オープニング
◆
それは予言だったのだろうか?
シフールの乳母が夢を見たという。
それはハウンドに伝わったところでは、北の地にてネストドールがいるのを感じたというのだ。
北の地──ミドルヘイムで知られている範疇ならリムランドだろう。
◆
ハウンドたちはリムランドで情報収集を行い、ある程度の成果を得る。
とある山の中腹に、その有力な手がかりがあった。
遺跡だということだ。
しかし、リムランドは寒い──そう、ここは北方なのだ。
寒気のため、かじかむ手は真っ白となり、防寒着が手放せない。
そんな北方の地の物語である。
◆
「いけない‥‥あんたら行ったら死ぬ」
数年前まで山で仕事をしていた、ハンザという現地人は、ハウンドたちに諦めるように促す。
しかし、決意を固めたハウンドを止められるものは少ない。
「あんたらの意見は分かった。ともあれ、寒さを完全に止められる魔法や品がないと、山に登ることなど出来ないよ」
その上でハンザが伝えるのはクレヴァス。
特に氷雪の裂け目が雪で隠されているタイプのクレヴァスだ。下手をすれば十数メートル落ちる事になる。
場所を伝えたうえで、ハンザがもうひとつ切り出したのは『自分が雪山の中でどこにいるかが分からない』ことだ。
いわゆる方向感覚の失調。
加えて、雪で視界がホワイトアウトすること。
現在の場所はおろか、隣の人の位置も分からなくなることを危惧として伝えた。
「クレヴァスの位置はともかく、そういう事があるから、位置を覚えていても気休めにならないからな」
そう言ってハンザは肩を竦めた。
──ハウンドの冒険が‥‥始まる。
選択肢
a.耐寒防御 | b.クレヴァス |
c.ホワイトアウト | z.その他・未選択 |
マスターより
昨年はありがとうございました、成瀬です。
今回は北方で震えてもらいます。
リムランドは氷点下ぶっちぎりかもしれません。防寒装備がないときついでしょう。
まあ、OPでも書いていますが。
選択肢a.は他人の寒気に対する防御です。
b.クレヴァスへの対策です。
c.ホワイトアウトにあった時への対策です。
なお、遺跡には順調にいけば、一日で往復できます。
ただ、復路では戦闘ではない、イベントがひとつ起きます。
では、良き新年を。
※RealTimeEvent【HoundHistory05】来たれシフールの里 連動シナリオ
本シナリオは、世界の歴史を動かす可能性を秘めた企画「リアルタイムイベント」に連動した特別シナリオです。
参加することで【HH05】を冠したグランドシナリオに参加する権利を得ることができます。
登場キャラ
◆序章
現在雪山は曇天の下にあった。
普通ならば、現地人のハザン氏の言った通り吹雪に閉ざされているのである。
しかし、
エルマー・メスロンがウェザーコントロールで天候を制御、それにより吹雪は収まったのだ。
「これならどうかであるか?」
「見事」
そう言ったのは、
エクス・カイザーである、
「これならハスキー犬たちも大丈夫」
手を叩くのは、
アステ・カイザーだった。
「これなら、楽そうだね。よかった、雪山っていうと、ギルドでも参加者が少なかったよ‥‥」
防寒着やマフラー、セーターで身を固めているのは、
エア・カイザーだ。普段は露出度多めなのだが、さすがにこの状況ではそうも言えないだろう。
彼女は宙に浮いている。スカイランニングの魔法は結構便利である。
「ふふふふ、雪山ではこの偽DGSが役に立つのだ──何故なら、雪の照り返しをシャットダウンできるからだ!」
胸を張る、
トサ・カイザーだ。
偽DGSも意外なところで役に立つものである。
◆温もりをください
「しかし、こういうところにいると‥‥昔やった訓練を思い出すなあ」
エクスが、ハスキー犬にソリを牽引させているアステに声をかける。
「うん、一日で音を上げたような」
アステはそう返す。森が生存圏だったこの兄妹には、それなりに酷だったようだ。
とはいえ、今はここにいる──何故なら『ふたり』だけではないから、理由はそれだけ。
ソリの後席にはトサもいる、ふたりにとっても、いとこであるこの男と、地面ギリギリに飛んでいるエア。そして後方からはエルマーのトナカイソリも追従してくる。
エクスの時間がかかっても、確実に着こうという方針のもと、時々停止して、リムランドトーチでお湯を沸かす。
その湯を水筒に注いで、皆で飲む。
冷え込んだ空気の中、温もりが食道を落ちていく感触。
「さて進むか──エアとエルマーの魔力が続く限り」
エクスの言葉に、エアとエルマーは、そろってうなずくのであった。
「うむ、良きにはからえ」
エクスは漏れ出る太陽を指で差すのだった。
「では行こうよ、遺跡をめざしてね」
アステの声にハスキー犬はそろって嬉しそうにする。
「もちろん、君たちと一緒だよ」
ハスキー犬は千切れんばかりに尻尾を振るのであった。
◆隠された悪意を越えて
「ところで今、どこだろうね」
エアは休憩中に、クレヴァスの位置をアステに問うのだった。
その位置が合っていれば、近くにクレヴァスがあるはず。
「もっとも一面の雪景色だから本当に、太陽の位置とかからの推測だけどね」
ともあれ、だ。エアは先行して、ヴァルキュリエランサーを高度ギリギリから投てきする。
クレヴァスの上に積もった雪を、先んじて崩落させようという考え方だ。
それでも、いくつか暴き、いくつかは外れだった。
「間違ったかな?」
エアがそれに気づいたのは、あるはずのクレヴァスがないと思ったところで、アステがぎりぎり手前でソリを止めたから。
後方から来たエルマーが気づいて、落下前に何とかソリを止める事に成功。
曇り空でこれである、いつも通りに吹雪が吹いていれば、間違いなくソリたちは落下しただろう。
と、エクスはエルマーの慧眼に驚異を覚えた。
エルマーは味方にすればこれほど頼もしい相手はいない──無論敵に回せば、非常に面倒な男であるが。
「ヴァルキュリエランサーが雪に巻き込まれて落ちなくて、よかったよ」
エアはそう言って、クレヴァスが集中しているあたりを突破するのに成功し、肩の力が抜けるのであった。
◆涙で明日が見えない
エルマーの魔法で完全に予想以上のペースで進む一同。
そして休憩時間──多分、これが最後の休憩地点となるだろう場所だ。
「ふむ、困ったものだ、いや何もないに越したことはないがな」
トサがそういったのは、視界がホワイトアウトしそうにないからだ。
うまく行き過ぎた。全てはエルマーのせい(?)だ。
トサは皆の腰をロープで繋ぎホワイトアウトへの備えとしようとした。
しかし、徒歩ではなく犬ソリだったり、トナカイソリに、あるいは自力で空を飛んでいたりする。
結構、三十メートルのロープでフォローするのはきついものだ。
「そんなにお困りなら、吹雪に戻してあげよう」
エルマーの言葉に対し、トサは顔の前で腕を交差させる。
「残念かもしれないがノーサンキュー」
トサの言葉に応えてエルマー曰く。
「そうか、それは残念であるな‥‥」
「絶対にノウ!」
断固として否定するトサであった。
そして、一同は石でできた建造物に着いた。これが──遺跡だ。
◆遺跡にてドールと出会う
遺跡の中を進み、羽の生えたシフールを連想させるネストドールを見出すハウンド一同。
石の玉座(?)に座るネストドールをエアは抱え上げる。
「もう凍える必要はないよ。暖かいお家へ帰ろうシフールさん」
下りに入るハウンドたちの聴覚に嫌な刺激がある。
大地を揺るがすような音。
何人かは気づいた。
雪崩だ。
多分、気温が普段より上がって、結果として崩落したのだろう。
エクスはバンダナをずらし、トサは防寒着の前を開ける。
Xの刺青を露わにして、様々な事態に対応するためだ。
◆雪の恐怖
「面白い! こんな体験は我が輩は初めてである!」
エルマーが迫りくる雪崩から逃げようと必死でトナカイソリを駆る。
予知が出来れば手の打ちようはあったが、フォーノリッジは安定した力を発揮できない。
──それが今日だったというだけだ。
「逃げよう!」
アステが必死に犬ソリを制御しようとする。
ハスキーたちは突然のことに半ばパニックだったようだが、アステの確かな指示で落ち着きを取り戻した。
「あ、トサ!」
急なソリの揺れに、トサの上半身が泳ぎ、支えを失って、ソリから転げ落ちてしまう。
「大丈夫だ!」
──ではなかった。雪崩に飲み込まれた──。
一方、エアは空中に逃れる。少なくとも雪崩とかけっこするのは上策とは言えないためだ。
彼女がネストドールを抱えている。
そして、一同の視界を純白が埋め尽くし‥‥そして駆けていった。
「い、生きてるか?」
エクスは一生懸命雪をかき分け、トサの居場所を探す。
頭まで体が埋まっていた。
打ち身のあとだらけだが、何とか生きている。幸い、生死に関わるところはないようだ。
とはいえ、骨は何本か折れている。
「はははは! 勝った‥‥雪崩に立ち向かい生きている。これが我が勝利と言わずして、何を勝利と言おう!」
「本当にすごい頑丈だよね──アステ、いつもの」
エアが空中から促すと、アステはソリの上からキュアティブをトサに飛ばす。
「大丈夫かな?」
「むう、力があふれる!」
トサの打ち身や骨折が癒える。
「むう、次の敵が待っているのだ!」
「大丈夫だよ、本当に元気だね」
ネストドールを抱えたエアが舞い降りる。雪まみれだ。
しかし、そのネストドールは微笑んでいるように見えた。
少なくとも、これを持ち帰ったハウンドたちには、であるが。
ムーンポータルを経由して、最終的にはネストドールは、アルピニオにあるシフールの里に帰った。
「ふむ。いったい誰があんなところまで持ち運んだのであろうか?」
エルマーが疑問に思うが、今は応えるものはいない──そう、今は、だ。
だから、ハウンドの旅路は‥‥つづく!
6
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参加者
| | a.犬ぞりを用意しときます。定員は4人までです。
| | アステ・カイザー(da0211) ♀ 27歳 人間 カムイ 水 | | |
| | c.吹雪は可能な限り鎮めるのだよ。
| | エルマー・メスロン(da1576) ♂ 51歳 ダークエルフ パドマ 陽 | | |
| | a.暖を取る為のリムランドトーチは用意したが…
| | エクス・カイザー(da1679) ♂ 30歳 人間 ヴォルセルク 火 | | |
| | b.氷点下の世界では、バナナに釘が打てます☆(寒さで錯乱している)
| | エア・カイザー(da1849) ♀ 28歳 人間 ヴォルセルク 風 | | |
| | c.ゆ◯~の進軍 氷を踏んで~♪
| | トサ・カイザー(da1982) ♂ 26歳 人間 ヴォルセルク 陽 | | |
妖精人形は竜犬を待つ
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リムランドのさらに寒い地に、その遺跡はあるという。
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