オープニング
◆ラクシャラー、今年も
ハウンドが扱う武具を手掛ける若き天才錬金術師、ラクシャラー。
装備する者の気の流れを高めることを得意とし、主として戦技の使い勝手を向上させる格闘武器を制作している。だがそれに留まらず、変わったタイプの武器、そして防具を手掛けることもある。
彼は昨年のXmasでも、ハウンドに協力し、新たな武器を生み出してくれた。そして今年もまた、話を耳にするなり、自分から協力を申し出てくれた。
「ハウンドは、私の武具の正しく使ってくれている。使い方という意味でも、使い道という意味でも‥‥今回も喜んで、この腕をお貸ししよう」
エキゾチックな顔立ちのラクシャラーは、美しい瞳でハウンドをまっすぐ見据えていた。
若い、とは聞いている。明らかに若々しい顔立ちと肉体でもある。それなのになぜか、その喋り方と立ち居振る舞いが、彼を老師かなにかのように思わせることがあった。
「‥‥そこで一つ、頼みがある。いや、交換条件などではない‥‥よりよい武具のために、ハウンドについて、もっと理解しておきたいのだ‥‥」
◆単純そうでなんか難しい要求
ラクシャラーからの要請に応えるべく、有志のハウンドらがギルドの屋外修練場へと集められた。
その一人、マレマロは、ラクシャラーの雰囲気に気圧されながら、訊ねた。
「で、頼みってのは、なんだ?」
「‥‥ハウンドの強さを、戦い方を、今の実力を、知っておきたい。その攻撃の様子を、間近で、いやこの身で‥‥」
「ふむふむ、どういう‥‥? え、え~っ!? い、いいのマジで?」
「いいのだ、本気(マジ)で」
「‥‥ガチで?」
「構わぬ、真剣(ガチ)で」
ラクシャラーの頼みを整理すると、要するに、ハウンドの「本気の攻撃」の把握、ということらしかった。
マジでもガチでもいいのだが、この場合の「本気」というのは、言うなれば二つの意味合いが含まれている。
まず、ハウンドが本気で木や岩などを攻撃する、というもの。素手でもいいし、武器を使っても、魔法でもアイテムでもなんでもいいから、とにかく「ハウンドの破壊力」を見せてほしい、というわけだ――こちらは、理解しやすいし納得しやすい要求である。
問題は、もう1つの、本気だ――ハウンドの攻撃を、その身で受けたい、というのである。
「な、なんで?」
マレマロが問うと、ラクシャラーは真面目に答える。
「その攻撃を、目で見るだけでも、破壊の跡を調べるだけでも、多くのことがわかる‥‥しかし、もっともよく理解するには、やはりこの身で受けるのが望ましいのだ」
「け、けど‥‥死んじゃわない?」
「私はかなり心身を鍛錬している‥‥そこらの兵士や戦士よりは頑強といえるだろう‥‥とはいえ、ハウンドの本気を受ければ、やはり死ぬかもしれぬな」
なにがおかしいのか、ラクシャラーはフッと笑った。そしてまた真顔になると。
「言うまでもないが、死んでは役目を果たせないため、死なない程度に頼みたいのだ‥‥ギリギリの手加減をお願いする。そうだ‥‥死者を復活させられる者がいるならば、構わず殺してくれてもよい」
「ダメダメダメダメ、いちおー生き返らせられる人もいたかもだけど、そんな手軽にできないはずだから!」
「では、やはり死ぬ直前まででお願いしよう‥‥傷を癒せる者がいるなら、何度か体感できそうだな‥‥」
「な、何度も瀕死になりたいのかい? てゆーかウッカリ死なせちゃったらどーするのっ!」
「さきほど言ったが、そうならないよう頼む‥‥こちらも本気で受けるのだ、そちらも本気で取り組んでほしい」
「うへー‥‥」
「とはいえ限度はある‥‥もし頑強さに自身のあるハウンドがいたならば、私の代わりに標的になってはもらえまいか。我が身で受けるのが一番ではあるが、誰かが受けるのを見るだけでも、物を壊すよりは大いに参考にできるのでな‥‥」
「お、おう‥‥」
マレマロはすっかりうろたえていた。なんか簡単そうな頼みだと思ったのに、なんでこんなにヒリヒリしてるんだろうな~、と、天を仰ぐしかなかった。
選択肢
a.物壊し中心 | b.対人攻撃中心 |
c.受け手中心 | z.その他・未選択 |
マスターより
北野旅人です。
昨年の「【SE11】天賦の才に願いを(ぽんぽこMS)」にも登場したラクシャラー。
前回は「気や精神の集中法」をハウンドに求めましたが、今回は「本気の攻撃」。
場所は、ギルド付属の広い修練場です。板や丸太や岩など、攻撃対象にできそうな物は用意されます。
回復要員などが控えているわけではないため、いてくれると安心です。
あえて、ラクシャラーのHPやA効果といったものは示しません。「屈強な戦士程度」にはタフです。そしてハウンドにその気があるなら「うっかり死なせることはない」ということになっています。
では、皆さんのご参加をお待ちしております。
※【SubEpisode15】聖夜の星は誰が為に 関連シナリオ
シナリオ結果に応じ、新たなアイテム登場に繋がります(イベントページを参照して下さい)。
登場キャラ
◆変態王決定戦みたいな
パメラ・ミストラルは、よくわかった、というふうにうなずくと、魔法の羊皮紙にこう書いてみせた。
『私の本気、見せれば良いんですね』
「任せろ! ハウンドの中でもぶん殴り屋として名高いと願っている私の本気を見せようではないか!」
トウカ・ダエジフが拳を振り上げると、
「願いも実力も私のほうが上である!」
トサ・カイザーも人差し指を高々かかげた。
「なにおう、ちょっと身長が高い程度で!」
トウカがトサと視線をバチバチさせる横では、
「‥‥や、やヴぁいお仕事だ、おかしな人たちだ‥‥」
パオラ・ビュネルはゆっくり後ずさりを始めていた。
「ふむ、まさかのラクシャラーが極度のドMとは思わなんだのじゃ」
こちらは涼しい顔の
ケイナ・エクレール。
「お主の装備には皆が世話になっている故、己の性癖のままに生きるが良いのじゃ。わしが治療してやる故のう」
「たしかに、物作りの探求は自虐に通じる道かもしれぬな‥‥優れた癒し手とみた、安心してこの身で受け止めたいと思う」
ラクシャラーは自分の胸をコンコンと叩いてみせた。
そして抜き足差し足、逃げようとしていたパオラは‥‥ケイナにその両肩を掴まれてしまった。
「これこれ、どこへ行く? 大事な壁役がいなきゃ始まらぬじゃろ」
「いや、その‥‥ちょっとおなか痛くなってきたので‥‥」
「大丈夫大丈夫。わしなら死んでも肉片になっても復活させられるからの‥‥あ、効果を上昇させなきゃ無理じゃな。なに、半身からでも戻れれば、腹痛くらい治っとるじゃろ」
「いーーーやーーー!?」
パオラはニコニコ顔の
エルシー・カルにガッチリ押さえ込まれ、退路を断たれてしまった。
「死人はともかく、取り返しのつかない事態には‥‥なりはしまへんやろ?」
エリアル・ウィンフィールドは、確認するように
エルマー・メスロンに訊ねた。彼女の予知(フォーノリッジ)に期待してのことだ。
そしてエルマーは、まさに予知を受けていて、仙級のみで得られる追加の印象も感じ取ったうえで、ぶつぶつとこう言った。
「肉の焼け焦げる匂い‥‥この肉体は‥‥もう二度と復活は‥‥不可能‥‥」
その不穏な予言に、パオラは失神しかけ、一方で
ベル・キシニアは涼し気な顔でこう言った。
「なんてことだ、ワクワクが止まらないじゃないか」
◆パメラの一刀両断術
まずは、対人ではなく対物での演舞から行うこととなった。
一番手は、パメラ。
本気を見せちゃいますよ――とばかりに握るのは、ムラマサナイフ。これにはラクシャラーも「ほう」と目を光らせる。
用意させた丸太に対し、パメラは切断を試みる。
声はなく、覇気だけで振り下ろされる刃。呪われているといわれるほどの切れ味。だが、丸太の一刀両断は、そう簡単ではない。幹に傷を穿つだけで、サックリと断ち切ることは、できない‥‥いや。
「‥‥見える」
ラクシャラーがそうつぶやくのが後か先か。パメラの太刀筋は、ついに丸太を一刀両断してみせた。
「なるほどな、グリーヴァブレードならではの切れ味か」
ベルもよく知っているそれは、木も岩も鉄さえも切り裂くというグリーヴァ独特の仕上げによるもので、時に想定外の威力さえ発揮し、常時ではありえない物さえ両断することがある。
‥‥だが。
「~~~!」
パメラは突如、両眼を押さえ悶絶する。そして目を閉じたまま、器用に羊皮紙に書き記す。
『目がぁ、目がぁぁぁぁ』
「‥‥呪いの力発動、ですわね」
レクリーン・シモンヌがニヤリと言う。ムラマサの呪いの力なのか、砕けた木っ端が、自身の目に刺さってしまったのであった(こちらはケイナがただちに治療してくれた)。
『か、かくなるうえは、禁断のデスを‥‥』
パメラはそう記したが、「ダメだべダメだべ」とエルシーに止められてしまった。
◆トウカの一撃
「私の相手は、あの巨大岩だ! ‥‥必殺技は必ず殺す技だからな。仲間をあやめるのはさすがにまずいし」
トウカはそう言うと、ドラゴンバスターシールドにダークネスパワーを成就。それをバサラで腕内に取り込むと、さらにキングゴリラグローブでドラミングを行ない、威力を向上させ――
「コレが私の本気だ!」
腕、そして盾と槍が合体したかのような奇妙な武器が、岩に向かって全力で叩き付けられる。岩は確実に、破片を撒き散らせた。
「そして‥‥これがとっておきだ!」
シールドが変形し、クロスボウのようになると、その槍を激しく射出させた。これが最大威力の攻撃であった。岩は広範囲に、亀裂を拡げさせた。
「特殊な武器の活用‥‥見事だ」
ラクシャラーは静かにうなずいていた。
◆レクリーンの熱き想い
「とりあえず、色々ぶっ壊せばよくって?」
レクリーンは、洞窟を模した施設に、壊れた甲冑や家具等を並べさせ、そこへ杖を向けた。
「さあ、吹っ飛ばしてさしあげてよ!」
仙級ファイアボム。そのままでも十二分の威力を発揮する魔法だが、狭い場所で爆裂させると、その威力は倍化することもある。
穴倉から吹き飛んできた無惨な物品を見て、
「魔法の有効な使用‥‥間近で見ると参考になる。満足だ」
ラクシャラーは真面目な顔で言った。
「ちなみに、ベッドの上では‥‥別の意味で燃え上がらせてさしあげてよ!」
レクリーンがこう言うと、
「いや‥‥もう、満足だ」
ラクシャラーは真面目な顔で流した。
「燃えるといえば、こんな魔法もありますわよ」
レクリーンはさらにファイアワールドによる炎攻撃を演じてみせ、ラクシャラーを大いに満足させるのだった。
◆トサのタイフーン
「オンリーワンにしてナンバーワンの栄誉を賜り貰った我が専用の鎧の効果を試す良い機会である!」
トサは漆黒のトサカイザーアーマーをギラつかせながら、いくつかの鍛錬用の木製人形と向き合った。
「それか‥‥」
ラクシャラーはゲンナリした顔でぼやいた。無理もない、この鎧は彼が無理やり改造させられた品なのだから。
「さあルミナパワーを込めたタロータチで‥‥」
トサは、長大な刀を派手に掲げ、そして気を集中し――
「危険極まりない必殺技、トサカイザーソードボンバー、であーる!」
振り抜いた刃先から気が暴走、木製人形が全て吹っ飛び――
「ぐわーっ」
トサ自身も己の剣気暴走を浴びて吹っ飛んだ。
が、トサは回復薬を飲み飲み、素早く立ち上がると、ラクシャラーに訊ねた。
「どうだ!?」
「どうだ、も何も、そういうふうに作ったのは私だ‥‥」
「そうだったそうだったはっはっは」
「というか‥‥本当にその鎧を使い続けるつもりなのか?」
「モチのロンのロンモチであーる!」
「そうか‥‥それはそれで参考になった‥‥」
ラクシャラーがぼんやりそう言うと、
「アレを参考にしちゃあきまへん‥‥」
エリアルは首を振りながらそう言い、
「ああ。あんなのはまだまだだ」
ベルは真顔で火に油を注いでくれた。
◆ベルの一撃と連撃
「ではそろそろ、実際にハウンドの力を体験させてやる」
ベルはラクシャラーに、ヴァルキュリエランサーを突き付けた。ラクシャラー自身による専用カスタム品だ。
「よければ、これを付けるがいい」
エルマーはラクシャラーに、ファラオのネックレスを装着させた。瀕死になってもやがて全快するというものだ。
「わかった‥‥では、全力で頼もう」
悠々と立つラクシャラー。
ベルはゆっくりと宙へ浮かぶ――スカイランニングだ。槍には効果を上昇させたルミナパワーが付与されており、この状態から投げつけられる、その威力は――倍増にして、強固な鎧も紙の如く貫く鋭さを見せる!
「ぐっ」
ラクシャラーの腹部、ど真ん中を貫通した槍は、そのまま地面に斜めに突き刺さった。
「これは‥‥死ぬやつじゃな」
ケイナは素早く回復に向かう――が、ラクシャラーは手でそれを制する。
「なるほど、この槍をここまで使いこなすか‥‥」
腹に刺さった槍を、自分でゆっくり引き抜くと、さすがに目を丸くするベルにそれを手渡し、ふーっ、と一息ついて地面に座る、と。
「‥‥本当だな、治った」
何もなかったかのように、ラクシャラーは言って、ネックレスをエルマーに返した。
「驚いた‥‥そうだ、他にも使うか? まだ瀕死を回復させる手段はあるが」
「いや、受けるのはもう十分だ。むしろ、ハウンドの受けの力をこそ見たくなってきた‥‥今度は代わりに、受け役を頼めるだろうか」
ラクシャラーに頼まれ、エルマーはうなずいた。もとよりそのつもりだったからだ。
「実は、とっておきのがあるんだが‥‥いいか?」
ベルに問われ、エルマーはこっくりうなずいた。
ベルの二刀流、グリーヴァザンテツケンにグリーヴァアーマーキラー。今回はルミナパワーに加え、仙級カルラによる加速と、チャージングやダブルアタックを駆使しての猛攻がコンセプトだ。
「これが最強の連撃だ!」
遠間から肉薄するベル、その両手が煌めく! ――と、すぐさまエルマーはその場からケイナのそばへ転移していた。ボロボロの姿で。ブレスフラワーアーマーの効果により、死ぬ直前に安全な箇所へワープさせられたのだ。
「いたたた‥‥耐えられるわけがない‥‥」
「やれやれ‥‥ほれキュアティブじゃ」
ケイナにすぐ癒されたエルマー氏、「超速で死にかけて即座に全快」という貴重な体験をする。
「ふむ、これでは参考にしてもらえないか?」
ベルが、斬り足りなそうにしていると、
「なら、おらが受け切って見せるべ」
エルシーが堂々と前に立った。
「そうか、なら心置きなくやっていいってことだな。念のためだが、死ぬ前に言えよ」
「なあに、ケイナの姐さんもいる事だしな。もっとも、ベルにだってこの体は抜けねえと思うべよ、この最強最硬のガードは」
エルシーは、非常に強固な鎧ビッグショルダーを筆頭に、優秀なガントレットやレッグアーマー、チェーンメイルに加え、プロテクトリングをダブルで装備。アースアーマーでさらに硬度を上げたうえ、ガードEXという防御技術を発揮できるのだ。
「では‥‥遠慮なく行くぞ!」
ベルが肉薄してきた。チャージング――その威力は、エルシーの顔を歪めさせる。さらにその後の攻撃も、思った以上に鋭利に肉体をさいなんできた。
「鎧を貫くタイプの攻撃だべか‥‥これは本気で受けねば!」
エルシーここでアイアスシールドの効果を発揮。金色の光が包み、防御力を大幅に上昇させた。
「くっ、急に抜けなくなったな‥‥だが!」
ベルはアーマーキラーの魔力を解放。貫通能力を最大にし、エルシーの超絶防御をほぼ無効化した突撃を連打する。
「かはっ‥‥」
これにはエルシーも為す術がなく――
「ちょ‥‥ストップ、ストップですよ!」
パオラが止めに入ったことで、エルシーは、かろうじて生命を留めており。
「うかつに死なれると、わしも容易には蘇生できんからのう」
ケイナがキュアティブで回復、かろうじて命は保たれた。
そしてベルとエルシーは握手を交わし、ラクシャラーは、なにか満足げにうなずいていた。
◆エリアルの大放出
「では、次はわらわが‥‥」
エリアルは、スプラッシュなドラゴングラスをつまみながら前に出ると、「誰にしようかな~」とでもいうふうに、仲間をチラチラ見回し始めた。
「おっ、俺はムリだぞ!」
マレマロは全力でバツの字を作り、拒否る。
「さっき死にかけたてまえ、おらも一回休むべ」
エルシーも手を振る。
「そこはホラ‥‥適任がいるじゃありませんか」
レクリーンはパオラの両肩をガッシと掴む。
「ひえっ? た、確かに多少はいけますけど‥‥な、なんかモーレツにイヤ~な予感が‥‥あっあのあの、エルマーさんも受け役だったのでは?」
パオラがそう言うも、パメラは首を振って、羊皮紙に『今トイレ』と記した。運悪くトイレに行っちゃったらしい。まさに神業的偶然。
「じゃ、じゃあ不死鳥の杖とか琥珀の指輪も借りられないじゃないですか‥‥こうなっては仕方がありません、こ、効果を上昇させたクリスタルアーマーで‥‥待ち受けますね!」
パオラの体表を水晶の防御膜が包み込む。強力な防御効果だ。
「自信がおありのようやなあ‥‥なら、遠慮なく全力ブッパさせてもらいますえ」
エリアルの瞳が、ギラリと光る。
「ああああでも、痛くしないでくださいね‥‥?」
「大丈夫や、痛みを感じる暇もなく一瞬で死ねれば」
「あびば!?」
「ほな、いくで――」
エリアルの顔から放たれた水弾の威力たるや――消費する魔法力に応じてそれは強化されるのだが、エリアルの元々の高い魔力に加え、超強力なメンタルパワーリング×2、さらに血力の錬金キルトで体力を代償にすることで、注がれた魔法力は異常なまでの高圧力(?)となっており、それは言ってみればラージドラゴンさえ一撃で戦闘不能にしかねない威力に高まってるわけであって――
――エリアルとパオラは、同時に目を覚まし、起き上がった。
「‥‥ついうっかり気絶してましたやろか」
体力と魔力の全てを一気に放出したエリアルは、気を失っていたのだ。
「‥‥ついうっかり死んでましたでしょうか」
パオラはそう言ったが、実際には奇跡的に命を留めていて、回復されたところだ。
そしてラクシャラーは。
「見事な攻撃と受けっぷり‥‥決して忘れはしないだろう」
「そ‥‥それはなによりですね‥‥」
パオラはそれ以外のセリフを思いつかず、ぼんやりした頭で天を仰いだ。奇しくもエリアルもそうしていた。
「‥‥綺麗な青空ですね」
「せやなあ」
◆パオラとエルマーの天変地異
「あー死ぬかと思いました‥‥(というかホントに死んでない?)‥‥あ、最後に、効果を上昇させたアースクエイクで破壊に回ってもいいですか?」
パオラはそうした。なにか鬱憤でも晴らすかのように局地大地震を起こし、様々な物品をひっくり返し、そしてトサとベルを転げさせた(この二人は面白がってわざと地震を浴びたのだ)。
「あ、地震がアリなら‥‥こういう手もあるのだよ」
エルマーがふいに思いついたのは、『プリズマティックの効果で威力を倍化させたうえでの、上級メテオによる隕石直撃コンボ』であった。
『その威力って、どのくらい?』
パメラは、自分で書いた『どのくらい』を文字を、ペンでバシバシ叩いた。
「たぶん‥‥ヒュージドラゴンが塵芥(ちりあくた)になるくらいでっしゃろ」
エリアルは若干投げやりにそうコメントすると、
「よし来た! 謹んで‥‥お断りするべ」
エルシーは賢明にもそそくさ離れた――というのに、どういうわけかベルとトサとトウカが受けて立とうといきり立っているので、みんなで全力で引きずり引っ立てるのであった。
◆再起不能に灼ける肉片
「‥‥皆で沈む夕陽を眺めるのはいいもんだが、皆で落ちる隕石を眺めるというのは‥‥なんと言えばいいかな?」
トウカがなんとなくぼやくと、ケイナは即座に言った。
「汚い花火を眺めるようなものじゃな」
「花火‥‥じゃないけど、なんか香ばしい匂いがするな?」
マレマロがクンクンと匂いを辿ると、なんとパメラが、いつの間にか料理をしていた。
『廃材の丸太や岩を使って岩板焼きなど作ってるんです。皆でどうぞ』
オリーブオイルを塗った岩の上で焼ける牛肉とリーキとキャベツ、直火で焙られる鶏の丸焼き、カットレモンも添えられて――
「こ、これが予知の正体かっ」
エルマーはひたいをピシャリとやった。
肉、焼けた。
「うーん、大暴れした後の肉は実にうまい」
ベルは常人の4倍くらいの早さで肉をたいらげる(なおカルラは使用していない)。
エリアルはベルに食い尽くされないうちによさげな肉をヒョイヒョイと確保したが、ふと思い立ち、パオラのそばに寄ると。
「ムチャさせまして、かんにんえ」
「いえ‥‥」
「肉、いりなはる?」
「いりなはります」
「やはり防御を抜ける武器が、強敵には必要だべな‥‥おらは勘弁願いたいが‥‥で、ラクシャラーさん、参考になったべか?」
エルシーの問いに、ラクシャラーは深くうなずき。
「大いに、な‥‥いいものを作らせてもらおう。しかし本当にハウンドというのは‥‥まともじゃないな」
「みんな変態で、みんなイイ‥‥拡げましょう、変態の輪」
レクリーンがそう言うと、トサは天をブチ抜くかのように拳を振り上げた。それが許諾のポーズなのか拒絶のポーズなのかは、トサのみぞ知る。
8
|
|
参加者
| | b.お仲間に当てるんならまあ、構しまへんやろ。
| | エリアル・ウィンフィールド(da1357) ♀ 49歳 ダークエルフ マイスター 水 | | |
| | c.できれば、出番がないほうがありがたいのだよ。
| | エルマー・メスロン(da1576) ♂ 51歳 ダークエルフ パドマ 陽 | | |
| | a.それでは全てを吹っ飛ばす本気の攻撃というモノをお見せしよう。
| | トウカ・ダエジフ(da1841) ♀ 27歳 ダークエルフ ヴォルセルク 地 | | |
| | a.よぉーし、必殺技を人に当てるのは危険なので、物を壊すとしよう。
| | トサ・カイザー(da1982) ♂ 26歳 人間 ヴォルセルク 陽 | | |
| | z.わしに任せておくが良い。
| | ケイナ・エクレール(da1988) ♀ 30歳 人間 カムイ 火 | | |
| | a.(カキカキ)『私の本気、見せれば良いんですね。』
| | パメラ・ミストラル(da2002) ♀ 19歳 人間 カムイ 月 | | |
| | c.おらは誰の挑戦でも受けるべさ。
| | エルシー・カル(da2004) ♀ 21歳 カーシー(大型) ヴォルセルク 地 | | |
| | c.こ、効果上昇クリスタルアーマー準備して、待ち受けますね!
| | パオラ・ビュネル(da2035) ♀ 23歳 ライトエルフ パドマ 地 | | |
| | a.とりあえず、色々ぶっ壊せばよくって?
| | レクリーン・シモンヌ(da2140) ♀ ?歳 ヴァンパネーロ パドマ 火 | | |
| お、俺の身体に本気で攻撃しちゃダメだぞ!? | | マレマロ(dz0040) ♂ ?歳 キティドラゴン ヴォルセルク 水 | | |
錬金術師ラクシャラーの無茶ぶり
| |
本気でやっちゃうと死んじゃうかもしれない‥‥だから本気で死なないために、本気で手加減した本気の攻撃をしなきゃいけない‥‥? んんん? 本気ってなんだ? 本気で難しい!
|