【SE07】苦行者を導け

担当山猫 黎
出発2020/11/24
種類ショート 日常
結果成功
MVPソレイユ・ソルディアス(da0740)
準MVPカモミール・セリーザ(da0676)
ビア・ダール(da1972)

オープニング


 苦行者である彼は、聞くところによるともう何ヶ月もこの村の一番高くにある大きな岩の上から動いていないそうだ。
 彼は飲まず食わずで何かを待っているらしい。自分の中に詩を呼び起こすのだと言ったのが最後に村人が聞いた言葉だそうだ。
 そんな村に君たちは偶然立ち寄った。
「困ったことだよ。ジョージは、歌で昂ったところで魔法を操る天才なのに、その、魔法を引き出す歌が思い出せなくなっちまったそうなんだ。それでああなってしまった。彼がいなければ、農作物も良く実らなくて頼れるものがおらんのだよ」
「どうにかして、ジョージに魂を揺さぶる歌を取り戻してやっておくれ。このところ雨が少なくて、畑も乾いちまっているんだよ」

登場キャラ

リプレイ


 ビア・ダールはいつも通りローブを羽織り、ハープを小脇に抱えジョージの横に腰を下ろした。
 常にエレガントを意識しているビアは仕草に気を遣いながら少し考えた。
「大地の恵みの歌ですか……ふむ、非才ならぬ我が身ですが考えてみますか……」
 ビアは敢えて何も聞かず、それだけ呟くと静かに歌いだした。
 静かな伴奏から柔らかなメロディが紡がれる。

 雨雲集いて雨降り注ぐ 
 乾いた大地に天水沁み込む
 甘露かな 甘露かな
 畑と麦を優しく潤す
 力強く天に穂を伸ばす麦よ
 潤いて喜ぶ大地の恵みよ
 
「ふむ、私の芸風では『私の熱っつい歌を聞かせてやるぜ!』なビートには程遠いですが、なにぶんにもエレガントを求める詩人ですので、この程度の歌しか出来ませんな」
 ビアは歌い終わるとジョージに自分のことをそう話した。
「成程、優雅な歌だ。そうか、畑と麦を優しく潤すか……何か思い出せそうだ」
 ジョージはビアに礼をいうと、何かぶつぶつと考え込み始めた。
 それを見たビアは、そっと席を外すことにした。

 次にやってきたカモミール・セリーザは優しい口調でジョージの悩みに答えた。
「大地の恵みの歌ね~。荘厳な歌詞ならイメージ湧くけど、熱いビートの歌のイメージだと……難しいわね~」
 カモミールは少し考えてから歌い始めた。

 大地が乾いて砂塵が巻き上がる
 ああ 天よ 雷雲を呼んでくれ
 大地を打つ激しい雨を降らせておくれ

 雷鳴が轟けば 雨も直ぐに降り始める
 私は家に帰って雨を待とう
 焦がれながら雨を待とう

 屋根を打つ雨音 鳴り響く雷鳴
 私は怯えつつも大地が潤うのを待とう

 雨雲過ぎ去れば大地は潤い 畑は芽吹く
 私は天に感謝を捧げよう

「こんな感じかしら?」
 カモミールはグリーヴァリュートを軽くかき鳴らして一曲ジョージに披露した。
「天に感謝か、オレには感謝が足りないのか? 教えてくれ! オレは、あとどのくらい待てばいい? どのくらい天に感謝すればいい?」
 ジョージはカモミールに詰め寄った。カモミールは返答に窮した。
「落ち着いてくださいませっ。ジョージさんは、歌う楽しさを忘れちゃったから、思い出させてあげればいいんですのねっ?」
 レネットはジョージに会うなり開口一番そういった。シフールなのでパタパタと飛び回っているのだが。
「飲まず食わずはつらいと思いますし、ずーっと同じ所にいたらつまんないと思いますのよっ? 美味しいもの食べて色んな所に行って楽しいこといっぱいの方が、楽しく歌えると思うのですわっ!」
 ここまで一気にまくしたてるレネット。 
 長い黒髪を掻きあげてショウ・ジョーカーはレネットに賛同する。
 ジョージの心が心配なので、とりあえずメンタルキュアティブを成就させて様子を見る。
「おいおい、このままじゃ腹ぺこで倒れちまうだろ。いや、苦行ってそういうもんなんだろうけどさ」
 ソレイユ・ソルディアスも心配そうだ。
「極限状態で閃いたりすることもあるみたいだけど、一旦落ち着くっていうのもアリでしょ」
 ショウはジョージが何か月も成果が出ていないことを指摘し食べ物を勧めた。
 メンタルキュアティブのお陰か、ジョージは素直にそのことを受け入れた。
「お腹すいてない? 木の実ならあるよ。レネットも食べる?」
 食事を断っている人間は急に物を食べると消化器官を傷めるので、少しづつ食べさせる。
 勿論レネットも腹ごしらえとばかりにショウからもらった木の実をほおばる。
 食べながらもレネットはさらに持論を展開する。もぐもぐもぐ。
「歌はみんなも自分も楽しくするもので、苦しくするものじゃないですのっ。魔法だってそうですわっ。火の魔法だって誰かを助けてあげられますものっ。怖がっちゃ可哀想ですのっ!」
 ジョージははっとした。苦しんでもオレの答えは見つからないかもしれない。
 木の実を少し食べ、レネットの持論にジョージは考えさせられるものがあった。
「ありがとう」
 言葉少だが食べ物をもらって少し落ち着いたジョージは御礼をいった。
「ハープを弾きながら、ショウさんと一緒に歌いますのっ! ジョージさんが歌を思い出せますようにっ」
 レネットはショウを巻き込みハープを片手に歌いだした。
 レネットのハープとショウのリュートが緩やかな音楽を奏でる。
 見ていたカモミールも遅れながらグリーヴァリュートで音をあわせる。
 柔らかい水や風をイメージした音楽だ。
 ジョージは気持ちがじわじわと癒されていくのを感じた。

 演奏が終わるとだいぶ硬かったジョージの表情は少しほぐれていた。
「なぁ、ジョージさんにとって『歌』って何なんだ?」
 ソレイユは、このままだと二人がジョージを言葉で押し切りそうだったので、割って入る。
「あ、いや哲学的な話じゃなくてさ。歌いたくなる時ってどんな時かなって。ジョージさんは歌で魔法を引き出すって聞いたけどさ、別に魔法を引き出すために歌ってた訳じゃないだろ?」
 ソレイユはなるべく言葉を選びながら話す。
(多分、ジョージさんはスランプを難しく考えすぎてただけなんだと思う。そんな時は一度初心に戻ってみるのがいいんじゃないかな)
 そんなことも頭には浮かんだが理屈よりハートだよなと思って敢えて言葉にしなかった。
 皆でほっこりしているところでソレイユは空気を読まずに陽気なメロディを奏でて歌い出す。
「俺が歌いたい時ってのは嬉しい時や楽しい時、そしてそれをみんなに伝えたい時だ」
 ジョージは問う。
「それの何が楽しいのか?」
「勿論、こうやって色んな人が集まって色んな歌が聞ける事だぜ!」
 伴奏中に会話を入れて終わったらソレイユは本格的に歌いだした。
「さすがソラ、いいこと言うよね」
 ショウはソレイユのいう事に素直に感心した。

「はっはっは、歌を忘れちまったってか! 大丈夫だ! 熱く心を燃やせば、がっちりしまったアタマの引き出しだってガラッと開くもんだぜ!」
 更に空気を読まない男グラナート・ミストファイアはテンション高く宣言する。
「俺も歌は大好きだぜ! 風呂とかで歌うと気持ちいよな! あそこは良く響いてきもちいい!」
 そういうとグラナートは声高らかに歌い始めた。しかし彼は残念なことに非常に音痴であった。歌詞も適当であったが自信だけはあふれていた。
 ジョージを元気づけるために、グラナートは更にトーチに火をつけて炎の踊りを踊り始めた。
 もちろんグラナートは鍛えているがダンスはずぶの素人。踊っていると言えば聞こえはいいが、お世辞にもそうは見えない。
「ルミナパワーもおまけだ!」
 グラナートはルミナパワーを成就させ、炎の色をした拳で更に胸を叩いた。ダンスとしてはイマイチだが勇壮さは伝わる。
「俺とおまえの心を燃やせぇぇ! 歌を思い出せと魂を震わせろ!」
 最初は皆ぽかんと口を開けるだけだった。
 しかし、グラナートのテンションだけはやたらと高かった。彼のテンションに引きずられて皆が曲にならない曲に合わせ始めた。
「もっとテンション上げたほうがいいなら、魔法のベルはどう? 愛だって歌を呼ぶよね」
 ショウが魔法のXmasベルを鳴らす。皆のテンションがさらに高まる!
「「誰だって、好きな相手とイチャイチャしたーい!!」」
 皆の心が一つになった。皆は愛を叫んだ!
 段々と、形にならなかったものが、愛というベクトルを得て、皆の演奏で一つの曲へと昇華したのだった。
 その歌は無事、ジョージの心の中に小雨を呼ぶこととなった。
「うおおおおぅ、ありがとうぅ、オレは今、完全に、オレの歌を思い出したぜぃ!」
 ジョージは喜び、雄たけびを上げた。 
 かくして、ジョージは雨乞いの歌を思い出すことに成功した。 
 ジョージは協力してくれた皆に感謝した。
「無事思い出せたようなので、締めにみんなで一緒にセッションしようぜ。ほら、ジョージさんも」
 ソレイユは全員に声をかけ、村の人たちにも披露することにした。
  

 その日の内に村の中央広場でジョージの復活祝いが催された。
 村人が人垣を作る。その中央で、全員とジョージがセッションを始めた。
 勿論歌うのは雨乞いの歌だ。
 皆の楽器に合わせてジョージが歌い、カモミールとグラナートが踊る。
 間奏はビアが主旋律を担当した。途中からソロパートに入る。
 繊細なハープの音が、高まった歌のテンションを引き締める。
 ビアは優雅に、しかし弦さばきも素早く、磨き上げた技巧に満ちた即興のソロパートを弾きあげた。
 ビアのソロパートが終わりに近づくと、他の皆も徐々に自分の楽器を合わせてゆき、そして歌と踊りが再開される。
 ジョージは歌に集中し、その後何時間も歌い続けた。
 ジョージが歌い始めると雨を降らせられると期待した村の人々は音楽に合わせつつ内心は不安だった。
 皆が諦めかけた時、ジョージは一際大きいシャウトを叫ぶとウェザーコントロールを成就させる。
 みるみる雨雲が村全体を包み、あたり一帯にざあざあと雨を降らせることになった。
 村の人々も、これで雨が安定して降らせることができるので農作物が育つと喜んで皆に御礼を言った。
 そして皆の歌に合わせ、感謝の手拍子や足踏みが村に響き始めた。

 かくして、皆とジョージの生ライヴは、土砂降りの中、合計5時間ほど『同じ歌』を歌い続けて、伝説のセッションを打ち立てた。
 今後のジョージの活躍は吟遊詩人の噂になっていることだろう。

 セッション後、ずぶ濡れのジョージは、ふらふらになりながら、約束通り、火の降る禁断の魔法を皆に教えてくれた。
「取り扱いには、くれぐれも気を付けてくれよ」
 ジョージはそれだけ言うと、疲れからばたりと倒れてしまった。
 皆はまだ倒れることが出来ない、この歌が何か調べなければ。
 結局のところギルドに持ち込んで研究するまで確認は取れなかった。
 なんと、これはパドマの魔法で、陽属性のメテオだった!
 確かに空から火が降ってくる魔法ではあるが……これは火というか、隕石を降らせる魔法だ。
 皆はずいぶん物騒なものを、と思った。



 8

参加者

c.俺の歌を聞け! ボエェェェェエ(※ド音痴)! ハートに火をつけるぜ!
グラナート・ミストファイア(da0006)
♂ 26歳 人間 ヴォルセルク 火
b.歌う楽しさを思い出させてあげればいいんですのねっ?
レネット(da0035)
♀ ?歳 シフール パドマ 陽
b.まずは静かで優しい音を聞かせてみようか。乾いた大地に染み込む雨みたいな
ショウ・ジョーカー(da0595)
♂ 17歳 人間 カムイ 月
a.歌ね~熱いビートの歌は難しいわね~
カモミール・セリーザ(da0676)
♀ 30歳 ライトエルフ パドマ 陽
b.ジョージさんが何のために歌おうとしていたのか、それを思い出させたいな。
ソレイユ・ソルディアス(da0740)
♂ 18歳 人間 ヴォルセルク 陽
a.ふむ。幸せの為の歌、考えてみますかな
ビア・ダール(da1972)
♂ 50歳 ドワーフ カムイ 陽


恵みの詩を歌おう

村の歌う魔法使いが呪文の前奏になる詩を忘れてしまったようだ。村がそれで困っているので助けて欲しい。村は昔から雨が少なくて彼なしには生活が成り立たないんだ。