猫屋敷の冒険

担当ぽんぽこ
出発2020/09/10
種類ショート 冒険(討伐)
結果成功
MVPソレイユ・ソルディアス(da0740)
準MVPオズ・ウェンズデイ(da1769)
シェール・エクレール(da1900)

オープニング


 ──少女の名前はアリス・ヴィンランドと言った。
 ウーディアでも有数の大都市であるパナフェル。
 その大通りの一つにベーカリーの看板を上げる、ヴィンランド夫妻の一人娘である。
 そんな彼女とハウンドが出会ったのも、やはりパナフェルの大通りの上であった。


登場キャラ

リプレイ


「──アリス様、先ずはご安心を。必ず見つけて戻りますゆえ」
 愛猫の安否を思い、表情を暗くさせるアリス。
 そんな少女の前で膝を折ると、シャルル・シュルズベリはやさしく微笑んでみせた。
「……うん」
 その微笑に安堵した様子で。
 アリスもまたほのかな笑みを浮かべると、こっくりと頷きを返す。
「──さて、まずは……」
 シャルルが最初に注視したのは、その床面であった。
 長らくこの大玄関が人の手で開かれた事は無かったのだろう。
 降り積もった厚い埃の上。
 そこには確かに、猫の足跡が幾つも残っていた。
「さすが猫屋敷……足跡がずいぶんとあるな。いや、これは──」
 シャルルの傍らへとやって来たアイオライト・クルーエルも、友人と同じくそんな痕跡を眺めていたが──そこに違和感を覚えたのか、怪訝な色を表情に浮かべた。
「お気づきですか?……そう、猫の足跡『しか』無いのです」
 アイオライトの違和感の正体──それを答えたシャルルは、床面を見つめたまま自身の顎先にその白い指を添えた。
「……おかしいな。俺も誰かが喋る声を聞いたんだけど」
 優れた知覚の持ち主であるソレイユ・ソルディアスは、確かにあの時、扉の向こうで交わされていた会話を耳にしていた。
「私も聞きました。であれば、そのモノ達の足跡が埃に残っていて然るべきですが……」
 場を荒さぬ様に玄関口から廃屋の中を覗きつつ、シェール・エクレールもソレイユの言葉に頷いて同意を示す。
 皆が口にする、それらの事実を鑑みて。
 わずかに黙考した後──オズ・ウェンズデイは口を開いた。
「物事はシンプルに考えるべきであるな。会話していたモノは浮遊の様に足に頼らぬ移動手段を持つ存在か、もしくは実体無き存在か、あるいは──」
 そこで口をオズは噤むと、面々の顔を見回す。
 まだ結論を出すには情報が足りなかった。
 推測は必要だが、先入観は時に目を曇らせかねない。
 ただの猫探し──そう思っていたところ、予想外の様相を見せ始める事態に顔を見合わせる人間とエルフ達。

 一方、そんな面々を「ほえー」と口を開けて見つめる者達がいた──あまりシリアスの似合わなさそうなシフール達だ。
「なんで皆、むずかしそうな顔してるのー?」
 心底からの感想を口にしながら、チャウはかくりんと首を傾げていた。
「よく分かりませんけどぉ……なんだか猫ちゃんに悪い事が起きそうな気がして見過ごせませんわぁ!──リリちゃん一緒に頑張りましょうねぇ」
 おっとりとした調子ながらも奮起するローリィは、しかし、どこか楽し気な様子で傍らのシフールへと笑顔を向ける。
 反面、笑顔を向けられたシフールことリリィは浮かぬ表情である。
「うー、なんでリリィがこんなとこにこなくちゃいけないのよぉ。それになんでロリちゃんそんなにたのしそうなのよぉ!」
「リリちゃんの勇姿を楽し──いえ、この目に焼き付けられるからですわぁ♪」
「本音が漏れてるよ!」

 ──そんな様子で、それぞれに全く違う温度差を醸し出すハウンド達。

「……へんなの」
 それを見つめていたアリスは、目をまん丸くするのだった。


 外を探索するのは、アイオライト、ローリィ、リリィの三人である。
 廃屋同様に長らく放っておかれた庭は荒れ放題。
 大人の膝の辺りまで伸びた草葉がこれでもかと生い茂っていた。
「──小さなレディを安心させてやらねばな。騎士の名折れだよ」
 一階の探索は友人に任せ。
 アイオライトはそんな決意を口にしながら、シフール達と共に草むらの中へと足を踏み入れる。
 茂みの中に隠れているのでは──そう思いもしたが、しかし、一向に猫の姿は見つけられない。
 そうして探し回った結果、ついに三人は物置き小屋を探索する事となった。
 アイオライトがルミナリィ、リリィがホーリーライトをそれぞれ成就させる。
「猫ちゃんは狭い所が好きだと聞きましたわぁ」
 中へと入ったローリィはその体躯の小ささで、アイオライトでは見辛い物陰や棚の高い所を重点的に探していく。
「さっさとみつけてさっさとかえるわよ!」
「あらぁ、怖いんですかぁ?」
「こ、こここ、こわいことなんてあるわけないじゃないっ!」
 からかう様なローリィの言葉に声だけは威勢良く返しながら、しかしガッシリと彼女の腕を掴んでついていくリリィ。
「ローリィさん、リリィさん。実はここにマタタビがある。これで出てきてくれるといいんだが……」
 そんな二人のやり取りに微笑みながら、アイオライトは二人へと取り出したポプリを手渡した。
 これが功を奏したのか、ややあって、物置きの隅にある木箱の中から顔を見せた数匹の猫達をローリィ達は発見した。
 しかし──。
「どれも、しろいねこじゃないわね……」
 その毛色を見て、小さく溜め息のリリィ。
「それに……なんだか、すっかりおびえて。──黒い猫ちゃん?それが怖いんですの?」
 ローリィが心配するように猫達の頭を撫でる。
 猫達は何やらローリィに訴える様に鳴いていたが、彼女にはその中の単語を聞き取る事しかできなかった。
「黒猫か。玄関で見たのもそう言えば──……うん?」
 ──微かな物音。
 振り返ったアイオライトは、入り口の陰から黒猫が顔を覗かせていた事に気づく。
 しかし彼の視線を嫌う様に、その黒猫はフイッとどこかへ行ってしまった。
「黒猫……この符丁は偶然か?──いや……俺達を窺っていた?」
 黒猫の鋭い視線。
 それを思い返すと、そんな漠然とした疑念がアイオライトの胸中を過るのだった。


「アルヴィナー、どこー?」
 ランタンを手に、びゅんと二階に飛んでいくチャウ。
 廃屋の内部は光も射しこまず真っ暗なのだが、そこに躊躇は無い。
 扉を開け放っては、棚の上や隙間を覗いていく。
「──ったく、チャウは怖いもの知らずだな!」
 その後を追ってソレイユとシェールが二階へやって来る。
 すでに扉のほとんどがチャウの犠牲となっていた。
「ともかく、私達も調べていきましょう」
「そうだな。俺達だから気づくことだってあるだろう」
 シェールに頷くと、ソレイユはルミナリィを成就させた。
 そして、二人はそれぞれの方法で猫探しを開始する。
「トラちゃんだったら、どこに隠れますか?」
 シェールは自身の有する技能を最大限に駆使して探索を行いながら、連れていた猫──トラちゃんへと声をかける。
 餅は餅屋なら、猫には猫だ。
 シェールの言葉を理解したかは分からないが、トラちゃんは「にゃあ」と一鳴きしてウロウロし始める。
「──アルヴィナは何でこの屋敷に……?元々ここを根城にしていたか、それとも何か目的があったのか」
 探索においてソレイユの技量は卓越していた。
 そんな彼の観察眼は、床面に残った猫達の足跡の中に妙なものがある事に気づく。
「なにかあったのー?」
 すっかり飽きたのだろう。おやつの干し肉をもぐもぐしながら、チャウがソレイユの傍らへとやって来る。
「この足跡の猫……コイツだけ他の猫の足跡に重ねる様にして、自分のそれを誤魔化そうとしている」
「追跡を逃れる為に、偽装しているという事ですか?」
 シェールの問いに、ソレイユははっきりと頷く。
 アルヴィナは賢い猫だったと言う、アリスの言葉が思い起こされた。
 その足跡は床面を進み、棚の上へと飛び移り──そして、途切れていた。
「天井裏か……」
 ソレイユは天井板が外れている事を見抜き、それをずらす。
 その隙間から天井裏へと顔を出す三人。
 暗闇の奥。
 チャウのランタンの灯りに──悠然と座ってこちらを見つめる傷ついた白猫が照らし出される。
「トラちゃん、伝心で──」
「……ソレニハオヨバナイ」
 すぐにトラちゃんの能力で意思疎通を図ろうとするシェールだったが、それを白猫の発した言葉が遮る。
 猫が喋った──その奇妙な事態に、三人はそれぞれの驚いた顔を見合わせるのだった。


「まるで言葉がわかるような賢い猫……もしかしたら本当に、コモンの言葉を理解していた……?」
 ランタンの灯りを頼りに、シャルルは一階を探索していた。
「未知の魔物か、はたまた聖霊か──」
 時折、燭台に燃え残った蝋燭を見つけては灯りを灯していく。
 闇の中で、その炎はいかにも儚げに揺らいでいた。
「……ふふ。こんな事を考えるのは、この屋敷の雰囲気にあてられてしまったせいでしょうか。なかなかの風情でございますゆえ──……さて」
 その灯りによって影の差した調度品の合間を探索していたシャルルは──ふと、考える様にしてその顎先へ指を添えた。
「猫屋敷と言うわりには……猫の姿を見ませんね」
 いない、というわけではない。
 シャルルの知覚は猫達の密やかながらも緊張した息づかいを感じとっていた──そして、その中に紛れている異質な『殺気』も。
「……これはアリス様の所へ戻った方が良さそうです」
 自身の直感に、シャルルは踵を返すと玄関へ戻る道を急いだ。

 一方、その玄関では。
 詠唱を終えたオズが、アルケミーを成就させる。
「それ、なーに?」
 一緒に玄関でお留守番のアリスが、出来上がったモノを見つめて首を傾げる。
「探すのは骨が折れそうなのでな。これで誘き寄せられればよいのだが」
 マタタビのポプリと朽ちた香木によって錬金された、オズお手製の即席ネコちゃんホイホイが、直ちにその香りを屋敷一帯へと広げていく。
 やがて──。
 二階の廊下から手摺りを飛び越えて、一匹の黒猫が音もなく玄関ホールへと降り立った。
「とりあえず、成功であるな」
 猫が現れた事に笑みを浮かべるオズ。しかし、その表情がすぐに怪訝なものに変わる。
 黒猫の姿が青白く光っていた。
 ──それが事前に成就していたエネミーグラスの効果であると思い至り、咄嗟にアリスを庇う為に自身の後ろへと下がらせる。
 その刹那──。
「後ろだ!オズ!」
 奔る鋭い声。鋼の擦れる音。
 肩越しに振り返ったオズは、大きな黒い獣の爪を剣で受け止めるアイオライトの姿を認めた。
 今まさに飛び掛かって来たところか。
 黒い獣の体を押し返し、アイオライトはオズ達を守る様に立ちはだかる。
「──リリィちゃん、危ないから隠れていてもいいんですよ?」
「じょうだん!リリィがロリちゃんをみすてるわけないでしょ!」
 ローリィとリリィの二人も頷き合いながら、武器を手にアリスへ寄り添う。
 そこへシャルルと、ソレイユ達が合流する。
 その足元には、凛々しく立つ白猫の姿もあった。
「アルヴィナ!」
 愛猫の姿に、思わずアリスが明るい声を上げる。
「みんなー!そいつらはデュルガーだよー!」
「オノレ……シムル!コモンヲツカウカ!」
 場違いにのん気なチャウの大声に、ホールにいる黒猫が悔し気に歯噛みをして──瞬時にその姿を変じる。
 蝙蝠の翼が生えた大きな黒豹の如き魔獣。
 それが黒猫の正体だったのである。
「……猫達を見ないのは、これが理由でしたか」
 玄関で聞いた声の正体もこの魔獣達だったのだろう。
 リボンを手に魔獣と相対するシャルル。
「──来るぞ!」
 階下へと駆け下りたソレイユは、盾をかざして剣を構えた。


 魔獣達の動きは速く、その爪は鋭い。
 最前線に立つアイオライトとソレイユはその威力にさらされ、一方でハウンド達の攻撃の多くが空を切った。
 しかし、その攻防の中で着々と準備を整えるハウンド達。
 マルチパーリングを成就させたソレイユは攻撃を盾でかわし、ネットを魔獣の一体へと投げつけた。
 ネットに絡まれ魔獣の動きが大きく鈍ると、そこへハウンド達の攻撃が集中する。
 魔獣達は瞬発力に優れるも、持久戦では圧倒的にハウンドに分があった。
 やがて一体が地に倒れ伏し、残りの一体も満身創痍。
「これで終わりです!」
 オーバーロードを使用して放たれたシェールの矢が、やすやすと敵の首筋を貫くと──重たい音を立てて、魔獣は地に崩れ。

 その体は、音もなく霧散していった──。


「ほう!アルヴィナは『シムル』と言う聖獣だったというわけであるな?」
 アリスとアルヴィナを家へと送り届けた帰り道。
 すっかりと夜の色に染まった大通りを歩きながら、オズは聞かされた事実に感嘆の声を上げた。
「そういうこと。アルヴィナはあの魔獣達を追ってこの街にやって来た……」
 そして、ついにその所在をあの猫屋敷と突きとめ戦いを挑んだが──それは敵の罠だったのである。敵が単独だと思っていたアルヴィナは、巧妙に存在を隠していた残りの二体を含めた奇襲を受けたのだ。
 多勢に無勢。
 三体いた内の一体は倒したもののアルヴィナも傷付き、あの天井裏に身を隠していたところ、アリスに連れられたハウンド達がやって来たという次第らしい。
「──アルヴィナは聖獣だって事をアリスにもみんなにも秘密にして、この街に残るんだって」
 アリスの実家からもらった大きなパンを齧っていたチャウが、思い出した様に声を上げる。
「……霧散したデュルガーの件もあるからな」
 アイオライトは呟きながら、宵闇の空を見上げた。
 そう、今回の戦いでデュルガーを完全に滅したわけではない。
 いつ再び、災厄がこの街の住民に降りかかるとも知れないのだ。
 ぽつんと浮かぶ小さな星の瞬き──聖獣の戦いとは、あの様に孤独で気高いものなのかもしれない。
「願わくば……その戦いにわたくし達も寄り添えますように」
 傍らへとやって来て微笑みを浮かべるシャルルへと、力強く頷きを返し。

 アイオライトは再び夜空を見上げるのだった。



 10

参加者

b.女の子が困ってるなら、放っておけないからな。
ソレイユ・ソルディアス(da0740)
♂ 18歳 人間 ヴォルセルク 陽
c.ルミナリィで視界を確保しつつ、消えた猫の特徴と合致する猫を探してみよう
アイオライト・クルーエル(da1727)
♂ 25歳 人間 ヴォルセルク 陽
c.ねこー?はやくでてきなさいよぉー
リリィ(da1748)
♀ ?歳 シフール カムイ 陽
z.探すのは骨が折れそうであるな。誘き出すことができればよいのだが。
オズ・ウェンズデイ(da1769)
♂ 23歳 ライトエルフ マイスター 月
a.これも立派なご依頼でございます。見事勤め上げて御覧に入れましょう。
シャルル・シュルズベリ(da1825)
♂ 29歳 人間 カムイ 月
b.ネコ、どこー?
チャウ(da1836)
♀ ?歳 シフール カムイ 月
b.宝石猫の伝心を使いつつ探してみようかと思います。
シェール・エクレール(da1900)
♀ 15歳 人間 カムイ 風
c.猫ちゃんが酷い目にあうのは見過ごせませんわぁ!
ローリィ(da1997)
♀ ?歳 シフール パドマ 水