【HH04】霧の王弟襲撃

担当成瀬丈二
出発2020/09/06
種類ショート 冒険(他)
結果成功
MVPベドウィール・ブランウェン(da1124)
準MVPアステ・カイザー(da0211)
リザ・アレクサンデル(da0911)

オープニング

◆離れにて
 今日もサンドラは暑かった
 離れで勉強をする十歳となる王弟のラルチェル、そして少年の護衛をしていたハウンドのところに駆け込んできたの影ひとつ。
 ラルチェルが小さな頃から信頼している使用人の老人、マースであった。
「殿下大変です──」
 マースの話では政務で外出中の女王が襲われ大きなケガを負ったということだ。

登場キャラ

リプレイ

◆沈黙するスフィンクス
 轟く咆哮はグドラのものだった。竜語魔法──ドラゴンロアーの詠唱は数百メートル先まで響くのだ。
 この竜の鱗を付与されたグドラの鱗は、堅固な守りを得る。
 その言葉に触発されたかのように、船着き場の人々がパニックに陥った声と音が聞こえ出す。
 悪態、罵倒、祈り。
 そしてウォータードラゴンは何かを念じる。

 エリアル・ウィンフィールドは若干の焦りを感じた。
 彼女が連れているスフィンクス型ガーゴイルの特殊能力は、相手の魔力を打ち破れば魔法などを解除する。
 しかし、ミストフィールドには通じない。
(いけないわぁ、これでやれるおもうたんが‥‥いや、何かの魔法付与してるかもしれんわ)
 一点賭けの大勝負。エリアルは時として大胆にもなれるのだ。

 そこにグドラの咆哮が再び響く。
 現代語に堪能なエリアルは、グドラの悲痛な叫びをよく理解できる。
 その内容は『ここは人間の住処、元の住処に帰って下さい』という願いだ。
 だが猿程度の知識レベルの相手に、どんなに意味のある言葉を言っても理解出来ないだろう。
「それはさておき、ミストフィールドじゃあリムーブカースの魔法は効かないか。キュアティブの為に魔力は温存しておこう」
 シフールの、シルヴァーナは、この見通しの悪さをどうにかしようかと考える。
 だが、彼女が使えるリムーブカースは呪い系の魔法や特殊能力を解呪するものであり、呪い系以外の魔法には無力である。
(女王様がけがしたという割に騒ぎがなかったから変だなとは思っていたけど‥‥やっぱり罠だったね)
 まあ、かん口令を敷く場合もあるかもしれない。

◆ドラゴンを討つさえた方法?
「騒ぎになっていない‥‥人気(ひとけ)が絶えている訳でもないのですよね?」
 霧からの離脱を試みる、ベドウィール・ブランウェンだ。
(マースさんが信頼出来る方なら、どうしてラルチェルさんをおびき出す為、偽りを伝えたのでしょうか‥‥)
 現場に見届け人、あるいは監視者がいるという推測のもとにだ。
 しかも、この霧のことを予め知っているハズ。

「ウォータードラゴンあんまり覚えて‥‥全然覚えてない──スモールドラゴンなら息、竜の鱗、パドマ魔法三点セットだよね、気をつけなきゃ」
 あえて口に出す、リザ・アレクサンデルだった。
 周囲のものと情報を共有する。連携が必要な現場では大切なことである。
 そして、水面に足を踏み出す。
 リザはウォーターランニングの魔法により沈まないのだ。

「ゴメン! ドラゴン退治よりラルチェル君が優先だわ!!」
 それに触発されたわけではないが、アステ・カイザーも自身の方針を口に出す。
(この視界じゃ弓矢は使えないし、我ながら直感に従ってアークスコンバットにして良かった‥‥のかな)
「ラルチェル君、手を出して!」
 王弟を『君』呼ばわりできるのは、さすがカイザー家ということか?
 アステは、その細い指に指輪を滑り込ませる。
「ドラゴンが何か吐きそうなら、手を向けて‥‥守ってくれるから!」
「ありがとうございます」
 ラルチェルは元気に返す。

 そして、ウォータードラゴンは魔法をひとつ成就した。
 ヴィンドスヴァルだ。
 狙われたのは、グドラとエリアルだ。そしてエリアルの近くにいたユニコーンとスフィンクス型ゴーレムも巻き込まれる。
 グドラは竜の鱗により攻撃を完全シャットアウト。
 しかし、エリアルは傷を負い、寒さで万全の体調では動けない。
 一方、ユニコーンはアースアーマーを成就していたので、かすり傷程度ですむ。
「あれこちら狙わない?」
 リザは訝しんだ。

◆霧の中で輝いて
「フォロー頼むで」
 傷ついたエリアルをいやそうとするユニコーン。
 一方でリザは攻撃されなかったのをいいことに、ウォータードラゴンとの距離を一気に詰めた。
「こういうヒキョーなことはウィールが大好きなんだけどなぁ‥‥おーい、こっちだよ」
 視界に入ったウォータードラゴンを挑発するリザ。
 一方でパニックに陥った人々をしり目にミストフィールドの範囲から出たベドウィールだった。
(さて、品定めでしょうか‥‥いえここは攻めに入りましょう)
「あれ、男の子が倒れていますよ」
 その言葉に反応する片目の男がいた。
 腰にはムチを下げている。全てをベドウィールの知識が導き出した。
 魔物使いの中にはドラゴンまで使役するクラスのものがいる。人里にドラゴンを放ったのはこの男だ!
「あれ? 男の子‥‥」
 アステが自分の袖のはじを握っているラルチェルに目配せした。
「大変だ、魔法に巻き込まれたよ」
 ラルチェル、棒読みである。
「バカがヒューマンは襲うな、と言ったのに!」
 男の声が聞こえたらリザは『ズルして無敵モード』と思うかもしれない。まあ、そこまで魔物使いがウォータードラゴンを使役できるかはさておこう。
 シルヴァーナが霧を抜ける選択をしたのはその直後だった。
 グドラはぴんと来ないがとりあえず、竜の翼の魔法を成就する。
 青い翼が一回り大きくなった。
「片目の魔物使いがいます! あなたですね、ウォタードラゴンをけしかけたのは!」
 ベドウィールの言葉か響き渡った。
「この声のするほうにいます!」
「バレた?」
 全てを悟った男は逃げ出そうとする。

◆逆襲の歌
「待ちなさい!」
 ベドウィールが走り出し、片目の男に全力でタックル。
「ドラゴンを止めなさい」
 ベドウィールが片手をひねり上げると男は苦痛とともにうなずいた。
「待て! アルカスト」
 ウォータードラゴンの動きは止まった。
「さあ、唄おうか、真実を‥‥」
「なんでこんなことをしたんや!」
 霧から出てきたシルヴァーナとガーベラが男の頭の上に座り込む。
 ややあって、霧から出てくるハウンドと一般市民たち。
「ドラゴンとタイマンか──パスしたかったよ。素直に言えば、罪は軽くなるよ? 無罪放免とはいかないけどね」
 一番離れていたリザも合流する。
「王族襲撃は‥‥大罪だよねー? まず名前から行こうか」
「ハリザンナだ‥‥お、王族?」

◆‥‥事後
「で、はりざんなはどうしたんや?」
 ガーベラが問う。
「酒場で人間の子供を『誘拐』するように言われた。魔物使いだから選ばれたのではなく、腕が立てば誰でも良かったらしいがな」
「じゃあ、あのウォータードラゴンは?」
 シルヴァーナからの質問。
「ウォータードラゴンは野生のものを時間をかけて調教した」
「まーすは?」
 続けてガーベラが言うと。
「誰だ? 知らない。別方向でおびき寄せる連中が何かやったのだろう」
 多分、危険だから消すんじゃないか?
「多分俺もな」
 自嘲っぽい表情を浮かべるハリザンナ。
 後にハリザンナとアルカストの身柄はサンドラの公的機関にゆだねられた。

「マースが‥‥消され──る?」
 目を見開くラルチェル。
「信じたくないけど、人はいずれ死ぬもの」
 アステの豊満な胸に顔を埋め、ラルチェルは涙を一滴だけ流した。
(なつかれちゃったかなぁ‥‥)
 そんなことをアステは考えてしまう。

 そのマースであるが、後日の調査によると孫を誘拐され、王弟をだましおびき出すように強制された、ということらしい。
 顔を潰された遺体が浮かんだが、遺品から彼と推測された。
 報告書は女王も目を通す。何かを察したらしいが、具体的なことは言わなかった。ガーベラはない頭で、市場の騒動とつながっているのか、と考えたらしい。

 しかし、ハウンドの冒険は‥‥続く!



 7

参加者

c.ゴメン! ドラゴン退治よりラルチェル君が優先だわ!!
アステ・カイザー(da0211)
♀ 27歳 人間 カムイ 水
b.ウォータードラゴンあんまり覚えてn…全然覚えてない!
リザ・アレクサンデル(da0911)
♂ 23歳 人間 ヴォルセルク 水
a.よろしくお願いします。
ベドウィール・ブランウェン(da1124)
♂ 27歳 人間 ヴォルセルク 月
c.リムーブカースでこの霧を解除してみるね。
シルヴァーナ(da1215)
♀ ?歳 シフール カムイ 月
c.問題ですえ!
エリアル・ウィンフィールド(da1357)
♀ 49歳 ダークエルフ マイスター 水
a.わわ、何でウォータードラゴンが襲ってくるんだー!?(ドラゴン語で質問)
グドラ(da1923)
♂ ?歳 キティドラゴン ヴォルセルク 水
 めが! めがー! みえへんわー!
ガーベラ(dz0030)
♀ ?歳 シフール カムイ 月


殿下申し訳ない

殿下か孫か、と迫られて──あの男の言いなりになったマースが愚かでした。悪魔のささやきです。