オープニング
◆かつて去りし船
『後にこれを読むものに告げる‥‥愚かな船長ですまない。やはり、メロウの捕獲など控えるべきだった、私の魂は天に召されず地獄に堕ちるだろう』
簡単に記された本。それは誰も読むものがいない、いれば日付が約五十年前のものだと気づいただろう。
それは航海日誌だった。
◆異常あり
ハウンドがグレコニアに呼ばれたのは、海賊退治の仕事だった。
レンの海に『何か』が出るという。
通常の海賊と考えられたが、雇った傭兵団は戻ってこなかった。
次にダーナを送り込み、ようやく概要が分かった。
一隻の海賊船だという。
通常と違うのは、乗組員が動く骸骨──スケルトンということだ。
ベルクート・クレメントが思ったのは、近づいて範囲魔法で殲滅すれば、すむこと。
彼の意見は少々楽観的だが、多数の敵をせん滅する基本は押さえている。
なにしろ、海の上だ、攻撃魔法で巻き込まれるのは敵と自分だけ。
善意で手助けするものはいない。
◆事件の影に『愚者』あり
「しかし、骸骨を率いてる『首魁』がいる」
と、事件を担当する役人が言った。
「立派な衣装を着た骸骨だそうだ」
ベルクートが思ったのは、殲滅すれば事件は解決するが、首魁を倒せば他の骸骨は烏合の衆となり、無力化できる可能性もあるということだ。
少なくとも役人はそう考えている。
◆そして‥‥レンに出た船
ハウンドたちは準備を整え、レンの海に出た。
あまり、船影は見ない‥‥様な気がする。
不意に遭遇したのは、レンの海に出て半日後の夜だった。
ガレー船が多数のスケルトンを載せて近づいてくる。
確かに骸骨の首魁らしい剣客がいた。
首魁を倒し、役人の出した案、骸骨の統率が消えることを期待するか。
それとも攻撃魔法で根こそぎ倒すか。
ハウンドたち、戦う準備は出来ているか?
選択肢
マスターより
成瀬です、今回はレンの海に出てもらいます。
船の運航に関してはNPCのスタッフが乗っていますので、気にしなくて大丈夫です。いざとなればリクエストをオーダーするだけ!
スケルトンが多い気がしますが、実際戦う相手は十数体程度です。
首魁をどうにかした後は船を適当に沈めればいいかと‥‥まあ、現場の判断でいいでしょう。
役人はドヤ顔で出した案を台無しにされてイヤな顔をするでしょうが。
では、皆さんの参加をお待ちしています。
登場キャラ
◆レンの海での戦い
「行くか」
そう、船の上で黒騎士
アンドレ・カンドレは告げた。
うなずくのはアンドレの娘、
トウカ・ダエジフだ。彼女は父に従い、ハウンドの船から謎のガレー戦に飛び乗る。
「さまよえる海賊団か‥‥まったく、哀れなモノだ」
(此処はこいつらの航海を止めてやらないとな。それが私たちの唯一してやれることだ)
「ああ親父、親玉だけをねらえ──後の近衛か取り巻きは俺が適当に相手してやるから」
トウカはそう言って、スケルトンリーダーを叩き潰す気を見せる。
トウカの拳も、アンドレの剣も、ダークネスパワーで威力の底上げをしている。
まさに必勝の姿勢だ。
「これ以上の恥を晒すな。俺が天国でも地獄でも好きな方に送ってやる」
そう言う、アンドレの視線は、相手の首魁と思しき、スカルロードへとまっすぐ向けられていた。
相手も見返した──のかもしれない。
「大物は任せますので、雑魚は釣り師が引き受けるのです」
そう言って、魔法の杖を握りなおすのは、トウカの姉妹、つまりアンドレの娘、
アンカ・ダエジフだった。
「道は切り拓くのです」
「うん」
あとは破壊要員として
ベルクート・クレメントもいる。
ふたりが魔法の杖を構え、意味不明の言葉を唱える。
「──ゼウス」
「──ファイヤボム」
雷撃と爆風が、ダエジフ親子の道を切り拓いた。
吹き飛ぶスケルトンたち。
ゼウスは嵐竜の力を宿した、魔法の杖からアンカが引き出したものだ。
まさに道を切り拓くに相応しい。
「スケルトンの海賊船ですか──‥‥どのくらいさまよっていたのかしら‥‥?」
そう言って、
リュドミラ・ビセットが弓に矢を番えず、後ろに立てたグリーヴァランタンで光源を確保している。
「今、その旅を終わらせてあげましょう──プロメテウス」
聖なる力がスカルロードを苛む。
「手出しは不粋ですが、勝つことが大事ですから」
「感謝する」
アンドレはそう言ってスケルトンの中を走り抜け、剣をスカルロードと合わせる。
「勝負だ!」
◆父子鷹
巧みなフェイント織り交ぜながら、スカルロードは剣を振るう。
『黒騎士の剣』で、一撃一撃を弾きつつ、自身が攻勢に出る機会をうかがうアンドレであった。
しかし、思ったより、スカルロードの剣に力はない。
(傷を負わせることが目的では──ないのか?)
殺意がないわけではないが、キチンとした兵法にのっとって戦っているらしい。
受け太刀に回っているアンドレとしては、いつまでもこのステップを踏んでいたいが、魔法の時間が切れては、身も蓋もなくなってしまう。
(早い男は嫌われるがな)
思い切って攻勢に出るアンドレ。相対するスカルロードのほうも、見事な脚さばきで、ギリギリではあるものの、アンドレの剣筋を見切っていく。
「面白く‥‥なってきた」
アンドレは楽しくなった。スカルロードは攻防ともにスキの無い相手だ。
しいて言えば、スカルロードは威力を増やす戦技は学んでいないらしいが、そこは生前の当人の考えだろう。
こじつければ、リュドミラがプロメテウスで一撃与えた事で、スカルロードの攻撃のキレが十全ではないのかもしれない。
しかし、しぶとく戦いなれた相手だ。
つばぜり合いで押されたスカルロードの頭上から冠が落ちた。
それが周囲に瘴気をばらまいていた、それを意識していたものはいるだろうか──‥‥。
一方、トウカもひとり奮戦する。
父とスカルロードの戦いへの、スケルトンリーダーの乱入を防ぐべく、奮闘しているのだ。
彼女の拳はバサラで取り込んでいた、有機めいたハートナックルで覆い、攻防ともにスキがない。
スケルトンリーダーは打って出るが、トウカに決定打を与えられない。
しかし、トウカがあらかじめ、アースアーマーを成就していなければ、傷の蓄積で倒れていただろう。
この辺りの、トウカの戦いのセンスや、駆け引きといった才は、大したものだ。
「親父!」
強引にスケルトンリーダーをねじ伏せ、父の戦いにソニックブームを打ち込もうとする──しかし!
「助太刀不要──黒騎士は死なず」
「じゃあ、任せる‥‥死ぬなよ!」
と、駆けあいをする。
アンドレはつばぜり合いの中。
「さて、娘たちを心配させては、父親失格だな──」
一歩退き、黒騎士の剣を構えなおす。
「さて、お楽しみはこれからだ──本気で行く!」
にやりと笑う。黒騎士として──いや、ひとりの男としてのロマンだ。
「何か親子で勝手に盛り上がっているのです。じゃあ掃討しますか──ヴィンドスヴァル!」
高速詠唱で一瞬のうちに魔力を練り上げ、魔法を成就するアンカ。
「お楽しみは良いですけど、早く決着をつけないと、雑魚を片付けちゃうのですよ」
吹雪が荒れる。
ギリギリ、スケルトンリーダーを巻き込み、破砕する。
そこでアンドレは相手の剣さばきを見破った。
「なるほど、武器落し狙いか‥‥拳か、次の得物を抜かせるかの二択だな、面白い」
言い終えると、アンドレは剣を捨てた。
拳にダークネスパワーを付与する。
「さっきも言った事だが。何をした報いかは知らんが、ここで俺たちに会ったが幸い、潔く討たれて、天国でも地獄でも好きな方に行きな!」
スカルロードも剣を捨てる。
重い音が響いた。
「男の戦いは結局これか」
それにも浪漫を感じたアンドレだった。
「さあ──続けよう!」
お互いに細かいダメージを蓄積し、倒れたほうが負けというシンプルな勝負だ。
しかし、リュドミラの魔法によるダメージがある分、アンドレの方が明らかに有利。
男の殴り合いが始まった。
「やっぱ、アンドレさんも男だなあ」
ノンキそのものなベルクートだった。
◆旅のおわりは夢のつづき
そう、戦いは長く続かなかった。
アンドレの拳がスカルロードの頭蓋骨を砕いた。
スカルロードの側が敢えて頭部を砕かせた、明確に決着がつくように。
そう、ひとりの男である、アンドレには思えたのだった。
「やすらかに眠れ」
アンドレは目を伏せて、スカルロードの剣を静かに海に放り込んだ。
海の子の得物だ、やはり海に返すのが相応しいだろう。
僅かに波が立った。それだけだ。
だが、この波音はアンドレから送る鎮魂曲だった。
一方、沈める前に、船内を調べるリュドミラ。彼女が船長室を見ると、机の上に一冊の本があった、気になって見ると、表紙には『航海日誌』とあった。
リュドミラが読んでみると、簡単な記述があった。
最後は悲壮であった。
「水の精霊や水の女神、それに水のドラゴンに対する懇願でしょうか‥‥」
一体、船長はどんな想いで綴ったのだろうか‥‥。
そして長きにわたる年月を、不浄の生で過ごしたのか。
「でも、死の淵でようやく、メロウを狩ることが罪悪と気づいたのですか‥‥」
リュドミラの手の中で、航海日誌は音もなく、崩れ落ちていく。
「誰の呪いか、あるいは贖罪かはわかりませんが、次はよき生を送れますように」
リュドミラは少しだけ泣いた。
──ひとつの過ちは正された‥‥。
海へと海賊船は沈んでいく。
アンカのヴィンドスヴァルと、ベルクートのファイアボムが荒れ狂ったのだ。
──まあ、当然の結果と言えよう。
まあ、役人のアテは外れた、そんなことは些細なことだろう。
ハウンドの責任では──ない。
だから、ハウンドの戦いは──つづく!
6
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参加者
| | c.魔法で回復か、攻撃していますね。
| | リュドミラ・ビセット(da1372) ♀ 23歳 ライトエルフ カムイ 火 | | |
| | b.大物は任せますので、雑魚は釣り師が引き受けましょう。
| | アンカ・ダエジフ(da1743) ♀ 26歳 ダークエルフ パドマ 水 | | |
| | a.安心しろ。もうさまよわないよう徹底的にバラバラにしてやろう。
| | トウカ・ダエジフ(da1841) ♀ 27歳 ダークエルフ ヴォルセルク 地 | | |
| | a.これ以上の恥を晒すな。俺が天国でも地獄でも好きな方に送ってやる。
| | アンドレ・カンドレ(da2051) ♂ 51歳 ダークエルフ ヴォルセルク 月 | | |
| ぼくは船を沈めるために魔力を温存するよ。 | | ベルクート・クレメント(dz0047) ♂ 26歳 パラ パドマ 火 | | |
レンの海は俺の海
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レンの海では骸骨が操る海賊船が徘徊する。戦えハウンド! 人員募集中だ!
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