【SE07】月夜の祭り

担当椎名
出発2020/11/18
種類ショート 日常
結果大成功
MVPソル・ラティアス(da0018)
準MVPカモミール・セリーザ(da0676)
シャルル・シュルズベリ(da1825)

オープニング


 その昔、神の如き御技を使う美しいシーリーがいたという。ある日、近隣の村に住う者がシーリーへの恋に落ち、その末にシーリーを怒らせてしまった。その者はこの世にあってこの世ならざる存在となり、誰とも触れ合えず、孤独に暮らす他なくなってしまった。そんなある日、ルミナの才ある旅人がこの世ならざる存在となった村人の孤独を哀れみ、シーリーの為に供物を用意し、そして舞を舞った。その心に動かされ、シーリーの怒りは鎮まり、村人はまた元通り、この世の者へと戻る事が出来た。村の皆は、涙を流してそれを喜んだ。
 月の綺麗な、夜のことだった。

 アルピニオ地方のとある村では、その伝承に基づいて月の綺麗な夜に祭りを行うという。人伝にその話を聞いたハウンド達は、まだ見ぬ新たな魔法を求め、その村へと向かった。


登場キャラ

リプレイ


 夕日が地平の下へと沈み始める頃、楽団員の青年に曲を教えてもらっていたソルは、曲を一通りリュートで奏でる。
「お兄さんすごいねぇ! オレなんかこの曲覚えるのに結構かかったって言うのにさぁ」
 拍手を送る楽団員の青年に、ソルは肩を竦める。
「旅芸人として楽器は手放さねぇ生活をしてるし、これが生業なもんでねぇ。弾いてくれって言われて弾けねぇってんじゃあ、旅芸人は務まらねぇってもんでさぁ」
 そう笑うソルに、青年は目を丸くする。
「旅芸人さんって大変なんだな。オレには出来そうもねぇや」
 そう目を丸くする楽団員の青年に、ソルは返事の代わりにリュートの弦を爪弾く。
「この祭りはルミナの才ある旅人が舞うって話聞いたんですがね‥‥それなら、俺は旅芸人、ハウンドだって旅人みたいなもんでさぁ。村の人達が踊り子とかするよりも、よっぽど伝承に近くなったんじゃねぇかい?」
 ソルのその発言に、青年は少し考えてるように目を瞬き、それから。
「伝承の通りになるって事だな! そりゃめでたい!」
 そう手を叩く青年に、ソルはふと伝承の内容を思い出す。シーリーに恋をしたが故に怒りを買った村人、その怒りを鎮めた旅人の話。
 哀れむ者、帰還を喜ぶ者、そして孤独に泣けるような者。この伝承に登場する村人達は皆、ヒトの心を理解する事の出来る者達ばかりに思える。だというのに、何故彼等はシーリーを怒らせるような事をしてしまったのだろうか。
「俺はその伝承ってやつも少し気になるんでさぁ。もし良かったら、詳しい話を聞かせてもらっても?」
「俺のわかる範囲でいいなら幾らでも!」
 ソルのその問いに対し、青年は爽やかな笑顔で頷いてくれたのだった。
 その横で、手拍子に合わせて踊りの練習が行われていた。先生は村長と、村屈指の踊り子という女性だった。もし仮に彼女にルミナの才があれば‥‥と村長は悔しげに歯軋りしていたが、そんなものは言った所でどうなるでもない。
「右、左にステップ‥‥次はくるりとターン!」
 カモミールサースラファロの3人は、掛け声に合わせてステップを踏む。
「そこはもう少しゆっくり回った方が良いかも」
 勢い余ってくるくる回ってしまったラファロに、女性は優しく声をかけた。
「このおどりは‥‥きっと、つきみたいにきれいでおちつくおどりなのですわね」
 ゆったりと落ち着くテンポの踊りに、ラファロは頷きながら呟く。
「確かにゆったりした踊りね。月の下、皆さんで踊ってくださったら、きっと綺麗だわ!」
 にっこりと笑う彼女に、ラファロはぐっと拳を握りしめた。
「そうおどれるようにがんばりますわ!」
 そう張り切るラファロ。その横では、確認するようにサースが教えてもらったステップを踏んでみる。
「こんな感じ‥‥?」
 首を傾げるサースに、カモミールも同じく振り付けを確認しながら頷く。
「このドレス、少し踊りづらいから〜‥‥でも、きっと大丈夫ね〜☆」
 偶然同じドレスを持ってきたカモミールとラファロだが、普段よりキリッとしているカモミールは美しく、ラファロはどちらかというと可愛らしい印象だ。まだ低い位置に見える月が上に上がる頃には、きっとそのドレスに縫い付けられた月竜の鱗が優しく艶やかに輝く事だろう。

 村共有の調理場では、村の特産の穀物の実が沢山すり潰されて、澄んだ水を少しずつ混ぜ合わせながら一纏めになるまで捏ねる作業が行われていた。
「なかなか力仕事なのですね」
 調理の手伝いを申し出たシャルルは、調理の過程を説明してもらった後、団子生地を捏ねる作業に参加していた。
「でもね、ここでしっかり捏ねると美味しいお団子になるのよ」
 おばさんがそう笑う横で、生地を捏ねる様子を眺めていたラヴィーニが手をあげる。
「力仕事ならオレも出来るぜ!」
 元々運搬とか配布とかの手伝いをするつもりだったラヴィーニだが、作業を見ている内に出来そうだと思い始めたらしい。
「じゃあ、やってみるかい?」
 おばさんに優しくそう言ってもらい、綺麗に洗った手で団子を捏ねるラヴィーニ。確かにその手つきは大分頼もしい。
「そうですね‥‥」
 ラヴィーニに捏ねの作業が出来るのであれば、調理の心得のある自分はまた別の作業を進めた方が効率は良いかもしれない。シャルルはそう考えた。
 そういえば、供物のお団子は、シーリーに捧げられた後村人達で食べるのだとシャルルは思い出した。
「皆さん、例年食べるお団子は冷めたものを?」
 近くにいた壮年の男性にそうたずねると、彼はきょとんとした顔で頷く。
「え? あぁ、勿論‥‥他に何が‥‥?」
 心底不思議そうな顔で首を傾げる彼に、シャルルは人差し指を立てて、一つ提案をする。
「この寒い時期です。お団子を暖かくして食べるというのはどうでしょう?」
 シャルルの案に、男性は目を丸くした。
「団子を暖かくして食べるなんて‥‥考えた事も無かったな。出来るのか?」
 そう問う男性に、シャルルはにこやかに頷く。
「ええ。伝統に反する、というのであれば遠慮いたしますが」
 シャルルの返答に、男性はぱっと表情を明るくさせて一つ手を叩く。
「そりゃあ良い! いつも冷たい団子はつまらんと思っていたんだ! しかし俺だけで決める訳にもいかん。みんなに聞いてこよう」
 そう言って走り出した男性は、数分と経たずに了承の返事を持ってシャルルの元へと帰ってくる。村人達の許可を得たシャルルは、団子を暖かく食べる為のシロップの調理に取り掛かるのだった。


 月は中天の少し手前。祭りの準備は全て無事終わり、会場の広場には楽団員の奏でる音楽が満ち、そして村人達が集まり始める。
 中止だと思われていた村の祭りの開催に、村人達の表情は明るく、誰もが嬉しそうだった。
「綺麗なお月様‥‥素敵なお祭りになりそう‥‥」
 サースは、夜空に浮かぶ黄金色の月を見上げて呟いた。踊りの方はというと、全員が先生役の女性から合格点をもらえ、問題ない。
「がんばりましょうっ!」
 そう言うラファロに、カモミールがふわりと笑う。
「気負わずに、楽しく踊りましょう〜☆」
「肩の力を抜いて、指先までゆっくりとね」
 踊りの先生は、他2人に比べて気負っているラファロの肩をぽんぽんと軽く叩く。
「いきやすよ」
 ラファロが深呼吸を終えたタイミングで、ソルが合図をしてからリュートを爪弾き、楽団員達もそれに続く。
 シーリーを愛した村人は、その命と姿の違いを恨んだ。シーリーは村人の浅はかさを憎んだのだと、楽団員達は言っていた。愛はそれだけで尊いものだというのに、村人は相手を自身の手に納めなければ気が済まなかった。
 愚かな村人に激怒したシーリーを鎮めたのは、旅人の優しい心。
 旅人とシーリーを祀るお祭りにぴったり曲調。人の心を穏やかに、明るく、軽くする為の音楽。
「いきますわよっ」
 真っ先に動き始めたのはラファロ。伝統の踊りを踊る前の、前哨戦。手にした魔法の杖の先をぴかぴかと光らせて、ラファロは跳ねる。
「むらのみなさんも、ラヴィーニさんも、ハウンドのみなさんも、みててくださいませ!」
 楽しい気持ちを伝えるにはまず自分が楽しむ事から。団子の準備をしていたラヴィーニも、村人も、そして他のハウンド達も、その楽しそうな様子に思わず笑顔が漏れる。
「すごいな、お祭りって楽しいんだな!」
 隣の村人にそう笑いかけるラヴィーニに、村人達も笑顔で答える。続けて動きだすカモミールとサース。少しだけ伝統の踊りよりも激しい踊りだが、カモミールはなんとか裾を持って踊り切る。サースは、音楽に合わせて自然に身体を動かす。
 次いで奏でられる音楽は、月祭りの伝統曲。月は人々の真上で煌々と輝いている。月明かりに照らされて、カモミールとラファロの月のスモールドラゴンの鱗が随所に縫い付けられたイブニングドレスが艶やかに煌く。曲に合わせて優雅にステップを踏み、ターンをして、ふわりと着地する。
 曲が終わり、数秒の沈黙の後。割れんばかりの拍手が送られ、その拍手の中シーリーの居たとされる方向へとラヴィーニとシャルルが器に乗せて供物を運ぶ。
「シーリーに心が届きますよう」
 シャルルの祈りの言葉と共に、供物が捧げられて、祭りは最高潮へと。ハープを持ったサースが、ソルと共に曲を奏で、テンションが上がったカモミールがドレスを脱ぎ捨てて水着姿で踊り始め、その横では供物を置いたラヴィーニが身長が同じくらいのラファロの手を取って踊り出し。カモミールの踊りの軌跡が円を描き、何かを呼び寄せそうな雰囲気になってきたがそれはそれで村人達には好評だった。

 その後、祭りに参加した人々に配られたのは、シャルルが作った蜂蜜酒とフルーツのシロップで煮込んだ供物の団子。
 村の楽団員達が暇に任せて奏でる音楽をバックに、片手に団子の皿を持ったサースと、そんな彼女に腕を引かれたソルは、月がよく見える端の方の席へと座る。
 踊りはどうだったかと問えば、ソルは月明かりに映えて良かったと答える。その答えにサースは嬉しくなって、ふわりと笑った。
「そう言えば、伝承‥‥シーリーさんと恋に落ちて、怒らせちゃって、帰れなくなっちゃったんだよね」
 ふと思い立ち、サースは呟く。彼はきっと、攫われてしまったのだ。ここでは無い何処かへと。
「ソルさんだったらどうする‥‥? もし私に攫われて帰れなくなっちゃったら」
 この世界に帰ってこられなくなった、村人のように。
「くはっ、俺を攫うんですかぃ? そいつぁは難易度が高い」
 さも愉快そうに笑うソルに、サースは肩を竦め。
「前に私の事、ソルさん攫ったじゃない?」
 そう返すサースは、楽しそうに僅かに目元を細める。逆だったら、どうする? 続けるサースに、ソルは団子をまた一つ口に放り込んだ。
「なんせ俺は旅芸人、そも一処に止まらねぇ。ふわと消えて不意に現れる霊みたいなもんだ。それを攫おうてなら余程覚悟が必要でさぁ。離さねぇか‥‥離されねぇかの」
 そう返すソルに、サースはぱちぱちと目を瞬いた。
「離さないか‥‥離されないか‥‥?」
 首を傾げるサースに、ソルはふっと一つ息を吐き、そして微笑む。
「でもまぁ、そうさね‥‥オタクが舞ってりゃあ、俺は見たいと思うかもしれませんがね」
 それってつまり、攫われてくれるっていう事? それとも、攫いに来るっていう事?
 サースには、ソルが果たしてどういう意図でそう言ったのかはわからなかったけれど。
「逆に、もし私がソルさんに攫われたら‥‥着いていくかな。一緒に行くよ」
 そう返すサースに、虚を疲れたソルは目を丸くして数秒間サースを見つめた後、からからと楽しそうに笑い出した。

 こうして祭りは大盛況に終わり、村長から約束通り伝統の巻物を見せてもらう事ができた。そこに記されていたのは、相手の動きを矢で縫いとめる陽のカムイ魔法『スターライト』と、身体をミドルヘイムから隔絶させる月のカムイ魔法『ムーンシャドゥ』。この魔法を残したのは、シーリーか、旅人か。



 8

参加者

b.月に舞う、いいねぇ。情緒的な祭りも好きなもんでさぁ。開演といきやしょ。
ソル・ラティアス(da0018)
♂ 25歳 人間 パドマ 月
a.予定変更、お姉さんは踊りに専念するわね~。はい、ちょっとだけよ~☆
カモミール・セリーザ(da0676)
♀ 30歳 ライトエルフ パドマ 陽
a.…伝統の踊り…緊張するけれど頑張る…。
サース・エイソーア(da0923)
♀ 17歳 ライトエルフ カムイ 月
c.月の綺麗な夜でございますか。風情があって、ようございますね。
シャルル・シュルズベリ(da1825)
♂ 29歳 人間 カムイ 月
a.おどってたのしんでもらうのですわね! あたしもおてつだいしますわ!
ラファロ(da1940)
♀ ?歳 キティドラゴン ヴォルセルク 火
 俺は供物配るくらいならできそうかな!
ラヴィーニ(dz0041)
♂ ?歳 キティドラゴン パドマ 水


月の綺麗な夜のこと

月夜の祭りっていうのがあるんだって、楽しそうだよな! 新しい魔法のヒントもあるかも、だってさ!