オープニング
◆
さて、パイロ・シルヴァンという男がいる。
ローレックの街、いやオーディアを守る、金羊騎士団の団長だ。
そして、サーディアという女性がいる。
呪いの書を持つデュルガーだ。
雨の昼下がり、ふたりはローレックの街の外に立つ。
ゆるやかな起伏だけの平野だ。
「さて、私としてはそろそろ頃合いだと思っていたのですよ」
サーディアが長剣を抜き放つ。相当な品だろう。
「討伐する。害はないらしいが‥‥呪いの書を渡してもらう。騎士団総出でも、数で圧せるわけではないな。タイマンとさせてもらおう」
パイロは鎚矛を構えた。魔法のかかった品だ。
「ねだるな、勝ち取れ──と、言いますよ」
サーディアが一気に間合いを詰めた!
◆
予めパイロはハウンドたちに、この時刻に来るように、依頼を出していた。
そして呪いの書を回収せよ、と。
ハウンドたちが見たものは、満身創痍‥‥だが立っているパイロは、全身を赤く染める。
「選手交代だ。呪いの書がある間は、ひとつの種がエクスマリスに屈すること、忘れるな‥‥」
パイロは倒れた。
「やめて! サーディアさま‥‥このひと、ルミナの才ないよ?」
叫ぶ、シフールのリメーラ、サーディアを慕うシフールだ。
「それが武人のありようですよ。邪神さまから賜った書を奪うものには剣をもて報いるべし、と」
「ほんだら、じゃしんのあやつりにんぎょうかい!?」
シフールのガーベラも叫ぶ。
「さて、ハウンドのみなさん、戦いますか? 邪神の配下と戦うのです、数で圧してもいいですよ‥‥できるのなら」
サーディアは言って、剣の血をひと振りではらった。
左手が動かないようだ。パイロも一矢を報いたのだろう。
だが、一瞬サーディアの体がぶれると傷は一瞬のうちに治っていた。
「こちらは万全です。戦いましょうか」
そう! 挑まずにはいられない、最強の最前線!
そこへのパスポートがハウンドに渡された。
ハウンドの戦いが始まる。
選択肢
マスターより
今回はバトルものです。
サーディアとの戦いは終る予定です。
パイロから呪いの書を手に入れるという依頼をみなさんは受けています。
どう戦い抜き、ケリをつけるのか。明日は見えません。
では、ご参加をお待ちしています。
登場キャラ
◆戦いは続く
「サーディア、こういう日が来るとなんとなく思っていた‥‥言葉はいらんな。武人なら拳で!」
『デュルガー』サーディアを前に、
トウカ・ダエジフが胸を叩き、絶叫をあげる。
サーディアは動じない。
もはや語るまい──ということだろう。
そして、雨は上がった──
エルマー・メスロンがウェザーコントロールを使い、荒天を晴天へと変えたのだ。
エルマーはイーグルドラゴンと共に姿を隠している。隠形を越えた透明化である。ただ、サーディアには通用しない。呪文を使ったのだ、位置は明確に分かる。
そういう前提はさておき、ドラゴンがサーディアに通用する手段はファングひとつしかない、ドラゴンでどれだけ当てられるか分からない。
「‥‥気は進みませんけれど、やる以上は全力ですね」
自分に言い聞かせる、
リュドミラ・ビセットだった。
まだ、傷を負ったものはいない。
ゆえに銀の矢を番える。
彼女の弓が唸りをあげた。
軽々と躱され、そこに、
マサカ・ダエジフが飛び込む。
「甘い感傷など侮辱!」
二刀流を使い長短の銀の剣を使い果敢に攻め立てる。
サーディアも剣を振り、確実に弾いていく。足さばきが攻撃をさせない間合いを維持していた。
戦技魔法ではない、体に染みついた戦技だ。
「ご老体ばかりではないべ!」
利き手からアイアンフラッシュを展開した、
エルシー・カルが打ちかかる。
「おらの防御力と勝負だべさ」
◆二撃必壊
しかし、サーディアは余裕だ。
「では、二撃で」
「舐めるな!」
エルシーが闘気を高める。
サーディアが余裕でエルシーの間合いに入る。
「ガードの弱点は避けないこと、故に」
エルシーに対して、サーディアは剣を振り下ろした。
「大技も決まる」
ビッグショルダーの守りを打ち抜き、エルシーの体にしびれが走る。
続く一撃。
エルシーの体をおおう完全な鎧は破壊された。
サーディアの本気は、鋭く重い一撃だ。
雷撃が振ってくる。
打ち下ろす、
フルミーネ・ヴェンティのゼウスだ。
避けることも、反応することも出来ない一撃。
サーディアはゼウスを剣で斬り、威力を削いだ。
「え?」
フルミーネの目は、信じられないものを見る目だ。
だが、トウカが飛びかかる。
「全ては斬れないだろう!」
全力で間合いに飛び込み、バサラフォームを展開。
「ドラゴンバスターシールド!」
トウカの切り札だ。
◆奥の手
間合いはサーディアの剣より内側だ。
だが、サーディアのコートが動いた。
まるで蠢く影のように、ドラゴンバスターシールドの杭を受け止める。
「これは邪神様から賜った衣です。デュルガーとしての力を発揮した私を止めるのは難しいですよ」
サーディアの奥の手だ。
それでもエルマーは、愛竜を駆って飛び込む。
「挑まずにはいられません、吾輩も!」
衣の一部を千切り、ジュソの媒体としようとする。
もっともサーディアは今まで魔法を使っていないので、魔力は充溢している。
故にジュソは無力。
「回復などしていませんよ?」
「‥‥」
エルマーはパイロの攻撃を治したのは違うのか、そうツッコもうとする。
だが、図書館にあったひとつの言葉を思い出した。
「空蝉ノ体か!」
サーディアは、今まで疑似的にコモンの肉体を構成していたのだ。その肉体を破棄して、無傷のデュルガー体に切り替えた。
「おらはまだ立ち上がれるべ、そして避けないべ」
エルシーがアイアンフラッシュを手に、サーディアに突入する。
「最後の武器は勇気だべ!」
サーディアの眼は言っていた。
──受けて立つ、と。
カウンターアタック! そしてバーストアタック。
一撃がアイアンフラッシュに決まれば、エルシーは成すすべはない。
異音がした。
かわしたサーディアの一撃が、アイアンフラッシュを粉砕したのだ。
「させないよ!」
マサカが脇からサーディアの隙目がけて飛び込む。
◆雷のプレゼント
その直前の空中へのアイコンタクト。
フルミーネ、まとめて撃て、だ。
「──ゼウス」
サーディアが如何に神速でも、三回の攻撃を同時にいなせない。
否、四段攻撃!
リュドミラが矢を射こんだのだ。
マサカが体ごとぶつかり、ゼウスの電撃を身に受けた。
「だが戦える」
不敵な笑みを浮かべるマサカ。
「その思い受け取った! ばあちゃん」
トウカが拳を撃ち込む。
サーディアのみぞおちを捉えた。
「やめてサーディアさまを傷つけないで!」
シフールのリメーラが戦いに割って入ろうとする。
同じくシフールの
ガーベラが彼女を止めた。
ガーベラはリメーラの肩をつかむ。
「かのじょがえらんだたたかいや。まけるもかちも──」
そう言うが、ガーベラの手は震えている。
幾条もその間に稲妻が──ゼウスが撃ち下ろされた。
サーディアはその攻撃を剣でさばく。
しかし、さばききれなくなる。体力の限界だ。
単純に反撃できない距離で、延々攻撃をしかける。
シンプル・イズ・ベスト。
◆さよならの季節
「やめましょう、サーディアさん。戦う事もないですよね‥‥?」
リュドミラがパイロの欠けた腕にリジェネレイトをかけた後、サーディアに呼びかける。
「いえいえ。私が戦うのは誰かの命だからではなく、私が戦いが好きだからですよ」
救いようがないですがね、と笑うサーディア。
「あなたたち『戦士』が人々のために戦えるほど、崇高ではないですね。まったくもって、私はそういうのは苦手なタチでして」
サーディアの首を抱くリュドミラ。その頬には涙が流れる。
「酒を飲みたかったな。もう一度、楽しい一晩をすごせたろうに」
トウカが言って銀の短剣をサーディアの心臓らしき部分に押し当てる。
「では、さよならだな」
エルマーが背中を向ける。
「いい戦いでした。ご武運を」
サーディアの言葉が終わって一呼吸後、差し込まれたダガーにより、サーディアは浄化された。
「終わった‥‥?」
フルミーネが、地上に降りてきた。
彼女の小物入れもカラッポだ。もう、魔力を回復する秘薬もない。
「ああ、負け逃げか」
◆戦いはつづく──
「サーディアさま、幸せでしたか?」
リメーラが天を仰ぐ。
「しらんがな。でも、さーでぃあは、たたかっているときが、いちばんうれしそうやったなあ」
ガーベラはリメーラに背を向けたまま。
ガーベラは死んだらそれまでだ、と思っている。
彼女のおぼろな記憶では、サーディアは生き続ける。
誰かが覚えている限り、サーディアはあり続けるのだろう。
「トウカ、今日は飲むよ」
マサカが孫娘に声をかけた。
「百年生きているとこういう夜もあるものだから」
「好きだねえ。おばあちゃん」
トウカが嬉しそうに、だがどこか寂しげに笑う。
「酒を持ってくるべきだったよ、末期に一杯したかった」
「まったくとんでもない相手だったべよ」
エルシーが武器防具のカケラを集めながら、笑みを浮かべる。
「まあ、負けたと思うまでコモンは負けないべよ──だからおらは負けてないべ」
重装甲を破壊できる腕前、戦技を使いこなす相手に今後も会うかもしれない。
「ああ、強くなりたい」
エルシーは宵の明星にそう誓うのだった。
俺たちは──ハウンドたちは、まだまだ強くなれる。
吠える、そして走る竜犬の明日はどっちだ!
◆はじまり
サーディアの遺品から一冊の本が発見された。
この『呪いの書』。次はいかなる種が、種の呪いから解き放たれるか、知る者は──コモンの中にはいない。
7
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参加者
| | b.よろしくお願いします。
| | リュドミラ・ビセット(da1372) ♀ 23歳 ライトエルフ カムイ 火 | | |
| | c.(我が竜よ、行くと決めたら躊躇せず一気に行くのだよ。)
| | エルマー・メスロン(da1576) ♂ 51歳 ダークエルフ パドマ 陽 | | |
| | a.言葉はいらんな。拳で語るのみだ!
| | トウカ・ダエジフ(da1841) ♀ 27歳 ダークエルフ ヴォルセルク 地 | | |
| | b.雷霆万鈞、隅々まで焼き尽くして進んぜましょう。
| | フルミーネ・ヴェンティ(da1894) ♀ 28歳 ライトエルフ パドマ 風 | | |
| | a.前で盾役だべさ。
| | エルシー・カル(da2004) ♀ 21歳 カーシー(大型) ヴォルセルク 地 | | |
| | a.この時が来る前に、もう一度だけ酒を酌み交わしたかったよ。
| | マサカ・ダエジフ(da2181) ♀ 51歳 ダークエルフ ヴォルセルク 地 | | |
サーディアとのラストバトル
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サーディアの呪いの書を確保せよ‥‥ハウンドギルドに金羊騎士団団長パイロから依頼が来た。ハウンドよ、サーディアとの最強の最前線に挑め!
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