【SE10】海賊クルージング

担当午睡丸
出発2021/07/20
種類ショート 日常
結果大成功
MVPコニー・バイン(da0737)
準MVPソレイユ・ソルディアス(da0740)
ベル・キシニア(da1364)

オープニング

◆海賊からの招待
「……おっ、来やがったな?」
 その日、海賊諸島でハウンドたちを出迎えたのは熊のような巨漢の海賊だった。
 まるでドワーフのような髭面だが人間であるらしい。
「さ、乗んな」
 彼は厳(いかめ)しい表情のままで背後に浮かぶ船を指した。そこでは部下の海賊らしき荒くれ者たちが航行の準備を整えている。

登場キャラ

リプレイ

◆宴の支度
「わあ、すごく涼しい……連れてきていただいて、ありがとうございます!」
 頬を撫でる風を受けてセース・エイソーアが海賊たちに礼を言った。
「本当だな。それにしても海賊諸島にこんな場所があるとは意外だった」
 その傍らでベル・キシニアも感心したような表情を浮かべる。海の難所というイメージからは想像できない海域だったのだろう。
「さあ、酒盛りとくれば酒が必要! ……というわけで、私もいろいろと持ってきたぞ」
 トウカ・ダエジフは持参したハーフ小樽のビールを海賊たちへと提供する。他には酒の肴にとウラートで買ってきたチーズや燻製肉が少しばかり。
「私からも、これを」
 ナイン・ルーラもまた、招待への返礼にとクォート小樽を二本差し出した。スピリットキラーと呼ばれる強烈な錬金酒だ。
「ただこれはガチで酒精の強いお酒ですので、後で皆さんで楽しんでください」
 そう言い添えるナイン。なにしろ酒豪のダークドワーフすらKOするという触れ込みの酒だ。いかな海賊といえどもたちまち酔い潰れるだろうし、そうなると陸へ無事に戻れなくなってしまう。
「おっと、こっちから声をかけたってのに気を使わせちまって悪いな」
 ハウンドからの思わぬ土産に破顔するドート。そうこうしている間に彼の部下たちが準備を終えていた。
 といってもそこは海の荒くれ者たちだ。用意された酒類や料理は良く言えば野趣のある、悪く言えば大雑把なものばかりだった。
「さあ、どうぞ!」
「ドンドンやってくれよ!」
 次々と酒を勧めてくる海賊たち。揃いも揃って強面だが、サービス精神が旺盛なのは上司に似たものか。
「せっかくの海賊の皆さんの歓迎ですし、遠慮は無用ですね」
「ああ、こんな風に船に揺られながら酒を飲むなんて、そうそう機会が無いからな……楽しむとしよう!」
 ナインとトウカは差し出された酒杯を一口に呷ったのだった。

「せっかくだし、一曲どうかな?」
 船縁に腰掛けた ソレイユ・ソルディアスがリュートを手に演奏を始めた。奏でるのは海の荒くれ者たちとの酒宴に合わせたような賑やかなメロディだ。
「こりゃいいや!」
「ハウンドってのは大道芸までできるのか? たいしたもんだな!」
 ソレイユの器用さに感嘆しつつも、海賊たちはその曲に合わせて狭い甲板で歌い、踊る。
「さあ、お前さんも飲みなよ」
「ああ、どうも。いやー、僕は辺鄙な村の生まれなんで、こんな風にのんびりと船が進むとは驚きですね……」
 ドートから渡された酒杯を呷りつつ、コニー・バインが興味深そうに周囲を眺めた。
 船は風向きとは無関係な方角へと滑るように進んでいる。これは確かに海流に運ばれていることの証左だろう。
「こうなると、その激しい海流というのも楽しみですね」
「コニー君、こちらの燻製肉など美味しいですよ」
「ああ、どうもナインさん。……あまり酔うとあとで大変かもしれませんよ?」
 コニーの為に肴を調達してきたナインだが、もうすでにその頬は幾分か赤い。
「……もしかすると、お前さんたちは良い仲なのかい?」
 そんな二人の様子に何か感じ取ったのか尋ねるドート。
 コニーはしばらく迷ったような表情を浮かべていたが、
「……実は先日、彼女と結婚したばかりでして。良い記念だと思ってご招待に応じました」
 と、照れたような表情でそう言った。
「ちなみに私のフルネームは、『ナイン・バイン』と韻を踏むことになりました……間違っても『ボイン・バイン』じゃありませんよ?」
 酔いの所為かナインがよく分からないことを口走った。新婚の高揚ゆえなのか、幾分か飲むペースが早いようだ。
「何だかよく分からねえが、ともかくめでてえじゃねえか……おい野郎ども!」
「「「「へい!」」」
「……え? あわわわわ!」
 祝福代わりなのか、なぜかコニーを胴上げする海賊たちだった。

◆四方山話
「そういや、海賊ってからには色んな冒険とか経験してきたんだろ? よかったら聞かせてくれないか?」
 海流に乗ってしばらく。宴もたけなわとなったころにソレイユがそう尋ねた。
 これは僅かな時間ではあるが彼らの人となりを知り、極悪非道な連中ではないと感じ取ったからでもあった。
「そうだな……これは、このあいだリムランド地方に仕事に行ったときのことなんだが……」
 ドートが語るところによれば、目的地の港を目の前にしてヴァイキングの襲撃を受けたという。
 彼らはこちらの船に接舷しようとするロングシップを相手に果敢に戦い、どうにかヴァイキングを撃退することに成功したのだった。
「あの時の連中の悔しそうな顔ったらなかったぜ!」
「ああ、一昨日来やがれってんだ!」
 その時のことを思い出したのか部下たちが勢いよく酒杯を合わせる。ヴァイキングも海賊という括りでいえば同じだが、その勇猛さにおいてはある意味別種の存在なのだろう。
 他にも思いつくままに語るドートだが……。
「……思ったんだけどさ、それって海賊がやることなのか?」
 そんな武勇伝の数々にソレイユが素朴な疑問を抱いた。聞く限りでは一般的な海賊が行うような略奪行為からは縁遠いようだったからだ。
「うん? ま、まぁそうだな……ひと口に海賊といっても仕事はいろいろとあるんだよ。それよりほら、飲め飲め!」
 それまでの饒舌はどこへやら、ドートは急に口ごもり酒を勧めてくる。
(何か隠してるって感じだけど……ま、こんな席で突っつくのも野暮ってもんか)
 海賊たちの態度から何かを察したソレイユだがそれ以上の追求は控える。
 一方でそういった細かいことには興味がないのか、トウカはドートの肩を叩いた。
「ほう、海賊というのは粗暴な連中だとばかり思っていたが、なかなかの漢(おとこ)ではないか。それに、他の団員とはずいぶん違うな。あっちはどこかよそよそしくて、雰囲気もずいぶん堅かったたぞ?」
「ま、俺らは『外様』みたいなもんだからな、気楽なもんさ。それより酒だ! さあ遠慮すんな!」
「うむ、酒を勧められて飲まぬとはハウンドの名折れ。ここは一つ大いに楽しもうではないか!」
 すでに存分に楽しんでいるトウカだったが注がれた酒杯をさらに呷る。
「いい飲みっぷりだな! さあ、今度はお前さんたちの番だぜ。ハウンドってのはいろいろとすごいらしいじゃないか?」
 と、逆にソレイユに尋ねるドート。
「え、俺たちハウンドの冒険譚か? そうだなぁ……いろいろあるけど、じゃあグリフォン相手に空中戦したときの話でもしようか」
 ソレイユが弾き語りに冒険譚を語り始めると、やがて海賊たちから歓声の声があがったのだった。

◆二人島
 やがて昼下がりとなり、船は海賊諸島の中のとある小島へと着いた。
「よーし、船を停めろ……さあ、ここがさっき言ってた島だ」
 ドートの言葉に島を見ると確かに狭いが浜があるようだった。島の大きさは全周数百mといったところで、水源が無いらしく住むのは不可能だが、そのお陰で魔物も住み着かないらしい。
「ここは俺たちが休憩所みたいに使ってる島でな。浜といっても岩だらけだから気をつけろよ?」
「よし、セース、じゃあさっそく浜で泳ぐか?」
「うん! ベルおねえちゃん、思いきり楽しもうね!」
 待ってましたとばかりにベルとセースがそう頷き合う。一方で残りのハウンドたちは停泊した船で酒宴を続けるのだった。

 セースの魔法の絨毯で上陸すると、二人は適当な岩陰を見つけて水着に着替える。
「……ふむ、よく似合っているぞ。かわいいじゃないか、セース」
 準備運動中のセースを褒めるベル。ワンピースの水着は確かに彼女の細身な身体によく似合っていた。
「本当? あ、でも……」
 褒められたにもかかわらずセースはベルと自分の身体を見比べて小さくため息をついた。どうやら自身の体型に劣等感のようなものを抱いたらしい。
 そんなセースの内心を感じ取ったのかベルは胸を張った。
「ふむ、お前の隣にいるのはミドルヘイムでも最高に美しい女だからな。そりゃ比べれば足りなくも思えるだろう……でも、実際はそんなに恥ずべきような身体ではないぞ?」
 まったく謙遜しないあたりがベルのベルたる所以である。
「ライトエルフとはいえ、年齢的にまだまだ伸びしろはあるんだ。食事と運動をキチンととれば……」
「……じゃあ遊んで泳いで、たくさん食べたら……ベルおねえちゃんみたいに綺麗になれるかな?」
 上目遣いでそう尋ねられ、ベルが優しげな微笑みを向ける。
「もちろんだ。海賊たちが用意していたのは酒の肴ばかりだったし、あとで夕食用に何か捕まえるとするか」
「やったあ! たくさん泳いで、いっぱい食べようね!」

 それからしばらくの間、二人だけの小島に楽しげな声が響いていた。
「それっ! あははっ!」
「ぷはっ……ふふっ、やったな?」
 ときに浅瀬で水をかけ合ってはしゃいだと思えば、ときに一緒に潜って海中散策を楽しむ。
「セース、あの岩場に見慣れない生き物がいたぞ。一緒に見に行ってみるか?」
「うん! ふふ、楽しいね!」
「ああ。たのしいな、セース」
 二つの人影はまるで姉妹のように寄り添いながら浜を駆け回るのだった。

◆海流を越えて
 しばらくして、浜での遊泳を十分に堪能した二人は夕食代わりの魚料理を手に船へと戻った。
 島にはドートたちが自作した簡易な竈があり、そこでベルが捕まえた魚介類をセースが調理したのである。
「セース、これも美味いぞ」
「本当……すごく美味しい!」
 ハウンドと海賊たちの全員で舌鼓を打つ。もちろん凝った料理とはいかないが、新鮮さはときに何ものにも勝る調味料となるのである。
「……ふう、ごちそうさん。あんな簡単な設備と調味料でこんな美味い料理を作るんだからたいした嬢ちゃんだな」
「ふふ、どういたしまして!」
 感心するドートにセースは笑って返した。
「さて、そろそろ戻らないと日が暮れちまうな……さあ野郎ども! 気合い入れろよ!」
「「「おおーう!」」」
 粗野な掛け声とともに漕ぎ手たちが慌ただしく動きだすと、再び船が進み始めた。

「……そろそろ揺れだすぞ! しっかり掴まってろよ!」
 ドートの警告とともに船が大きく傾き出した。
 強い潮の流れに引っ張られて進行方向は目まぐるしく変わり、船首といわず船尾といわず大きく跳ね上がった。
「お! おおお、おおおお……!? こ、これは確かにスゴイですね……!」
 こんな状況にもかかわらずコニーは楽しげな声をあげる。農作業で鍛えた腰の強さで船の傾きに対抗しつつ、次々と襲う揺れを克服していく。
「な、なんでそんなに楽しそうなんだ……?」
 持ち前の身軽さで揺れに耐えるソレイユではあるが、コニーのように状況を楽しめるかといえばそうでもない。
「いやぁ、これは滅多に体験できない冒険ですからね。どうですかナインさん……ナインさん?」
 ふと振り向いたコニーだったがそこに妻の姿はなかった。
「……ボ、ボエエェ!」
「やばい……飲み過ぎた……」
 ナインとトウカは二人して船縁に突っ伏し、何かキラキラしたものを海へと撒いている。
「これはすごい海流だな……確かに海の難所だ」
「でも、これならどれだけ揺れても平気だね! ありがとう、ベルおねえちゃん!」
 ベルはスカイランニングを成就するとセースを抱きかかえて船と並走していたのだ。
「どうだい? ドルガリ団の中でもこの潮を乗りこなせるようなヤツはそういないぜ!」
 得意げなドートの声。もしかしたら、これを自慢することもこの酒宴の目的だったのかもしれない。
「次で最後だ! 派手に揺れるぞ!」
「待ってました!」

 こうしてコニーだけが大喜びの声をあげるなか、ハウンドたちの海賊クルージングは無事(?)に帰港とあいなったのだった。



 6

参加者

c.宴会も楽しみですが、海流も楽しみなんですよね。
コニー・バイン(da0737)
♂ 23歳 人間 マイスター 月
a.よろしくお願いします。
ソレイユ・ソルディアス(da0740)
♂ 21歳 人間 ヴォルセルク 陽
b.ベルおねえちゃん、思いきり楽しもうね!
セース・エイソーア(da0925)
♀ 20歳 ライトエルフ カムイ 陽
b.よし、セース、泳ぐか。
ベル・キシニア(da1364)
♀ 28歳 人間 ヴォルセルク 風
a.船で酒を飲むなんてそうそう機会が無いからな。楽しむとしよう。
トウカ・ダエジフ(da1841)
♀ 27歳 ダークエルフ ヴォルセルク 地
a.酒ぇ飲まずにはいられない☆ でも飲み過ぎると海流でマーライオンに…
ナイン・ルーラ(da1856)
♀ 29歳 人間 ヴォルセルク 水


レッツ、クルージング!

ドルガリ団に所属する海賊たちから届いた思わぬ酒宴への招き。しかしその場所はさらに予想外なもので……?