オープニング
◆とあるウーディアの寒村
幾人かのハウンド──彼らがその寒村を訪れたのは、ちょっとした依頼の後だった。
「宿を探そうよ」
黄昏時、ベルクート・クレメントが言い出すが、どうも村には活気がない。
「おにーちゃん、鶏持ってる? タマゴもってる?」
少女がハウンドたちに話しかける。
「あのね、鶏とかタマゴ持っていると、りょーしゅさまが税金取るんだよ、こーふく税だって」
「幸福税?」
聞いたことのない税金だ。
多分、慣習法(コモンロー)にはないだろう。
「うん、鶏とかタマゴもっているとね、そんなゼイタクゆるさないんだって。前は優しかったのに‥‥」
◆この借りは暴力払いだ
「酷いな」
さすがに能天気なクレメントでもそう思わざるを得ない。
そこに武装した兵士が三人ほど現れた。
「ヨソ者か? 領主様の法律だ、鶏を持ち込んでいないか確認するぞ」
「何で鶏がダメなの?」
ベルクートが問うが、兵士は言った。
「口答えするな!」
言うが早いが、兵士はベルクートの腹を思いっきり蹴り飛ばす。
残りの兵士も槍を構える。
そこまで横暴な兵士に対し、ハウンドはやむを得ず、実力行使をせざるを得なかった。
◆僕より幸せなヤツは嫌な奴だ
気絶している三人の兵士をしり目に、ベルクートは口の中を切り、血を流していた。
どうやら、領主はこの村だけを統治しており、懐具合がよろしくない領主だ。
去年のXmasの布教で、村人と伝道師が暖かい鶏を食べたのが許せないらしい。
なので、村中の鶏を集め、Xmasには焼くつもりだ──むろん、食べるために焼くのではない。
村人に食わせないためだけに焼く。
卵は村レベルでは、大事な栄養源であり、それを産むメンドリは大事な財産だ。
それを取り上げられれば、村人は困窮するだろう。
◆しかし、決意はあった
「黙ってみてるの?」
ベルクートは言った。このままでは村人がかわいそうだ。
ハウンドたちは直談判に出ることにする。
『みんなで幸せになろう』
ハウンドたちの決意があった。その決意は、あくまで善意を施し、シフールの生のサイクルをつなぐネストドールの復調のため。
領主の家はお約束通り高いところにあった。城ではない、家だ。、
気絶から目を覚ました兵士から聞くと、兵士が残り二名に、用心棒がひとりいるという。
なぜかそのメンツが家の前でハウンドを迎え撃っていた。
「──は」
話し合おうとしたがハウンドに、領主と思しき、目の下の隈が大きな男が言い出す。
「兵士が帰ってこないと思ったら‥‥愚民どもが──センセイよろしくお願いします」
「どうれ」
センセイと呼ばれた剣士が前に出る。そして、ふたりの兵士もだ。
向こうはやる気満々な状況。
だから、ハウンドの夜が始まる。
選択肢
マスターより
成瀬です。聖夜ネタの一環です。なお、ベルクートが弱すぎという意見もあるかもしれません。
しかし、駆け出しのパドマじゃあしょうがないかと?
一応、領主は魔物としては、ヒューマンです。
え、何で魔物がみっついるかって?
メタな事を言わないように(笑)。
じゃあ『皆で幸せになりましょう』。
※RealTimeEvent【HoundHistory05】来たれシフールの里 連動シナリオ
本シナリオは、世界の歴史を動かす可能性を秘めた企画「リアルタイムイベント」に連動した特別シナリオです。
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登場キャラ
◆ハウンドは悪魔を挑発する
とある悪徳領主のところに行こうとすると、逆に相手が前に出てきた。
さあ、戦いだ!
「エルシー行こう!」
と、
ユミル・エクレールが呼ばわる。
「応だべ!」
もちろん返すは、
エルシー・カルだ!
「とにかく全員ぶっ飛ばせばいいんだろう」
ユミルが挑発する、いや本気だ。
「気をつけろ──後ろの弓使いも『やる』」
領主の食客らしい剣士『センセイ』も『やる』らしい。
(ちょっと不審な状況ですが、取り合えず死なない程度にして抑えましょう)
冷静に情勢を分析するのは、
シェール・エクレール。
彼女はすでにツートップのユミルとエルシーにはエエンレラで浄化の力を付与済みだ。
一時間の安全を買うならば、魔力は安いものである。
「あら? 私も鶏持ってるんですけど取立てにこないんですかぁ?」
フライの魔法で制空権を握った、
フルミーネ・ヴェンティもセンセイに、魔法で感電させ、行動を封じるべく動く。
空中に浮いたまま、魔法の杖をふるうフルミーネ。
(なんか変なのが領主さまに憑りついてるのかな?)
一方、領主の行動があまりに支離滅裂で破滅的──そう思える、
アステ・カイザーは矢を番えたまま様子見だ。
「──ゼウス」
戦いの幕が上がる。
◆おーぷんこんばっと!
フルミーネが魔法を成就させ、雷を放つ。
剣士は抗い、直撃は避けたが、感電し動きにキレがない。
「中央突破だべ!」
エルシーがハルバードを振り回し兵士のひとりを守勢に回らせる。
もうひとりの兵士は、ユミルが見えないほど巧妙な矛さばきを受け切れず、胸の下の方に鎧を突き破り、赤いものをにじませた。
「ボコられて成敗されたくなければ‥‥黙って鶏を村人に返しな」
「り、領主さまあ」
兵士たちは情けない声を出す。
「お前らには自分を盾にして得物を封じるだけの甲斐性がないのか!」
領主の言葉に、フルミーネは次の目標を決定する。地上にいるアステやシェールとちがい、上空から目標を選びたい放題だ。
「──ゼウス」
雷が領主を捉えた。兵士の巻き込みも考えたが、ユミルを巻き込むことになるので、フルミーネは断念する。
「し、死んだ!」
領主は一気に倒れる!
「え? まだ、トドメは刺していませんわ」
領主の体から何か異変があったようだ。フルミーネは中止する。
これはインプなのか? 灰色の肌の、翼を持った子供ほどの影だ。それが領主の死体から抜け出て、新たな対象に憑依しようとしている──様に見えた。
◆私があなたにあげたもの
「エルシー様! ユミル様──デュルガー‥‥恐らくインプです」
知識の裏付けのあるフルミーネは、ふたりの戦女神にトスを上げる。
「あんたら、何か騙されていたみたいだべ?」
エルシーが闘志を無くした兵士たちに話しかけながら、ハルバードをふるう。
特に予想はしていなかったが、備えはあるのだ。
エエンレラにより浄化の力を付与された斧頭で、インプをぶった切る、手ごたえは十分だ!
「メリーXmas!! 悪い子にもプレゼントをあげるよ!」
ユミルも、やはりエエンレラの力で、浄化の力を付与してあるハルバードを一気に振り下ろす。
胴体も半ばちぎれたインプは、霧散化できないまま『死』というプレゼントを受け取った。
「終わった──」
アステは祈りを閉じた。
◆面倒な後始末
「あの魔物は──」
剣士にエルシーが問いかける。
「ちょっと話を聞くべよ」
顛末を聞くことにした。
単純に剣士が村を訪れて挨拶をしたら、領主の意図が分からないが、しばらく逗留して、兵士たちに武技のけいこをつけて欲しい、それだけの関係だったそうだ。
別に彼がデュルガーの信者だったり、被害者だったわけではない。
「だが、恩を盾にされ、荒事はした──その罪は償いたい」
この剣士、荒っぽいが、悪人ではないらしい。
「それはそれとして、ちょっと走ってくるべ、幸福税は終わったべよ」
エルシーが村長の家に向かう。
「剣士さんの話も入れて、教会に聞いてくる、領主さまが亡くなったらどうするべきかってな」
ユミルが教会に走る。
幸か不幸か、領主には幼い息子がおり、それを村長と聖職者が盛り立てる。
無論、当座の事であり、朝イチで出立する上位の領主へ使者が現状を伝えて、正式な沙汰が出されるまでの、一時しのぎにすぎない。
家令が領主の家の代理人となり、火をかけられるのを待っていた鶏たちは大体、元の住人のもとに戻ることになる。
◆遅すぎた男
「そして、ぼくは何もしなかったよ!」
そう言いながら、
ベルクート・クレメントが腹を蹴られた怒りはさておき、その負傷をアステに癒されて復帰した。
せめてもの心づくしにと、村から出された、ブタ料理を食べるハウンドたち。
一応、形だけ、デュルガーの悪事に対抗したため、ということで、この村でハウンドたちが行った暴力は、教会から赦免が出された。
この晩はこのように進んでいった。
◆旅立ちの朝
‥‥そして翌朝。
「ところで、ここどこだろう?」
ベルクートが話を村人に聞くと、彼が予想していたところの反対がわらしい。
「クレメントはクールに去るよ‥‥」
さりげなく話をうやむやにしようとするベルクートだったが、他のハウンドはそうはいかない。
「結果として、善行は積めたからね」
ベルクートの弁である。本当に結果論だ。
こういう時に言い訳をされると、余計に腹が立ってしまうのも、コモンのサガであろう‥‥多分、きっと。
「‥‥ダメカナ?」
首をかしげるベルクートに対し、ハウンドたちはそれぞれに言った。
「うんうん、ベルクートを蹴られて、私も気分を害した。それに悪人と対峙したけど、何となくスッキリしなかったけどな」
ユミルの弁だ。
「でも、善行は気分がいい。だけど次は無いからな?」
という事だそうだ。
「まあ、悪人は許さんべ。あと何かいう事あらへんベ」
エルシーはさっぱりしている。ぜい肉がまるでない。
「まあ、次はないべよ」
のんびりしている彼女も釘を刺すのは忘れなかった。
「そんなに腹を立てることではないわね」
アステの言葉も短い。
「でも、待っている人もいるのですから、それは忘れずに」
続くフルミーネの弁は、非常にシンプル。
「ベルクート様、次はなしですわ」
言って、酒の入ったマグを置く。
「そ、それだけ?」
慌てるベルクートの問いにこくりとうなずきを返すだけのフルミーネ。プレッシャーを感じてしまう俗物のベルクート。
「ベルクートさん、以下同文」
五人のリレーの最後ということで、シェールも疲れたのだろう。
いや、すでに言うべきことを言われてしまったのか‥‥ともあれシンプルだ。
それはさておき、ベルクートは改めて思い知らされた『オンナはコワい』と。
まあ、三日すれば忘れるだろうが。
なぁに、ハウンドで自分以外全員女性と言うのは驚くべきことではないだろう。
それとは別に、請われる声を後に、村から出立するハウンドたち。
多少歩調が普段より速いのは。一晩を予想外のことに使ってしまったからだ。わずかでも補わねば。
そして、本来の依頼にはギリギリで間に合ったこと、それ自体が、奇跡の範疇だろう。
おそらく、それもまた奇跡の価値のひとつ。Xmasだからのそういう事もある。
だから、ハウンドのXmasは‥‥つづく!
5
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参加者
| | b.なんか変なのが領主さまに憑りついてるのかな?
| | アステ・カイザー(da0211) ♀ 27歳 人間 カムイ 水 | | |
| | b.あら?私も鶏持ってるんですけど取立てにこないんですかぁ?(ニヤニヤ)
| | フルミーネ・ヴェンティ(da1894) ♀ 28歳 ライトエルフ パドマ 風 | | |
| | b.ちょっと不審な状況ですが、取り合えず死なない程度にして抑えましょう。
| | シェール・エクレール(da1900) ♀ 19歳 人間 カムイ 風 | | |
| | a.とにかく全員ぶっ飛ばせばいいんだろう。
| | ユミル・エクレール(da1912) ♀ 24歳 人間 ヴォルセルク 陽 | | |
| | a.悪さする奴は許さないべ。
| | エルシー・カル(da2004) ♀ 21歳 カーシー(大型) ヴォルセルク 地 | | |
| チキンをキチンと──。 | | ベルクート・クレメント(dz0047) ♂ 26歳 パラ パドマ 火 | | |
鶏肉!
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鶏だと愚民どもが! 愚民、愚民──。
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