【SE09】断食と解放日

担当椎名
出発2021/04/01
種類イベント 日常
結果成功
MVPチャウ(da1836)
準MVPナイン・ルーラ(da1856)
エクス・カイザー(da1679)

オープニング


 平和を祈り、精霊の加護を願う風習、「最後の3日間の断食」。
 断食期間は日の出から日没迄。日没を過ぎれば水とパンは食べてもよい。また、7歳未満の子供、病人、旅人、戦いに赴く者は含まれない。
 もともとは食べ物の少ない冬を乗り切るための手段だったそうだが、今はその心配はないため、3日間が名残として残っているとされる。
 この3日がすぎれば、待ちに待った開放日、断食明けの壮大な飲食パーティだ。
 秋の豊かな実りを願い、皆で料理を出し合って催される。また3日間の断食に耐えた褒美として、ちょっとした嘘も許される。

登場キャラ

リプレイ


 断食の3日間。その間、普段は賑やかなローレックの街も、ひっそりと静まり返っているかのようだった。それはハウンド達も同様で、それぞれに3日間の断食を、静かに‥‥時に賑やかに、過ごしていた。そんな断食期間最後の3日目。
 そんな断食期間最後の1日も、残す所あと少し。

「じゃあ、僕はKillerQueenにご飯を買いに行ってくるからね」
 パライソ・レヴナントはそう言って扉へと歩き出す。そんな師父の背を見送るセシリオ・レヴナントの頭には、普段外出時に被っているフードは見当たらない。
「ええ、よろしくお願いします。私はその間に、テーブルの準備をしておきますね」
 そう言うセシリオに、一度振り返ったパライソはゆっくりと頷き、クランを出る。
 ぱたん、と扉の閉まった音を聞き、セシリオは一つ息を吐いて気合を入れ、先ずは机を拭き。
 断食明けなだけあり、空腹なのは間違いない。しかし、解放日は特別なものだ。そう思えば空腹などさして気にもならない。
「さて‥‥帰ってくる前に片付けないと」
 断食期間の間に広げた机の上を片付けて、きっと師父が買ってくるであろうご馳走を並べられるスペースを作らなければならない。それに、出来る事ならばテーブルも豪華にセットしたい所だ。
 セシリオは腕まくりして、早速作業に取り掛かるのだった。

 ゼェ、ゼェ‥‥。
 荒い息が、室内にこだまする。
「やっと断食が終わりますね‥‥」
 身体中小さな歯形だらけで満身創痍といった様子で床に転がるコニー・バインが、同じような有様で縄をきつく縛り直しているナイン・ルーラに視線を向けた。
「ひとまずは大人しくさせたので、この隙にKillerQueenに連れて行きましょう」
 そう頷くナインがさっき結んでいたのは、チャウを椅子に縛り付けている縄だった。身体の自由を奪われたチャウはと言うと、到底シフールとは思えない唸り声をあげている。去年もなんだか同じような事態になっていたような‥‥なんて、コニーとナインは遠い目で記憶を手繰る。
「椅子ごと移動しましょうか」
 とはいえ、然程時間があるとはいえない状況だ。先程迄の惨事を思えば、この状態ですら安全とは言い難い。
 縄を引きちぎり、オナカ‥‥スイタ‥‥とうわごとのように繰り返しながら、コニーとナインに噛み付き、手当たり次第に破壊を尽くすチャウの姿は記憶に新しすぎる。
「‥‥ゴハン‥‥‥‥タベル‥‥」
 唸り声の隙間から聞こえたその声に、コニーとナインの唇からひっという悲鳴が漏れた。
「早く行きましょう、コニー君」
 コニーはこくこくと何度も頷きながら、2人で椅子ごとチャウを持ってKillerQueenへと急ぐのだった。

 エクス・カイザーは、す、と静かに目を見開く。断食期間中はグリーヴァの修行法を試してみた。胡坐を組み、瞑想することにより集中力を高めるのに加え、今回は空腹にも耐えるというオマケ付きだ。きっとこの修行は魔法の鍛錬になるだろうから、パドマである弟子のキョン・シーにもってこいだろう‥‥と、思った事も、確かにあった。
「兄さん‥‥もう、終わりね‥‥」
 げっそりとしたアステ・カイザーが、目を見開いたエクスへと這い寄る。彼女の背後には、瞑想の修行により無我の境地に至った挙句フルオートで食べ物のところにたどり着けるようになったキョンが、尚も食べ物を求めて蠢いていた。戸棚の中、通りの店の奥、その他諸々‥‥この三日間、少し目を離すと食べ物のある方向へと歩き出すキョンを引き止めるのは、アステの仕事だった。お陰で断食による空腹なんか気にする暇すら無かった。
「兄さんの弟子の筈なのに、私が稽古つけてた気分だわ‥‥」
 言いながらも、どこからともなく探し出した木の実を齧ろうとしているキョンの手から、全ての木の実をはたき落とした。三日間、万事が万事、こんな感じだったのだ。そりゃあ当然気疲れもするわ‥‥と、アステは大きく溜息を吐く。
「まさか見張りの方が大変になってしまうとは想定外だった‥‥申し訳ない‥‥」
 弟子の思わぬポテンシャルに内心冷や汗をかきつつ、エクスは立ち上がり、一度背筋を伸ばし。
「ナインとコニーに、解放日のKillerQueenでの食事会に招かれているのだが、2人もどうだろう?」
 最初から返事はわかっているが、と思いつつ尋ねたら、ほっと息を吐くアステを乗り越えてキョンがキラキラと輝く瞳で何度も何度も頷きながら。
「勿論、勿論です師匠っ!! あたしお腹空きました!!!!」
 キョンが、全部アステ姐さんに阻止されたので!! と続けた瞬間、アステの全力のツッコミが炸裂した。


「あぁ、シムルさん‥‥あと少し、やね‥‥」
 椅子に座り刺繍に集中するレティチェラ・サルトリオは、鼻先でつんつんと腰あたりを突いてくるベビィシムルに何度目になるかわからない返事をする。とはいえ、今度こそ本当にあと少しなのだ。
 手をつけた刺繍は、我ながら良い出来だ。あとひと針で、完成する。そうしたらシムルさんと一緒にご飯でも食べよう‥‥そう思ったら急に、お腹が空いてきた気がする。
「あと、少し‥‥」
 今度の一言は、自分自身に言い聞かせる為に。最後の最後で集中を欠かせてしまっては全てが水の泡だ。最後の最後まで、意識を研ぎ澄ませて。
 そうして最後まで綺麗に仕上げ、ぐっと背筋を伸ばして‥‥そこでようやく、家の外の賑やかさと、それから窓の外の暗さに気が付いた。
「‥‥あれ?」
 そういえば、もしかして‥‥断食日が近かったのでは無かったか。
 思い至り、扉を開けて通りに顔を出してみれば、そこここの家で明かりが灯り、辺りは賑やかで暖かな雰囲気に包まれている。どこかの家から、解放日だ、という誰かの声が聞こえてきた。
 と言う事は、断食期間はもう終わってしまったのだ。わたしが、刺繍に集中している内に。そうなると、三日もろくに飲まず食わずで刺繍していた事になる。
「シムルさん、一緒にご飯食べよっか」
 心配そうに見上げてくるベビィシムルにそう言うと、漸く安心したのか、小さくにゃあと鳴いて足元に頭を擦り付けてきた。そんなベビィシムルに時折声をかけつつ、レティチェラは食事の準備に取り掛かるのだった。

 食べ物の匂いで再度騒ぎ出したチャウをきつく縛り直し、ナインとコニーはKillerQueenの厨房を借りて、大急ぎで食事を作り始める。
 猪肉のハーブ焼き、鴨肉の煮込み、ジンジャー風味の海鮮スープ、他にも肉の串焼きや、春のフルーツ盛り合わせ、余った果物を絞ってジュースも。
 チャウからのプレッシャーの中、手早く調理され、皿に盛られていくご馳走の数々。それらが順番にテーブルへと並べられた頃、カランという音と共に開いた扉の奥から顔を出したのは、エクスだった。
 挨拶もそこそこに、ナインとコニーはチャウという、エクスとアステはキョンという今にも空腹で爆発しそうな人物を抱えている事にお互い気が付き、4人で急いでテーブルを用意する。
「お邪魔しま〜‥‥どーしたんだ?」
 漸く準備が終わった頃、KillerQueenを訪れたラヴィーニは、異様な雰囲気の6人に首を傾げた。
「これからご飯なんですー!」
 上機嫌なキョンに促され、ラヴィーニやKillerQueenを訪れた他のハウンド達は皆一様に席へと腰掛ける。
「すごい豪華だね」
 微笑むのは、ラヴィーニ同様キョンに声を掛けられたパライソ。
「折角なのでどうですか?」
 ナインに席を勧められるが、パライソは首を横に振り。
「ごめんね、家族が待ってるから‥‥」
「なら、持ち帰って皆さんでどうぞ」
 そう言ってコニーは、手早くパライソの分を器に取り分けて手渡す。
「良いのかい?」
 首を傾げるパライソだが、ナインとコニーにそんな悠長な事を言っている時間は無かった。なんせ、それぞれ食いはぐれないようにと取り分けている間にもチャウが異様な殺気を放っているのだ。これ以上耐えるには、縄の強度足らないだろう。
 その瞬間、散々暴れ回った所為かそれとも結び方が良く無かったのかチャウの食欲が勝ったのか、原因は定かではないがとにかく──縄が音を立てて千切れた。
「早く逃げてください!!!」
 コニーは慌てて、パライソ同様家で待つ人のためにと持ち帰り用を包ませたハウンド達をKillerQueenから送り出す。きっと彼らは平和な食卓に着く事が出来るだろう。
「ゴハンーーーーー!!!!」
 叫びながら卓の上の皿に飛びかかるチャウ。これまでエクスとアステに宥められて何とか食欲を抑えていたキョンも、それに釣られて凄い勢いで皿に手を伸ばす。
 こうなれば、後は野となれ山となれ、というもので。
「とにかく大変だったのよ‥‥見ての通り‥‥」
 その様子を横目に眺めつつ、アステは涙を堪えながらナインに語る。ここ三日の苦労を。
「ええ、わかります‥‥こっちも、この通りで‥‥」
 頷くナインも遠い目をして、三日間の苦難を語る。じき、皿の上の料理も無くなってしまうだろう。コニーはそれを見越して先に追加の料理を準備するために厨房へ向かったらしい。自分も手伝おう、と立ち上がるナイン。アステはそれを手伝いながら、親戚とひたすら苦労を語り合うのであった。
「なんかすごいんだなぁ〜‥‥」
 恐怖が一周回って尊敬の念を抱き始めたラヴィーニは、ばくばくと凄い勢いで料理を平らげていくチャウに声を掛けてみる。しかし、当のチャウはなんでもない顔をしてぱちくりと目を瞬く。
「んーと、今まで何してたんだっけ?」
 こてんと首を傾げて少し考えた後、食器は手放さないままぽんと手を打った。
「気が付いたら、killerQueenにいて、皆でご飯を食べてたのー。んーと、お腹がペコペコなのは覚えてるの」
 言うや否や、するんと飲み込むように串焼き肉を平らげて、はいっと勢いよく手を挙げた。
「コニー、おかわりー☆」
 厨房から聞こえる返事に、満足気に頷き待ちの姿勢を取るチャウに、思わず力ない笑みを浮かべてしまったラヴィーニ。
「よく食べるな‥‥」
 思わずこぼしたエクスの横にいつの間にか滑り込んでいたキョンは、持参した酒樽をすっと取り出した。
「師匠、差し入れのお酒です! どうぞ!」
「あぁ‥‥ありがとう」
 キョンのおかげで修行がハードモードだったと言えなくは無いが、それはそれこれはこれ。弟子として可愛がるキョンからの差し入れを断る理由は何処にも無かった。あとでアステにも注いでやってくれ、と言いながら、コップに注がれる酒を眺めるエクス。
「あっラヴィーニ君! ラヴィーニ君もどうぞー!!」
「え、いいのか?! ありがとー!!」
 手招きされ、ラヴィーニは笑顔でキョンの元へとコップを持って小走りして来た。
「お疲れ様〜」
 そう言いながら酒を注いでいくキョンに、ラヴィーニも同じく労いの声を掛ける。応じるキョンは、その場の他のハウンド達にも同じように酒を注いで回る。
「じゃあ、かんぱーいっ!!」
 コモンの文化に慣れてきたラヴィーニにとって、こう言った場は好ましく思っているものの一つだ。ご飯も美味しいし、お酒も美味しい。食べ物に困らないし、仲間とのひとときはとても楽しい。
 そんな事を思いつつ、ラヴィーニは同じく酒を注いでもらったエクスとコップを軽く合わせ。
 ぐい、っと勢いよくコップを傾けた、その時。
「あ、これドラゴンキラーだ」
 キョンがその事実に気が付いた時にはもう既に、ドラゴンキラーはそれぞれの胃の中に収まっていた。
 倒れる者、目を回す者、妙に騒がしくなる者、トイレに駆け込む者、這いずる者。三者三様の大惨事だ。しかしそれもやがて、KillerQueen全体の賑わいの中に飲み込まれていく。

 こうして、ハウンド達、街の住民達、それぞれの解放日は賑やかに幕を開ける。
 また今年も、平和に過ごせますように。今年も豊作でありますように。
 そんな願いを込めた大騒ぎは、人々が騒ぎ疲れるまで、続けられるのだった。



 6

参加者

c.兄さんとキョンちゃんの3人で、killerQueenに来てます。
アステ・カイザー(da0211)
♀ 24歳 人間 カムイ 水
z.よろしくお願いします。
セシリオ・レヴナント(da0545)
♂ 27歳 ダークエルフ ヴォルセルク 水
b.早く料理を作らないと、腹ペコモンスターが暴れ出してしまいます…!!
コニー・バイン(da0737)
♂ 20歳 人間 マイスター 月
c.三日間は瞑想をして過ごしていたが…流石に腹が減るな
エクス・カイザー(da1679)
♂ 27歳 人間 ヴォルセルク 火
b.折角の断食明けは美味しいご飯がいいよねぇ。
パライソ・レヴナント(da1777)
♂ 50歳 カーシー(小型) カムイ 火
b.オナカ…スイタ…
チャウ(da1836)
♀ ?歳 シフール カムイ 月
b.コニー君と料理を作り、皆さんに振舞います。
ナイン・ルーラ(da1856)
♀ 26歳 人間 ヴォルセルク 水
a.…あ、断食日やったっけ……(断食期間中寝食忘れて刺繍してた人)
レティチェラ・サルトリオ(da1954)
♀ 16歳 ライトエルフ マイスター 陽
c.ささ、ラヴィーニ君も一杯どうぞ☆(尚、酒は錬金酒[Dkiller])
キョン・シー(da2057)
♀ 19歳 人間 パドマ 風
 断食はやだけど、そのあとは楽しそうだな!!
ラヴィーニ(dz0041)
♂ ?歳 キティドラゴン パドマ 水


断食と解放日のお知らせ

今年も断食と解放日の時期がやってまいりました。皆さまご準備のほど、お願いいたします。