オープニング
◆とある村の危機
グレコニアの田舎村、その昼餉の時間、家々からは炊爨の煙があがる。
しかし、悲鳴にも似た声が飛び交う。
「男衆は鍬でも鋤でも持て! 時間を稼ぐんだ」
「女子供は教会に逃げろ!」
そんな悲壮な光景が田舎の村で展開されている。
山の方から、四十メートルはあろうかという、巨大な蚯蚓──ダークヒュージウォームが三体、周囲の家屋を破壊しながら進んでくる。
熊を狩った、狩人のヒューイットが自慢の矢を射こむが、まるで鉄の塊──表面の鱗だけではない──を撃ってるかのように弾かれる。
まさに徒労であった。
そこにガーベラが叫ぶ──ハウンドやで! と。
◆という前振り
「──という予知をしました」
教会に立ち寄ったハウンドたちは、パラの少年レッダーがそう言うのを聞いた。
村の長はパラの少年がルミナの才を持っている事を告げる。
ガーベラでも多分フォーノリッジの影響があったのだろうと見当をつける。
「まあうちらも、こまったひとみすてるほど、おにやないで」
とはガーベラの弁だ。
食べ歩きの観光の途中、通りがかったハウンドたちは、レッダーの予知をすんなり受け入れる。
多分、ここで昼飯にした名物、クマ肉のグリル、甘辛肉汁かけが美味しかったのだろう。
多分、美味い物を提供する場所は守らねば、ヨシ!
ハウンドは魔法を迷信と断じない。
レッダーはこの未来予知を信じてもらうのに結構手間取るという。
村長も村の存亡の危機でなければ、簡単には信じなかったろう。
だが、ハウンドたちは受け入れ、だから、村の守りにつく。
地面が揺れた。間もなく戦いの時だ。
大穴が穿たれ、ふた抱えはあろうかと思われる、巨体が姿を現した。
準備は出来ている。だから──ハウンドの戦いが始まる。
選択肢
a.殲滅だぞ | b.村人誘導 |
c.おかわり | z.その他・未選択 |
マスターより
さあ、食いでがある──魔物ですよ。味はともあれ。
皆さんの努力と知識があれば、倒せない相手ではない、と思えないこともない魔物ですね。
接敵時刻はある程度特定できているので、魔法の準備はOKです。
後は戦って、正義を示してください。
いいか? 最後の武器は愛だ!
選択肢bとcは、自分の出番は戦いではないという宣言と思ってください。
先輩ハウンドの戦いぶりを見たい向きです。
もし選んだ方が戦闘していたら、非常な苦戦だと思ってくださいね。
なお、胃に入っている、グリズリーとかブラウンベアーの魔物知識は手に入りません。
参加お待ちしています。
登場キャラ
◆フラグを折れ!
──風雲は急を告げている!
昼時の平和な村への来襲という危機。
迎え撃つのは来訪者、つまり‥‥七人のハウンド参る!
「予言通りなら、攻めてくるのは、ダークヒュージウォームらしいな? 飲み込まれないよう注意しなくては‥‥な」
そう不安げにつぶやいたのは、
エクス・カイザーだ。
エクスにとっての不安材料──歴戦の勇士でもある彼は、数年にわたるハウンドとしての日々の中で、飲み込まれた数は──数知れない(大げさ)。
そこに響く女性の声!
「──アイスエイジ! 凍りつくのですよ、果実で釘が打てるのです!!」
魔法の杖を振って、アイスエイジを成就する。そのパドマは、
アンカ・ダエジフだ。
なお、ミドルヘイムでは、バナナは事実上手に入らない(これマメ知識な!)、顔と行動範囲の広い、ハウンドと言えども、だ。
「ではでは宣言の通り、南国生まれのパメラさんには、すごーく気の毒ですが、まずはアイスエイジで、あの魔物三匹の動きを鈍らせますよ。これダエジフ家の常識!」
やな常識だ。
「大丈夫です、覚悟も準備もOK!」
ともあれ、
パメラ・ミストラは完全防寒だ。
「ならば、大丈夫なのです。これで大ミミズが攻撃をさばく可能性も、エクス義従兄さんが飲み込まれる可能性は一パーセントをきりました」
アンカがドヤ顔でフラグを立てる──さらばエクス?
「ウンウンワカッタヨ‥‥新人だけど、参加するなら戦わないとねっ」
パメラの目は達観している、ベテランのエクスでも『そういう』目に合うのだ。
場数を踏んでいないかもしれない、自分はどんなひどい目に合うのか‥‥。
まあネネバスタならば、ダークヒュージウォームに斬りめるよ、やったね!
そんな彼女に耳に爆裂音がとどろく。
パメラのフォローよりも、魔物をせん滅することを優先した、
オスカル・ローズの成就した魔法、ファイアボムだ。
この爆風による、圧倒的な火力はダークヒュージウォームを一気に温める。
範囲制圧はお手の物である。
「あったまったかな?」
オスカルから笑みを向けられる。パメラのハートは温まったが、ボディはマイナス40度だ!
◆平和を守れ! トラエさん!
「ム、村の平和は、あたしたちが守る!!」
「なーに、ルーキーはいっしょだ。一緒に戦おうぜ」
フィルボルグスの女傑、
ロザリー・シャルンストがパメラの肩に手を置き、彼女の緊張をほぐす。
「あれ? とらえはんは?」
目の上に手をかざした、
ガーベラが、
トラエ・モンを探す。
「こっちだニャ、ガーベラ、君も手伝って、みなさーん慌てず騒がず、こちらに避難してニャ!!」
トラエは寒さに毛を膨らませつつ、村人の避難誘導に走る。
「ママ、避難誘導は引き受けるから退治はよろしくニャ!!」
そう、義母のオスカルにトラエは話を振る。
「わかった、トラエはそそかっしいからケガしないでね」
村人は少年に見えるオスカルがママ扱いされていることで、リアクションに困ったようだ(察しのいい村人はパラ、あるいは男装のどちらかまでは、見当がつくが、両方とはなかなか思いづらい)
「大丈夫だニャ。‥‥多分ニャ」
「おすかるはん、とらえはんはまかせてくれんか」
オスカルは脳裏で、ガーベラもそそっかしいとは思っていた。
◆戦いの幕
トラエとガーベラが合流する。
村人はハウンドが落ち着きはらったことで、パニックにはならない。
もし、トラエが避難を仕切っていなければ、魔物たちから逃げられなかっただろう。
「──ヴィンドスヴァル、なのです」
アンカが魔法の杖を振り、まとめて魔物たちを吹雪に巻き込んでいく。
「つっこむぞ、パメラ! ロザリー」
エクスが先頭に立って突撃する。
「イエス、ボス」
「頑張ります」
魔物を越えたところでファイボムがさく裂、もちろんオスカルのものだ。
その破壊力は鋼のうろこを砕きながら、ハウンドたちを勝利に導く。
「ふふふ、前衛の方々が接敵すると、パドマは出来ることが一気に減るのです」
と、アンカが笑うと、オスカルも同意する。
「ロザリーの助言だと、まあ──パメラが決定打を与えるのは難しいね。ロザリーかエクスからルミナパワーを付与してもらうとか‥‥策はあったけどね」
油断を見せないオスカル。
◆ハウンド快進撃?
こうしている間も戦いは順調に進む。
「危ない! パ──」
エクスがダークヒュージウォームに飲み込まれている。
これはパメラへのラッキーヒットをかばってのものだ。
「おや、うわさに名高い丸呑みエクスか?」
ロザリーが一瞬だけスキを見せる。
「エクスさーんダメです、助けます」
パメラがエクスを飲み込んだダークヒュージウォームをざくりざくりと斬り込んでいく、なで斬りにするには、如何せん火力不足だ。
内側でエクスがあらかじめ付与していた、エクスプロージョンを成就して、内から破壊し、ミミズ汁にまみれながらも、這い出して来る。
「生還した‥‥生きている事は素晴らしいな」
そんなエクスにパメラは顔をぐしゃぐしゃにしながら、抱き着こうとした。
「おやくそくの、えくすはんのきせきてきな、せいかんやな」
言ってガーベラが茶化す。エクスは後頭部に手をやった。
「笑うなよ、村人が見てる‥‥」
◆裏切りの──
「じゃあ、火力集中するのです。戦いはこれで決まりなのです」
と、アンカがヴィンドスヴァルを成就する。
吹雪に巻き込まれて、ダークヒュージウォームたちは壊滅した。
「ちなみにこの大ミミズは食えないわけではない」
ロザリーの言葉に、ガーベラが肉片を切り取ろうとする。
「なるほど」
ガーベラの回復薬で傷をいやしたエクス。
彼はガーベラからナイフを借りて、肉片にかじりつく。
「ただし、美味ではない──ん、先に言うべきだったか」
ロザリーの言葉に、エクスとガーベラはものすごい顔をしたのだった。まるで信じていたものに裏切られたような面持ちだ。
「滋養はある。しかし──いや、体感したのなら言うべきことではないな」
ロザリーの言葉にふたりは生臭さのかたまりを口にしたことは隠しもしない表情だ。
「うん。おぼえた──おぼえたで」
「ガーベラの言うとおりだ。エクス・カイザー一度食べた食事は二度通用しない」
多分そうであろう──次があれば、だ。
◆口直しに!
「水攻めもしたかった‥‥なんてね」
オスカルはダークヒュージウォームに対する攻撃バリエーションとして、水攻めの腹案があったことを明かす。
「火責め水責めか」
ロザリーがつい先ほども食べた、村の名物である、クマの焼き肉を、改めて楽しみながら、悪くはない、と笑みを浮かべる。
実はこのクマ肉、非常に野趣にあふれたメニューである。
シンプルな表現をするなら、ケモノ臭いとも言えるのだが。まあ、うまいからヨシ!
「いかに大ミミズといえど、熱気と冷気で攻め立てれば、結構痛いのです」
そう、アンカがクマ肉のお代わりをする。
ちなみにこれはタカりではなく、村人を救ったことへの、村長さんからの心づくしであった。
しかし、パメラが恨めしそうにクマ肉を眺める。
思いつめた表情に、見えた。
「うんパメラ。菜食主義に転向ニャ?」
トラエが不思議そうな目でパメラを見る。
「いやあ何にもしていないのに‥‥と」
いかにも鋼鉄の心臓と、ワイヤー並みの神経のハウンドとはいえ、そういう心境の時もあるのだ。だって、オンナノコだもん?
「間違いはただ受け止めて飲み干せばいいニャ、それがオトナの特権だニャ」
トラエがそのうちに、仮面でもかぶりそうな口調でそう言った。
まあ、そんなこんなで、この村でのハウンドたちの昼食は、終わりを告げるのである。
──だから! ハウンドの昼下がりは終わらない!
5
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参加者
 | | a.ダークヒュージウォームか? 飲み込まれないよう注意しなくては。
| | エクス・カイザー(da1679) ♂ 28歳 人間 ヴォルセルク 火 | | |
 | | a.アイスエイジ! 摂氏マイナス40、バナナで釘が打てるのです!!
| | アンカ・ダエジフ(da1743) ♀ 25歳 ダークエルフ パドマ 水 | | |
 | | a.大穴が空いたら、ファイアボムを撃ち込む。これ、常套手段ね☆
| | オスカル・ローズ(da2033) ♀ 52歳 パラ パドマ 火 | | |
 | | a.相手を叩き潰せば良いんだな。シンプルで良いことだ。
| | ロザリー・シャルンスト(da2190) ♀ 27歳 フィルボルグス ヴォルセルク 陽 | | |
 | | b.皆さん、慌てず騒がず、こちらに避難してニャ!!(自分が焦ってる)
| | トラエ・モン(da2209) ♀ 27歳 ケットシー パドマ 月 | | |
 | | a.新人だけど、参加するなら戦わないとねっ
| | パメラ・ミストラ(da2242) ♀ 24歳 人間 ヴォルセルク 水 | | |
熊肉美味しうございました
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早めの熊肉で昼食を終えたハウンたち。しかし、昼飯時の村を襲う危機。予知にしたがい、ハウンドが戦いに出る! なお、鉄蚯蚓は三匹(全長四〇メートル)という。戦い済んだらおかわりか?
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