【SE07】奔れ!

担当野間崎 天
出発2020/11/05
種類ショート 冒険(他)
結果成功
MVPソーニャ・シュヴァルツ(da0210)
準MVPフルミーネ・ヴェンティ(da1894)
ベル・キシニア(da1364)

オープニング

◆新魔法強化月間
 ギルド長のマクール(dz0002)の号令により、新魔法を獲得すべく動き出したハウンド達。
 今日は、とあるハウンドが集めてきた噂を頼りに、グレコニアの東部の平原まで来ていた。
 そこに、ハウンド達の知らない魔法のような技を使う者がいると聞いたのだ。
 新魔法など、そう簡単に見つかるとも思えない。だが、藁にもすがる想いでやってきたハウンド達へ、噂の人物は、答えた。
「魔法のような技か……知らぬ者が見ればそう見えるか」

登場キャラ

リプレイ


「うーん……すれ違い様にでも飛びかかってみるか!」
 ソルム・タタルは力強く狙いを口にする。が、今回は、不整地走ならともかく、平原での高速移動に向いた能力や装備の準備がなく、この争いにはついてこれないだろう。
「ではわたくしが、一っ飛びして早急に捕まえてしまいましょう――フライ」
 代わりに、フルミーネ・ヴェンティが早速、高速で飛行できる魔法を成就すると、一番に飛び出していった。巡行200㎞/hは、今回のメンバーの中では最速だ。
 これほどの差があっても、まさにひとっ飛びで追いつけるだろう。
「セントールと追いかけっことはね」
 マリカ・ピエリーニは傍らにいたヘラジカの首を優しくなでる。
「ふふ、面白いじゃない。私とキング君のコンビネーション見せてあげるわ」
 黒く逞しい体躯のキング君は特徴的な巨大な角を持つ頭を下げて、主人へ背中に乗るように促す。ダークエルフ王の騎乗動物とされるヘラジカだが、今はマリカの実力を認めて背に載せている。
 そして、騎乗動物に乗って追いかけるつもりなのは、こちらも。
「私達の信念に誓って、地の果てを越えようとも追い求めるまでよ」
 アザリー・アリアンロッドはライドマスターEXを自身に付与し、駿馬にまたがる。
 青毛でカールしたタテガミ、黒光りする体躯が美しい馬は、大人しい性格でも、戦闘馬に匹敵する丈夫さと優れた速歩が両立するとの評判だ。
 もう一頭、馬がエントリー。
「新魔法に興味はあるが、ただ、純粋に、人馬と共に走る経験を味わいたい」
 アイオライト・クルーエルが、愛馬にまたがり、首筋をなでる。茶色の体毛に黒いタテガミの戦闘馬は、がっちりと筋肉質な体躯をしていて、頼もしい。速度は若干、走りに特化した種よりは劣るも、ぎりぎりのせめぎ合いになったときには力を発揮してくれるだろう。
(久方、遠駆けなどもする機会がなかった。存分に、楽しませて貰おう)
 広大な草原は、愛馬と風になるには十分なロケーションだ。
 他の馬より一回り小さい子馬……のような聖獣、ベビィケルピーに乗るアンルシア・オールブライト
「僕も馬に乗って追いかけます……」
 水辺でないので、能力を活かしきれないが、平地も走ることはできる。
 優秀な4頭がそろったが、彼らの実力を持ってしてもセントールを捕まえるのは、苦労するだろう。
 単独であれば。
「連携した方が良いわね」
「よろしくね」
「わかった」
「……なんとか皆さんの方に追うことができれば……」
 相手が先行しているのだ。こちらは数の利を活かさなければ、追い詰めるのは難儀するだろう。

「手加減か……手加減など不要。全力でやるのみだ」
「ヒトの脚力の限界、舐めて貰っては困るな」
 こちらは、先行したフルミーネ同様、自らの力で移動する者達。ベル・キシニアと人間の姿をしたソーニャ・シュヴァルツがともに気合を入れていた。
 ソーニャは中型のカーシーの為、犬耳と尻尾以外は、サイズ感もまんまヒューマンの姿だ。
「死ぬ気で逃げろ、死ぬ気で捕まえてやる」
「ああ。逃がさんぞ」
 ソーニャとベルはそう言うと、ソーニャは素手にルミナパワーを付与し、ベルはスカイランニングを成就した。
 早速空へ駆けあがって追いかけ始めるベル。一方、ソーニャが次いで成就した魔法に、周囲はギョッとした。
 ルミナショットを自らにぶち込んだのだ。
「な、なにしてるんだ!?」
「気合い入れだ」
 ソルムが慌てて尋ねると、KIAIの入った声が返ってきた。「死ぬ気で捕まえてやる」という言葉は、文字通りであり、比喩でも何でも無いらしい。
「楽しい狩りごっこの時間だ」
 ソーニャが、にやりと笑って駆け出した。


(こうもだだっ広いと、空から追う利点が少ないな)
 スカイランニングで空を行くベル。
 普段は、地形に関係なくまっすぐ行きたい方向へ進めるメリットがある空中歩行であったが、走るのを阻害する要因が地上にないと、ただのスピード勝負であることに変わりはなかった。
 そして、フライほどのスピードのないスカイランニングでは、セントールや馬達の方が速かった。
(追い込む以前にこのままでは追いつかないな……隠れる場所もないが、相手が見ていないうちにあっちを試すか)
 一方の地上では。
「駆けろキング君! 疾風のごとく!」
 マリカの掛け声にこたえるように、しなやかな脚の回転数が上がる。グレコニアの平原の風を切って、巨大なヘラジカは獲物を追って走る。
 アイオライトも集中して走っていた。馬と一体となり、風に溶けるような一瞬。
(それが心地よいと感じたのは、いつぶりだろう)
 走ることは生きる事か。深い事を考えながら、心地よく走る。
 アザリーもフリージアンを駆って、風を強く受けていた。
(確かに深く感じるわ。彼よりも……いいえ、誰よりも迅く駆けたくなる……この衝動に身を任せてみようかしら)
 マイズの影が少しずつ大きく見えるようになってきた。その実感と共に感じる、ランナーズハイにも似た感覚。
 視界の端に映る仲間達。
 フルミーネはもうマイズに追いついていたが、すぐには襲い掛からずに近くを飛び、スタミナを奪いながら襲撃の機会を計っているようだ。
 このままいけば他の仲間達とでマイズをハサミうちにできるかもしれないが、まだまだ相手が逃れる隙間はありそうだ。
 4頭でもマイズを封鎖するには、まだ至らない。
 ならばと、アザリーがフリージアンに指示を出し、自らは鞍上から飛び降りた。
 地面に衝突する前に箒に乗ると、散開。追手の手数と速度を足した。
 グリフォンの羽毛が封入された魔法の箒は、速度、旋回、共に高性能だ。

 一人がしつこく付きまとい、他の5組の面子で追い込むように動くことで、だんだんとマイズへと近づいていくことができていた。
 マイズも何度も進行方向を変え、捕まらないように走行ラインを細かく変えていたが、とうとうハウンドたちの網の目にかかり、アザリーとアイオライトとマリカがほぼ同時にマイズに最接近できた。
 マリカがキング君でマイズの進路を塞ぐように前に出て、アザリーとフルミーネがマイズの頭上からネットや投げ縄を連続で投じる。
 マイズはネットを紙一重で回避。けれども、魔狼フェンリルすら捕縛できるとされる魔法の投げ縄が、マイズになんとか届き、上体に絡みつく。
 その間に、キング君とマイズも衝突寸前でよけて、ニアミスして通りすぎた。
 ロープを手繰ってフルミーネが触れる位置まで詰め寄る。あとはしっかりと捕まえるだけであったが、フルミーネはミスリル製のナイフを取り出し、マイズの首元に当てに行く。
(この手の追いかけっこは相手の心を折るのが一番手っ取り早いですわ)
 だが、密着したなら後はとびかかって捕まえた方がよっぽど手っ取り早かっただろう。なんなら、ロープで拘束した時点で「勝負あり、捕まえましたわ」とでも勝利宣言してしまえば、「それもそうだな」とマイズも納得していたかもしれない。
 しかし、そうしなかったフルミーネへ、ナイフを突きつけられようとも心が折れなかったマイズは拳を振るう。
「ようやく打ち込める間合いに入ったな――」
 気合の入った拳が、フルミーネの腹部を捉えた。見た目通りの重量級のパンチ。だが、それ以上に感じる体を深く抉る……しびれされる衝撃が走った。
 手にも力が入らず、ロープが滑り落ちた。
 拘束から逃れたマイズが今のうちにと駆け出した、その瞬間。マイズは背中に気配を感じて振り返る――
(さて、ルールは「捕まえること」だったな)
 アイオライトがホルスでマイズの背を狙ったのだ。マイズの馬体の背にアイオライトの手がかかる。だが、マイズが最後の抵抗で体を揺らすと、手が体毛を滑ってつかみきれない。
 狙いは良かったが、最後の詰めが甘く、運が味方しなかったのだ。
 それでも、マイズの速度や態勢を崩した事は大きく、アザリーが銀製のノルンズダガーを抜き放ち、突きつけるだけの隙を生みだしていた。
「追いついたわよ。今度こそ降伏し――!?」
 マイズはそれでも全力で前に突き進み、突きつけられた刃を掻い潜ってアザリーの腹部へ拳を打ち込んだ。
「――インパクト!」
 加速による勢いが乗った拳は、それだけでも凄まじい威力であった。更に、フルミーネも感じた衝撃に耐えきれず、態勢を崩してしまったアザリーは墜落し、マイズは一気に逃げ出す。
「言ったはずだ。飛んでると手加減できかねる。とな」
「くっ……これが、これからハウンドの力になるであろう技の、掛け値なしの全力なのですわね」
 衝撃から立ち直りかけたフルミーネが、落とされたアザリーと逃げ去るマイズを眺めてごちる。
 アザリーの傍には心配したようにフリージアンが駆け寄り、頬をなめた。
「大丈夫よ。追いかけてちょうだい」
 アザリーの声に、マリカはキング君の手綱を操ってマイズの方へ向ける。


 逃げるマイズに向かって、一羽の鷹が近づいていた。
 すると、気付いたマイズが見上げて迎撃の構えを取った。
「お前たちが変わった動物を使うのはわかっている」
 ただの馬だけでなく、ヘラジカや聖獣にも乗って駆ける姿を見ているマイズは、鷹にも油断はしなかった。
 だが、その鷹が、ベルに化ける。もとい、元の姿に戻るとは思ってもみなかった。
 一瞬思考が追い付かずに呆けたマイズに向かって、ベルは自由落下に任せて迫る。
「ボディアタックだ」
 はっと我に返ったマイズがとっさにステップを踏み、ベルの奇襲を避けた。
 ベルは激しく地面にたたきつけられる寸前にスカイランニングの浮遊にて、空中で曲がり、衝突を免れる。
 マイズには逃げられたが、逃げた方向からして、これで詰みだろう。
「今だ、――カルラ!」
 気合を入れて切り札を成就すると、加速した動きでマイズを追い立てた。

 そうして、ハウンドたちが追い詰めた所にいたのは、ソーニャだった。
 ソーニャは、マイズの姿を認めると、再び自らにルミナショットを撃ち込んだ。
 その自傷行為に、マイズは一度心配になり、どうしてそそんな事をするのかわからず困惑し、そして次の瞬間に炎の幻影と共にあふれ出た闘志に、心が震わされた。
 自らのルミナショットで瀕死となった彼は、火ヴォルセルクの切り札、スサノオーを成就。
 全力疾走時にはフライすら越えるスピードを得たのであった。
「さあ、極限状態の死闘を始めようじゃないか」
「面白い! 来い!」
 極限のスピードは、効果時間のわずか1分間だけだが、仲間達が追い立ててくれたこの位置からなら、捕らえるには十分だ。
 ソーニャのスピードはマイズを遙かに超えていた。マイズは地を走る者には使うつもりのなかった戦技の構えを取る。
 ソーニャの気迫に答えるべく放たれた、風を切る右のストレート!
 だが、今のソーニャにとってそのくらいでは遅すぎる。
 完全に見切って躱すと、大きな胴体の懐に入り込み、飛び乗ると、上半身を極めた。
 すぐにマイズが腕をタップして、降参の意を示すと、ソーニャも腕を緩めた。

 こうして、ハウンドとセントールとの死闘もといおいかけっこは、ハウンドの勝利で決着がついた。


「おまえ達の力、十分に見せてもらった。約束通りに、教えよう」
 マイズが力強く頷く。
 瀕死の上にスサオノーの反動で動けなかったソーニャは自分の回復薬で、カルラの反動で瀕死となったベルはアザリーから回復薬を分けてもらって持ち直していた。
「先ほどの……おまえ達風に言えば『狩りごっこ』で、受けた者もいるが、この技『ディープインパクト』は、通常の威力に加えて、強烈な衝撃を与える戦技だ」
 受けたフルミーネとアザリーは思い出す。実際のダメージの他に感じた、強烈な衝撃に体が動かなくなった事を。
「狩りごっこの前にも言ったが、己の内から湧き起こる衝動を解き放つのが肝心。使える素養がある者もいるように見受けられるし、コツを伝授するのにそんなに時間はいらぬだろう」
「ありがとう。必ずこの恩義に報いることを約束するわ」
 アザリーが礼を述べると、マイズは深くうなずいた。
 その後、ハウンド達はマイズの元でもっと細かい技術的な事を聞き、練習をして、草原で一泊して、もう一度草原を思い切り走ってから、オーディアへの帰路についた。
 しっかり技術を学び、コツを掴んできたハウンド達の話を聞いたギルドの研究者達が、他のハウンド達――火属性と水属性の者――にも広く使えるような戦技魔法に昇華するまで、さほど時間は掛からないだろう。

 ――ディープインパクト、GET!



 11

参加者

a.さて…ひとっ走りするか。
ソーニャ・シュヴァルツ(da0210)
♀ 21歳 カーシー(中型) ヴォルセルク 火
a.駿馬に乗って追いかけるわね
アザリー・アリアンロッド(da0594)
♀ 26歳 人間 ヴォルセルク 月
a.駆けろキング君! 疾風のごとく!
マリカ・ピエリーニ(da1228)
♀ 25歳 人間 ヴォルセルク 火
b.さて、獲物を追い込み、一瞬の隙をつく……、狩りの時間だ。
ベル・キシニア(da1364)
♀ 25歳 人間 ヴォルセルク 風
c.人馬一体の妙、か。俺にはまだまだ、知らないことが沢山ありそうだ。
アイオライト・クルーエル(da1727)
♂ 25歳 人間 ヴォルセルク 陽
b.そうですよね、では一っ飛びして早急に捕まえてしまいましょう。
フルミーネ・ヴェンティ(da1894)
♀ 27歳 ライトエルフ パドマ 風
c.うーん……すれ違い様にでも飛びかかってみるか!
ソルム・タタル(da1979)
♂ 24歳 ダークエルフ ヴォルセルク 地
a.僕も馬に乗って追いかけます……なんとか皆さんの方に追うことができれば…
アンルシア・オールブライト(da2037)
♂ 16歳 パラ カムイ 陽


セントールと追いかけっこ!

魔法のような業を使う者がいるという噂を頼りにグレコニアの東に向かったハウンド達。噂の主のセントールが新業を教える条件として出したのは、逃げる自分を捕まえる事!新業との関係性は謎だが、とにかく捕まえろ!