Love and War

担当ぽんぽこ
出発2021/11/29
種類ショート 冒険(討伐)
結果成功
MVPマサカ・ダエジフ(da2181)
準MVPティファル・クラウディア(da1913)
ケイナ・エクレール(da1988)

オープニング


 月は天頂にあり、まだ夜の闇が白む気配は無い。
 寝静まった街の一角──寂れた広場のベンチに二つの影があった。

「ハンカチ……ありがとうございました……」
 涙に濡れたハンカチを手に。

登場キャラ

リプレイ


 ピシッと魔法の杖を構え──。
「ゼウス☆」
「ぬおおおお?!」
 アンカの構えた嵐竜の杖から迸る雷撃。
 饒舌に語る不意を突かれ、鎧の男が悶絶する。
「き、君!悪党の話は邪魔しないのがお約束ってものだよ!」
 黒い煙を吐きながら、鎧の男が抗議の声を上げる。
 しかし、アンカは笑顔のまま辛辣に言い放った。
「知りません。貴方、うざったいんです」
「ええぇ……最近の子は怖いなあ。親の顔が見てみたいよ」
 引き気味にアンカを眺める鎧の男。
 そのやり取りにアンカの姉──トウカは、傍らで剣を抜き放つアンドレの脇腹を小突く。
「父よ、言われているぞ」
 何を隠そう姉妹の実父はアンドレである。
 長らく離ればなれであったが……やはり、父は父だ。
 少しは思う所あるだろうか?──と言う表情でアンドレを見やるトウカであったが、当の実父は目頭を押さえていた。
「アンカ……強く育ってくれて父は嬉しいぞ」
「反応としてそれは合ってるのか?」
 感無量の父に、トウカは半眼の眼差しを向ける。
 ──刹那。
 三人のいる場所へ、シスルの放った尾がそれぞれに突き刺さった。
「さて、あの甲冑めをぶん殴りに行きたいところだが」
 その場から飛びずさったアンドレ親子。
 アンドレは娘達を庇う様に前に出ながら、再び雄々しく剣を構える。
「まずはシスルをどうにかするのが先か」
 先程までの姿が嘘の様に凛々しい顔つきだ。
「愛故に、か……よくわからん!だが、戦いは私の領分だ!」
 トウカも激しい闘志を燃やすのであった。


「──あの黒鎧……デュルガーでしょうか?」
 シスルが放つ尾から身を隠しながら。
 シェールは、内心の疑問を口にして反芻する。
 その馴れ馴れしい雰囲気に違わず、鎧の男から明確な敵意は感じられない。
「ですが……」
 その内側には確かに、得体の知れない何かが渦巻いているのを感じる。
「あれは絶対に逃がしてはいけない相手です……!」
 しかし、まずは──。
「シスルさんの方を止めてしまわないと」
 エエンレラで仲間達に浄化の力を付与しながら。
 シェールの姿は何時の間にか、戦場の中へと溶ける様に消えていた。


「……恋愛の結末としては悲しいお話ね」
「ふむ、なんとも後味の悪い話になりそうじゃのう」
 崩れた石壁を盾にしながら。
 表情を曇らせるティファルの言葉に、傍らで身をかがめるケイナは嘆息交じりに頷きを返す。
 ──四本の尾から繰り出されるシスルの攻撃は鋭い。
 しかも、それぞれの尾が標的を選んで、後衛にまで攻撃してくる強敵だ。
 それでもティファルが同情的なのは「皆に笑顔でいてほしい」と言う彼女の性分だろう。
 一方のケイナが気にしていたのは、やはり鎧の男の存在であった。
「少女を魔物に変える……あの鎧の男、その様な魔法を使うのじゃろうか?」
 それは禁忌の魔法だろう。
 コモンには到底扱えない──邪悪な者達の力だ。
「きっと、あの男こそ倒すべき敵だわ。その為にもまずは彼女を止めないと……」
 ティファルは手にした杖を握りしめる。
 まずは捕まったヘイゼルを助けなければ、彼も魔法に巻き込んでしまうだろう。


「ふむ、体毛に絡まれているのなら──」
 崩れた柱の陰から顔を覗かせたマサカは、思案する様に頬へと指を添え。
「火で炙るのが有効かな?」
 事も無げに物騒な作戦を口にしていた。
 ヘイゼルにこれが聞こえていたら、全力で頭を振った事だろう。
 しかし悲運にも、この場には優しくない者達しかいなかった。
「まあ……『多少』は火傷してしまうだろうが」
「構いません。宅のヘイゼルはそんなにやわではございません」
 マサカの案を、傍らにいたグレイテルが快諾する。
「旦那さんの事を信じて戦う……これが愛なんすね!」
 恋愛経験値一桁のパルフェも、盛大な勘違いと共に目を輝かせていた。
 キラキラ。
「よし……それじゃあサポートよろしく」
 手にしたトーチに火を点けるマサカ。
 ──ここにヘイゼル救出チームの戦いが始まるのだった。


 艶やかな黒い毛並みに、流線形のしなやかな体つき。
 その獣からはどこか女性的な雰囲気が感じられた。
「なかなか手強いべ……!」
 狩猟を得意とするエルシーだが、当然、こんな獣と対峙した経験はない。
「この!」
 振り回す棒が空を薙ぐ。
 魔法と戦技で守りは万全だが、相手はなかなかに素早い。
 しかし、エルシーの闘志は燃えていた。
「この娘はきっと騙されたんだべさ!あいつをやっつければ元に戻るかもしれねえ!」
 そんなエルシーの奮闘を見て、鎧の男が笑声を零す。
「騙してはいないよ。私はシスル君の本心を応援しただけさ」
 ──まあ、彼女が思った形とは『少し』違うだろうがね。
 最後に、意地悪く付け加える。
「それを騙したって言うべさ!──お前、一体何者なんだべ?」
 エルシーの問いに鎧の男は静かに礼を返す。
「私はデュルガー、リベルダース」
 鎧の奥底から、どろりと悪意が溢れ出した。
「君達のファンの一人だよ……ハウンド」


 時は少し遡って──。
 鎧の男へと続く道を切り拓く為、シスルへと果敢に挑むトウカ。
 もう何度目か、攻撃に駆け出した瞬間。
「ぐっ!?」
 後ろから首根っこを掴まれ、トウカの体が大きく仰け反る。
 振り返ると、そこにはニコニコ顔のアンカの姿があった。
「げほ……こんな時に悪戯か?」
「ごめんなさい。姉さん、夢中で私の声が聞こえてないみたいだったもので……アレは取れましたか?」
「アレ?……ああ、アレか」
 真心2割とおざなり8割の謝意をトウカへ伝え、アンカは彼女が戦闘の間に手に入れていたシスルの体毛を受け取った。
 ──そして、現在。
「さて……御自慢の毛並みが命取りでしたね」
 アンカは体毛を握りしめると、魔法の準備へ取り掛かっていた。

 一方、前線では。
 漆黒の尾から繰り出される一撃が、マサカの体を激しく撃っていた。
 魔法で強化しても、その尖った尾を完全に防ぐ事はできない。
 しかし、それでも──。
「横恋慕の挙句に獣と化したか。なるほど、その気持ちはわからん。わからんが……そのままにもしておけんのでな」
 果敢に前進したマサカは、手にしたトーチをシスルの体へ突きつける。
 その炎を嫌がり、距離を取ろうとするシスル。
 ──刹那。
 アンカのジュソの魔法が成就し、シスルの動きが明らかに鈍くなった。
 そして、その隙を見逃さず。
 澱んだ空気を鮮やかに切り裂く一矢が、シスルの脚を見事に射貫く。
 獣の知覚からすら姿を隠し、その死角より矢を放ったのはシェールであった。
「マサカさん!」
「今です……!」
 片手で魔法の杖を構えたアンカが、マサカを鼓舞する様にその名を呼んだ。
 シェールの透き通る様な真っ直ぐな瞳が、力強くマサカを見つめる。
 今こそが好機だ。
「やってみせねばな……!」
 ついに、マサカの手にした火が獣の艶やかな黒毛へ燃え移る。
 悲鳴の様な咆哮を上げ、シスルは消火の為に地面へと体を擦り付けて悶え始める。
 そして、この機を逃さず。
 激しい攻撃に守勢気味だった他のハウンド達も、一斉に攻勢へと転じた。
「──おおおおっ!!」
 雄々しい咆哮と共に、その先鋒を務めるアンドレ。
 シスルとの間合いを跳躍する様に詰める彼の手には、炎を映して煌めくティラノシルバーの長刀があった。
 重く、鋭い斬撃。
 彼の直刀が深々と食い込み、斬りつけられた尾の一本が力無く地面へと横たわる。
「俺の見立てでは、この尾こそシスルを魔物たらしめるモノ。残りもやってみるしかないか……!」
 それが正解かは分からない。
 ただ、今は哀れな娘を救う為に『挑戦』する事が今は肝要なのだ。
 彼の刃に付与されたミタマギリの魔法も、その意思の表れであろう。
 そして、そんなアンドレに続くのはエルシーだった。
「マサカ!一度後ろに下がるだべ!」
 大小の傷を負った仲間を庇う様に前へと出て、尾の一撃を真っ向から鎧で受ける。
「そんなもの、通さないべさ!」
 委細構わずとばかり、力強く前へと勇躍するエルシー。
 万力の様な力で握りしめられたアイアンフラッシュにはスマッシュが付与済みであり、しかも、すでに十全の力が込められていた。
「どりゃああああ!」
 解き放たれる全力。
 それはエルシーの巨躯を一撃で石畳へと叩き伏せた。
 ──そんなシスルへと、グレイテルとパルフェが飛びかかる。
「あ、あっつ!!」
 まだ炎の残るその体に、思わず足踏みするパルフェ。
「あなた!いま助けるわ!」
 そんな彼女を余所に。
 グレイテルは迷う事無く火のついた毛を握りしめると、脆くなったそれを引きちぎり、見事ヘイゼルを助け出す事に成功する。
「よし……これで!」
 グレイテルとパルフェによって、引きずられていくヘイゼルの巨体。
 それを確認したティファルは、深く精神を集中させる。
 今、彼女が手にしているのは竜の骨で造られた魔法の杖。
 しかし、その想いは物語をしたためる為にペンを握っていると何も変わらない。
 皆の笑顔の為に──今こそ、この物語に幾許かでも『救い』を書き添えるのだ。
「願わくば、この雷光が彼女の邪悪を打ち祓いますように──ゼウス!!」
 杖の先から噴き出す、雷の怒涛。
 その極められた威力は、弱ったシスルの戦闘力を奪い尽くすには充分過ぎる程であった。
 立ち上がろうともがくシスルは、しかし、グレイテルに抱きしめられるヘイゼルを見ると悲し気な鳴き声を上げ──そのまま地面へと倒れ伏した。
「……どうやら気を失った様じゃな」
 じっと動かなくなった獣を観察していたケイナは、嘆息交じりに呟きを零す。
 格別に同情心は持ち合わせていなかった彼女だが、それでもシスルの姿は憐憫の情を呼び起こすには充分であった。
 しかし、ケイナにはその感傷に浸る暇もない。
「しかし、まったく大忙しじゃのう……!」
 その美しい眉をひそめると、文句を口にしながら。
 ケイナはキュアティブを成就させ、マサカ達の傷を癒していく。
 ──この戦いの間。
 状況を見極め味方のトリアージを行う事で、ケイナは的確かつ効率的に回復を行っていた。
 シスルとの戦いが終わった今、前衛の者達がほとんど傷を負っていない事が彼女の奮闘を物語る。
「……あまり消耗はしたくなかったのじゃが」
 彼女の懸念は無論、リベルダースの存在である。
 指輪に蓄えていた備えは、すでに使い切った後だ。
 しかし、その懸念事項たるリベルダースは──。
「いやあ、素晴らしい。見事な手際だね」
 その声に朗らかなものを交えながら、ハウンド達の健闘を称えて拍手を送る。
「お前……シスルをこんな姿にしておきながら!」
 そんな敵の姿にトウカは──家族であるアンカやアンドレが不自然に感じる程に──激しい殺気を露わにする。
「そのふざけた態度……その鎧ごと打ち砕いてやる!」
 一足飛びで間合いを詰めたトウカは、バサラによって腕と融合した闇砕きの丸太を相手の顔面へと叩き込む。魔法による強化も重ねた今、その一撃は大きな威力を有していた。
 リベルダースを殴り倒すトウカの姿。
 誰もがそれを想像した──刹那、二人の体がまるで反発し合う様にして、それぞれ大きく後方へと後ずさる。
「トウカさん!──……これは」
 トウカを抱き留めたシェールは、彼女の体から流れ出す鮮血に気付く。
 それは刺突によって生じた傷痕で、かなり深い部分に達していた。
「すぐにキュアティブを……!」
「おらの後ろへ下がるべさ!」
 すかさず武器を構えたエルシーが前へと割って入る。
「──ああ……強いなハウンド、君達は本当に強い」
 そんな面々を前にして。
 兜の前面を片手で覆い、リベルダースは笑っていた。
 その手にはいつの間にか、血の滴る槍があった。
「くっ……あの一瞬で切り返してくるなんて……!」
 苦痛に歯噛みするトウカ。
 あの攻撃の瞬間──リベルダースはトウカの全力を受け止めて、なお自らも一撃を放ったのだ。
「私は自惚れ屋ではないのでね……」
 リベルダースの手の隙間から、砕けた兜の欠片が零れ落ちる。
「勝負は持ち越しとしよう──いつか、その時が来る日まで」
「待ちなさい!」
 高らかな笑声と共に、その身から瘴気を吐き出すリベルダース。
 姉を傷つけられたアンカが、怒りと共に魔法の杖を構えるも。
 すでにその姿は廃墟の奥──瘴気と闇の中へ溶け消えた後であった。


 戦いから一日が過ぎた。
 元に戻らない娘に、一時は絶望的な雰囲気も漂ったが……時間の経過によって魔法が解けたのか、シスルは無事に元の姿を取り戻していた。
「──恋するのは大いに結構。でも恋に恋をして邪恋にしちゃいけない」
 ベッドの上で目覚めた彼女はアンドレのお説教もあって、大いに反省した様子であった。デュルガーが関係していたとあって、ヘイゼル夫妻も彼女を許す事にしたらしい。
「あの鎧の人と一緒にいると、だんだん心に抑えが効かなくなって……」
「それで、とうとう何かが自分の中で爆発した──そこから記憶が無いと?」
 ケイナの言葉にシスルが頷く。
 どうやら、獣になっていた事も覚えていない様であった。
「心の抑えか……あの時のおまえに似ているな」
「……自覚はないが」
 マサカに視線を向けられ、トウカは頬をかく。
 思えば彼女も怒気のまま行動していた様に、周囲の者には見えた。
「謎の多いデュルガー……再び出会う時が来るのかしら?」
 憂いを帯びたティファルの呟き。
 その不安の問いに答えられる者は、その場にはいなかった──。



 5

参加者

b.ふむ。恋路の修羅場ですか。アンカちゃん乙女なので、よく分かりません。
アンカ・ダエジフ(da1743)
♀ 25歳 ダークエルフ パドマ 水
a.よくわからんが、取りあえず戦えば良いんだな。任せろ!
トウカ・ダエジフ(da1841)
♀ 26歳 ダークエルフ ヴォルセルク 地
b.エエンレラの付与と回復補助と狙撃です。
シェール・エクレール(da1900)
♀ 17歳 人間 カムイ 風
b.ゼウスで狙い撃ちね。
ティファル・クラウディア(da1913)
♀ 25歳 ライトエルフ パドマ 風
b.回復じゃな。それよりもこの黒鎧が気になるのじゃ。
ケイナ・エクレール(da1988)
♀ 28歳 人間 カムイ 火
a.前に出るべさ。
エルシー・カル(da2004)
♀ 19歳 カーシー(大型) ヴォルセルク 地
a.シスルの尾っぽが狙い目かな? 根元から切れば人に戻ってくれないかね
アンドレ・カンドレ(da2051)
♂ 50歳 ダークエルフ ヴォルセルク 月
c.ふむ、体毛に絡まれてるのなら、火で炙るのが有効かな?
マサカ・ダエジフ(da2181)
♀ 50歳 ダークエルフ ヴォルセルク 地