レンの海に帆を上げて

担当成瀬丈二
出発2021/09/19
種類ショート 冒険(討伐)
結果成功
MVPアンドレ・カンドレ(da2051)

オープニング

◆かつて去りし船
『後にこれを読むものに告げる‥‥愚かな船長ですまない。やはり、メロウの捕獲など控えるべきだった、私の魂は天に召されず地獄に堕ちるだろう』
 簡単に記された本。それは誰も読むものがいない、いれば日付が約五十年前のものだと気づいただろう。
 それは航海日誌だった。

◆異常あり

登場キャラ

リプレイ

◆レンの海での戦い
「行くか」
 そう、船の上で黒騎士アンドレ・カンドレは告げた。
 うなずくのはアンドレの娘、トウカ・ダエジフだ。彼女は父に従い、ハウンドの船から謎のガレー戦に飛び乗る。
「さまよえる海賊団か‥‥まったく、哀れなモノだ」
(此処はこいつらの航海を止めてやらないとな。それが私たちの唯一してやれることだ)
「ああ親父、親玉だけをねらえ──後の近衛か取り巻きは俺が適当に相手してやるから」
 トウカはそう言って、スケルトンリーダーを叩き潰す気を見せる。
 トウカの拳も、アンドレの剣も、ダークネスパワーで威力の底上げをしている。
 まさに必勝の姿勢だ。
「これ以上の恥を晒すな。俺が天国でも地獄でも好きな方に送ってやる」
 そう言う、アンドレの視線は、相手の首魁と思しき、スカルロードへとまっすぐ向けられていた。
 相手も見返した──のかもしれない。
「大物は任せますので、雑魚は釣り師が引き受けるのです」
 そう言って、魔法の杖を握りなおすのは、トウカの姉妹、つまりアンドレの娘、アンカ・ダエジフだった。
「道は切り拓くのです」
「うん」
 あとは破壊要員としてベルクート・クレメントもいる。
 ふたりが魔法の杖を構え、意味不明の言葉を唱える。
「──ゼウス」
「──ファイヤボム」
 雷撃と爆風が、ダエジフ親子の道を切り拓いた。
 吹き飛ぶスケルトンたち。
 ゼウスは嵐竜の力を宿した、魔法の杖からアンカが引き出したものだ。
 まさに道を切り拓くに相応しい。

「スケルトンの海賊船ですか──‥‥どのくらいさまよっていたのかしら‥‥?」
 そう言って、リュドミラ・ビセットが弓に矢を番えず、後ろに立てたグリーヴァランタンで光源を確保している。
「今、その旅を終わらせてあげましょう──プロメテウス」
 聖なる力がスカルロードを苛む。
「手出しは不粋ですが、勝つことが大事ですから」
「感謝する」
 アンドレはそう言ってスケルトンの中を走り抜け、剣をスカルロードと合わせる。
「勝負だ!」

◆父子鷹
 巧みなフェイント織り交ぜながら、スカルロードは剣を振るう。
『黒騎士の剣』で、一撃一撃を弾きつつ、自身が攻勢に出る機会をうかがうアンドレであった。
 しかし、思ったより、スカルロードの剣に力はない。
(傷を負わせることが目的では──ないのか?)
 殺意がないわけではないが、キチンとした兵法にのっとって戦っているらしい。
 受け太刀に回っているアンドレとしては、いつまでもこのステップを踏んでいたいが、魔法の時間が切れては、身も蓋もなくなってしまう。
(早い男は嫌われるがな)
 思い切って攻勢に出るアンドレ。相対するスカルロードのほうも、見事な脚さばきで、ギリギリではあるものの、アンドレの剣筋を見切っていく。
「面白く‥‥なってきた」
 アンドレは楽しくなった。スカルロードは攻防ともにスキの無い相手だ。
 しいて言えば、スカルロードは威力を増やす戦技は学んでいないらしいが、そこは生前の当人の考えだろう。
 こじつければ、リュドミラがプロメテウスで一撃与えた事で、スカルロードの攻撃のキレが十全ではないのかもしれない。
 しかし、しぶとく戦いなれた相手だ。
 つばぜり合いで押されたスカルロードの頭上から冠が落ちた。
 それが周囲に瘴気をばらまいていた、それを意識していたものはいるだろうか──‥‥。
 一方、トウカもひとり奮戦する。
 父とスカルロードの戦いへの、スケルトンリーダーの乱入を防ぐべく、奮闘しているのだ。
 彼女の拳はバサラで取り込んでいた、有機めいたハートナックルで覆い、攻防ともにスキがない。
 スケルトンリーダーは打って出るが、トウカに決定打を与えられない。
 しかし、トウカがあらかじめ、アースアーマーを成就していなければ、傷の蓄積で倒れていただろう。
 この辺りの、トウカの戦いのセンスや、駆け引きといった才は、大したものだ。
「親父!」
 強引にスケルトンリーダーをねじ伏せ、父の戦いにソニックブームを打ち込もうとする──しかし!
「助太刀不要──黒騎士は死なず」
「じゃあ、任せる‥‥死ぬなよ!」
 と、駆けあいをする。

 アンドレはつばぜり合いの中。
「さて、娘たちを心配させては、父親失格だな──」
 一歩退き、黒騎士の剣を構えなおす。
「さて、お楽しみはこれからだ──本気で行く!」
 にやりと笑う。黒騎士として──いや、ひとりの男としてのロマンだ。


「何か親子で勝手に盛り上がっているのです。じゃあ掃討しますか──ヴィンドスヴァル!」
 高速詠唱で一瞬のうちに魔力を練り上げ、魔法を成就するアンカ。
「お楽しみは良いですけど、早く決着をつけないと、雑魚を片付けちゃうのですよ」
 吹雪が荒れる。
 ギリギリ、スケルトンリーダーを巻き込み、破砕する。
 そこでアンドレは相手の剣さばきを見破った。
「なるほど、武器落し狙いか‥‥拳か、次の得物を抜かせるかの二択だな、面白い」
 言い終えると、アンドレは剣を捨てた。
 拳にダークネスパワーを付与する。
「さっきも言った事だが。何をした報いかは知らんが、ここで俺たちに会ったが幸い、潔く討たれて、天国でも地獄でも好きな方に行きな!」
 スカルロードも剣を捨てる。
 重い音が響いた。
「男の戦いは結局これか」
 それにも浪漫を感じたアンドレだった。
「さあ──続けよう!」
 お互いに細かいダメージを蓄積し、倒れたほうが負けというシンプルな勝負だ。
 しかし、リュドミラの魔法によるダメージがある分、アンドレの方が明らかに有利。
 男の殴り合いが始まった。
「やっぱ、アンドレさんも男だなあ」
 ノンキそのものなベルクートだった。

◆旅のおわりは夢のつづき
 そう、戦いは長く続かなかった。
 アンドレの拳がスカルロードの頭蓋骨を砕いた。
 スカルロードの側が敢えて頭部を砕かせた、明確に決着がつくように。
 そう、ひとりの男である、アンドレには思えたのだった。
「やすらかに眠れ」
 アンドレは目を伏せて、スカルロードの剣を静かに海に放り込んだ。
 海の子の得物だ、やはり海に返すのが相応しいだろう。
 僅かに波が立った。それだけだ。
 だが、この波音はアンドレから送る鎮魂曲だった。
 一方、沈める前に、船内を調べるリュドミラ。彼女が船長室を見ると、机の上に一冊の本があった、気になって見ると、表紙には『航海日誌』とあった。
 リュドミラが読んでみると、簡単な記述があった。
 最後は悲壮であった。
「水の精霊や水の女神、それに水のドラゴンに対する懇願でしょうか‥‥」
 一体、船長はどんな想いで綴ったのだろうか‥‥。
 そして長きにわたる年月を、不浄の生で過ごしたのか。
「でも、死の淵でようやく、メロウを狩ることが罪悪と気づいたのですか‥‥」
 リュドミラの手の中で、航海日誌は音もなく、崩れ落ちていく。
「誰の呪いか、あるいは贖罪かはわかりませんが、次はよき生を送れますように」
 リュドミラは少しだけ泣いた。
 ──ひとつの過ちは正された‥‥。

 海へと海賊船は沈んでいく。
 アンカのヴィンドスヴァルと、ベルクートのファイアボムが荒れ狂ったのだ。
 ──まあ、当然の結果と言えよう。
 まあ、役人のアテは外れた、そんなことは些細なことだろう。
 ハウンドの責任では──ない。
 だから、ハウンドの戦いは──つづく!



 6

参加者

c.魔法で回復か、攻撃していますね。
リュドミラ・ビセット(da1372)
♀ 23歳 ライトエルフ カムイ 火
b.大物は任せますので、雑魚は釣り師が引き受けましょう。 
アンカ・ダエジフ(da1743)
♀ 26歳 ダークエルフ パドマ 水
a.安心しろ。もうさまよわないよう徹底的にバラバラにしてやろう。
トウカ・ダエジフ(da1841)
♀ 27歳 ダークエルフ ヴォルセルク 地
a.これ以上の恥を晒すな。俺が天国でも地獄でも好きな方に送ってやる。
アンドレ・カンドレ(da2051)
♂ 51歳 ダークエルフ ヴォルセルク 月
 ぼくは船を沈めるために魔力を温存するよ。
ベルクート・クレメント(dz0047)
♂ 26歳 パラ パドマ 火


レンの海は俺の海

レンの海では骸骨が操る海賊船が徘徊する。戦えハウンド! 人員募集中だ!