オープニング
◆宴だー!
ハウンド女子陣は夢を見る。
仲間意識を養うべく、ギルドの一室で、パジャマパーティーを開催したのだ、まあ女子会だ。
女性陣の賑やかな世は更け、皆が眠りについた。
だから──親しい友人が出てきても、まあ現実の延長の夢と思うだろう。
しかし、潮の香が自己主張する空間。見上げれば帆が翻り、見下ろせば波頭が後方へと流れていく。
帆船だ──頭上に翻る、黒地にリンゴが染め抜かれ、下にはナイフとスプーンが交差した旗が自己主張する。
海賊船だろうか?
「やろうども、きゃぷてんがーべらが、このよのかなたのうみの、たからじまにつれてきたで!」
ああ、アイパッチをしたシフールのガーベラが自己主張している。どうやら船長らしい。
言って、彼女が指さした水平線には、ひとつの島が見えている。
「さあ、たからじまでかいぞくおうのいさんをてにいれる、まえいわいのうたげや!」
ガーベラがそう主張する。
◆我が敵、栄養価
よく見ると周囲には、甲板で火がたかれ(当たり前だが異常だ)牛の炙り肉が串に刺されて回されており、加えてリンゴの樽や、あけ放たれた酒樽が無造作に転がっていた。
ガーベラの食生活が伺えるかのようだ。
一部の冴えたものが気づいた。
(もし、夢なら‥‥どれだけ食べても)
金はかからない。それにぜい肉にはならない。
「食べよう!」
そういうことになった──。
◆夢見ぬまま待ち至れり
そのころ『宝島』の宝物の山。野ざらしとなった、貴金属に宝石、装飾品、武器の山があり、そのふもとに祭壇があった。
祭壇には悪夢を食らう聖獣バクが王子様ルックで横たわっていた。
様々な動物の特徴を取り込んだ様な見た目の獣。身体は熊、鼻は象、目はサイ、尾は牛、脚は虎である。
目をつむっている彼(?)の脇に大きな看板が立てられている。
『そのようにするように』
だけ書かれていた。
そのよう、って何よ? と突っ込むものは未だいない。多分、船上で女子会を楽しんでいるのだろう。
果たして女子会は宴会で終わるのか?
選択肢
a.無礼講の宴 | b.女子会続行 |
c.宝島に上陸 | z.その他・未選択 |
マスターより
成瀬です、ちょっとチャージしていました。
さて、今回は分類『女子』の方の参加をお待ちしています。
なお、男子は、女子のパジャマパーティーですので、隣の部屋で壁に向かってごはんを食べているという描写以外は無いと思ってください。
お約束ですが、夢の中からたったひとつのものを除いて持ち帰れません。
それは──体験、とどこぞの永遠の戦士も言っています。
そして、アイテムも持ち込めません。パジャマパーティーの格好のままです。
では、楽しみたい女子の方と、勇気のある一部の男子の方、お待ちしています。
登場キャラ
◆女子会続行in My Dream!
「女子会続行! ──と言っても、ハウンドの男女比の偏りの話題だけどさぁ‥‥」
パジャマ姿の、
アステ・カイザーが、従妹である、
エルディ・カイザーに、そう話しかける。
「これって夢、なんです?」
エルディがそう問う。
「さあ、としか言いようがないなあ」
とは、アステの弁だった。
「ですか。とりあえずパジャマなんで、女子会続けましょう、やっぱり!」
──と、いう事になった。少なくともエルディにとってはそれで充分らしい。
「女子会続行と言っても話すのは、ハウンドの男女比の問題で、女性に偏ってるって話題なんだけどね」
ハウンドは男性日照りで、大半の依頼で女性が多数派を占めるものだ。
「男女比率? いわれてみれば女性多いですね? ルミナ使えるの女性が多い、とか?」
そこで、エルディは目を見開き。
「でも、エルのめざす救世主はみんな救うのでどちらでも良いのです」
そういう事になった。
◆男子不在の可能性!
「可能性、そのいち! 男社会なので、扱いやすい男性陣は騎士団とかの、組織に引き抜かれている!」
と、シリアスな顔をしたアステが指を一本立てる。
「え、そうなんですか? でも、ありそうですね」
エルディがショックを受けた顔をするのだった。
「そう。だからハウンドは女所帯になった! ‥‥のかなあ」
アステは勢いよく言ったものの、エルディに真正面から受け取られると、急に自分でもリアリティが足りなくなった気がして、自説に迷いが生じた。
「か、可能性そのに! 最初のころには存在したものの‥‥」
「したものの?」
アステの言葉を、エルディがキラキラした目で期待する。
「ゴブリンや山賊退治で飽きてしまった!」
「なるほど! いわゆるデュルガーやドラゴンのような、Dで始まる魔物と戦ってみたかった男子というやつですか!」
その意見にエルディはうなずいた。
◆探し物は『アレ』ですか?
「そう! なのに、いざそんな魔物が出てくると鍛錬が足りないので、戦えなかった!」
エルディの言葉がミョーなリアリティを持っているので、勢いよく首をタテにふるアステだった。
「きっとそれね! お陰で彼氏も見つからないし、残った、ハウンドの男は余り好みのタイプじゃないし‥‥」
アステは我が意を得たりとばかりに、喋り倒す。
「あー、せーしゅんのざせつつーやつやな」
そう、
ガーベラが話に入る。
「ガーベラさん、海賊行為は許しません、敵は海賊です!」
言って、エルディは背中の斜めXの刺青を見せつける。
「痛い目にあいたくなければ‥‥島を略奪する海賊行為ではなく『がくじゅつちょうさ』? なら許します!‥‥ガンバってくださいっ☆ では──食べます」
「そう、その『がっこーちょーは』や!」
その頃には、エルディの脳は食欲煩悩の支配するところとなっていた。
食らい、飲み下す!
飲み、飲み干す。
それを延々続けるだけの食欲マッスィーンに。
ああ、なぜ人は味覚をもって生まれてきたのだろうか‥‥。
ほろ酔い、八分腹のエルディは、アステに向かい──。
「アステ従姉さまは‥‥すごい人ですね──目立たないけどいないと困る、的な?」
「バカ兄さんのストッパーをしているだけだから」
(兄さんが異種族の彼女と交際してるから、血筋を残す為にも私が何とかしなきゃいけないんだけど‥‥)
◆みなさん冒険百連発していますか!
「やっぱり‥‥気になりますよね!」
目の前に聳え立つ金銀財宝百花繚乱を見上げながら、
パオラ・ビュネルは呟く。
「もしかしたら、世界を平和にして、誰も争ったり奪われたりしないでいいような‥‥そんな力を持った、お宝があるかも──そんなのがあったら、ハウンドの商売上がったりですけど‥‥それもいいですよね、なーんて‥‥普通に財宝でしょうか?」
彼女にしては珍しいともいえる、いつにない長広舌だった。
それだけパオラの中でこの財宝の山はショッキングだったのだろう。
「金貨だと思って握りしめてたら、実はショコラで溶けて大変なことになってたりして」
そう思ってみると、ショコラの塊もあった。バクの顔の刻印も押されている。
「王子様がいて、そのようにするように‥‥て、これはもしかしてもしかしますか!? いゃだぁ~」
キョン・シーは、顔を赤らめてから、何故か所持していた闇砕きの丸太を担ぎ上げて王子様のハートをイチコロに‥‥。
(あ! 王子様が寝てますね。ここは闇砕きの丸太で止めを刺す流れですね!?)
キョンの言動に、思わず振り向くパオラ。
「え、それは──まず、分析してください」
「?」
パオラの言葉に、頭上へハテナマークを浮かべるキョン。
「まず、王子様の妥当性を検証。そしてその心臓を丸太で破壊することの妥当性‥‥」
そのパオラの言葉に対し、区切り区切りで頷くキョン。
◆超Z級大戦!
「分かった。王子様かどうかはともかく、闇砕きの丸太で脳天をカチ割るんだね」
真顔のキョンの言葉で、全身の倦怠感を感じるパオラ。
王子様(仮名)は、薄目でその丸太を見て──。
「天罰攻撃!」
──振り下ろされた丸太の下から身をひるがえした。
「あ、寝てるのに逃げた!? 王子様、まてー!!」
追おうとするキョンに、王子様は言い置く。
「祭壇はショコラ製! みんなへのプレゼント!」
そ、それは──いただきます。と、キョンは王子をあきらめると、祭壇に向かい両手を合わせる。
手も口もチョコまみれになるのも構わず、祭壇をちぎっては口に放り込む。
「まあ、やはり‥‥平和と自由が欲しければ、努力して勝ち取れということでしょうか?」
キョンの行動を見て、納得せざるを得ないパオラ。
「あれ、そう言えばキャプテンガーベラは?」
パオラの疑問のため説明すると、酔っ払いシフールのガーベラは宝の山のてっぺんにいた。
ほら、何とかは高いところが好きといいますので‥‥。
「ひとがごみのようやー」
これがガーベラの本性だろうか?
◆紡がれし夢の狩人
「スゴイ宝だねえ、ねえキャプテン?」
宴に飽きて上陸した、エルディが宝の山を見上げる。
「ほひひひほ、へふへえひゃんほはへほほ(おいしいよ、エルディちゃんも食べよう)」
肘から先と、顔面をチョコまみれにした、キョンがエルディに迫る。
その顔を見たエルディは──。
「うらやましい、食べる!」
本能の国の住人と化した。
一方、パオラとアステはお互いに顔を見合わせため息をつくのみだった。
「言いたいことは何となくわかる気がするね」
とアステ。
「お察しいただき、感謝します」
とパオラ。
理性の国のふたりはお互いに目と目を合わせるだけで大体言いたいことは分かったつもりだった。
本能のまま突き進むには少しだけリミッターがかかっている。
そして、朝日が昇り、東の方から明けに染めていった。
──夢はそこまで。
◆朝は来る、夢はもう醒めた──
「あれ?」
彼女が目を覚ますと、そこはハウンドギルドの一室だった。
部屋の中身は記憶とも相違はない。
女子会の後だ。
しかし、四人の女性(自分も加えると五人か)が見た夢は、大体わかる気がした。
(楽しい夢だったのだろうな)
夢は続きを見られない、故に尊い──のかもしれない。
とはいえ、新しい一日が始まる。夢の残滓を残しながら。
だから──ハウンドの日常は始まる!
6
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参加者
| | b.女子会続行! と言っても、ハウンドの男女比の偏りの話題だけどさぁ
| | アステ・カイザー(da0211) ♀ 27歳 人間 カムイ 水 | | |
| | b.女子会楽しみです!……それはそうと海賊行為は許しませんっ!
| | エルディ・カイザー(da2015) ♀ 18歳 人間 ヴォルセルク 地 | | |
| | c.やっぱり……気になりますよね!
| | パオラ・ビュネル(da2035) ♀ 23歳 ライトエルフ パドマ 地 | | |
| | c.あ、王子様が寝てますね。ここは闇砕きの丸太で止めを刺す流れですね!?
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──さあ行こう、夢に見た島へと
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ハウンドギルド関係者のパジャマパーティーで親睦を深めましょう、特に女子。なお、男子は察してくださいね──しかし、この集まりが一晩の冒険になるとは‥‥同じ夜に見たそれぞれの夢。
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