【HH05】水着で初日の出!

担当午睡丸
出発2021/01/04
種類イベント 日常
結果大成功
MVPフレグス・カヴィン(da1977)
準MVPアンドレ・カンドレ(da2051)
パライソ・レヴナント(da1777)

オープニング

◆浜辺へ
 神聖暦921年1月1日、未明。
 ハウンドたちの姿はオーディア島の最南部、『常夏の浜』にあった。

 新たな年の夜明けも待たずにこのような場所に集まっているのは他でもない、『日の出を観ながら抱負を願う』というグリーヴァの風習(と、されるもの)を、今年もまた行おうというのだ。
 昨年の新年早々に行われた同じ催しには多数のハウンドが参加し、思い思いにその一年の豊富を願うこととなった。

登場キャラ

リプレイ

◆1
 では少しだけ時間を戻して、ハウンドたちが彼は誰時をどのように過ごしていたのかを見てみるとしよう。

「むにゃむにゃ……。お日さま……まだっスか~……?」
 ハイレグビキニを身に纏い、ケットシーの縫い包みを抱きしめながら初日の出を待っているのはレベッカ・モーガンだ。
 フラフラと覚束ない足元。こんな風に眠そうなのは彼女にしては早起きすぎた時間だからか、あるいは昨夜遅くまで起きていたからか。
「ほらほら、まだ足元が暗いですから危ないのですよ」
 見かねたアンカ・ダエジフがレベッカを誘導する。
「んあ~……ありがとうっスよ~……」
「……ふむ、しかし水着姿で新年を迎えることになるとは。人生は何が起こるかわからんな」
 そんなアンカの隣では姉のトウカ・ダエジフが感心したような表情を浮かべていた。その言葉の通り、彼女とアンカはともにビキニ姿だ。
「しかも日が昇ったらそのまま釣りに移行できますからね。これぞ一石二鳥なのです」
「そういうことだな。ところで……さっきからアンカの隣にいる見覚えのないおっさんだが……誰だ?」
「何を言っているのですかトウカ姉さん。見覚えのないおっさんなんているはずが……誰なのです?」
「……だから娘たちよ、いちいち俺を不審者のように見るのはやめてくれないか」
 力ない抗議をするのはアンドレ・カンドレである。
「見覚えは微かにあるのだが……まあ思い出せないのなら、たいした相手ではないのだろう!」
「……ああ、思い出したのです。お父さんでした」
 思い出すのを放棄したトウカの代わりにアンカがさらっと補足する。
「ああ、父っぽい人か。すっかり忘れていたよ」
「うぉい! お前らが子供の頃に少なくとも三回は顔を見せてたろうが!」
「三回……? あれっスね~……いわゆるダメオヤジなんっスね~……」
 娘たちからの冷遇に憤るアンドレだが、第三者であるレベッカからの至極もっともな感想が彼の心を軽く抉(えぐ)った。
「ぐぐぐ……」
「なにしろ子供の頃に旅立つ姿を見送ってから二十数年ぶりの再会ですからね。しかも、いままで一度も顔も見に来ないんですからたいした親心なのですよ」
「ま、そう責めてやるなアンカ。一応は同じハウンドなワケだし、一応は父っぽい人ということで、これからも一応ヨロシク頼む!」
 さらっと過去の悪業を暴き立てるアンカと、『一応』を連呼してナチュラルに精神を摩耗させるトウカであった。

「まあアンドレさんの過去はともかくとして……せっかくの機会だし、いまはそのグリーヴァの風習とやらに従って日の出に抱負をかけてみようではないか」
 水平線から頭を出し始めた太陽を指してトウカがそう促すと、レベッカはうーん、と腕を組む。
「ホウフ? ホウフっスか……なんなんスかね~? なんスかね~……?」
「まあ慌てずゆっくり考えてみるのがいいのです。トウカ姉さんはどうなのです?」
「私はやはり『新年も刺激ある戦いができるようになりたい』だな。これをあの美しい初日の出に願うとしよう。アンカはどうだ?」
「私は今年も『大物釣り』を誓うのですよ。これは釣り師として譲れないところなのです。いやはや、年末になって生き別れの実父を釣るとは思いませんでしたが」
 アンドレを横目で見るアンカ。
「はっはっは! では抱負通りにとびきりの大物を釣り上げたというわけだな娘よ! 見よ、あの初日の出を! ダークエルフが朝日を浴びる……だが、それが良い……」
「なんか地面に出てきたモグラみたいっスね……。で、アンドレさんのホウフはなんなんスか?」
 娘たちが黙殺するなか、気を利かせた(?)レベッカがそう質問する。
「よくぞ聞いてくれた! 私がこの初日の出に願うことは『再会した娘たちと、空白の時間を埋められるように父らしくする』ことだな!」
 ビシッ! と太陽を指差して宣言するアンドレ。
「その為にもまずは今日という日をともに有意義に……おい!? 娘たちよ、どこに行くんだっ!?」
 初日の出をバックに気分良く語るアンドレだったが、肝心の娘たちはまったく興味がないのか海の家に帰っていくのであった。

◆2
「おおー……! こんなバカンス地で新年迎えるやなんて、なんやものすご贅沢やなぁ……! 新年早々テンションあがりますやん!」
 グリーヴァドッグを連れたフレグス・カヴィンが薄暗い砂浜を進む。トレードマークのサングラスもあってか足元が少々覚束ないのはご愛嬌だ。
「確かにな、こんな体験そうそうできるものじゃない。ハウンドならでは、かな……」
 対象的に落ち着いた様子なのはジャアファル・ジルフェ。同じく連れているグリーヴァドッグの『ブロンテ』は早朝の散歩に嬉しそうに尾を振っていた。
 すでに水着を着用している二人は波打ち際で初日の出を待つことにしたらしい。
「にしてもグリーヴァの風習は趣が合ってえぇですなぁ。僕もこう、夜明けを静かーに眺め待つんは好きじゃ……いや、いまはちょっとばかりうるさかばってん」
 自覚があるのか、フレグスはそこで照れたように笑った。
「でも、こうしてると波が喧騒を押し流して引いていくみたいな……頭も心もすぅっと無になる瞬間があるやん? そんなとこにゆっくり陽が昇ってくると、無性にドキドキするんよなぁ……ほんま一日の、いや、一年の始まりに最高や思います」
「……ふむ。解るような気がするな。夜明けの瞬間というのは確かにいいものだ。それが一年の始まりならなおさらだな」
 ジャアファルは感心した表情でブロンテの頭を撫でる。
「そういえば、フレグスは今年の抱負は決めているのか?」
「僕ですかぁ? やっぱ『もっと未知との遭遇と研究』じゃなぁ!」
 よくぞ聞いてくれました、と満面の笑顔で答える。
「ハウンドにならんかったら経験出来ひんかったこともぎょーさんありますやん? 生きてる間に巡り合えるんは、浪漫も人もいうて一握りじゃけぇ。僕はその中でも最大値で楽しんで生きたいし、その楽しいを残したいんや」
 待っていても未知の事象とは遭遇できない。だからこそ自分から突き進み、そして体験したいということなのだろう。
「……なるほどな。フレグスらしい」
「そりゃおおきに! そんで、先輩はどうですのん?」
 ジャアファルは逆に問われてしばらく考えていたが、
「……そうだな。『技術に偏っているから知識をもう少し身に付けたい』……かな? 仲間に得意な者がいれば頼るのもいいが常にいるとは限らない。それにまったく知識がないと尋ねる事すら難しいからな」
 知は万能を支える地力である。たとえ優れた技術をもとうと、知が足りなければそのすべてを活かすことは難しい、とジャアファルは考えているのだろう。
「さすが先輩ですわぁ……あっ、そうや。一緒に行き損ねた地下遺跡とか、今年こそ行きましょ! これを抱負に追加ってことで!」
「地下遺跡……そうだな、機会があれば行ってみたいところだ。何やら随分物騒だったそうだが?」
「そうですねん! 実は……あ! 先輩、太陽さんのお目見えですわ!」
 いままさにその姿を見せ始めた太陽に向かって、二人と二匹はしばし無言で願ったのだった。

◆3
「……さて、いよいよだな」
 ベル・キシニアは微かに明るくなってきた水平線を認めると楽しそうに微笑った。
「アレッタ、準備はいいか? そろそろ初日の出を拝みに行くぞ」
「もちろん! ちゃんと魔法の箒も持ってきてるよ」
 そんな声にアレッタ・レヴナントは魔法の箒を示して見せた。よく見ると、ベルの手にも同じく魔法の箒が握られている。
 どうやら、箒に乗って上空から初日の出を拝むのがこの二人の計画のようだ。
「上空なぞ、他の場所なら寒くてかなわないところだが、この辺りならその心配はないな」
「本当だねぇ、思わぬ収穫ってところだよ……じゃ、行こうか!」
「ああ!」
 まだ薄暗い浜辺を後にして、二人の箒は空へと向かった。

「おー……いいねぇ! 天気も良いし、浜よりも水平線が遠くまでよく視えるよ」
「ああ。これは凄い贅沢だな」
 眼下に広がるのは昏い海から明るく輝く水平線までのグラデーション。
 二人は速度を合わせて旋回飛行しながら太陽の昇る瞬間を待つ。
 と、不意にベルの箒が大きく弧を描くように飛んだ。
「……ん? ベル、どうかした?」
「ふふ……いや、ちょっと返事しただけだ。それで、アレッタは何を願うんだ?」
「そうだねぇ……抱負は『新しく覚えた魔法の内容を確認する』ってところかな? ほら、この間にいろいろと発見されたじゃないか」
 アレッタのいう発見とは昨年末にハウンドギルドが総力を上げて探索した、いわゆる新魔法と呼ばれる未知の魔法の数々である。
 とはいえ、中にはいまだその詳細が不明な魔法も存在する。
「つい好奇心に負けて『トラベラー』ってのを覚えちゃったんで、覚えたからにはしっかり能力を確認して、できれば使いこなせたらなー……ってね」
「せっかく手に入った力だものな。気になるし、どれ程のものか見てみたくはなるな。さすがの好奇心だ」
 照れたような笑みを浮かべるアレッタに感心するベル。確かに、好奇心がゆえの行動だろう。
「ま、名前の響き的にゃ戦闘向きじゃあなさそうだけどねぇ……それで、ベルは?」
「私が何を願うか、か? 何を隠そう……『また新たなる強敵を見つけ出し、全力で戦い、勝つ』だな」
 風を切って飛行しながら不敵な笑みを浮かべるベルに、アレッタは思わず吹き出してしまう。
「あはは、いつも通りだなぁ」
「ふふ、新年も私らしいだろ? よし、それじゃ抱負を願いながらラストスパートといくか!」
「オッケー!」
 そう頷き合うと、二人の箒は初日の出へと向けて一直線に飛んでいったのだった。

◆4
「ドール、まだ足元は暗いから気をつけろよ」
「ええ、ありがとうアイン」
 アイン・クロービスドール・ジョーカーの手を引いて砂浜を歩いていた。
「こういう日の出の直前が一番暗い……。しかし、そこから太陽の出る瞬間の高揚や眩しさは、本当に新しい幕開けという感じがするな」
「そうね。日が昇る瞬間はいつ観てもいいものだわ……それがあなたと一緒に観られるものならなおさら、ね」
「それは光栄だな」
 照れ隠しか、アインは少し戯けたように微笑った。
「こんな風に夜明けを待つことも、新たな何かを願うこともなく、ただいつ来るとも知れない終わりを待っていた気がするな……ドールと出会うまでは」
「アイン……」
 返す言葉が見つからないのかドールは彼にただ寄り添う。
「それは俺自身が望んだことではなかったが……いや、そう思いたいのかもしれない」
「いいのよ。自分の心を本当に理解できる人なんて、きっといないんだから……」
 諭すようなドールの胸元から、微かな睡蓮の香りが漂ってきた。

「そろそろね……どんな抱負を願うか、考えてる?」
 いよいよ明るさを増してきた水平線にドールがそう尋ねる。
「一応は、な。しかし言葉にするのは難しいな……それに、抱負と呼べるかどうか」
 アインは言葉を濁して太陽の方角を見つめる。
「……去年は君に笑顔でいて欲しくて、それを伝える為にも俺は、俺自身を変えようとしていたんだ。それでも、積み重なった過去が邪魔をしているようで……」
 無言で、ただ聞いているドール。
「だから過去と決着をつけたい、その為に行動したい。君が、いや、互いが不安にならないように。もっと自信をもって、これから先も君の側にいる為に……。そして、もっと遠い未来の約束もできるほどに」
 アインはそこで言葉を切り、昇ってくる朝日を眺めた。
(……だからもっと『自分と向き合ってみよう』。足掻こう、それがどんな結果になろうとしても)
 彼は続くそんな言葉を、胸の裡(うち)に留めた。
「……そういうドールの抱負は?」
「ふふ、私は秘密にしておくわ。だってうまく言えないんだもの……それよりアインに決めてほしいことがあるの」
「な、なんだ?」
 意外な言葉とともに近寄ってくる真剣な表情に、アインが少し慌てた。
 そのまま彼を無言で見つめていたドールは、
「水着、二つ持ってきたうちのどっちがいいかしら。ねえアイン、どう思う?」
 と、笑顔でそう尋ねたのだった。
「うん? なんだ……そんなことか……」
「あら? 新年最初の日を過ごすうえでとても大事なことよ……さ、どっちがお好み?」
「あ、ああ。そうだな……どっちも捨てがたいが、白い方はアクセサリが映えそうだったな。それに思い出も……なんて、ガラじゃないか?」
「ふふ、そんなことないわ。それじゃ白に決まりね。さあ初日の出も観たし、戻って準備をしましょう!」
「そうだな、ドール」
 陽光を背にして再び歩きながら、ドールもまた胸の裡で呟く。
(言えないわ……『あなたを守りたい』なんて。どうすれば叶うのかもよく分からないのに)

◆5
「わふぅ! 父ちゃん! レオン! こっちからならよく観えるよ!」
 明るい声で浜辺を先導するのはアレックス・パーリィだ。目指すのは浜の外れの小高くなった場所。
「はは、やっと目が覚めてきたみたいだなアレックス。さっきまですやすや寝てたとは思えないな?」
 レオン・ウィリアムズはそんな元気な様子に微笑う。どうやら寝坊寸前のアレックスを起こしたのは彼らしい。
「わふぅ、だって、昨夜は遅くまで台所にいたから……あ! 今日はね、お弁当作ってきたんだよ。レオンと父ちゃんの好きなおかずを作ったから食べてね! ふわぁ……」
 あがった気分とは裏腹にまだ眠り足りないのか、油断するとあくびがでる。
「朝早くからありがとうね、アレク。お弁当とは楽しみだなぁ。しかし、こうやって暖かいところで初日の出を観るのは変な感じだねぇ」
 パライソ・レヴナントはそんな養子の気遣いに礼を言いつつ、普段とは違う新年最初の日に戸惑いを覗かせていた。
「……家族一緒のところ、すまないな」
「そんな水臭いことを言わないでよ、レオン君。それにみんな一緒だと賑やかで楽しいしねぇ」
 気を遣うレオンにパライソは笑って答えた。
「そう言ってくれると嬉しいよ。この間、背中の傷を手当てしてもらった時のお礼を改めてしたいと思っていて……パライソ、あの時はありがとうな」
「どういたしまして。大事ないようで良かったねぇ」
「あの時は本当に、このままいなくなりたいって思っていたんだ。でも、おかげでもう一回前に向かって歩こうと思えた。だから、ありがとうをいいたくて」
 再びかけられた感謝の言葉に、パライソはただにっこりと微笑って応えたのだった。

「わぁ……凄いねぇ」
 白ける水平線にパライソが感嘆の声をあげた。すでに太陽がその頭を覗かせている。
「ちょうどいい時間に着いたね……さて、僕の抱負はやっぱり『出来る事を増やす』、かなぁ。魔法で出来る事も少しずつ増えてきたからねぇ」
 このオーディア島で過ごした期間でパライソの医療と植物に関する造詣は間違いなく向上していた。そこにハウンドならではの魔法を組み合わせようというのだろう。
「さすが父ちゃんだね!」
「もちろん、魔法に頼りすぎてもいけないだろうけどね……二人はどうかな?」
 そんな自重もしたところで二人を促す。
「俺は、『この傷の痛みとも向き合って、前を向いて歩いていきたい』といったところかな……」
 昇り来る太陽に瞳を細めながらレオンが呟くように言った。
「その為というだけじゃないけれど、また薬についていろいろ教えてくれないか?」
「もちろん、僕でよければ喜んで。応急処置だけでなく、しっかりとした手当も覚えておけば安心だからねぇ」
「ありがとう」
 パライソの頼もしい言葉にレオンはみたび感謝の言葉を口にするのだった。

「……あのね、父ちゃん。このあいだ話してたことなんだけど……」
 アレックスがあくびを噛み殺しつつポツリと話し始めた。
「僕、いろいろ悩んだけど、やっぱりあの二人ともが大好きなんだ。だからあまり考えないでいきたいなって……」
「そうだねぇ、それが良いかもしれないねぇ」
 先を急かさず優しく見守るパライソ。
「だからね、今年の抱負は『自分らしく。いっぱい頑張る』にしようと思うんだ。もちろん父ちゃんのお手伝いもね!」
「はは、それは嬉しいなぁ。無理はしないくらいにお手伝いしてもらおうかな?」
「うん! よーし、あのお日様にちゃんとお願いしなくちゃ! 今年もまた家族一緒にいろんなことをしようよ……あ、もちろんレオンも一緒にね」
「ああ、そうだな」
 そう笑って太陽に向き直るアレックス。
「うん、二人ともいい抱負だと思うよ。去年はいろんなことがあったけど、今年も良い年にしたいねぇ」
 三人はそれぞれの抱負を胸に、目を細めて初日の出を見守っていたのだった。

◆6
「アキ! ほら、こっちこっち! ここからならバッチリじゃない?」
 浜の片隅で友を呼ぶショウ・ジョーカーの明るい声が、人の少ない岩場にこだまする。
「ああ、確かに特等席だな。ここならゆっくり拝める……さすがはショウだな」
 アキ・フィッセルはショウの目ざとさに感心しつつ腰をかけた。
 海水に濡れるのを厭うからか滞在客はこの岩場まではほとんど近寄ってこない。一方、トランクス型の水着を身に着けた二人にとっては格好の眺望ポイントである。
「観客(オーディエンス)の好みを読むなら旅芸人にお任せってね……ここなら世間話を振られるような心配もないよ」
 得意気に笑いながらショウがアキの隣に腰を下ろした。滞在客にとってハウンドは興味の対象とはいえ、関わりたくない時もある。
 それが友と過ごす掛け替えのない時間なら、なおさらのことだ。
「しかし真冬にこんな温かい場所で日の出を拝めるとは……これ以上ない贅沢だな」
「去年なんてめっちゃ寒かったもんなー! 常夏の浜で初日の出とか、思いついた人って天才じゃん!」
「ああ。寒い環境も嫌いではないが、やはり暖かさには敵わんな」
 他愛ない話をしながら太陽を待つ二人。
「……そういえば、アキの抱負は? もう決めてる?」
「抱負、か。そうだな……『弓の腕を更に磨くこと』、だな」
 ショウの問いかけに一瞬黙考したアキだが、口からは迷いのない言葉が紡ぎ出される。
「つまり鍛錬かー。アキは今年もアキだなー! ストイック!」
「はは、あまり笑ってくれるなよ」
 そんなショウの反応に、アキは少し照れくさそうに微笑んだ。
「ごめんごめん、別に茶化してるわけじゃないって! 腕を上げて狙いたい大物とかいるわけ?」
「改めて理由を聞かれると少し困ってしまうな……あえて言うなら、狩人として常に鍛錬は怠りたくない、といったところか……」
「はは、やっぱストイック!」
 その言葉にひとしきり笑い合う二人。
「そういうショウはどうなんだ?」
「俺? うーん……俺は『今年も俺らしく!』……ってところかな?」
 そこでショウは空を飛ぶ魔法の箒に気付いて手を振った。それに気付いたのか、返事の代わりに箒が大きく弧を描く。
「ベルが好きだって言ってくれた俺でいたいから、さ」
「必要としてくれる誰かの為に自分らしく、か……ショウらしいな」
「ま、それはそれとして準備とかいろいろできたらいいなーとは思ってるんだけど……あ、これは内緒ね。もちろん、もっと強くなりたいとも思うよ。そういう意味ではアキは身近なお手本だから……」
「それは光栄だな……去年はいろいろと目まぐるしかったが、おまえと友になれて良かったと思っている」
 その時、水平線から初日の出が顔を覗かせた。
「今年もよろしくね、アキ」
「ああ、こちらこそ。これからもよろしく頼む、ショウ」
「じゃ、新年のお祝いにとっておきを披露しようか!」
 ショウがスノーアローを空に打ち上げると、陽光とともに優しい雪が舞い降りてきたのだった。

◆7
 こうして初日の出に抱負を祈願したハウンドたちは、新年最初の日を常夏のバカンスに費やすことにしたのだった。

「うはー、冬なのにあったかい海っスねー☆」
 完全に目が覚めたレベッカは常夏の浜の海を堪能していた。
 ハウンドという存在自体への興味と、本人には無自覚なそのセクシーさもあってか男性の滞在客からひっきりなし声がかかる。
「次は海の中でおっかけこっスよ~☆」
 などと、持ち前の人懐っこさで海のバカンスにいそしむレベッカであった。

「さーて、こうなったら僕らも遊ばな損! 泳がな損ってもんや! さっそく行きましょか、先輩!」
「フレグス、そんなに引っ張らないでも海は逃げないぞ……ブロンテまで?」
 フレグスとブロンテに引っ張られ、ドボンと海に落とされるジャアファル。
 そのあとは沖で素潜りをしたり、浅瀬で犬たちとともに戯れたりと海を満喫する二人。
「ぷはー! やっぱこの浜の海は最高やなぁ……きっと、海ん中から観た日の出も最高やったんちゃいますかなぁ」
「そうか、考えてみればそんな方法もあったな。だがこうした浅瀬なら大丈夫だが、沖でやるとなるとそれなりの装備や魔法が必要になるだろうな……」
「またいつかの機会に、ってことですな! それにしても、初めて先輩と一緒したんも海やったなぁ……改めまして、今年もよろしゅうな~!」
「ああ、こちらこそよろしくな。ほら……!」
 ジャアファルの投じたバルーンボールは、日差しを浴びつつ緩やかな弧を描いてフレグスへと向かったのだった。

「……ふう。ああ、やはりこの真冬の時期に海で遊べるのはいいな」
 沖の海面から浮上してきたのはベルだった。
 空から海へ、初日の出を拝み終えた彼女たちは水着へと着替え、他のハウンドたちと同様に常夏の海を楽しんでいる。
「ホントだねぇ。いつもなら寒い街で震えてるんだから」
「この時期にどんな魚が泳いでるいるのかも興味深いところだ。アレッタは何か面白いものでも見つかったか?」
「実はね……」
 などと、海中散策を楽しむ二人である。
 一方、浜で身体を休めるショウはそんなベルを視線だけで追っていた。
「……彼女と合流してきてもいいんだぞ?」
「ん? いいのいいの、今日は一日アキと遊ぶって決めてるんだからさ! じゃあ俺たちも泳ごうよ!」
「……そうだな。よし、じゃあ鍛錬代わりに遠泳でもするか?」
「はは、やっぱアキってストイックだ!」
 男友達たちは顔を見合わせて笑い合うと競うように海へと駆け出していった。
 と、沖の二人はそんなことは露知らず。
「ねえベル、そろそろ戻って休憩しない?」
「そうだな、一度浜へ戻るか……どうだ、競争でもするか?」
「あはは、今日は遠慮しとくよ。水着の能力を使ってもベルには敵わないし!」
「ふふ、褒めても何も出ないぞ? じゃ、一緒に泳いで戻るとしよう」
 同じ時間を、そして楽しさを共有する。
 女友達同士のバカンスは、まだ始まったばかりなのだった。

 磯の片隅では釣りに興じるダークエルフの父娘の姿があった。
「フィッシュ!」
「さすがアンカだな。この調子だとこの辺の魚がいなくなってしまうんじゃないか?」
 などと、トウカは妹の腕前に感嘆する。
「それほどなのです。それにしてもお父さんは独身でしたか……。もしこれで腹違いの姉妹がズンドコいたりしたら、いま釣った魚と一緒に三枚におろすところでしたが」
「それは惜しかったな。あと、断っておくが母はとっくに結婚しているからな」
 どうやら釣りに興じている間に生き別れてからのアンドレの話をいろいろと聞いていたらしい。
「わはは! そんな本気の目で恐ろしい冗談をいうものではないぞ娘よ! そもそも、お前たちの母とは最初から子を作るのみという約束の契りであったのだぞ? ま、押し倒されたのは俺の方だったけどねっ!」
 唐突に語り始めるアンドレ。見せつけるのは父の背中だ。
「だから私には後ろ暗いことなど何もないのだ……しかし、こうしてお前たちと再会したからには父としての責任は果たさねば、と思う訳で……っておい!? 娘たちよ、どこに行くんだっ!?」
 大海原をバックに気分良く語るアンドレだったが、肝心の娘たちはこれっぽっちも興味がないのか釣った魚を調理しに海の家に帰っていくのであった。

◆8
 やがて時間が飛ぶように過ぎ、昼頃。

 浜の気温もすっかり高くなり、多くの者は木陰などで日差しを避ける。
 そして、そんな中には持参した昼食を広げるアレックス、パライソ、レオンの姿もあった。
「父ちゃん、レオン、はいどうぞ! ちゃんと傷みにくいものを作ってきたから安心して食べてね!」
 満面の笑みで持参した弁当を広げるアレックス。
「新年の朝から大変だったよねぇ……本当にありがとうね、アレク」
「なるほど、こんなに作っていたら起きられないのもしかたがないな」
「わふぅ! レオン、それはもう忘れてよ……!」
 真冬とは思えない陽気のなか、三人の楽しげな会話が交わされるのだった。

 同じ頃、浜辺に並べられたテーブルでは滞在客の主催による昼食会が行われていた。
「こ、こんなに食べてもいいんっスか~! じゃ、遠慮なくたっくさんいただくっス!」
 他のハウンドとともに招きに応じたレベッカは用意された昼食を美味しそうに頬張っていく。
 そんな中で話題になるのはやはり抱負に関してだ。
「……僕のホウフっスか? いろいろ考えたけど、やっぱ『今年も楽しく』っス! もちろん、ポクだけでなくみんなでっスよ! だってみんなが楽しくないのに自分だけ楽しいなんてイヤっスからね~☆」
 すっかり持ち前の元気さが出てきたレベッカは大いに食べ、そして話す。
「あっはっはっは~♪ もう入んないっス~☆」
 やがて彼女の満足そうな声とともに昼食会はお開きとなった。

 やがて、午後。
 アインとドールは木陰で寄り添い、穏やかな時間を過ごしていた。
 日陰をドールに譲り、自身は日に照らされるのも厭わないアイン。
「……アインの髪、とっても綺麗ね」
 ドールには陽光を浴びた彼の髪がまるで太陽の光のように見えていた。髪の一本一本までが、いや、傷跡だらけの身体のすべてが愛しい。
「どうした、急に?」
「ふふ、ちょっと思っただけよ。ねえ、それよりそこだと暑くない?」
 そんなドールの言葉にアインは僅かに首を振る。
「たとえ暑くても、あるいは肌寒くても構わんさ。俺にとっては、お前さんの熱こそが一番決意をくれる陽だからな……」
 だからこんなものは何でもない、とアインは微笑った。
「それだけじゃない。二人だから何だって乗り越えられる、本当にそう思っているよ。もちろん、ドールの願いや抱負もな」
「そうね、ありがとう……ねえアイン? 私、明日の朝日もあなたと一緒に見たいわ。いいえその前に……今夜の月も、ね」
 月光の下では彼の髪は月の光のように見えるのだろうか。
 ドールそんなことを考えながら、アインとともにワインを酌み交わしたのだった。



 9

参加者

c.うん?どっちも捨てがたいが…白い方は思い出もアクセサリも映えそうだな。
アイン・クロービス(da0025)
♂ 29歳 人間 ヴォルセルク 陽
a.父ちゃん、今日は張り切ってお弁当作ってきたよ(と言いつつ眠そう)
アレックス・パーリィ(da0506)
♂ 25歳 カーシー(大型) ヴォルセルク 地
a.去年めっちゃ寒かったもんなー!常夏の浜とか天才じゃん!アキの抱負は?
ショウ・ジョーカー(da0595)
♂ 17歳 人間 カムイ 月
a.おっ、いいねぇ!見に行こうじゃないか。
アレッタ・レヴナント(da0637)
♀ 22歳 人間 パドマ 月
c.水着、どっちがいいかしら。ねえアイン、どう思う?
ドール・ジョーカー(da1041)
♀ 21歳 人間 パドマ 陽
a.アレッタ、初日の出を見に行くぞ
ベル・キシニア(da1364)
♀ 25歳 人間 ヴォルセルク 風
a.抱負か…俺は『弓の腕をもっと上げる』だな。
アキ・フィッセル(da1584)
♂ 21歳 人間 カムイ 水
a.抱負、か…
ジャアファル・ジルフェ(da1631)
♂ 16歳 人間 マイスター 陽
a.今年も大物釣りなのですよ
アンカ・ダエジフ(da1743)
♀ 25歳 ダークエルフ パドマ 水
a.わぁ…凄いねぇ。
パライソ・レヴナント(da1777)
♂ 50歳 カーシー(小型) カムイ 火
a.ふむ、はやり初日の出は美しい!
トウカ・ダエジフ(da1841)
♀ 26歳 ダークエルフ ヴォルセルク 地
a.家族一緒のところすまないな
レオン・ウィリアムズ(da1974)
♂ 23歳 人間 カムイ 風
a.皆さん今年もよろしゅうな〜!僕の抱負はいつでも変わらん気ぃするのぅ
フレグス・カヴィン(da1977)
♂ 22歳 人間 マイスター 陽
b.やっぱ今年も楽しくっス!…ポクだけでなくみんなで楽しくなきゃっスよ~☆
レベッカ・モーガン(da1995)
♀ 18歳 人間 マイスター 地
a.ダークエルフが朝日を浴びる。だがそれが良い
アンドレ・カンドレ(da2051)
♂ 50歳 ダークエルフ ヴォルセルク 月


Happy New Year!!

新たな年を迎え、新たな抱負を胸にするハウンドたち。今回、その願いをかける場所として新たに選ばれたのは……?