【HH05】雪山の人形

担当成瀬丈二
出発2021/01/08
種類ショート 冒険(他)
結果成功
MVPエルマー・メスロン(da1576)
準MVPエクス・カイザー(da1679)
アステ・カイザー(da0211)

オープニング


 それは予言だったのだろうか?
 シフールの乳母が夢を見たという。
 それはハウンドに伝わったところでは、北の地にてネストドールがいるのを感じたというのだ。
 北の地──ミドルヘイムで知られている範疇ならリムランドだろう。


登場キャラ

リプレイ

◆序章
 現在雪山は曇天の下にあった。
 普通ならば、現地人のハザン氏の言った通り吹雪に閉ざされているのである。
 しかし、エルマー・メスロンがウェザーコントロールで天候を制御、それにより吹雪は収まったのだ。
「これならどうかであるか?」
「見事」
 そう言ったのは、エクス・カイザーである、
「これならハスキー犬たちも大丈夫」
 手を叩くのは、アステ・カイザーだった。
「これなら、楽そうだね。よかった、雪山っていうと、ギルドでも参加者が少なかったよ‥‥」
 防寒着やマフラー、セーターで身を固めているのは、エア・カイザーだ。普段は露出度多めなのだが、さすがにこの状況ではそうも言えないだろう。
 彼女は宙に浮いている。スカイランニングの魔法は結構便利である。
「ふふふふ、雪山ではこの偽DGSが役に立つのだ──何故なら、雪の照り返しをシャットダウンできるからだ!」
 胸を張る、トサ・カイザーだ。
 偽DGSも意外なところで役に立つものである。

◆温もりをください
「しかし、こういうところにいると‥‥昔やった訓練を思い出すなあ」
 エクスが、ハスキー犬にソリを牽引させているアステに声をかける。
「うん、一日で音を上げたような」
 アステはそう返す。森が生存圏だったこの兄妹には、それなりに酷だったようだ。
 とはいえ、今はここにいる──何故なら『ふたり』だけではないから、理由はそれだけ。
 ソリの後席にはトサもいる、ふたりにとっても、いとこであるこの男と、地面ギリギリに飛んでいるエア。そして後方からはエルマーのトナカイソリも追従してくる。
 エクスの時間がかかっても、確実に着こうという方針のもと、時々停止して、リムランドトーチでお湯を沸かす。
 その湯を水筒に注いで、皆で飲む。
 冷え込んだ空気の中、温もりが食道を落ちていく感触。
「さて進むか──エアとエルマーの魔力が続く限り」
 エクスの言葉に、エアとエルマーは、そろってうなずくのであった。
「うむ、良きにはからえ」
 エクスは漏れ出る太陽を指で差すのだった。
「では行こうよ、遺跡をめざしてね」
 アステの声にハスキー犬はそろって嬉しそうにする。
「もちろん、君たちと一緒だよ」
 ハスキー犬は千切れんばかりに尻尾を振るのであった。

◆隠された悪意を越えて
「ところで今、どこだろうね」
 エアは休憩中に、クレヴァスの位置をアステに問うのだった。
 その位置が合っていれば、近くにクレヴァスがあるはず。
「もっとも一面の雪景色だから本当に、太陽の位置とかからの推測だけどね」
 ともあれ、だ。エアは先行して、ヴァルキュリエランサーを高度ギリギリから投てきする。
 クレヴァスの上に積もった雪を、先んじて崩落させようという考え方だ。
 それでも、いくつか暴き、いくつかは外れだった。
「間違ったかな?」
 エアがそれに気づいたのは、あるはずのクレヴァスがないと思ったところで、アステがぎりぎり手前でソリを止めたから。
 後方から来たエルマーが気づいて、落下前に何とかソリを止める事に成功。
 曇り空でこれである、いつも通りに吹雪が吹いていれば、間違いなくソリたちは落下しただろう。
 と、エクスはエルマーの慧眼に驚異を覚えた。
 エルマーは味方にすればこれほど頼もしい相手はいない──無論敵に回せば、非常に面倒な男であるが。
「ヴァルキュリエランサーが雪に巻き込まれて落ちなくて、よかったよ」
 エアはそう言って、クレヴァスが集中しているあたりを突破するのに成功し、肩の力が抜けるのであった。

◆涙で明日が見えない
 エルマーの魔法で完全に予想以上のペースで進む一同。
 そして休憩時間──多分、これが最後の休憩地点となるだろう場所だ。
「ふむ、困ったものだ、いや何もないに越したことはないがな」
 トサがそういったのは、視界がホワイトアウトしそうにないからだ。
 うまく行き過ぎた。全てはエルマーのせい(?)だ。
 トサは皆の腰をロープで繋ぎホワイトアウトへの備えとしようとした。
 しかし、徒歩ではなく犬ソリだったり、トナカイソリに、あるいは自力で空を飛んでいたりする。
 結構、三十メートルのロープでフォローするのはきついものだ。
「そんなにお困りなら、吹雪に戻してあげよう」
 エルマーの言葉に対し、トサは顔の前で腕を交差させる。
「残念かもしれないがノーサンキュー」
 トサの言葉に応えてエルマー曰く。
「そうか、それは残念であるな‥‥」
「絶対にノウ!」
 断固として否定するトサであった。
 そして、一同は石でできた建造物に着いた。これが──遺跡だ。

◆遺跡にてドールと出会う
 遺跡の中を進み、羽の生えたシフールを連想させるネストドールを見出すハウンド一同。
 石の玉座(?)に座るネストドールをエアは抱え上げる。
「もう凍える必要はないよ。暖かいお家へ帰ろうシフールさん」

 下りに入るハウンドたちの聴覚に嫌な刺激がある。
 大地を揺るがすような音。
 何人かは気づいた。
 雪崩だ。
 多分、気温が普段より上がって、結果として崩落したのだろう。
 エクスはバンダナをずらし、トサは防寒着の前を開ける。
 Xの刺青を露わにして、様々な事態に対応するためだ。

◆雪の恐怖
「面白い! こんな体験は我が輩は初めてである!」
 エルマーが迫りくる雪崩から逃げようと必死でトナカイソリを駆る。
 予知が出来れば手の打ちようはあったが、フォーノリッジは安定した力を発揮できない。
 ──それが今日だったというだけだ。
「逃げよう!」
 アステが必死に犬ソリを制御しようとする。
 ハスキーたちは突然のことに半ばパニックだったようだが、アステの確かな指示で落ち着きを取り戻した。
「あ、トサ!」
 急なソリの揺れに、トサの上半身が泳ぎ、支えを失って、ソリから転げ落ちてしまう。
「大丈夫だ!」
 ──ではなかった。雪崩に飲み込まれた──。
 一方、エアは空中に逃れる。少なくとも雪崩とかけっこするのは上策とは言えないためだ。
 彼女がネストドールを抱えている。

 そして、一同の視界を純白が埋め尽くし‥‥そして駆けていった。

「い、生きてるか?」
 エクスは一生懸命雪をかき分け、トサの居場所を探す。
 頭まで体が埋まっていた。
 打ち身のあとだらけだが、何とか生きている。幸い、生死に関わるところはないようだ。
 とはいえ、骨は何本か折れている。
「はははは! 勝った‥‥雪崩に立ち向かい生きている。これが我が勝利と言わずして、何を勝利と言おう!」
「本当にすごい頑丈だよね──アステ、いつもの」
 エアが空中から促すと、アステはソリの上からキュアティブをトサに飛ばす。
「大丈夫かな?」
「むう、力があふれる!」
 トサの打ち身や骨折が癒える。
「むう、次の敵が待っているのだ!」
「大丈夫だよ、本当に元気だね」
 ネストドールを抱えたエアが舞い降りる。雪まみれだ。
 しかし、そのネストドールは微笑んでいるように見えた。
 少なくとも、これを持ち帰ったハウンドたちには、であるが。

 ムーンポータルを経由して、最終的にはネストドールは、アルピニオにあるシフールの里に帰った。
「ふむ。いったい誰があんなところまで持ち運んだのであろうか?」
 エルマーが疑問に思うが、今は応えるものはいない──そう、今は、だ。
 だから、ハウンドの旅路は‥‥つづく!



 6

参加者

a.犬ぞりを用意しときます。定員は4人までです。
アステ・カイザー(da0211)
♀ 27歳 人間 カムイ 水
c.吹雪は可能な限り鎮めるのだよ。
エルマー・メスロン(da1576)
♂ 51歳 ダークエルフ パドマ 陽
a.暖を取る為のリムランドトーチは用意したが…
エクス・カイザー(da1679)
♂ 30歳 人間 ヴォルセルク 火
b.氷点下の世界では、バナナに釘が打てます☆(寒さで錯乱している)
エア・カイザー(da1849)
♀ 28歳 人間 ヴォルセルク 風
c.ゆ◯~の進軍 氷を踏んで~♪
トサ・カイザー(da1982)
♂ 26歳 人間 ヴォルセルク 陽


妖精人形は竜犬を待つ

リムランドのさらに寒い地に、その遺跡はあるという。