オープニング
◆伝承
アルピニオ地方、険しい山岳地域の奥深く。
その断崖絶壁には、偉大なる『風の魔法使い』の遺産が眠るという。
魔法の限界突破――その方法をミドルヘイム広くから集めるハウンドギルドに、アルピニオ地方のごく一部にのみ残る魔法使いの伝承が知らされたのは、つい数日前のことだった。
伝承によればその魔法使いは凄まじい稲妻を操り、跋扈する危険な魔物の脅威から民草を護ったという。
さらに身を潜めた魔物の居場所をことごとく看破し、ともに戦う勇気ある者には様々な魔法の力を分け与えたとも語られている。
ギルドの研究者の分析によれば、その魔法使いとは現在でいうところの風属性のパドマ、もしくはカムイであったと推測された。
であれば、伝承にある魔法とはすなわち『ゼウス』、『シグナルフェザー』、『エエンレラ』を指し示している可能性が高い。
これらの魔法の秘術を獲得すればハウンドたちの大幅な戦力増強に繋がるはずである。
だが――問題はここから先にあった。
彼(あるいは彼女)はその強大な魔法が心無き者に悪用されることを恐れ、その死の直前に魔法の奥義を記した石版をどこかに秘匿したのである。
その隠し場所の情報は口伝、巻物、石版などのありとあらゆる方法に分割され、アルピニオ地方の各地へと隠されている。
この失われた秘術を求め、ハウンドギルドによる大捜索が始まった。
◆到達
「……で、ここがその隠し場所ってワケだね!」
キティドラゴンのヴィントシュトス(ヴィッシュ)は、眼下に口を開いた断崖絶壁を覗き込んでそう言った。
アルピニオ地方でも特に険しい山岳地方、そこを数日進んだところにそびえる山の中腹である。
この場所こそが『風の魔法使い』の遺産――魔法の秘術を記した石版が眠る場所だった。
ここが特定されるまでにはギルドの研究者たちによる苦行難行、艱難辛困、死屍累々、抱腹絶倒なフィールドワークの数々があったわけだが――いまはそれについて語るのはよそう。
重要なのは石版回収の任務を帯びたハウンドたちがいまここに集っている、その事実なのだから。
「研究者さんたち、徹夜続きで死にそうな顔してたけど報われるといいね! それにしても、すっごく風が強いなぁ……わわっと!」
尾根からの強風に煽られてヴィッシュの短躯がフラフラと揺れる。風の精霊の影響が強いアルピニオ地方のなかでもこの周辺はその傾向が顕著であるらしく、年間を通して悪天候でこのような風が常に吹き荒れているという。
ある意味で『風の魔法使い』の遺産が眠るに相応しい場所ともいえた。
「雷もゴロゴロいってるし、はやく回収しちゃおうよ。確か『最後の試練』ってのをやるんだよね?」
遺産を得るには魔法使いの課した試練を突破しなければならない、というのが研究者たちの仮説だった。
それを証明するように山の壁面に掘られた石碑にはルミナの力に反応するX意匠のようなものが組み込まれている。どうやらそれが試練を開始する魔法的な装置となっているようだ。
そして試練を開始したら『制限時間のうちにこれを突破』しなければならない。もし失敗したならば、次に挑戦できるのがいつになるのかは不明だった。
◆風雲
「……じゃあ、いくよ?」
魔法使いと同じ風属性のパドマであるヴィッシュが装置を起動させる――と、崖下から何か物音が聞こえてきた。
ハウンドたちが覗き込むと崖の岩肌に偽装されていた扉が開かれ、レバーのようなものが僅かに覗いている。その数は全部で三つ。
このレバーを『すべて同時に押さえる』ことで本命である石版の保管庫が開放される――それが各種文献から研究者たちが導き出した最後の試練の内容だった。
「やったね! じゃあさっそく降りて……わっ! 風が……!」
ハウンドたちを猛烈な風圧が襲った。装置の起動に合わせ、先ほどまでとは比較にならない暴風が断崖の周囲に吹き荒れ始めたのだ。そして上空の雲間には稲光が多数瞬きだした。
明らかに作為的な天候の変化――これもまた試練のうちなのだろう。
「聞いてないよー! でも急がないと……って、こ、こんどはドラゴン!?」
ヴィッシュの声に空を見上げると、痩身のドラゴンがこちらに向かって急降下してきていた。
青地の体躯に稲妻のような青白い鱗を浮き上がらせた美しい姿――ここにもし知識のあるものがいれば、これが風属性のミドルドラゴンであるサンダードラゴン、そのダークサイドだと理解しただろう。
吹き荒れる暴風と雷、そして襲い来るダークサイド・ミドルドラゴン。
はたしてハウンドたちはこの極めつけの悪条件のなか、目もくらむような断崖絶壁に眠る石版を回収することができるだろうか?
選択肢
a.断崖に降りる | b.石版を回収する |
c.仲間を援護する | z.その他・未選択 |
マスターより
ネイサン・午睡丸です。
目的は石版の回収でありドラゴン討伐は成功の絶対条件ではありません。舞台状況が特殊かつ高難度なのでプレイングの方向性や力加減に若干の注意が必要でしょう。
また、かなりの山奥でコネやミニオンズも機能しにくくなっています。
ちなみに暴風と雷そのものは自然現象ですが、その発生と維持に魔法的なものが介入しているので試練終了まで収まることはありません。
a
何らかの方法で断崖へ降り、レバーを押さえ続ける役割です。
崖下に落下すればシナリオからのフェードアウトもあり得ます。3名以上がこの選択肢を選んだ場合、MS判断によってレバー役と援護役がフレキシブルに変更されます。
b
保管庫が開いたのち、そこから石版を回収する役割です。
あくまでユーザー情報ですが保管庫もまた断崖の岩肌のどこかにあり、石版はかなりの重さとなっています。
引き上げにも工夫が必要になるでしょう。
c
中腹に残るかあるいは移動しつつ、仲間の石版回収を援護する役割です。
それでは、みなさまの相続プレイングをお待ちしています。
※【SubEpisode13】魔法の頂点を極めろ 関連シナリオ
シナリオの結果に応じ、魔法が限界突破されます。
登場キャラ
◆試練
「ドラゴンめ、みんなの邪魔はさせな……どわわーっ!」
雷鳴が轟くなか暴風でヴィッシュが吹き飛ばされる。幸いにも転落は免れたが、どうやら試練においては役に立ちそうにない。
「無理をするな、ドラゴンの相手は引き受けよう。足止めしきれば私たちの勝ちだと信じてるぞ」
ベル・キシニアはそう告げて空中を駆けていく。最後の試練に備えてあらかじめ複数の魔法を成就しておいたのだ。
「任せたぞ、ヤツの弱点は角と角のあいだの部分だ!」
暴風に負けじと
リディオ・アリエクトが叫んだ。ドラゴンの頭部の醜くねじれた二本角の根本。古のCROSSを用いたシグナルフェザーによりそこが弱点だと見抜いたのである。
だが、そうした細部は非常に狙いにくい場所でもある。
「でも分かってるのとそうじゃないのは大違いさ。風や雷が気になるけど、余裕があれば狙ってみるよ!」
魔法を成就し終えた
ユミル・エクレールがイーグルドラゴンを駆って断崖へと飛翔した。だがスモールドラゴンの体躯でも荒れ狂う風の影響は免れず、その軌道が大きく膨れあがる。
「すごい風だ……確かに、『風の魔法使い』とやらの遺産が眠るのには相応しい場所だな!」
トウカ・ダエジフが感嘆の声をあげる。風に煽られて断崖から落下すれば無事では済まないだろう。
「断崖に設置されたレバーと吹き荒れる風。しかもタイムリミットあり、か……確かに無茶だが、やるしかないな」
覗き込んで状況を確認していた
ソレイユ・ソルディアスがそう頷いた。すでに魔法の成就を終えて準備を整えている。
「しかし、随分と厄介な場所に隠したもんだ……ま、悪用を恐れたなら仕方ないけどさ」
三つのレバーばそれぞれ高さや間隔をかなり離して設置されていた。つまり『解除には必ず複数人が必要』なのだ。
「逆に言えば、この試練を達成して正しさを証明すれば新たな魔法が得られる……ならば死力を尽くすのみだ!」
トウカの言葉に全員が頷いた。
「そういうことだな。それに個人的にもシグナルフェザーを強化できると聞いちゃ黙ってられないからな」
「はは、確かに。なんたってリディ兄の得意魔法だしな!」
「それにエエンレラもありますよ。こちらも結構大事ですからね」
シェール・エクレールはロープの先端を自分の身体に結びつけていた。先端にアンカーを備えた矢を丈夫そうな木に打ち込んで固定し、そこから伸ばして命綱としたのである。
「ああ、確かにエエンレラも便利だしな。状況は厳しいが、何とか成功させたいところだ」
「ではドラゴンが邪魔しないようにここから援護します。まあ最低限、目的が達成出来れば良いわけですしね」
ノーラ・ロネがドラゴンボウに矢をつがえて言った。あくまで優先は石版の回収、ドラゴンの討伐は二の次三の次だ。
「では私たちは石版の回収に回ろう。力仕事なら任せろ!」
「そうだ任せろ! 上達したアースランニングで断崖絶壁だろうが俺はやるぜ!」
暴風のなか腿上げによるアップに余念のない
シーザー・ハスキーヌ。彼はトウカとともに保管庫が開くまでこの場で待機だ。
「よし、じゃあ角笛で合図するからタイミングを合わせてくれ」
「わかった、ソラ」
「了解です!」
こうして三人は各々の方法で断崖を降りていった。
◆開放
「……さて、少し残念だが今回は撃破ではなく足止めに徹せてもらうぞ!」
「シャアッ!」
ベルが空中でドラゴンを迎え撃ち、交差する。魔法の直刀による一撃は鱗によって阻まれ、対する鋭利な爪も空を裂くに留まった。
「おっと」
すかさず向きを変えて次の攻防に備えるも、風圧によってベルが体勢を崩した。とはいえそれはドラゴンも同じらしく暴風に煽られて小回りが利かない。
いかにミドルドラゴンといえど、ここまでの暴風となると飛ぶのがやっとなのだろう。
「……射ます!」
この機を逃さず、警告の声とともにノーラが援護のドラゴンアロー(竜殺矢)を放つ――が、荒れ狂う風に流されてその矢は崖下へと消えていった。
「安心するのは早いよ! 美味しく食らってやるから私らの晩飯になりな!」
次の刹那、ドラゴンの上方からユミルが姿を見せた。イーグルドラゴンの透明化を利用した位置取りだ。
そのまま空中でもつれ合うようにしてドラゴンランスの一撃を見舞う。
「ガアッ!」
「うおおっ!?」
しかし接触の勢いで互いに体勢を崩し、二体のドラゴンは錐揉みしながら落下を始めた。やがてどうにか離れ、互いに飛行姿勢を持ち直す。
「あ、危なっ! 墜落するかと思った……」
地に足をつけていても浮き上がるような風圧となれば、いわんや空中においての影響は絶大である。煽られて攻撃の精度は大きく落ち、飛行や身のこなしも普段どおりとはいかない。
「なるほど、互いに十全に動ける状況ではないか……しかしそれも戦いのスパイスだな」
だがベルはこの風変わりな状況に心底楽しそうな笑みを浮かべた。
空中戦の傍ら、断崖に降りたハウンドたちもまた奮闘していた。
「くっ、これは確かに危険ですね……」
シェールは岩場に慎重に手を掛ける。彼女の身軽さをもってすれば本来問題ないのだろうが、この暴風がそれを困難にしていた。
「次の足場は……うわっ!」
その刹那、風でシェールの身体が浮き上がった。三点支持の姿勢も維持できずあえなく滑り落ちていく。
「おい、大丈夫か!?」
魔法の箒に跨ったリディオが旋回して救助に向かう。彼は装備した鎧の能力によって風圧や雷に耐性を得ていた。
「だ、大丈夫です……!」
見ればシェールは命綱に吊られる形で完全な落下を免れていた。とはいえレバーよりもかなり下に位置してしまっている。
「すぐに戻りますから気にしないでください! とはいえ、今度は登りですか……」
小型の魔法の箒を背負ってはいるが風に煽られれば同じことである。あくまで最後の手段に温存しておくべきだろう。
「大丈夫そうだな。ソラも順調そうだ」
ソレイユも同じく抵抗を得たうえで箒を使用し、すでに持ち場のレバーへと到達して岸壁に取り付いていた。魔法の箒はその性能上、長時間の静止飛行ができないからだ。
「よし、俺も持ち場に向かうか……うおっ!」
リディオが再度旋回して箒の高度を上げたその時――落雷が彼に命中した。
雷の威力は箒にまで伝わり、破損や引火こそしなかったが一時的に飛行能力を失い始める。
「おいおい……いま落ちる気はねえぞ!」
「リディ兄! こっちだ!」
義兄の異変に気付いたソレイユが腕を差し伸ばした。リディオは箒をどうにか制御し、義弟の方へと懸命に近づいていく。やがて。
「……ふう、ギリギリだったな」
リディオがソレイユの手を取るのとほぼ同時に箒は飛行能力を失っていた。もし落下していれば復帰に多大な時間を要し、試練を失敗していただろう。
「助かったよ、ソラ。やはりもつべきは頼れる弟だな!」
「だろ? ……なんてな! このあいだのお返しだよ……それよりリディ兄、早いとこ自分で崖に掴まってくれないと……お、重い」
「おっと、悪い!」
こうして暴風と雷に悩まされつつも、ハウンドたちは出来うる限り迅速にレバーへと到着する。
「よし、みんな位置についたな? それじゃあ……」
ソレイユの角笛が風音に負けじと三度鳴り響き、三度目を合図として三つのレバーが同時に下ろされた。
するとまたも仕掛けの音が鳴り響き、断崖に隠されていた保管庫の扉が開かれた。
◆回収
「……開いた!」
断崖を覗き込んでいたトウカが叫んだ。保管庫は三つのレバーの中央付近に位置していたが、同じく巧妙に隠されておりこうして開かなければ発見はできなかっただろう。
「よし、行くぞ!」
「俺は運ぶぜ! 俺は運ぶぜ!」
トウカとシーザーが岸壁を走り始めた。アースランニングによる特殊歩行だ。加えてアースアーマーによって風圧への抵抗も得ており、ものの数秒で保管庫に到達する。
「これが『遺産』か……」
トウカが内部に多数の石版を発見した。一つ一つはひと抱えほどだが、これだけの量となるとその重量は相当なものになる。
シーザーが試しに数枚を纏めて担ぎ上げてみた。
「うおっ、さすがにズシッとくるな……」
特殊歩行といえど重力そのものを無くせるわけではない。このまま担いで戻った場合、石版の重さ自体は下方へとかかり続けるだろう。
バランスを崩して転倒して石版を落下させれば破損させる危険があった。
「……よし、プランBに変更だ」
「オッケー、じゃあ私はここで結んでおくよ」
シーザーからロープを受け取り、トウカはその先端に石版を括り付けだした。さらに持参した自分のロープにも別の数枚を固定していく。
その間にシーザーはロープを手に岸壁を駆け登っていった。やがて元いた場所の樹木にロープを引っ掛けて戻ってくる。
「いいか? 保管庫から出すぞ!」
風音に負けじとトウカが叫び、結んだ石版を保管庫から降ろした。ロープが張り、逆側を掴んだシーザーの身体を上方へと引っ張る。
「じゃあやるぞ!」
「うおおー! 俺はやるぜ! 俺はやるぜー!」
トウカもロープを掴み、二人がかりで下に引っ張る。これで一人あたりの荷重は半分で済み、なおかつ石版を落下させるリスクも軽減できる。
これこそがプランBであった。
一方で、石版回収までの時を稼ぐべくドラゴンとの攻防も続いていた。
「こっちにこい!」
ベルが風上からハンティングネットを投擲する。広げてもドラゴンの全身を包み込むことはできないが、その注意を断崖から逸らすぐらいは可能だ。
「こんどは……当ててみせます!」
そこにノーラが何度目かの竜殺矢を射掛けた。風圧で矢の軌道は予想し得ない方向に曲がるが、幸いにもドラゴンの胴を捉える。
「ガアッ!」
「もらった!」
そこにユミルのドラゴンがチャージングで突撃する。風に煽られる所為で数少ない攻撃チャンスだが、仲間との連携もあって確実に手傷を重ねていた。
「当てにくいですね。影を射抜ければいいのですが……」
スターライトを使いたいノーラだがドラゴンの影は遥か崖下だ。ここから狙うには遠すぎるし、飛行速度も速すぎるなどで状況が噛み合わない。
「ジャアッ!」
「はあっ! ……回収まであと少しだ。いま少し時間を稼ぐぞ!」
迫りくる牙を紙一重で躱して斬撃を見舞い、ベルが仲間を鼓舞する。横目で見る限りトウカとシーザーによる回収作業もすでに何巡か目に入っているはずだ。
試練は確実に終了に近づいていた。
◆遺志
急に、風が弱まった。
「うおおー! 俺はやったぜ! 俺はやったぜー!」
「みんなー! 終わったよー!」
石版を掲げるシーザーと試練の終了を告げるヴィッシュの声がよく聞こえた。終了時間とともに保管庫は再び閉じられ、暴風と雷も普段の状態へと戻ったようだ。
ハウンドたちは試練を突破したのである。
「あとはドラゴンをなんとかして撤収だな! ここは任せたよ!」
石版を仲間に託してトウカは再び断崖を走った。おそらく試練とドラゴンは無関係で、たまたま居合わせただけの可能性が高い。であれば、天候が元通りになっても危険な状況は続いている。
「では、お先に戻りますね」
シェールは温存しておいた魔法の箒に乗って速やかに戻っていく。ソレイユも休めておいた箒を用いて岩壁から離れた。
「やれやれ、登りは俺だけか……」
落雷を受けた箒は不安があるので使わず、リディオは壁を登り始める。とはいえ彼の身軽さをもってすれば問題はないだろう。
「……リディ兄! 後ろ!」
ソレイユが義兄の危険に気付き警告を発した。彼へと向かってドラゴンが迫っていたのだ。
「させん!」
すかさずベルが割って入る。突き出された角を直刀でいなし、その根本へと斬撃を叩き込んだ。
「ギャオッ!」
「やれやれ……私に見惚れていると、死ぬぞ?」
怒りに目を見開くドラゴンの真下から別の影が急上昇してきた。
「さあ質問だ! お前は煮るのと焼くのどちらが美味い!?」
ユミルとそのドラゴンがチャージングによる渾身の一撃を見舞う。たまらず高度を上げて逃れるドラゴンだが――そこへノーラとシェールによって矢が射掛けられた。
すると。
「あっ……こら! 戻ってこい!」
ユミルが慌てる。射抜かれたドラゴンが急速に失速し、崖下へと降下していったのだ。
手傷によって飛行に支障が生じたのか、あるいは不利を悟って逃走したのか――ハウンドたちにその判断はつかないが、驚異が去ったことだけは確かである。
「狩りきれなかったのは残念ですが……」
「まあ目的は達成出来たわけですしね」
「うう……せめて肉を置いていけー!」
ひとまず納得するシェールとノーラと、諦めきれないユミルだった。
――後日。
回収された石版を研究者たちが解読したところ、伝承から推測されていた『ゼウス』、『シグナルフェザー』、『エエンレラ』に加えて『サイレンス』に関する秘術までもが発見された。
さらに解読を進めると、どうやら『風の魔法使い』とは単独ではなく、複数のコモンの集合像であることが判明してきた。
種族の垣根を超えて互いに協力し、アルピニオ地方の危険な魔物から民草を守護した者たち。
だからこそ、その試練も協力を前提とするものだったのだ。
そしてその遺志はいま、この時代のハウンドたちへと受け継がれるのである。
8
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参加者
| | a.俺もaでいくか。
| | リディオ・アリエクト(da0310) ♂ 26歳 人間 カムイ 風 | | |
| | a.俺はレバーを担当する。角笛で合図するからタイミングを合わせてくれ。
| | ソレイユ・ソルディアス(da0740) ♂ 21歳 人間 ヴォルセルク 陽 | | |
| | b.俺は運ぶぜ!(アースランニングで移動)
| | シーザー・ハスキーヌ(da0929) ♂ 25歳 カーシー(大型) ヴォルセルク 地 | | |
| | c.ドラゴンの相手は引き受けよう。足止めしきれば私達の勝ちだと信じてるぞ
| | ベル・キシニア(da1364) ♀ 28歳 人間 ヴォルセルク 風 | | |
| | b.では私は石版回収に回ろう。
| | トウカ・ダエジフ(da1841) ♀ 27歳 ダークエルフ ヴォルセルク 地 | | |
| | a.私はaでいきます。
| | シェール・エクレール(da1900) ♀ 19歳 人間 カムイ 風 | | |
| | c.私はドラゴンと戦うよ。
| | ユミル・エクレール(da1912) ♀ 23歳 人間 ヴォルセルク 陽 | | |
『風』の遺産を求めて
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アルピニオ地方に残る『風の魔法使い』の伝承。その遺産を求めて、ハウンドによるトレジャーハントが始まった!
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