【HH04】遭遇!アヌビス像

担当空根 漣
出発2020/08/30
種類ショート 冒険(討伐)
結果成功
MVPベル・キシニア(da1364)
準MVPフェルス・ディアマント(da0629)
ブラウ・ゼルベリオス(da0736)

オープニング

 ブリーゲピラミッドの通路で慎重に歩を進めていたハウンド一行。少しばかり通路の幅が広がった様子に、皆は足を止める。
 ヒューマンの平均的な体格の者が三人並んで余裕のある程。だけれど、その通路で三人仲良く並んでみようと思う者は居ないだろう。
 何故なら、通路の壁際にはサンドラの神であるアヌビスを模したと思われる像が、向かい合わせに一体ずつ並んでいたからだ。
 漆黒の肌に金色の襟飾りと腰巻き。胸元にはスカラベのペンダントのようなものが飾られているその像は、通路の奥へ向かって等間隔に、ズラリ、と並んでいる。
 どうやらこの道はブリーゲピラミッドの中央へと向かうものなのだろう。そうでなければ、神と崇めるアヌビスの像をまるで守り人のように配置なんてしないだろうから。
 皆は通路の壁際に並ぶアヌビス像を眺め、ごくり、と生唾を飲む。これは本当にただの像なのだろうか。

登場キャラ

リプレイ

◆イケメンカーシー?
 遠い異国の地、グリーヴァでは提灯と呼ばれるランタンを片手に持つフェルス・ディアマントは、自身にアースアーマーを成就させた。
「あのカーシーの像、イケメンには違いないっすけど、もうちょっとマッスル味を増してもいい気がするッス」
 まぁ下半身はそこそこッスけど、なんていうフェルスに「カーシーなのか?」と首を傾げたのはベル・キシニアだった。
「神を模した像なのだろう? アレは」
 視線をアヌビス像へと向け、ひゅん、とベルは投げ縄を投げる。縄は先頭にいた二体のアヌビス像を絡め取り、その動きを制限した。
 各々が戦闘準備を整えるまでの時間稼ぎには充分だろう。二体纏めてしまえば、後続のアヌビス像も前には出て来られない。
 雪崩て転んでくれれば儲けものだがな、と内心零すベルは、自身の持つグリーヴァブレードにルミナパワーを成就させた。
「頭がジャッカルっぽいッスから、カーシーの神様だったんじゃないッスかね?」
 むきっ、と筋肉を見せ付けたフェルスが、自身にガードの成就を終えつつベルへと応える。
「ああ、成程。一理あるな」
 彼の言葉に頷くベルは、自身へオフシフトを既に成就し終えていた。続いてスカイランニングを成就させる彼女の傍で、ハヤト・アステールもマルチパーリングとオフシフトの成就を終える。
「ッシャおら! 一体ずつ潰してやんぜ!」
 かかってこいや! と威勢よく足を踏み込むハヤト。ベルもまた、宙を駆けるように前へと躍り出た。
「援護するッス!」
 アヌビス像へ距離を詰める二人のすぐ後ろで、フェルスがハンマーを握りしめる。
 同じ頃、通路の中程に、パッ、と明かりが灯った。ジャアファル・ジルフェの成就したトラップライトの明かりが通路を照らす。
(なるべく高い位置で、辺りを広く照らせるといいんだが。兎でも指定しておけば誤誘引の防止になるだろ)
 ピラミッドの中に兎は居ないだろうしな、と彼は明るくなった通路に短く息を吐く。
「こっちの明かりと、負傷の回復は引き受けるわ! 前衛に立つ人! 相手の得物の長さにも気を付けて戦って!」
 そう皆に檄を飛ばすのはアステ・カイザーだった。彼女は握ったトーチを高く掲げ、皆の後方に待機している。
(どれだけ負傷者が出るか解らないわ。しっかり状況を見ておかないと……)
 真剣な面持ちで皆の背を見詰める彼女はCROSSを強く握った。

◆こいつら……!
 ハヤト、ベル、フェルスの三人が通路先へ踏み込んだのち、ユミル・エクレールエルシー・カルが各々の手に持つ盾を構えて通路に並ぶ。
「壁役は任せな。私の後ろには行かせないね」
 ユミルの言葉に「んだ」と頷くエルシー。
「おら堅さだけには自信があるべ。おらたちが抑えてる隙に、なんとか片付けてくれだべさ」
 彼女等のすぐ後ろにはリコ・マウリオラブラウ・ゼルベリオスメイベル・ミストールが控えている。
「まず火を点けようと思ったんですけどぉ、火種になる物もぉ、火を点けられそうな物もぉ、持ってませんでしたぁ」
 てへっ、と片目を瞑り、上げた口の端から舌をちろりと覗かせるリコ。彼女は誰の返事も待たずにユミルとエルシーの間へ足を進める。
「とりあえず殴りますよぉ~! 殴って倒せないときはぁ~、たっくさん殴りまぁす!」
 ばーにんぐリコナッコー! と声高らかにヴォルセルク魔法を成就させたかったらしいリコは、成就の代わりに、ス、と腰を低くした。
 メイベルはディレクトガガを成就させ、リコの援護に向かわせる。
「クーノの氷結で支援します」
 暑いサンドラ地方で氷像ガーゴイルを使う事は一種の賭けでもある。陽の当たる昼間や炎天下でなら死活問題だが、ここは屋内と言えなくもない。
 砂漠の夜は冷える。奇跡的にピラミッド内部の温度が29度以下であったのかもしれない。ともあれ、メイベルは幸運にも氷像ガーゴイル、クーノへ何のデメリットも受けなかった。
「胸のスカラベ飾りは怪しいですね」
 そう言ったのは、握った銀のモーニングスターにルミナパワーを成就させ終えたブラウだった。
(スカラベは太陽と復活のシンボル……と、どこかで聞いた事があります。アヌビスと言えば冥府の番人。ふむ……)
 冥府とは死者の国を指す。本当にそんな場所が存在しているのか、という議論は隅に置いて、死者の国の番人の胸元に太陽と復活のシンボルが掲げられているなんて、少々首を傾げてしまう。
(ピラミッド自体、死からの再生を願う何やらだった、という話も聞いた事はありますが……さて)
 思考するブラウにメイベルも同意を示す。
「生憎、わたしのウィークポイントグラスでは弱点を見抜けませんでした。ですが、あのスカラベは気になります。眼か、操り主か、動力か……」
「スカラベを狙ってみましょう。的が小さく、狙い難いとは思いますが」
 トライアンドエラーですよ、とブラウは握った銀のモーニングスターをアヌビス像の胸元目掛けて振り下ろした。
 めきょ、とした思わぬ手応えに、ブラウは瞬間目を丸くする。

 同じ頃、額に付けた魔法のヘッドライトの明かりに照らされるアヌビス像へ「ほぉ?」とベルが片眉を上げていた。手に持つグリーヴァブレードを、ひゅ、と振り抜き、鞘へ納める。
「こいつ、石じゃないな」
 そう言って一歩下がった彼女を庇う為、フェルスがグリーヴァランタンとハンマーを握って前に立った。
 繰り出されるハルバードの切っ先は、ふんっ、と胸を張るフェルスの鎧に弾かれ、軌道を逸らす。
 ベルと同じようにフェルスの背後へ一度足を引いたハヤトは、アヌビス像を険しい視線で睨み、言った。
「どうにも手応えがネェとおもったら、そーいうことかよ!」
 チッ、と舌打ちを零す彼は、グリーヴァオオダチからスピアオブセトへと自身の得物を持ち替える。
「斬れねぇなら穴開けてやんぜ」
 ダブルアタックを成就させたハヤトは、フェルスの脇に一歩踏み込む。突き込んだスピアオブセトを素早く引き抜き、それと同時にもう一歩間合いを詰めて今度は柄を跳ね上げた。
 スピアオブセトの柄で軌道が逸れたハルバードの切っ先。間髪逃さず、飛び上がったハヤトは両手で振り被ったスピアオブセトを思い切りアヌビス像へ突き落した。
「食らいやがれッ!」
 ずぶり、とアヌビス像の胸元へ深く突き刺さるスピアオブセト。傾ぐ像に片足を掛け、ハヤトはスピアオブセトを引き抜きながら、像を蹴り倒した。
「石でもねぇし鉄でもねぇし、なんだこれ」
 変な臭いもするしよ、と顔を顰める彼の隣に並んだフェルスは、自身のハンマーで倒れているアヌビス像を殴る。
「鉄を斬れる筈の私の刀が通じず、フェルスやハヤトの武器ならそれなりに手応えもある、か」
 ふぅむ? と片手を顎元に当てて思案するベル。そこへ、ジャアファルの放ったアテンディスクが飛んできて、アヌビス像に一定の傷を負わせ、彼の手元へ戻って行った。
(……? 一様に刀の類が効かない、という訳ではないのか)
 ぽん、と握った片手を掌に打つベル。
「成程、斬れ味が良すぎる故か。これは」
 ならばと彼女は自身の両手に拳を作り、構えた。
「我が肉体美を披露すべきだな。私の身体が何処まで神に近付けるのか、試してみようじゃないか」
 握った拳に、きらり、と光る琥珀の指輪。
(……ちゃんと帰るさ)
 対峙するアヌビス像へ口の端を上げて見せるベルは、自身にカルラを成就した。

◆殴れ殴れ~
 斬鉄攻撃が効きそうにないという事はすぐに皆へ共有された。ユミルが構えたアイアスシールドでアヌビス像のハルバードを弾き、それに合わせてリコがナックルで殴る、殴る、殴る。
 命中率は低いものの、ブラウは握った銀のモーニングスターをアヌビス像の胸元に飾られたスカラベへ何度も振り下ろしていた。
 ガーゴイルの凍結を上手く使って、メイベルはアヌビス像の移動を制限する。動きの鈍ったアヌビス像へ、リコはナックルを叩き込み、ブラウは銀のモーニングスターを見舞った。
 盾を構えるエルシーは、ぜぇはぁ、と荒い息を零しつつ繰り出されるハルバードをなんとか防ぐ。
「交代するッス!」
 エルシーの疲労を見て取って、フェルスが彼女への攻撃を代わりに受けた。ぬんっ、と見事な筋肉が張りを増し、彼自慢のふさふさヘアーがぽよぽよと揺れる。
「がんばって! もう少しよ!」
 一度下がったエルシーにアステがキュアティブを成就する。
 ジャアファルは柴犬のブロンテが噛み付いたアヌビス像にアテンディスクを放った。厄介な魔法を使われたらと警戒していたけれど、今のところその兆候はない。出し惜しみをして逆に倒されてしまっては本末転倒だろうから、畳みかける為にも彼は戻って来たアテンディスクを再び放つ。
 金色の霊鳥の幻影を身に纏うベルは、踊るように自身の拳をアヌビス像へ叩き込んだ。短い効果時間を有効的に活用しようと、彼女は出来るだけ多くの拳を振るう。
 彼女をフォローし、一体ずつ確実に仕留めていくハヤト。ベルの成就したカルラがその効果時間を終える頃、彼女の指にある琥珀の指輪がその秘められた効果を発揮した。
 それからもベルは休みなく動き続ける。皆は一丸となって通路にひしめくアヌビス像を倒し切った。

◆通路の先に
 行く手を阻んでいたアヌビス像は、皆の奮闘の甲斐あって全て倒す事が出来た。息の上がる者はアステからキュアティブの成就を待ちつつ、暫し休息を取る。
「けっこう痛かったけどぉ、やったぁ~って感じですぅ!」
 両手でブイサインを作り、片足を跳ね上げて喜ぶリコ。彼女もそれなりに疲労を蓄積させていた。
「ベル、平気か?」
 通路の壁に背を凭れさせ、俯いていたベルにハヤトが声を掛ける。顔を上げた彼女は「ああ、平気さ」と深く息を吐いた。
「私には帰る場所があるからな。さて、この先に何があるのか、拝みに行くとしようか?」
 皆の息が整うのを待って、通路の奥へと一行は足を進める。
 通路の奥では、巨大な扉が行く手を遮っていた。その扉は荘厳で壮大。恐らくは『王の間』へ続く扉なのだろう、とその場に立つ誰もが思う。
 しかし扉は押しても引いても動かなかった。この扉を開くには相応の鍵が必要なのだろう。開かない扉の前で立っていても仕方がない。報告しよう、と皆は各々元来た通路へ足を戻す。
「王の間、王家の鍵……か」
 巨大な扉を見上げるジャアファルが小さく零した。



 13

参加者

c.トーチを持って、負傷の回復を引き受けるわ。 みんな、頑張って!
アステ・カイザー(da0211)
♀ 27歳 人間 カムイ 水
a.よっしゃ!一体づつ潰してやんぞ!!
ハヤト・アステール(da0375)
♂ 23歳 カーシー(中型) ヴォルセルク 風
a.ああいう感じのイケメンカーシーがサンドラの流行りなんスかね?
フェルス・ディアマント(da0629)
♂ 22歳 カーシー(大型) ヴォルセルク 地
a.銀のMスターでスカラベを砕きます
ブラウ・ゼルベリオス(da0736)
♂ 43歳 人間 ヴォルセルク 水
a.ガガに凍結で支援させ、スカラベに色々と試します。弱点が分れば伝達します
メイベル・ミストール(da1050)
♀ 20歳 人間 マイスター 水
a.纏めて薙ぎ払う手段なぞ持ってないからな。
ベル・キシニア(da1364)
♀ 28歳 人間 ヴォルセルク 風
c.誘引しないよう気をつけつつ、明かりを用意する。
ジャアファル・ジルフェ(da1631)
♂ 19歳 人間 マイスター 陽
a.作戦はぁ……殴って蹴ってぇ、ぶん撲りますよぉ~☆
リコ・マウリオラ(da1831)
♀ 19歳 ドワーフ ヴォルセルク 火
a.まあ、これしかないね。
ユミル・エクレール(da1912)
♀ 23歳 人間 ヴォルセルク 陽
a.前に出るべ。
エルシー・カル(da2004)
♀ 21歳 カーシー(大型) ヴォルセルク 地