【HH05】教えて乳母さん!

担当成瀬丈二
出発2020/12/29
種類ショート 日常
結果大成功
MVPトサ・カイザー(da1982)
準MVPアンカ・ダエジフ(da1743)
アンドレ・カンドレ(da2051)

オープニング

◆起の章
 アルピニオの茨の洞窟を抜けると、そこはシフールの里だった。
 様々な要因が絡み、やがてシフールの赤子を産み落とすローデの花の調子が悪くなるという。しかし、ハウンドたちが来るまでシフールたち(もちろんシフールたちの乳母もだ)には対処の手段がなかった。
 ともあれだ──。
 ハウンドたちの何人かが気づいた。
 シフールのこと、里のこと。それを語れる者がいるとしたら、乳母しかいないだろう。

登場キャラ

リプレイ

◆黒騎士の餌付け
 まず、最初に語るべきは黒騎士、アンドレ・カンドレが相応しいだろう。
「Xmasのクッキーを用意したぞ。みんなで食べなさい」
 そんなアンドレの言葉に幼いシフールたちが群がる。
 物おじせずに、アンドレの膝に座り込む子もいた。
「はっはっはっ、シフールの子供たちは可愛いなぁ、ローデル。この子たちの健やかな日々を護る為にも、我々が真実を突き止めなくてはなっ」
「まったくもって、その通り!」
 立ち上がるローデル氏。アンドレからXmasクッキーを渡され、やはり幼い子供に群がられ、シフールツリーと化す。
 ローデル氏はいろいろと人格がオーバーヒート寸前らしい。
 しかし、必死に──。
「シフールの里での生態というか一生は?」
 と、ポムドーラ女史に非常に大雑把な事を聞くローデル氏。
「えーと」
 ポムドーラ女史混乱。
「はいはい、ステイ、ステイ! 愛が溢れるのは分かるけど、シフールの里で粗相をしちゃいけないよ、ポムドーラ女史も困っているじゃないか?」
 仲裁にオスカル・ローズは入る。
 ポムドーラ女史も苦笑い。
「こまったねえ、驚きもないと、思いだ──」
 その瞬間、日輪の力を拝借して、トサ・カイザーがホルスの魔法を成就、瞬時に後ろに回り込む。
 なお、トサは胸をむき出しにしているが、それはXの刺青が胸に描かれているからだ。

◆驚愕の師弟漫才!
「うわっ!」
 トサの大音声。周囲のシフール子供が泣き出す。
 ポムドーラ女史は座り込んでしまう。
「何だか分からんが、脅かしたのである!」
 そう、トサの目的はポムドーラ女史を驚かして、話を引き出す事。
 見事成功である‥‥そこに超高速で、アンカ・ダエジフが、弟子のトサにツッコミを入れる。
 キレのあるボディブローだ。
「ふう、いい仕事を‥‥って、なにするのだ? ししょ-」
「師匠だけど、釣りの師匠なのです、このバカ弟子! やっぱり、ドラゴンの『アール』のほうが良かったか」
 直接触るシフールの子供は『まだ』いないが、シフールの子供の好奇心の的となっている。

「あーびっくりした。で、何の話かねえ?」
 シフールの子供たちをあやしながら、振り返らずに、アンドレがポムドーラの記憶を呼び覚ます言葉を発する。
「シフールの里での生態というか一生は? だったはず」
 それを言われて、ローデル氏も目標を再確認。
「そうそうそれだよ」
 ローデルの大雑把な問いだが、ぽつりぽつりとポムドーラが返した言葉をまとめた。

◆シフールの里のぞけます
 そうだねえ‥‥シフールはローデの花に自然に宿り、数日で生まれる。最初は動けないし、言葉も分からないけど、言葉がわかるようになり、自力で歩けるようになると、徐々に飛べるようになる。やがてしっかり飛べるようになると、外界へ行きたがるようになるので、人形──木の実の粉を練って作ったネストドールと、服──花びらを編んで作ったネストドレスを作り、嵐の壁へと送り出すんだよ。外界でシフールらは、『いろんな経験や善行』をするよう言われて送り出されるのさ──。

◆花は美しく散る
「そうか花から生まれるのか、普通のコモンとは色々な意味でちがうな。あ、もうひとつ質問いいかな? 今の話を聞いて改めて聞きたくなったんだよ」
 シフールの里で、いろいろと薬草を見て回っていた、パライソ・レヴナントが立ち上がり、腰の土を払う。
「シフールは病気などにかかるのかが気になるよ」
 答えたポムドーラ曰く。
「まあ、病気にだってなるよ。病気で亡くなる悲しい子もいるさ‥‥薬草はたくさんあるけど、立派なお医者はいないからねえ」
「医者かあ‥‥薬草──シフールが病気になった時は、ヒューマンと同じ治療で良いのかな」
「うーん、ヒューマンの治療法をよく知らないからねえ‥‥でも、たぶんだいたい一緒じゃないかしら?」
「そうだねえ、説明するのも難しいか、乳母さんたちが医術とか学ばない‥‥うーん、子供を助けるためにでも茨の洞窟を越えるのは、難しいか、ふたつも聞かせてくれてありがとうね」

◆始まらなかった旅の終わり
 ローデルがすさまじい勢いで先ほどのシフールの生誕に関する情報を把握しようとしているのを見た、オスカルはため息ひとつついて、話を切り出す。
「外の世界を飛び回ってるシフールたちは、何でまた外に出たんだい? みんな楽しく暮らしてるけど、危険も多いだろうに」
「子供らは、外界でいいことをするために生まれてきたんだよ。危険がいっぱいなのはわかってるさ。けどね、外界で経験を積んで、立派なシフールになる。それが定めなのさ」
 ポムドーラが何か遠くを見るような目で、オスカルを見る。その視線にオスカルは耐えきれなくなり問いを発する。
「立派なシフールってことは? シフールはいずれは、あんたみたいに成長して大きくなるのかい?」
「旅立ちをやめた子は、そうなるだろうね」

◆南の風を知らず、
「色々と知り合いが不始末しました。ですが、せっかくの機会ですので聞くのです。まあ、ローデルさんほど大雑把なものではないのですが」
 アンカは問いを切り出す。
「ずばり、シフールの里とはいったい?」
「そうだねえ‥‥シフールが生まれ、育ち、巣立つ場所。そういうもんじゃないかい?」
 ポムドーラ女史は先ほどの質疑応答があっていれば『旅立っていない』ゆえにシフールの里以外は知らないのだ。
 そのためか、まるで当然のことを聞かれたような困惑した返事となる。
「ローデの花の調子が悪い要因のひとつとして、サンドラで復活したデュルガーの影響もあるかと思うのですが」

 他のハウンドたちは、昨年起きたサンドラの事件を説明をする。さすがにフォローをしないと分からないだろう。
「そんなことがあったのかい? 悪いけど、その事件はよくわからないねえ」
 と、ポムドーラ女史がは言うが、話はつなげる。
「それに、その事件より前から、ローデの花の育成が悪くなる兆候はあったからねえ」
 とのことだ。


「まあ、少しずれたようです。ともあれ、ここは浮世離れしてますねえ。ちなみに乳母さんたちはなぜ、シフールの里に出なかったのでしょうか」
 改めてアンカはポムドーラ女史に問う。
「時々いるんだよ。どうしても旅立ちたくないとか、なにか残りたいと思ったシフールはね、いい歳になっても旅立たず、いずれ乳母になっていくのさ」
 アンカにとって理解は出来るが、納得は出来ない言葉だ。
「何かミドルヘイムの旅人と一般人を逆にしたみたいなのです。コモンの場合、どうしてもしたい事や夢がある人だけが旅に出るのですが」

 どうしてもシフールの里にいたい者、それだけが楽園の乳母になる。
 ──不思議な世界だった。
 少なくともアンカにはそう映ったらしい。

◆沈黙のベルクート
 そして、ベルクート・クレメントは思った。
 ポムドーラ女史に聞きたい事全部先に聞かれてしまったと。

◆その頃──
「いや、私も若いころは『黒騎士』と呼ばれ、我が武勇譚の弾き語りを聞いた、ミドルヘイムの数多の乙女の枕を涙で濡れさせたもの──しかし、ある時‥‥」
 アンドレが若いころのセルフ武勇譚を幼いシフールたちに語っている。
 しかし、アンカにオスカルと言った、ふたりのアンドレガール(?)とも言うべき面々は月も凍てつくような瞳で彼を見ている。
「あの父親が本当にどうしてああなったのでしょうか」
 アンカはため息をついた──深く、深く。
「それはこちらもだよ、全く‥‥たまにする武勇譚が時候の挨拶だったからねえ」
 オスカルは幼馴染だった、アンドレとの会話を思い出す。
「コモンは変わりゆくものなんだねえ、いやパラだってコモンだけど」
 しかし、三人は間もなくシフールの里を旅立つ。この情報は様々な意味で、ハウンドギルドにとって重要な情報となるからだ。
 だから、ハウンドの日常は──つづく!



 6

参加者

b.馬鹿二人(アンドレとローデル)は置いといて、質問してみましょう
アンカ・ダエジフ(da1743)
♀ 26歳 ダークエルフ パドマ 水
b.聞きたいことかぁ…
パライソ・レヴナント(da1777)
♂ 53歳 カーシー(小型) カムイ 火
a.何だか分からんが、脅かせばいいのだな!?
トサ・カイザー(da1982)
♂ 26歳 人間 ヴォルセルク 陽
b.ローデル、アンドレ、ステイ!
オスカル・ローズ(da2033)
♀ 53歳 パラ パドマ 火
b.シフールか、今まで考えもしなかったが、謎といえば謎か
アンドレ・カンドレ(da2051)
♂ 51歳 ダークエルフ ヴォルセルク 月
 色んなことを聞いてみたいなぁ。
ベルクート・クレメント(dz0047)
♂ 26歳 パラ パドマ 火


ちょっと、思い出せないわね

「あらあら、このシフールの里にいると、あまり変わったことは思い出せないわ」