派手だったか……? ま、目立つ分には問題ないだろ!」
まるで羽根を広げた孔雀のように、七色の尾を引きながら曲芸乗りを続けるリディオ。
「さすがリディオ君ですね。苦心した甲斐がありましたよ」
そんな様子を人混みから離れたところで見守るセヴランだった。
「やるなぁリディ兄……よし、こっちも派手に盛り上げようぜ、
ハナ !」
「うん! いこう、
ソラ !」
二人乗りの箒が虹色の風の後に続くと、ゆるやかに蛇行しつつ何かを空中に撒いた。
「……あら?」
「これ……お花だわ!」
それはスポンサーの一つである花屋に頼んで分けてもらった物だった。
ハナによって錬金生成された染料が振りかけられた白い花弁は、空中で徐々に色づきながら人々の頭上に降り注いでいく。
そこには色の変化だけでなく、触れた者を健康にする効果も込められていた。
「いきますよー!」
前席に座ったハナは、箒の動きに合わせて花を撒いていく。
「ほら、ソラも!」
「ちょっと待ってくれ、ちゃんと宣伝もしないとな……!」
ソレイユは魔法の羽根ペンを取り出し、協力してもらった花屋の屋号を空中に描いてみせた。思いがけない花のシャワーに見物人からは大きな歓声があがる。
「やったな、ハナ!」
手応えを感じて、ソレイユが思わず片手を離して前のハナを抱き寄せた。
「きゃっ!」
「……ごめん! つい、嬉しくなって……」
「ううん……嬉しいよ」
謝るソレイユに頭を振りつつ、ハナは用意していた花冠を差し出した。
「これ……別に作っておいたの。私、ソラには一番元気でいて欲しいから……」
「そっか……ははっ!」
少し照れながら頭を下げるソレイユにハナが花冠を被せると、見物人たちからも拍手が送られる。
「なんだかパレードとは違う意味で目立っちゃったな……」
「ふふ、いいじゃない? 私はもう少しこうやっていたいな」
「そっか……よーし、じゃあもうちょっとばかり目立つとするか! しっかり掴まってろよ!」
「うん!」
二人を乗せた箒が大きく弧を描く。
こうして、ハウンドたちは夕焼けに染まる年の瀬の空を優雅に、あるいは華麗に舞い進んでいくのだった。
◆夜空
パレードは順当に進み、やがて太陽はその姿をすっかり沈めてしまった。
『そ、そろそろ暗くなってきました。各自、より警戒をお願いします……!』
パオラは注意喚起の念話を飛ばす一方、ライトを成就して順路へと誘導を行う。慣れない街ではハウンドといえど迷いかねないからだ。
例年なら箒に吊り下げたランタンなどを頼りにしているということだが、やはり時たまルートを外れてしまう乗り手も少なくないらしい。
「これで、うまくいけばいいんですが……」
この役割の為にあらかじめ街の地図を把握しておいたパオラの誘導は的確で、その甲斐あってか先行のハウンドたちは特にアクシデントもなく進めたのだった。
そんな暗いなかを飛ぶ後続のハウンドたちには、この状況ならではの工夫を凝らしている者もあった。
「ふむ、おあつらえ向きに暗くなってきたのです。では……」
ルートの中間点で待機していた
アンカ・ダエジフ が箒に跨った。彼女の使う箒では使用時間的に終始参加ができないからである。
パレードに合流するべくアンカが飛行すると、箒の軌跡にそって星型の幻影が撒き散らされた。
「あ、ほら!」
「お星さま……!」
子供たちがそんな声をあげる。ふわふわと落下する幻影は、見物人がそれぞれに持つ光源に照らされるとよりいっそう煌めいて視えた。
「ふふふ、夜空にきらめく流れ星でみなさんの目を楽しませるのですよ」
流星をふりまきつつ、夜のパレードを楽しむアンカ。
「じゃあ、ここでさらにあたしの出番ですね!」
そんな様子に、フライを成就して飛行していた
キョン・シー はライトを成就する。
そして杖の先から放たれる光でアンカの箒からこぼれ落ちる幻影を照らしだした。
「キラキラー!」
「きれいだねー!」
「ふふーん、どうですか! これならより派手になったうえに、みんなも安全に飛べて一石二鳥ですよ! ……まあ、本当は師匠に教えてもらって思いついたんですけど」
夜空にセルフテヘペロを浮かべながら、ライトの光を見物人や仲間たちに向けるキョン。
彼女の思惑どおり輝きながら空を飛ぶパフォーマンスは人目を惹いたが、離れた場所にいてパレードの事情を知らない住民の間では『謎の飛行体』として噂になったとか、ならなかったとか。
「では私も、負けていられませんわね」
続いて
ローザ・アリンガム がスカイランニングによって空を駆ける。
そして手に持った魔法のランタンと頭に装着した魔法のヘッドライトを夜空に向けて、まるで光の帯が広がるように演出してみせた。
「いきますわよ!」
二つの光の帯を上空に展開しつつ、しだいに高度を上げていくローザ。
「……この辺でいいですかしらね?」
やがて十分に安全な高さにまで上昇すると、取り出した忍び玉を投擲する。そこに向けて光の帯を収束させていき、同時に消灯させた次の瞬間――。
爆発が生じ、閃光が夜空を彩った。
「夜空に咲いた光の華……いかがでしたでしょうか?」
ローザが列に戻ってうやうやしく一礼すると、見物人からは大きな歓声が沸き起こったのだった。
「みんな、お疲れさま! とっても素敵なパレードになったわよ~」
最後のハウンドが終点に到着すると、満面の笑みを浮かべたレレが出迎えてくれた。
「これでこの街も新年を迎えられるわ。お姉さんがんばっちゃうから、プレゼントを楽しみにしていてね~」
手渡したサンディキャンディを手にそう請け負ってくれるレレ。
彼女が丹精込めて作った箒でハウンドが空を飛ぶ日は、きっとそう遠くないことだろう。
7
参加者
a.さてどうやればより派手になるかな? リディオ・アリエクト(da0310 ) ♂ 26歳 人間 カムイ 風
a.派手に盛り上げようぜ、ハナ! ソレイユ・ソルディアス(da0740 ) ♂ 21歳 人間 ヴォルセルク 陽
a.ではドラゴンのクイーンちゃんにのって空を彩るわよ。 マリカ・ピエリーニ(da1228 ) ♀ 29歳 人間 ヴォルセルク 火
c.アルケミーでリディオ君のサポートに入ります。 セヴラン・ランベール(da1424 ) ♂ 26歳 ライトエルフ マイスター 風
a.ではアクロバティックな飛行をお見せしよう。 エクス・カイザー(da1679 ) ♂ 30歳 人間 ヴォルセルク 火
c.よろしくお願いします。 ハナ・サルタバルタ(da1701 ) ♀ 23歳 人間 マイスター 地
b.ではでは、夜空を魔法の箒[ティンクル]で彩りましょう。 アンカ・ダエジフ(da1743 ) ♀ 26歳 ダークエルフ パドマ 水
a.スカイランニングでGO!ってね。 エア・カイザー(da1849 ) ♀ 28歳 人間 ヴォルセルク 風
a.フライで空中に上がるわね。 ティファル・クラウディア(da1913 ) ♀ 26歳 ライトエルフ パドマ 風
a.おーし、キングドラゴンが空飛ぶ雄姿を見せるんだぜー!! グドラ(da1923 ) ♂ ?歳 キティドラゴン ヴォルセルク 水
c.と、とりあえずお手伝いします! パオラ・ビュネル(da2035 ) ♀ 23歳 ライトエルフ パドマ 地
a.フライの魔法とライトの魔法で夜空を照らして飛びます。
b.では夜空に光の華を咲かせて見せますわ。 ローザ・アリンガム(da2138 ) ♀ ?歳 ヴァンパネーロ ヴォルセルク 風
a.初心者なんだけど、うまくいくかなー。 アクア・パッツア(da2185 ) ♀ 17歳 メロウ ヴォルセルク 水
a.空~を自由に飛びたいな~ はい、魔法の箒~♪ トラエ・モン(da2209 ) ♀ 28歳 ケットシー パドマ 月
ごらん、パレードが行くよ
ウーディア地方のとある裕福な都市に、腕の確かな『魔法の箒の職人』がいた。Xmasプレゼント作成の交渉に向かったハウンドたちだが、ひょんなことから風変わりなパレードに参加することになって……!?