大地の子は大地を食らえ

担当成瀬丈二
出発2020/12/12
種類ショート 冒険(他)
結果成功
MVPアンドレ・カンドレ(da2051)
準MVPチャウ(da1836)

オープニング

◆大雑把
 女神教会がミドルヘイム宗教のスタンダートをばく進しつつある中、精霊崇拝など少し古びた(?)ものもある。
 まあ、鰯の頭も信心からとはいうが、魔の森の調査行に来たハウンドたちに、少し変わった接触があった。
 それは魔の森に近い開拓村でのコト。
「すみません、うちのダンナ来ませんでしたか?」
 ダークエルフの女性だ。ダンナが云々ということは既婚者だろう。

登場キャラ

リプレイ

◆大地の子は‥‥
『ニルスさん聞こえていますか‥‥』
 パオラ・ビュネルがダークエルフ夫妻の夫、ニルスにテレパシーで『声』を送る。
「な、なんだ──頭の中に声が聞こえる」
『騒がないでください‥‥普通のふりを──』
 ニルスに対して、パオラが落ち着くように促すが、テレパシーの魔法を受けたことのないニルスはパニックに陥るだけだった。
「長老‥‥ニルスのヤツがおかしいです!」
 知り合いらしい男が、ニルスの肩を押さえる。
「ニルス、次の機会を待ちなさい。今回はお主ぬきで進める」
 長老と呼ばれたライトエルフがニルスに退出を促す。

「クスリでもやって、幻覚でも見るのかのう‥‥まあ、体調には配慮するみたいじゃが」
 医療にも植物にもそれなりの達者である、ケイナ・エクレールが独自の見解を述べる。
「まあ、あのキノコには興味を惹かれるのう」
「よし奪う。犯罪なんだろ? ぶっとばしていいよな」
 そう言って、両手に着けたハードパンチャーを打ち合わせる、ユミル・エクレール。彼女はケイナから、無罪放免のご免状を得ようとしていたが、ケイナは首を振る。
「いや、コモンローはこういう事そのものはダメと言っておらんがな。別にさっきのニルスの扱いを見ても強制はしとらんし」
「は?」
 ユミルは燃え尽きてしまった。

(んっとぉ‥‥なんかぁ、見たかんじダメな人の集まり‥‥?)
 そう思いながら、リコ・マウリオラが儀式の場に現れる。
 彼女は手にはめているミスリルナックルが如何にもカタギではなさそうな空気を醸していた。
「えっとぉ。聴いてくださぁい~!」
 と、言いながら、地面に対し、ルミナパワーを付与したコブシで、一撃! 流し込むはエクスプロージョン。
 一応、リコ的には集団催眠っぽい人たちの目を覚ますために行っているのだ。
「どっかんパ~ンチ・アーンド・リコナッコォ♪ 今日の魔破拳──ミスリルナックル──は血に飢えてますぅ☆」
 おー、とか言いながら、人々は拍手を送る。子供が頑張っているな程度にしか思えないらしい。
「泣くまで殴るのをやめないのですぅ」
 顔に大きく『ぴえん』と書かれそうな表情のリオ、やっぱり岩とか破壊するなら、破壊とかを付与する手段がないと迫力に欠けるだろう。

「私にもキノコちょーだい☆」
 そう言って森の中から飛び出したのは、シフールのチャウだ。
「じゃあ、ニルスの代わりに儀式に参加しなさい、ランマッシュを追いかけて捕まえたら食べていいぞ」
 と、長老は気軽に答えた。
「お腹ペコペコなのー。このままお腹空くと、魔の森の魔物も美味しそうに見えて来ちゃうから、キノコでお腹を膨らますの―」

「話は聞かせてもらった」
 と、アンドレ・カンドレが木陰から姿を現した。
(ライトエルフのやる事はダークエルフには分からん。よく分からんが、ここは俺が身代わりになるか。オモシロそうだし)
「あー、いたいた! おい、ニルス、何やってんだよ」
 周囲から『あんた誰?』と言われそうな視線を受ける。しかし、アンドレは空気を読まない。
「で、何をしてんだ?」
「ほお、いい質問だ。若いの──」
 と、長老が長口舌を始める。
(なるほど、わからん)

 単純に言うと、村の新人と、共通体験を得るために、(一般人にとっては)苦労してキノコを捕まえて、それを食す、というものだった。共通体験の中には幻覚によるトリップも含まれる。

 もっと単純に言えば、新人が来たから飲み会をする。
 酒の代わりにキノコという訳だ。

「好い話じゃないか!!」
 じゃあ、参加するかね? との長老の問いに。
「みんなで食卓を囲むのは大切だよなぁ」
 と返すアンドレだった。

◆大地を──食らえ
 そして、ベルクート・クレメントを巻き込んでランマッシュを追いかける儀式が始まった。
 数人の新人と、ハウンドがランマッシュを追いかけまわすのである。
 むろん、ランマッシュとて食べられたくはないだろう。

◆シフールの夢歩き『欲望のままに』
「とっしーん、とっかーん」
 チャウの翼が風を切り、真っ先にランマッシュを補足した。思い切りつかまろうとするが、周囲に胞子をまき散らすランマッシュ。
 チャウは胞子を思いっきり吸い込んでしまう。
「ふにゃー、ショコラの大群が来るよー、たいりょーたいりょー!」
 チャウが見たものは、非常にわかりやすい幻影だ。
「だめー、チャウはおいしくないの」
 言いつつ、チャウはランマッシュの傘にかじりつく。
 生のキノコはカビ臭いとも、生臭い味ともとれる味がした。

◆パラの夢歩き『毛布はいらない』
 結構足が速い部類なのか、ベルクートは短剣を器用に使い、ランマッシュの背中(まあ、背部だ)の一部を削り取る。
 胞子は大丈夫なのか? と、思われたが、案の定──屈した。
「あ、背嚢の中に毛布が、一枚二枚──まだ、あるよ~」
 その声を聴いたパメラがどういう反応をしたかは闇に紛れて分からない。
 短剣の先にランマッシュの肉を取っていたのを振り回し、偶然火であぶる形になった。
 美味しそうな香りが立ち込め、チャウをいざなう。
 グリーヴァではこれを『飛んで火にいる冬のシフール』と言う‥‥わけがない、だろうなぁ。

◆ダークエルフの夢歩き『黒騎士だった男』
 アンドレはがっつりタックルして、ランマッシュを大地に引き倒す。
 胞子を吸い込みつつも、懸命に男衆と結託して、かがり火のなかにランマッシュを放り込む。
『とうさん──』
 幼かった娘が彼の黒い装束を見て、誇らしげだ。
 釣竿を持った娘を愛馬に乗せ、川岸に進む。娘が振り回した釣竿、その釣り針が愛馬にかかった。
 棒立ちになる馬から娘が落ちそうになるのをかばい──。
 ボボボーン。
 どこまで妄想で、どこまで真実かは分からない。そんな夢だった。

◆夢の終わりは夢の続き
「ふむ、興味深いサンプルじゃのう」
 ケイナが夜が明け、宴が終わるとランマッシュのサンプルを幾つか採取していた。
 研究にはサンプルがあればいいだろう。トリップして、主観的な視点まで実践する気にはなれない。
「はいはい。肉体労働、肉体労働」
 ユミルが言って、宴の後を調べる。
 幸い、ランマッシュでトリップしても一時間程度で収まり、慢性的なものでは『今のところ』ないと見える。
「というか、口実つけて騒ぎたいだけかな?」
 そういうリコは一世一代の大暴れをするつもりだったが、酔漢(?)のリアクションが薄いため空振りに終わったのである。
「本当に飲み会じゃな」
 ケイナの弁だ。

◆旅の終わりは旅の続き
 ちなみにパメラは少し離れたところで、ベルクートを毛布で寝かしていた。
 妻のランセンさんは、夫のニルスが無事だったことで、きっちり礼をしてくれる。
 なお、長老の家にユミルが押しかけ、状況を確認しようとした。
 一応、向こうも友好的に出迎えてくれる(徹夜のせいで眠そうではあったが)。
 このカルトも女神教に連なる教えではないが、別段、悪徳やデュルガー崇拝と関係がないと判断した。まあ、最近の宗教ではないのだが。
 見せてもらった現代語で書かれている範疇ではそうだった。

 ともあれ、ひとつの秘儀がハウンドの好奇心のもと、明らかになった。まだ、明らかに出来そうなことはまだまだ多そうである──だから、ハウンドの探索は‥‥つづく!



 6

参加者

a.とりあえずぅ……撲りますねぇ~☆(まずは地面や樹から)
リコ・マウリオラ(da1831)
♀ 19歳 ドワーフ ヴォルセルク 火
b.キノコ食べるの―?
チャウ(da1836)
♀ ?歳 シフール カムイ 月
a.取りあえずぶっ飛ばしとけば良いんだね。
ユミル・エクレール(da1912)
♀ 24歳 人間 ヴォルセルク 陽
b.ヤクをキメている危ない風習を持つ連中というのは解ったのじゃ。
ケイナ・エクレール(da1988)
♀ 30歳 人間 カムイ 火
c.とりあえず、騒ぎに乗じて目的達成を……。
パオラ・ビュネル(da2035)
♀ 23歳 ライトエルフ パドマ 地
b.「ところで、このキノコをどう思う?」「すごく…美味しいです」
アンドレ・カンドレ(da2051)
♂ 51歳 ダークエルフ ヴォルセルク 月
 あれ? 食べたことあるよ‥‥う──ん。
ベルクート・クレメント(dz0047)
♂ 26歳 パラ パドマ 火


走る走る

キノコも本気を出せば走るんだよ!