オープニング
◆
先日とある地方の湖底に沈没船が見つかった。
発見者は沈没船を守ろうとするマーライオンを見て一目散に逃げてきたのだという。
彼曰く
「獣のようなものが泳いでいる、ってマジですよ。大型の肉食獣みたいな奴が器用に泳ぎ回っていたんすよ」
君たちはどんな魔物か考えたが直ぐには思い当たらなかった。
そこに食いついてきたのが地元で古文書集めが三度の飯より大事という貴族だ。
彼の名はドン・サウザンド三世! あちこちで古文書を集めていてたびたびハウンドとも行動している奇特な貴族だ。
「そいつはマーライオンに違いない!」
ドンはそう言いきった。
「古代にはメロウとコモンが仲良くしていた地域もあったようだからな、ワシもメロウと仲良くしてみたい。もしワシがマーライオンに乗っていけばメロウも仲間と思ってくれるやもしれん。マーライオンを無事捕まえられたら、ワシの秘蔵の古文書を見せてやろう」
という事で沈没船そっちのけでドンからの依頼はマーライオンの捕獲だった。
折しも君たちは新しい魔法を探しているところだったのでこの依頼に飛びついた。
すると更にドンはなるべく無傷で、なるべく沢山とらえて欲しいと言ってきた。
「捕まえた後直ぐに調教して騎乗したいからな、怪我を負わされると困るんだよ」
ドンは顎髭をしゃくりながらそう言って自分は宿に戻っていった。
捕獲用の網と生きたまま運ぶためのバカでかい水甕をドンが特注して用意してくれたものの……。
水中では戦えるものが限られるので水上におびき出すようにしなければならない。
地元の人が船を貸してくれることになった。その船でマーライオンが棲息している近くまで行けるだろう。
マーライオンは沈没船をなわばりとし、近づくと威嚇のために現れるらしい。
確認できたのは一匹だが発見者の情報通りとも限らない。
複数棲息していることも考慮に入れたい。
さてどうすべきか。
君たちは知恵を絞った。
選択肢
a.囮になる | b.捕らえる |
c.回復する | z.その他・未選択 |
マスターより
ご無沙汰しています。
皆さんお待たせしました、山猫 黎です。
今回お持ちいたしましたのはマーライオンの捕獲依頼です。
怪しい依頼者の無理難題に応えてください。
選択肢解説
囮になる:水上までおびき出すのがこの選択肢になります。
捕らえる:水上に出てきたマーライオンを無力化するのがこの選択肢です。ちなみに水中戦が可能な者以外は船の上で迎え撃つことになるのでペナルティを覚悟してください。
回復する:もちろんキャラもですが無傷になるようマーライオンも回復してくださいね。
※【SubEpisode07】新魔法を獲得せよ 関連シナリオ
シナリオの成功等により新魔法が実装されます。
登場キャラ
◆
ドンはご機嫌であった。
いよいよマーライオンが手に入ると思うと居てもたってもいられないほど興奮していた。
「では、ハウンドの皆さんくれぐれもマーちゃんに傷をつけないでおくれよ」
という余りありがたくない言葉を貰いつつ、皆で船に乗り込み水上約1時間ほどの地点に向かう。
そこが目撃者がマーライオンと遭遇した場所だという。
「うう、船は、船は揺れる~。うぷっ」
カモミール・セリーザは30分も経たない間にすっかり気持ち悪くなっていた。
「良かった。こうなると予想して空きっ腹で船に乗っておいて……」
そうでもないように見えるよ。折角の露出の高い水着も精彩を欠いているようだ。
「カモミールお姉さんは船酔い大丈夫?」
ショウ・ジョーカーはカモミールに気さくに話しかける。
カモミールは既にだいぶ辛そうで、小さく頷くのがやっとだった。
ショウはカモミールにジンジャーを口に含ませた。 漁師たちの間では船酔いに効くというものだ。
「しかしリザは慎重派だけど、ベルもエクスお兄さんも負傷は厭わない! ってタイプだもんなあ、そういうところ心配だよね」
カモミールにだけ聞こえるようにショウは小声でこぼす。
その後、ショウは応急手当の準備をしつつ捕獲に当たるメンバーに声をかけた。
「あんまり怪我しないよーにね。獲物にかけるキュアティブなくなっちゃう」
エクス・カイザーは身軽な水着姿で箒にまたがり、既に出発の準備をしていた。
「水中用装備は整えてあるが、まずは魔法の箒で挑発してみよう。捕獲は頼むぞ」
エクスはまず自分が囮になることを提案した。
「んー、囮を務めるにしても、いきなり水中に臨むのは自殺行為だな、最初は魔法の箒で水面をすれすれに飛び、マーライオンを挑発してみるか」
エクスはマーライオンが目撃された付近に到着すると箒でさっそうと飛び立つ。
「威嚇に現れるってことは攻撃的なタイプなのかねえ」
ショウはアヒルのデコイを試しに投げ込んでみた。
しかし、反応は無いようだ。そんなに簡単にはいかないようだ。
「なるべく無傷か。そういう縛りも戦いのスパイスだ」
水着に着替え海王槍を用意した
ベル・キシニアは捕獲対象が現れるのを楽しみにしていた。
「ただ、頑張っても少しはダメージが入るだろうからな。ショウ、回復は任せた」
(せっかくの戦いだ。我が美しさを見ていくといい)
ショウは指輪をはめた左手をパタパタと振って了解の意を示した。
「大丈夫だ。俺が絶対に死なせないよ」
恋人同士の2人の会話は、お互いに深く信頼している証だ。勿論この場合、2人とも心配しているのはマーライオンについてだった。
「僕は水中いけるよ! ウィールはできないけどね!(ばばーん!)」
屈託なく
リザ・アレクサンデルはそう言った。
ベドウィール・ブランウェンが何か言いたげに口を挟もうとすると
「もちろん、ウォーターランニングとローレライで水中戦闘は問題ないよ!」
リザが自信たっぷりに遮った。
「水辺はあまり得意ではないのですが……ミタマギリ通るでしょうかね……?」
不安そうにベドウィールはそう言うと、
「ウィール、ミタマギリちょうだい!」
リザはいつも通りのお願いをした。
ベドウィールは心配しつつリザのローレライにミタマギリを成就させた。
「回復はショウにお任せすればいいよね?」
リザの問いに、ショウは今度は右手をパタパタさせて了解した。
「何頭くらいいるのかなあ…少数だったら家族かもしれなくてちょっと気が咎めるけど」
と言うリザにベルが、
「死ななきゃ大丈夫だ」
「ちょっと……マーライオンは雑な扱いしないでよね!」
慌てたリザがベルに確認した。
「わかっている、わかっている」
ベルは軽くあしらう。
そうこうしている間に、エクスが飛び回っているところでマーライオンが食いついたようだ。
エクスは飛び掛かってこられないか警戒していたが、ことのほかマーライオンも警戒心が強いらしい。
水上には安易に飛び出してこなかった。水面にマーライオンであることが分かる大きな影が2つ。
しばらく様子を見ても影の数は変わらないようだ。
「目標は2体だ!」
エクスは船に聞こえるよう大声を張り上げた。声と共にエクスもマーライオンから少し距離をとり、水中に飛び込んだ。
「さて、狩りの時間だ」
ベルは余裕の笑みを浮かべてオフシフトを成就させてから、湖の中に飛び込んだ。
リザは慌ててウォーターランニングとローレライを成就させる。
そしてリザもすこし遅れて湖の中に飛び込んだ。
ベルは水中適正を得つつスタンアタックを成就させた。
水中では待ち構えていたマーライオンのほうが先手を取る形となった。
獰猛そうな二匹の獅子魚が襲い掛かる。ベルは鋭い爪を余裕で交わした。
しかしエクスはそうはいかなかった。マーライオンの爪が確実に深く脇腹をえぐった。
「……!?……」
エクスは声にならない声を上げる。
しかし勇者たらんとする彼の心はそんなことでは折れない!
かろうじて踏みとどまりトライデントを繰り出してマーライオンにダメージを与える。
「誰か負傷した! 怪我の度合いは?」
ショウが船から湖に浮かんだ血を見て大声を上げる。
しかし、キュアティブは射程外なのですぐには治せない。
「おう、痛てて、全然、大丈夫だっ!」
エクスはそう答えたものの傷は思ったより深い。
「ここはリザ達に手柄を譲る所だな」
ひとりそう呟き水面に出てエクスは残念そうに呟いた。
エクスが負傷したのを見て、リザは勝負を決めにいくことにした。
首輪[ザフィーア]で気絶を狙うのだ。
「いくよ、僕のローレライ!!」
リザはローレライを派手に垂直に振り下ろす。しかし、当たり所は良くなかったようだ。
気絶に持ち込むには打ち込みが浅かった。
にも変わらずリザは笑みを浮かべる。
「目の前だけ見ていても勝てないよっ!!」
そう、リザ達はマーライオンを水上へと誘導しつつ、戦場をコントロールしていたのだ。
「カモミールさん、行ったよ!」
リザは船上のカモミールに声をかける。
「エクスくんの『尊い犠牲のもと』に誘き出されたのね、ならば」
リザの声掛けでカモミールもタイミングを合わせる。
「私のマジカルショックでボコってあげるわ~! ふっとべ~!!」
カモミールはマジカルショックを成就させた。
水上に飛び出したマーライオンはまさに馬に轢かれたように水上で吹っ飛ばされた。
更にショウがグリーヴァボウでサンダーアローを射掛ける。
ベドウィールはダーツを用意していたが、投げる間がなかった。
マーライオンは確実に気絶し、水面にぷかあと浮いた。
一方ベルはもう一体のマーライオンの攻撃を、ひらりひらりとかわしながら打ち込む機会をうかがっていた。
もちろんスタンアタックを成就させて峰打ちを狙いすましている。
しかしながらお互いに有効打を与えられずにいた。
そこに、水上で吹き飛ばされたマーライオンの悲鳴が、遠く水中にまで響き渡る。
ベルと対峙していたマーライオンは、それを聞いて猛り狂った。
ベルに向かって突撃をかけるが、寸でのところでベルは躱してしまう。
「何だ? 相方がやられたのが気に障ったか?」
ベルは微笑み、猛然と振るわれる攻撃を全て躱しきった。
しかしベルの方もなかなか海王槍を打ち込む余裕がない。
船上ではらはらと様子を見ていたベドウィールは、カモミールが1体を吹き飛ばした途端にもう1体が俄然暴れ始めたのを見て、
「兄弟か、番いか……この2匹は家族みたいなものなのかもしれませんね」
とひとり呟いた。
水中戦は続く。
「ええい、まどろっこしい!」
ベルは海王槍での峰打ちを諦め、隙を突いてマーライオンに組み付いた。
マーライオンに激しく抵抗されるが、簡単に振りほどかれるほどベルは弱くは無かった。
一瞬のスキをついて持っていた伝勁拳インパクタスを力任せに叩き込む!
「お前の相手は、私だ!」
目を白くしたマーライオンは大きな悲鳴を上げ、そして沈黙した。
「ふう、いい戦いだった」
意識を喪い、浮いてゆくマーライオン。ベルは今回も勝利したことを皆にアピールした。
一方ショウはエクスの回復が最優先だった。エクスはいいダメージを貰ったがキュアティブの成就ですっかり元気だ。
ショウが怪我という怪我を治し終わったところで一行は思いもよらない事態に遭遇した。
……マーライオンは思いのほか重かったのだ。気絶した人は持ち上げるのにより重く感じるというがマーライオンも然り。
網を使っても引き上げるには船乗りも含め全員でやっとだった。
「もう私はマーライオンを引き上げる作業は二度と御免です」
ベドウィールはリザにそうこぼした。
流石にリザもその意見には同意した。
カモミールは体力が限界だった。ただでさえ船揺れでふらふらしていたのだ、マーライオンを引き上げる時には更に大揺れに揺れたので……合掌。
マーライオンは大きな水甕に入れられ、水を更に満たされると、意外とおとなしかった。
そして皆は船が港につくまで疲れ果てて休んでいた。
◆
「いや~、皆凄いね、見事だね~!!」
港につくなりドンは大水甕に入ったマーライオン2頭を見て歓喜の声を上げる。
「約束通り傷つけず捕獲できたようだね~、これでメロウに会える準備がまた一つ揃ったわけだ」
ドンはひとり満足な笑みを浮かべる。
「ホレ、褒美の古文書だ、何か良いことが書いてあればいいのだがな」
……疲れ切った君たちは、体に鞭打ち、寝る間も惜しんで読解に力を注いだ。
この魔法はカムイ魔法の風属性『パンタレイ』というものだ。
「お、やったね! でどんな効果があるんだ?」
ショウが小躍りする。
「なになに、魔法を模倣する魔法みたいね、面白そうな魔法ね」
カモミールがそう解説した。
君たちは新たな魔法を発見したのだった。
但し、貴重な古文書は「見せるだけ」とのことなので、この後返却するために、徹夜で羊皮紙に必死で書き起こすのであった。
書き写しが全て終わったころ、部屋には疲労困憊した全員が、死屍累々と倒れていた。
8
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参加者
| | c.あんまり怪我しないよーにね。獲物にかけるキュアティブなくなっちゃう。
| | ショウ・ジョーカー(da0595) ♂ 20歳 人間 カムイ 月 | | |
| | b.船酔いしそうだけど、マジカルショックでボコるわね~
| | カモミール・セリーザ(da0676) ♀ 31歳 ライトエルフ パドマ 陽 | | |
| | b.僕は水中いけるよ!ウィールはできないけどね!(ばばーん!)
| | リザ・アレクサンデル(da0911) ♂ 23歳 人間 ヴォルセルク 水 | | |
| | z.水辺はあまり得意ではないのですが…ミタマギリ通るでしょうかね…?
| | ベドウィール・ブランウェン(da1124) ♂ 27歳 人間 ヴォルセルク 月 | | |
| | b.水中戦用の装備は揃えた。まぁ、任せろ
| | ベル・キシニア(da1364) ♀ 28歳 人間 ヴォルセルク 風 | | |
| | a.水中用装備は整えたが、まずは魔法の箒で挑発してみよう。捕獲は頼むぞ。
| | エクス・カイザー(da1679) ♂ 30歳 人間 ヴォルセルク 火 | | |
ふむふむ、新魔法か……。
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ワシの名前はドン・サウザンド三世、こう見えても貴族じゃ。ワシにはもう一つの顔がある。古文書蒐集家じゃ。ワシの願いを叶えてくれたらこの古文書を見せてやっても良いぞい。
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