オープニング
◆魔の森の遺跡
ハウンドギルドにひとりの依頼人が訪れた。
サリアというダークエルフだ。
香り立つような黒髪、そしてしなやかな肢体を白衣に包んでいる。
「今後の対フンドラゴラ研究のため、魔の森の遺跡を調査したいのです、みなさんには護衛をお願いします」
長口上だ。だが、言いたいことは分かる。
少なくともガーベラはそう思った。
「ふんどらごらすきなんか~」
「個人的感情より知的好奇心です。そして義務」
ガーベラの言葉にサリアは神経質に返す。
多分、一番ガーベラがつっこみづらいタイプだろう。
◆最も深き思慮
遺跡の踏破は困難と思えた。
なぜなら、帰路にどんなトラブルがあるか測れないからだ。
そのために余力を残さねばならない。
サリアは魔法的なトラップを潜り抜け、ハウンドに感謝しつつ前進する。
そう、前進あるのみだ。
二回目の護衛を頼む予算は、サリアの研究費では工面できないという。
悲しいが、それが現実なのだ。
そしてトラップにかかる。
ハウンドたちは余力を残せる状況ではなかった。
だが、それが悪意に彼らをさらすことになる。
◆銀色の守護者、黒き罪
直径二十メートルほどの丸い広間だ。
そこがサリアが目指したゴールだ。
奥には銀色の異形が二体、そして青銅製の異形が十体以上。
ゴーレム‥‥いやガーゴイルだろう。
静寂を好むこのガーゴイルは簡単に破壊できない。
無論、ハウンドは破壊する手段を持っているものがいる。
遺跡、フンドラゴラというキーワードで、鉄の塊でも両断できる武具や魔法を準備したものもいるだろう。
「ここでいいのか? どうすれば──」
衣擦れの音がした。
白衣が落ちる音。そう、サリアが脱いだのだ。
彼女がほぼ全裸。だが、股間だけおおうのは黒い布──いや褌だ。
「さあ、お脱ぎなさい、いあ、ふんどらごら、ふたぐん!」
ハウンドたちを脱衣衝動が襲う。
サリアの胃の上にはXの刺青があった。
ヴォルセルク魔法を使うのだろう──属性は不明だ。
そう! ハウンドたちは、脱衣衝動とガーゴイル集団の両方を相手どらねばならない。
ガーベラは脱いだ。
君は脱ぐか!
選択肢
a.サリアと闘争 | b.白銀像と闘争 |
c.青銅像で無双 | z.その他・未選択 |
マスターより
北野CWは違うぜい、さすがIQ300だ!
ウソです、成瀬が考えた話です‥‥。
さて、みなさんの選択肢は、脱いで戦う、脱がずに戦うかのふたつです。
一応、座して待つもありますか。
なお、褌は剥いでもドロップ品にはなりません。
だが、諦めを踏破するならば!
参加待っています。
※【SubEpisode14】世はかくも奇っ怪なり 関連シナリオ
登場キャラ
◆1
わたくし、全裸ですわよ? そう言ったのが誰か‥‥今は語る時ではない。
「あたしは一向に構わん!!」
しかし、まさにズバーンと、思い切りよく脱いでしまったのは、だれあろう、誰だ──そう、
パメラ・ミストラだ。
サンドラ生まれのすごい奴!
「こちとら薄着が基本のサンドラの生まれ。身体には自信があるのよ」
ネネバスタを構えて不敵に笑う。
「さ、寒い!!」
一気にテンションが下がるのだった。
オーディアの魔の森、今は十一月──夏にはいまだ遠い。
ともあれ、襲い掛かるリビングガーゴイルの群れ。
迎え撃つパメラは次々と斬って払う、その勇ましさよ!
青銅のボディを斬り込むネネバスタ、パメラがこの得物を使いこなすのは、天性と鍛錬の合わせ技からできた、フィジカルゆえだ。
「あれ? 普通の彫像‥‥紛らわしい」
動きが止まったとみて、切りかかると、本物の銅像だった。
「むう。心の目で見るのである」
トサ・カイザーは言って、コブシを天にかざす。
オレ言語開始。
魔法的な原理は不明だが、カッコイイことを言っておのれを鼓舞するのである──知らんけど。
「こんな事もあろうかと、鍛え続けた我が肉体! 見よ、カイザー家男子が奥義『影筋肉(シャドウマッスル)!』 我が肉体は素敵なり!!」
トサは背中のXを見せ付けるポージングの後、タロータチにルミナパワーを付与し、ゴーレムを斬鉄の技で粉砕するのである!!
「く、うらぎりそうなせりふやで」
そう、
ガーベラが昔のネタを引っ張り出す。
「はい、隠すんだよ──」
トウカ・ダエジフがシルバーガーゴイルを打ち砕くトサから目をそらす。
乙女だ!
◆2
「我、妻となるものは更に素敵なものをみるだろう‥‥」
トサの言葉にトウカは軽く手をたたく。
「はいはい」
トウカはサリアに向き直った。
「私も魅せるか。サリア、私は誰の挑戦も受ける! 本気で来い! 愛する者を守る時、体を張ったネタを思いついたとき、ダエジフの竜犬は──一騎当千」
その瞬間、シルバーガーゴイルの魔力が高まる。
水流がトサを薙ぐ。
「むう、水芸とは猪口才な!」
トサと言えど、さすがに魔法はさばけない、水流がトサの足を砕く勢いだ。
トウカはパドマの上級魔法クラスの破壊力があると判断した。
「冗談じゃない! 脱いでたまるか―!!」
一方、
エア・カイザーは脱衣衝動に駆られる。
高貴なる抵抗だ。
だが、カイザー家のものがそれを行った時には、壮大な前振りとなる。
おまけに、エア当人がイロイロ準備した結果、魔力がすごい状況になっている。
結果脱衣衝動に駆られた時、得物が邪魔になるのだ。
「サリア、僕を怒らせたな」
怒りのエア。サリアはそのプレッシャーに負ける。
おお、エアから黄金の光が、比喩でなしに昇っていた。
エアはカルラを使った。体を張った怒りだ!
「太古の昔から、どこかで聞いたグリーヴァの伝説によると、NINJAは脱いだほうが強いんだ! 受けて散れ!! 奥義『ACL0!』」
◆3
エア、彼女は奥義『ACL0』もとい、カルラの光とともに、黄金の尾をひく、流れ星となった。
そのままエアは全力で、サリアをタコ殴りにする。
情けや容赦のない、四倍速の乱れ打ちであった。
ルミナパワーが伴っていない四肢の打撃は弱い。
だが手数が違う。
単純に言えば、殴った(中略)殴った、さらに殴った。
あるいは、オラオラッシュか、無駄ラッシュか。
ともあれ、エアの戦いは、嵐のごとき乱打だ。
拳、蹴りあるいは、ヘッドバットを交えての攻撃。サリアは非凡なダーナではないが、格と覚悟が違いすぎるのだ。
ともあれ、遠くから見ていた、トウカは思った。
かわいそうだ、と。
トウカは、そんな憐憫の情をサリアに向ける。
これが脱衣の力に手を出したものにとって、お似合いの末路だ!
当のサリアがどう思うかはわからないが、トウカにとっては、十分有情な評価だろう。
だからトウカは戦っている間の間に、グローブをはめ直した。
グラブの特殊能力──褐色の胸を叩きドラミングする。
雄たけび、雌たけびがとどろく。
そのプレッシャーが、サリアの動きを止めさせた。
一瞬のスキだった。それでもエアには十分だった。
エアの流星パンチがサリアの胸板を砕いた。
そのあとで、エアは暴れまわったが、カルラの持続時間が切れて、反動で倒れてしまった。
サリアは袋叩きにされたが、一命は取り留めた模様。
◆4
そして──。
「往生せいや!」
トサが全身を血に染めつつシルバーガーゴイルにとどめを刺す。
リビングガーゴイル六体を撃破したパメラが援助に回ろうとしたが、その必要はなさそうであった。
「ガーベラ!」
トウカがガーベラを探す。
この一団、カムイがいないのだ。力押しは出来るが、汎用性は微妙にかける。
ともあれ、ガーベラがキュアティブと言いながら、トサやエアと言った、けが人たちに回復薬を飲ませ、九死に一生を得た。
「あー死ぬかと思った」
命は大事にすれば一生使える。昔の武器商人の言葉だ。
無言のまま、トウカはサリアに白衣を着せかける。
「立てサリア。お上もといハウンドにも慈悲はあるのである──しかし、今はキリキリと、吐くがいい」
トサが促すと、サリアは自分の背景に関していくつかの事実を語るのだった。
その情報はハウンドギルドにとって大事なものかもしれない。
今はまだ動けない、それも、また定め。
◆5
ともあれ、ハウンドたちはKillerQueenにたどり着くと、疲れを互いにねぎらった。
今日のシェフのお任せランチを楽しみにしつつ、ハウンドたちは互いの報告書を確認する。
今回の一件は、俗でいうところの依頼主が裏切るというパターンの依頼だ。
関わったハウンド全員にとって、後味がいいとは言えない。
だが、サリアの裏切りっぷりが、あまりにも堂に入り、ツッコミを入れるスキが無かったのだ。
と、ガーベラが分析した。(彼女もいい感じのボケ要員だが)
「しかし、あのガーゴイル壊れていたみたい」
パメラが全部と戦うと、さすがの自分でも手間取るだろうと判断したようだ。
「前にもあの遺跡に連れ込んでいた? ‥‥死のワナとか」
検証しようという、そのパメラの言葉をトサが引き取る。
「ともあれ、銀のガーゴイルは壊れていなかったようであるな。おそらく、あの場にいたガーゴイルの首魁であろうな。ともあれ、魔法らしい攻撃を行うとはさすがに予想外であった」
そう言いながらも、トサは腕を組みつつ、何度も感慨深げにうなずくのである。
「ええと、みなさん恥ずかしいところを‥‥」
自己暗示がショックで解けたらしいエアは顔を赤くするのだった。
「マッタクモッテ──アナガアッタラハイリタイ‥‥」
消え入るようなエアの声。
「しょうがないよ。フンドシカルトじゃあな、あのサリアも体はよかったよなあ」
そんな気の無い、トウカの言葉であったが、微妙なニュアンスを含んでいるように聞こえた。
(その言葉、誤解を招くだろう)
ガーベラ以外のその場で思ったことはそれだった。
なお、ガーベラは十歳児なみの思想なので、思いもつかない。
ともあれ、ハウンドたちのもとに熱いスープが運ばれる。
トマトとタマネギ、それに豚肉を一緒に煮込んだだけの料理だ。
腹にはたまる、な。
そんなことを考えつつ、ハウンドの一段落は終わりを告げる。
だとしても、ハウンドの探求心は──終わらない!
6
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参加者
| | a.私は誰の挑戦も受ける!
| | トウカ・ダエジフ(da1841) ♀ 27歳 ダークエルフ ヴォルセルク 地 | | |
| | a.冗談じゃない! 脱いでたまるか―!!
| | エア・カイザー(da1849) ♀ 28歳 人間 ヴォルセルク 風 | | |
| | b.見よ。カイザー家男子が奥義・影筋肉! 我が肉体は素敵なり!!
| | トサ・カイザー(da1982) ♂ 26歳 人間 ヴォルセルク 陽 | | |
| | c.あたしは一向に構わん!!w
| | パメラ・ミストラ(da2242) ♀ 25歳 人間 ヴォルセルク 水 | | |
黒と銀が罪を紡ぐ
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覚えていて下さい、これが私が最後に脱ぐ下着です。
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