オープニング
◆呪われた村
グレコニアの辺境の寒村、そこでは昏い因習があった。
ハウンドたちがその因習を知ったのは、ステファンという若者が、ダーナを探していたからだ。
「強くて信用できる戦士に妹のネリアを救ってほしい」
だが、ダーナたちは生憎と不在、ないしは報酬の折り合いが全くつかない。
そんな絶望の中に、ヴァンパイアの調査に来ていたハウンドたちと出会えた、これはまさしく天の配剤だろう。
◆
「お願いします、ネリアを助けてください、出来ることなら何でもします」
ステファンはハウンドたちに一縷の望みを託す。
では──と、ハウンドは言った。
「話を聞きたい。村の因習に関して。そして救いたいこの村を」
ステファンから、話を聞くと、顔色の悪いヒューマンのような者が現れて、村人を襲ったのだという。被害は少なくなかった。伝説の吸血鬼が現れたのだと、人々は震え上がった。
話を聞く過程で、ぞっとする話が出てきた。すでに『生贄』を送り出したというのだ。
◆昔語り
ステファンが語る所では、かつてこの一帯は吸血鬼が支配しており、一年にひとり、若い乙女を生贄として差し出していたのだそうだ。
それ以上の災厄はなく、村は安全が保たれていた、と。そこで村長や長老が協議し、乙女をひとり、『山の上の廃城』へと送り届けたのだという。そこがきっと、吸血鬼の住処であろうから、と。
ハウンドの思いは複雑だ。怒るべきか、憐れむべきか――いずれにせよ、この愚行は見過ごせない。夜のとばりが下りる前に、その城へと急ぐのだった。
「ネリアはもうすぐ十五、成人したら──結婚の話もあります。でも‥‥」
その言葉はハウンドたちは聞かなった。
まさに疾風のごとく、廃城へと向かったのだ。
◆走れ! ハウンド──走れ!!
ハウンドが星々に照らされた、廃城につく。
その広間では。
「バケモノには決して‥‥屈しません」
結った髪が解け、ナイフを逆手に握った気丈な少女──ネリアだろう──が言葉を放つ。
彼女の目の前に立つ、赤い瞳の男、その肌は血の気がないと思える蒼白さだ。
「いいぞ、抗え──やれるものならな」
男は言って、自身がナイフにさされるのも厭わず、ネリアの手をひねり上げる。
服は破れるが、男は傷ひとつ、血の一滴も流していない。
「ほら、まず我が血を吸ってやろう──」
牙を剥きだす男は心底楽しそうな笑みを浮かべた。
ハウンドがたどり着いたのはその瞬間だった。
陽は落ちた‥‥命没する時──だから、ハウンドの戦いが始まる!
選択肢
マスターより
「く! こんな時にハウンドがいれば‥‥」「いるさここに八人な!」
という文章を書いてみたい成瀬です。
夜間なので光源必須です。NPCハウンドはいないので、頑張ってください。
諸君、夜の眷属と戦う覚悟は良いか?
では、ご参加お待ちしています。
(NPCのセリフのひとつを確認するといいかもね)
※【SubEpisode09】純白穢す新たな闇 関連シナリオ
登場キャラ
◆ハウンド廃城に咆哮す!
「たすけてえーっ」
叫ぶイケニエの娘、ネリア。
「無駄だ。もうお前を守る者はいない」
嗜虐的な笑みを浮かべるバーヴァンスレイブ。
「いるさ、ここに栄光の八人ハウンドがな!!」
声が響く。
「な、何だっ! ハウンドとはっ!!」
「あててみろ──シーハリオンへご招待するぜ」
ニヒルな笑みを浮かべる、
アンドレ・カンドレは言葉をつづけた!
「手を頭に乗せな、乗せないと乗せる頭が無くなるぜ」
「ゆるさーぬのじゃー!」
その言葉にかまわず、
ビクトリア・アイビンは、まっすぐ全力で突っ込み、踏み切る。
(女の子を殺めるなど許せぬ!‥‥まずはドロップキック!‥‥話はそこからじゃ!)
まっすぐ伸びた足はバーヴァンスレイブを捉えなかった。
猿のような体さばきでビクトリアの一撃をかわす。
「しまったのじゃ!」
床にキスし、スカートがめくれることで、イロイロと見えてはいけないものが、露出する。
しかし、ビクトリアも卓越した軽業で一瞬のタイムラグを起いて立ち上がっていた。
そこに気配を消して忍び寄る女性。魔法の杖の特殊能力で姿を消し、フライの魔法で空中を移動することで音を断った、
フルミーネ・ヴェンティが、シュヴァルツクリンゲの斬撃を浴びせる。
ネリアを助ける為に、一撃するつもりだが、この攻撃により透明化の特殊能力は消え、あまつさえ──一撃はかわされた。
相手の体術は非常に高度だ。
フルミーネは自身の剣技を高く見積もり過ぎていた。腕を一刀両断するつもりだったが、狙った一撃を与えられるほどではない。
それは戦技でも超人的な技量の持ち主だろう。
◆必殺の0.1秒
「両手に持っているものを全部捨てろ」
ネリアを盾にしてバーヴァンは宣言した。
ばきッ!
ネリアの腕を折る。
本気というアピールだ。
「ひきょうね、トモダチいないでしょう?」
侮蔑の表情を浮かべ、
マリカ・ピエリーニは時間を稼ぎつつ、得物の、ファングオブマリカを外そうとする。 無言で、
カモミール・セリーザは魔法の杖を放る、と見せかけて、魔法を成就する。
0.1秒の高速詠唱。その結果は──。
「──プリズマティック! 聖域に汝らの住むところは無しなのよね」
周囲を巻き込んだ聖域。中は昼間と同じ魔法的環境だ。
とっさの状況の変化に対応する、
シェール・エクレールは、伝家の宝刀、ヨウコストリングを放る。
狙いすましたその一撃は、バーヴァンスレイブをがんじがらめにした。
「お前、覚悟するべ──死ぬまで殴ればみんな死ぬべ」
殺到する、
エルシー・カル。手にする獲物はアイアンフラッシュだ!
シェールのエエンレラにより浄化を付与された、その攻撃は、バーヴァンスレイブに、強(したた)かなダメージを与えた。バーヴァンスレイブは頭が半分ほど砕けていた。その傷は少しずつ、ふさがりつつある。
「まあ、応急手当じゃのう」
言いながら、ネリアにエルヴンロングボウを射こむ、
ケイナ・エクレール。
彼女がネリアを狙ったのは誤射ではない。
魔矢発動を行ったのだ。成就された魔法は──キュアティブ。ネリアの腕を癒したのだ。
「そして、これでチェックメイトだ」
アンドレがアテンディスクを放る。
太陽の力を帯びたこの円盤は、十分な威力でバーヴァンスレイブを倒す。
その心臓を魔銀の穂先で貫くビクトリア。バーヴァンスレイブは死亡する。
「ううむ、突っ込む前に槍を投げればよかったのじゃのう」
(ううむむ、アテンディスクがあんなに破壊力があるとは)
予想外のことに驚くアンドレだった。
◆夜は‥‥まだつづく
一息ついたハウンドたち。
だが、予想外の展開が待っていた。
「くくく、偽りの昼が終わったか」
「ダーナごときに殺されるとはバーヴァンの恥さらしよ」
紅い目の顔色の悪い男と女が出てきた。
「出おったか、魔物よ‥‥たかが一匹増えたところで」
ビクトリアが不敵な笑みを浮かべる。
しかし、おそらく地下室から出てきた影は、ひとりやふたりではない。
フルミーネがけん制でゼウスを成就しながら、ハウンドたちは後退する。
倒せない敵ではない。先ほどのことを見る限りでは。
仮にゼウスを放っても、相手が逃げれば相当面倒くさいことは確実。
単に範囲魔法がひとつでは、殲滅するのは時間がかかる相手だ。
メテオという手札はカモミールにある。
しかし、大半の予想通り、魔法や銀の武器でないと傷つかないなら、無力だ。
加えて向こうは『偽りの昼』と言っていた。こちらの手札はある程度さらされているだろう。
「それを知っていてなお、挑んだ‥‥面倒な相手だ」
アンドレが呟く。
◆Break Through The Night!
「じゃあ、あえて虎口に飛び込む、そういうのも悪くないわ」
マリカが宣言する。戦うのなら魔力を温存している今の内。
火のヴォルセルクらしい、即攻な決断だ。
ヴォルセルクは魔力がパドマなどに比べて見劣りがする。
うなずく、エルシーとアンドレ。
「もう、出し惜しみはナシだべ、前に出て殴り飛ばすべ」
と、重戦士。
「奇襲のメリットは消えた‥‥だが、それも悪くない」
黒騎士は肩を竦める。
「ふっオトコノコじゃのう」
ビクトリアが言うとエルシーからツッコミが入った。
「女の子だべ、まあそれなりに」
訂正するビクトリア。
「ふっ、オトコノコとオンナノコじゃ‥‥よそう、ドロ沼じゃ」
一般論としての城の構造は把握している。
おそらく、地下室があるのだろうと、ハウンドたちはアタリをつけた。
「じゃあ、聖域に引っ張り込んでやる気なくさせるからね。まったく知略は肩がこるわねえ」
カモミールがそう言って、魔法の杖を構えなおす。
光源は皆が持っている。
少なくとも、一同が持っている光源で、相手を忌避させるだけの光源は確保できない。
カモミールによるプリズマティックを六回使って、四回が巻き込めず空振りだった。
「まあ、こういうこともあるわよね‥‥あとは任せたわね──」
フルミーネに頭脳担当を譲り渡すカモミール。
しかし、聖域に巻き込めれば、相手は逃げの一手に入る。
バーヴァンスレイブは傷はふさがる、しかし──闘志はない。
そこはシェールとケイナが銀の矢で矢ぶすまにする。
エエンレラとて無尽蔵に使えるわけではない。いざとなれば役に立つのは手元の矢玉だ。
そして、アテンディスク。
「邪鬼みたい」
とどめを刺した、マリカがそう言ったのは、弱い相手には強く、強い相手には逃げまどう、という習性ゆえ。
今までエエンレラによる浄化を付与して倒した相手と、通常の銀の武器による攻撃で倒した相手に差異は見られない。
「しかたないべ、生かしておけば、またイケニエを求めるべ?」
(闇の住人は、邪神の呪いを未解除の連中より救いがない)
フルミーネはゼウス一発分の余力を残して戦いを終えた。
◆いつかは明日が来る
ネリアには朝までつき合わせてしまった。
そんな申し訳なさをシェールは思ってしまう。
一応、ネリアは未成年だ。
「でも、あの魔物はもういないのでしょう?」
つかれた笑みだが、明るさをわずかににじませている。
「イロイロやったべ、頭ナシで生きているヤツはいないべ」
エルシーが肩を叩くと、ネリアも笑みを浮かべた。
「そう、その笑顔が見たかった」
アンドレも笑みで返す。
「カモミールさんがいなかったら‥‥すごく面倒な事になっていたでしょう」
マリカがそういうと、ケイナが大きくうなずいて。
「勝利の美酒はヌシが主賓じゃ、胸を張ってよいのじゃ」
フルミーネが思ったのは、役割分担って大事という事。
「したい事と、やれる事のちがいかな」
うむ、よく考えるがいいのじゃ、と言ったのはビクトリアだった。
廃城から、帰ってきたステファンを見て、ネリアはこういうのだった。
「ありがとうお兄ちゃん」
「お帰り、ネリア」
生贄を要求する魔物は消えた。
しかし──正しい信仰を布教しない限り、この悲劇はどこででも起こり得る。
その決意を胸に──ハウンドの冒険は‥‥つづく!
7
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参加者
| | c.ライトで照らすわよ~。吸血鬼の隔離にプリズマティックも準備するわね~
| | カモミール・セリーザ(da0676) ♀ 31歳 ライトエルフ パドマ 陽 | | |
| | a.血がほしいの? なら私のはどう? …吸えるものならね!
| | マリカ・ピエリーニ(da1228) ♀ 29歳 人間 ヴォルセルク 火 | | |
| | a.女の子を殺めるなど許せぬ!…まずはドロップキック!…話はそこからじゃ!
| | ビクトリア・アイビン(da1579) ♀ 20歳 ダークエルフ ヴォルセルク 水 | | |
| | c.(ありゃ、もう捕まっちゃってるのですか。これは何とか引き離しませんと)
| | フルミーネ・ヴェンティ(da1894) ♀ 28歳 ライトエルフ パドマ 風 | | |
| | b.援護射撃とエエンレラの付与を行います。
| | シェール・エクレール(da1900) ♀ 19歳 人間 カムイ 風 | | |
| | b.回復と援護射撃じゃ。
| | ケイナ・エクレール(da1988) ♀ 30歳 人間 カムイ 火 | | |
| | a.前に出てぶっ飛ばすべ。
| | エルシー・カル(da2004) ♀ 21歳 カーシー(大型) ヴォルセルク 地 | | |
| | a.いるさ、ここに栄光の8人ハウンドがな!!(8人ライダーの語感で)
| | アンドレ・カンドレ(da2051) ♂ 51歳 ダークエルフ ヴォルセルク 月 | | |
血を流せ
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「あらがえ、コモン。我らの前で地獄を見せろ
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