さらわれたベルクート

担当成瀬丈二
出発2021/02/01
種類ショート 冒険(他)
結果成功
MVPケイナ・エクレール(da1988)
準MVPパオラ・ビュネル(da2035)
エクス・カイザー(da1679)

オープニング

◆ベルクート飛ぶ(?)
 事件が起きたのは『帰らずの森』に近い平原。
 この帰らずの森は今だ神秘に包まれている。
 しかし、逸話だけはあるという奇妙な地だった。
 ──曰く、迷ったら二度と帰って来れない。
 森の奥はあの世に続いているなどと言われている。

登場キャラ

リプレイ

◆冒険が始まる
「まだ一キロ以内にいれば‥‥テレパシー」
 そうベルクート・クレメントの身を案じて、パオラ・ビュネルは魔法の杖を構え、テレパシーの魔法を成就する。
「大丈夫ですか? ベルクートさん──いま、ライトを点けて追いますから光が見えたら、そちらに誘導してください」
「パオラさん今のところ大丈夫だよ」
 ベルクートの通信が切れる。気絶はしていない。実はホワイトイーグルが自身の嘴を媒体にアマテラスを付与してテレパシーを弾いていたのだが、そこまで分かるハウンドはいない。
 あわてず騒がず、エクス・カイザーが魔法の箒を出す。
「追おう──森を飛んで他の生き物を刺激することはない」
「はい」
 パオラはうなずく。

◆ドキドキが始まる
「じゃあ、下から行きまわよ」
 そう、ティファル・クラウディアがそういうと、ローベの肩を叩いた。
「まあ、多少巻き込んでも簡単には死なない、あのベルクートはその程度には頑丈じゃ」
 軽口をたたく、ケイナ・エクレールだった。
 ケイナはティファルのゼウスの技量を知っているから、そう言えるのだ。
「もっとも、死にかかったところで落ちたら、タダではすまぬのじゃ」
「あれだけ魔物が大きければ、そうそうゼウスは外れないわよ」
 そんなティファルの言葉がきっかけになって追走劇が始まった。
「行こう」
 ローベが慎重かつ出来得る限り迅速に動き出す。

◆地の追走撃
 ローベが帰らずの森の中を小走りで歩く、彼に追従するハウンドたち。
 このペースなら十分かからないだろう、とローベは言う。
「あれ? ベルクート‥‥さん」
 パオラがエクスの後ろで声をあげる。
(パオラさん、ぼくも今のところ大丈夫だよ)
 三メートル近い全長の、ホワイトイーグルの胴体中央あたりに位置するベルクートは条件が合えば、直径三メートルのアマテラスの結界からはみ出ることもあるのだろう。
 まあ、偶然の範疇だがそういうケースもある。
「パオラさん、ベルクートに伝えてくれ。少し手荒に叩き落す、と」
 不敵な笑みを浮かべるエクス。
 ──小規模なれど、風雲急を告げる!

◆涙と震撼
「魔物と空中戦とは、まるで英雄譚の勇者!」
 あまりのとんでもないシチュエーションに感動するティファル。これは是非とも記録してエッダに送らねば。
「うむ。感動じゃのう、全オーディアが涙すること間違いなしじゃ」
 ケイナが目元をぬぐうふりをする。
「いいえ、きっとミドルヘイムが震撼するわね」
 とティファル。
「見つけました」
 そう、パオラがみなに告げる。
 ──戦いの機運高まる。
 そして、その序曲の幕をあげるべく、ティファルが立ち止まって、魔法の杖を天に向ける。ケイナもエルヴンロングボウに矢を番えた。
 戦いの予感をヒシヒシと感じるエクス。彼は魔法の箒に搭乗する前に、ブルームマスターを成就、空中戦に備える。
「‥‥──ゼウス!」
 ティファルが詠唱とともに魔法を成就、激しいイカズチがホワイトイーグルを捉え──なかった。
 ホワイトイーグルのアマテラスの結界で弾かれてしまう。
「ふむ、CROSSもパンドラのクリスタルもなしにアマテラス、いや魔物法かのう‥‥まあ不可解じゃ」
 ケイナが推測をするが、今ひとつ知識があいまいだ。

◆天より来るもの
「今、いくぞベルクート!」
 エクスが魔法の箒にまたがる前に、エクスは成就した魔法、ルミナパワーを己のグリーヴァブレードに付与する。
「死なせはせぬのじゃ! 乗せるのじゃ、エクス!」
 準備していた箒をエクスはケイナに向ける。
 ──口にしては!
「承知した!」
 エクスの魔法の箒のサドルに身を落ち着けるケイナ。
「ベルクートの近くまで行ったら、飛び降りるでな、存分にティファルの創作意欲を掻き立てるのじゃ」
 ケイナは半分冗談、残り半分は自分でも不分明。エクスは一瞬、目をつむった。
 ──口にしては。
「‥‥承知した」
 その時、殺意を感じたホワイトイーグルはベルクートを放し、地面に落とす。
 ウェイト的なハンデを抱えての戦いを、危険と判断したのだろう。野生のカンというやつか?
 ともあれ、落下するベルクート。即死は免れたようだが、早急な手当てが必要そうだ。
 ケイナはベルクートの落ちた地点を確認すると‥‥。
「頼むのじゃ、勇者!」
 そして、ケイナは立ち上がると、弓に魔矢発動でキュアティブの魔法を付与しておいた矢を番える。
「ふむ、死なせはせぬのじゃよ。このままでは今宵の酒が美味くないのでのう」
 放たれた矢から注がれた魔法は、途切れ途切れだったベルクートの呼吸を安定させる。
 後ろからはパオラが駆け寄ってきた。さらに後ろからはティファルも続く。

◆天と地の戦い
「グリーヴァブレードの斬れ味味わってみよ!」
 エクスが戦技で器用に魔法の箒を操作して肉薄する。
 一方のホワイトイーグルも動きがかなり早く、容易に有効打を当てられない。
 巣と思しき木が見えてきた。巣の中には他の生命の気配なない、ように見えた。
 肉薄するエクス。
 エクスの渾身の力を込めたグリーヴァブレードの一撃は、ホワイトイーグルを捉えた。
 ティファルがまるでおとぎ話のような戦いに目を輝かせる。
(今はまだ神秘が息づいている時代なんだよね──)
 彼女に向かって血が空中からしぶくが、ティファルはそれすらも物語の一部のように感じてしまう。
 ホワイトイーグルの決死の反撃が、エクスを捉えるが、彼がまとう竜の鱗を模した鎧はそれを弾くのだ。
「させない!」
 肉薄したホワイトイーグルからグリーヴァブレードの間合いに切り替えるべく、エクスは魔法の箒を駆る。
 ホワイトイーグルの肉薄は戦技のような洗練されたものではないのだ。
 充分な間合いを取って、エクスはグリーヴァブレードを振り下ろす。
 羽毛が舞い散り、血潮もそれに続く、失速して自身の巣に落ちるホワイトイーグル。
 そこに追撃をかけるエクス。
「これで終わりだ!」
 飛び立とうとするホワイトイーグルの頭上を取った一撃が繰り出される。
 ホワイトイーグルはエクスの一撃の前に散った。

◆──沈黙の春
 エクスは地上に舞い降りる。
 戦いが終わり、集まる一同。
 慎重にベルクートに普通にキュアティブを成就するケイナ。
「うーむ、今度は間違えてリジェネレイトでも使おうかのう。一日動けぬのじゃが」
 物騒なジョークを言うケイナ。
「あれ、ベルクートさん、目を覚ましましたか?」
 パオラがゆっくりと、横たわっていたベルクートの上半身を抱え起こす。
「ありがとう、そしてごめん。みんなに迷惑かけてしまって‥‥」
 さすがにバツが悪そうにするベルクート。
「少し鍛えなおしたほうがいいな」
 とは箒から降りたエクスの弁だ。
「ローレックの街に帰ったら、KillerQueenで皆に奢ることだな。今回の報酬は寒いことになるかもしれないがな」
 そう続けたエクスは、悪ガキのような笑みを浮かべる。
「──いくらくらいでしょう?」
 考えたこともないので、相場が分からず、恐る恐る聞くベルクート。その声に──。
「まあ、『心づくし』だよ。そのままベルクートさんの命の値段だから、お好みでね?」
 ──ティファルが髪を弄りながら答えを返す。
 ブラックジョークかもしれないが、物騒な答えだった。
 ともあれ、ローベから幾つかの新情報を得て、その裏どりだけで探索の日程は終わりを告げた。
 ローベと互いの無事を祈り、帰還するハウンドたち。
 ──帰らずの森、冬──春はまだ遠かった。
 しかし! ハウンドの冒険は‥‥つづく!



 6

参加者

a.魔法の箒は持ってきているが、まずは森を急ぐか
エクス・カイザー(da1679)
♂ 30歳 人間 ヴォルセルク 火
b.後衛でゼウスを撃ち込んでいくわ。
ティファル・クラウディア(da1913)
♀ 26歳 ライトエルフ パドマ 風
b.回復と援護射撃じゃ。
ケイナ・エクレール(da1988)
♀ 30歳 人間 カムイ 火
c.よろしくお願いします。
パオラ・ビュネル(da2035)
♀ 23歳 ライトエルフ パドマ 地
 寒いの寒い、高いの怖いよ~。
ベルクート・クレメント(dz0047)
♂ 26歳 パラ パドマ 火


見よ大空の白い鳥

帰らずの森の調査に行く途中で仲間が誘拐された。現地の猛獣使いと協力して奪回しよう!